海に浮かぶ「長崎空港」は、1975年に世界で初めてできた本格的な海上空港です。異国情緒あふれるアート作品やグルメなど、長崎らしさを堪能することができます。展望デッキやフォトスポットなど、見どころも満載です。
長崎空港を初めて利用する人にも役立つ、空港からの便利なアクセスなども併せてご紹介します。
長崎空港について
「長崎空港」は教会を模して建てられており、教会の窓をイメージした造形や屋上の鐘など教会が多い長崎ならではのデザインが取り入れられているのが特徴です。
1~2階は長崎グルメを代表する「ちゃんぽん」や「皿うどん」「佐世保バーガー」などを提供するレストラン、お土産に喜ばれるギフトがそろう売店が並びます。
3階の展望デッキでは飛行機の離発着を間近で見られるほか、蝶をモチーフとしたパネルや顔出しパネルなどSNS映えするフォトスポットも。
空港と本土の間には「箕島(みしま)大橋」という全長約1キロメートルの橋が架かっており、搭乗までの待ち時間の間に大村湾を眺めての散歩も楽しめます。
長崎ならではの装飾に注目!
まず注目したいのは、施設内の至るところで見られるアート作品たち。どれも長崎を題材に作られています。
陶板で作ったアートタイル
1階のエスカレーター付近で見られるのは、長崎各地のお祭りを描いた8つの陶板画(とうばんが)です。陶板画とは、大きな陶器の板に絵付けを施した絵画のこと。長崎県を代表するやきものである波佐見焼と三川内焼で作られたものが飾られています。
左から、佐世保市の「YOSAKOIさせぼ祭り」、大村市の郡三踊(こおりさんおどり)「寿古踊(すこおどり)・沖田踊・黒丸踊」、諫早(いさはや)市の「のんのこ諫早まつり」が描かれています。
ちなみに「のんのこ」とは、諫早の方言で「かわいい」の意味なんだとか。
2階に上がった先には、江戸時代から続く秋の大祭「長崎くんち」の名物「龍踊り(じゃおどり)」のアートタイルがあります。身体を大きくうねらせ、気持ちよさそうに泳ぐ龍の絵は必見です。同じ県内の祭りでも、地域によって衣装や演出など異なるので、1枚ずつじっくり鑑賞してみてください。
2Fの吹き抜けにあるステンドグラス
2階の天井には「龍踊り」の龍を爽やかなブルーを用いて描かれたステンドグラス「空の守神」が!ドイツ製の手作りガラスを用いて作られており、中世からの技法を忠実に守って完成させた大作です。
吸い込まれそうなブルーが美しく、まるで長崎の街を見守るかのように龍が空で舞っています。
展望デッキ(3階)
展望デッキでは航空機のダイナミックな離発着を近くで眺めることができます。長崎空港は五島福江空港行きなどの離島空路もあるため、タイミングが合えばプロペラ機を間近で見ることもできますよ。
滑走路の奥にはつつじの木で描いた「NAGASAKI」の文字が。開花時期になると、あでやかなピンクの花文字になり、山を彩ります。見頃は毎年4月中旬で、空港へ向かって箕島大橋を渡る際に正面に見えます。
「幸運の羽(つばさ)」と「幸せの鐘」の前で記念撮影を
壁際にあるのは、カラフルな色が目を引くフォトスポット「幸運の羽(つばさ)」です。羽の中には、「大浦天主堂」や「浦上天主堂」、「頭ヶ島(かしらがしま)天主堂」、「平戸ザビエル記念教会」など、県内に実在するさまざまな教会のステンドグラスに用いられているデザインが描かれています。
中央に立つと、まるで背中から羽が生えたような写真を撮ることができますよ。
「幸運の羽」からフェンスの方へまっすぐ進むと「幸せの鐘」があります。「自分や大切な人のもとに幸福が訪れますように」、「この鐘の音を聞いた人のもとに幸せがやって来ますように」など、自分や周りの人の幸せを願いながら鳴らしましょう。
角度を工夫すれば、屋上デッキの入り口の真上にある、教会をオマージュした鐘と並べて画面に収めることができます。タイミングを見計らって空へ飛び立つ飛行機が映るように撮影すれば、より素敵な1枚が撮れそうです。
あれもこれも食べたい、長崎グルメを満喫(1~2階 飲食店)
長崎には、中国とオランダ、日本の食文化が交じり合った独自の「和華蘭(わからん)文化」が根付いています。戦後は、米海軍の影響を受けて和華蘭文化からさらに発展し、アメリカの文化と融合して新たな食文化を育んできました。
そんな地域色豊かな長崎グルメのお店をピックアップしてご紹介します。
佐世保発のアメリカンバーガー「LOG KIT」
1階には、ハンバーガーショップ「LOG KIT(ログキット)」があります。
佐世保にある本店はタコスやサンドウィッチなども楽しめるアメリカンダイナーですが、空港店は佐世保バーガーの専門店です。
佐世保バーガーとは、長崎県佐世保市で生まれた手作りハンバーガーのことで、長崎県のご当地グルメのひとつ。第二次世界大戦後、佐世保に置かれた海米軍基地からレシピが伝わり、広まったとされています。
「LOG KIT」のオーナーは、かつて食べたジューシーなハンバーガーの味を忘れることができず、試行錯誤の末、この店のハンバーガーを作り上げたのだそう。
こだわりは、ビーフ100%のパティとオリジナルのマヨネーズ。
バンズも鉄板で焼いているので、ひと口食べるとバンズのサクサクとした食感が味わえます。噛み応えのあるパティと野菜のシャキシャキ感、甘めのマヨネーズは、一度食べたらやみつきになる味わいです。
色々な種類の佐世保バーガーがありますが、迷った時は定番の「ハンバーガー」、または空港店で一番人気の「スペシャルバーガー」がおすすめ。
肉厚のベーコン、チーズ、玉子を挟んだ「スペシャルバーガー」は、持つとずしりと重く、重量は約500gと食べ応えも十分!お腹を空かせて、チャレンジしてみてくださいね。
佐世保まで足を伸ばす時間がない人や、観光中に食べ損ねた人も、こちらで佐世保バーガーを堪能してはいかがでしょうか。
LOG KIT長崎空港店
- 場所
- 長崎空港1F
- 営業時間
- 11:00~19:00(L.O.18:30)
- 定休日
- なし
- 公式サイト
- LOG KIT
長崎のご当地ヌードルが集結! 麺どころ「つばき・牡丹」
2階にはちゃんぽん、皿うどん、五島うどんを中心に長崎の名物グルメを堪能できる麺どころ「つばき・牡丹」があります。
たっぷりの具材が入った「長崎ちゃんぽん」(1,150円)は、お店で一番人気のメニューです。鶏ガラと豚ガラをブレンドしたスープは、濃厚なのに後口はあっさり。
小麦の風味豊かなちゃんぽん麺はスープと絡まり、お腹と心がホッと満たされます。
そんなちゃんぽんと人気を二分するのが「長崎皿うどん」(1,150円)。長崎県発祥のご当地グルメです。麺は「細麺」「太麺」の2つから選択できます。
皿うどんは、ちゃんぽんに使われている太麺を使って作られたのが始まりですが、今では細麺で提供されるお店も多いため、「太麺の存在を初めて知った」という人もいるのだとか。
皿うどんにウスターソースをかけて食べるのが、長崎流です。ソースのコクが加わって、また違った味わいが楽しめます。訪れた際にはぜひトライしてみてください!
麺どころ「つばき・牡丹」
- 場所
- 長崎空港 2F
- 営業時間
- 11:00~20:15(L.O.19:45)※営業時間の変更の可能性あり
- 定休日
- なし
- 公式・関連サイト
- 麺どころ「つばき・牡丹」
揚げたてのハトシロールをその場で「かまぼこ長崎一番」
小腹が空いた時に立ち寄りたいのが、「かまぼこ長崎一番」。お土産用のかまぼこだけでなく、手軽に食べられるテイクアウト用のかまぼこも充実しています。
中でもおすすめは「ハトシロール」。「ハトシ」とは明治時代に中国から長崎に伝わった郷土料理で、えびのすり身をパンで挟んで油で揚げた料理のことを指します。
その「ハトシ」にヒントを得て開発したのが、「ハトシロール」です。
魚肉のすり身をベースにした具を食パンで巻いて油で揚げており、「プレーン」(220円)、「チーズ」(250円)、「えび」(330円)の3種類から選べます。
サクサクとした食感と具材の甘みがほど良く、ホットスナック感覚で食べられるのでおやつにもぴったり。
人気の「ぷりぷり海老」(315円)や、ちゃんぽんの麺と野菜、スープが入った変わりダネの「ちゃんぽん天」(286円)などさまざまな種類が用意されており、どれを選ぼうか迷う時間も一興です。
かまぼこ長崎一番 長崎空港店
- 場所
- 長崎空港 2F
- 営業時間
- 6:45~19:30
- 定休日
- なし
- 公式サイト
- かまぼこ長崎一番
喜ばれる長崎土産といえば!(2階 ショップ)
2階にはお土産を購入できるショップもたくさんあるので、その中からいくつか厳選してご紹介します。
「MiSoLa-海空-」でさまざまなカステラをチェック!
長崎を中心とした九州各地の食やお酒など約2,000アイテムをそろえている「MiSoLa-海空-」。ここでは、10数社の長崎カステラが販売されています。
1900年創業の「文明堂総本店」は、今年で124年を迎える老舗。契約農場と共同開発をしたカステラ専用卵「南蛮卵」を開発し、南蛮渡来のカステラを独自の方法でおいしく作り上げています。
初代は1914年に東京の上野で開催された「大正博覧会」にカステラを出品し、全国に紹介した人としても知られているのだとか。百余年の間、培ってきた「文明堂総本店」ならではの味わいが楽しめます。
「松翁軒(しょうおうけん)」は1681年創業の歴史あるお店。長崎県と福岡県しか店舗を構えていないため、知る人ぞ知る長崎銘菓です。
ザラメをカステラの下に敷くのではなく、ザラメを使って生地を焼き上げているのが特徴。そうすることで、上品な甘みが生まれるのだとか。レトロでかわいらしいパッケージも目を引きますね。
「琴海堂(きんかいどう)」は長崎に伝わる昔ながらの製造法を忠実に守る、和三盆カステラのお店です。熟練した職人による一つひとつの工程を大切にしたカステラは手焼きのため、一日に販売される商品はごくわずか。
中でも、卵黄と卵白を7:3の割合で焼き上げた「七三焼 和三盆かすてら(0.5号)」は、店頭では長崎空港のみで販売されている商品です。見つけたら迷わず購入することをおすすめします。
カステラの生地といえば黄色ですが、1867年創業の五三焼カステラ店「須崎屋」が作る「白いかすてら」はその名の通り生地が白色です。
お米を食べて育つ鶏が産む、黄身まで白い「米卵」が使われています。和三盆糖の上品な甘さときめ細かな白い生地、底のザラメが三位一体となりおいしさを生み出しています。
写真左の「長崎心泉堂 總本店」の「かぎしっぽ猫ちゃんハーフ(幸せの黄色いカステラ)」は、思わずパケ買いしたくなるかわいらしさ。箱の中には、はちみつがたっぷり入ったプレーン味のカステラが5切れ入っています。猫好きの人へのお土産にはもちろん、ちょっとした贈り物にもぴったりなサイズ感です。
写真中央と右側の商品は、「千寿庵 長崎屋」の「長崎オマガリにゃすてら(0.375号/1本タイプ)」。猫の焼き印が印象的で、1本タイプと1切れタイプの2種類のラインナップです。1切れタイプの焼き印は「肉球」「かぎしっぽ」「ごぼ天しっぽ」「丸しっぽ」の4つから選択可能です。
長崎市には昔からしっぽが曲がった「尾曲がり猫」が多いのですが、その理由は出島で貿易が行われていた頃、外来種であるしっぽが曲がった猫が海外からやって来て繁殖した可能性が高いからなんだそう。
カステラをお土産に渡す際に、尾曲がり猫のネタも添えると旅の話題も盛り上がりそうです。
※商品の価格については、変更になる可能性があります
MiSoLa-海空-
- 場所
- 長崎空港 2F
- 営業時間
- 6:45~20:30
- 定休日
- なし
- 公式・関連サイト
- MiSoLa-海空-
小箱に入った「福砂屋」のカステラ
長崎に本店を持つ「福砂屋」の売店もあります。
イチオシは気軽に配りやすい「フクサヤキューブ」。キューブ状のコロンとしたかわいい形の小箱を開けると、中には2切れのカステラが入っています。
地域や季節によってパッケージのデザインが異なるのも注目のポイントです。この包装紙柄のパッケージは、店頭では福岡県以外の九州でのみ販売されています。
フクサヤキューブを購入すると付いてくる、透け感のある袋も素敵ですね。
カステラ本家 福砂屋 長崎空港 2階売店
- 場所
- 長崎空港 2F
- 営業時間
- 6:45~20:30
- 定休日
- なし
- 公式サイト
- カステラ本家 福砂屋
甘くてふっくらおいしい角煮まんじゅう「岩崎本舗」
「岩崎本舗」では、卓袱(しっぽく)料理のフルコースのひとつである東坡肉(とんぽうろう)をアレンジした「角煮まんじゅう」を購入することができます。
卓袱料理とは長崎の食文化の代名詞のひとつで、和華蘭の文化が交じり合う中で形成されていった長崎発祥の宴会料理のこと。そのルーツは、出島で貿易が行われていた江戸時代にまでさかのぼると言われています。
「岩崎本舗」の角煮まんじゅうシリーズは、そんな東坡肉のおいしさを伝えてくれる長崎ならではのご当地グルメ。お土産用の商品が豊富にそろっています。
ほかにも、テイクアウトできる「長崎角煮まんじゅう」(500円)や「大とろ角煮まんじゅう」(600円)も販売。
じっくり煮込んだ豚バラ肉をふわふわの生地で挟んだ角煮まんじゅうは、ひと口食べれば繊維がホロホロとほどけていき、柔らかくてジューシーなお肉の甘みと旨みが口いっぱいに広がります。
お土産選びと同時に、できたての角煮まんじゅうを食べられるのもうれしいですね。
岩崎本舗
- 場所
- 長崎空港 2F
- 営業時間
- 6:45~20:30
- 公式・関連サイト
- 岩崎本舗 公式サイト
長崎空港から各地へのアクセス
長崎県のほぼ中央にある長崎空港の魅力は、長崎市内、ハウステンボス、佐世保、雲仙など、県内のさまざまな観光地にアクセスしやすい立地にあります。ただし、空港からそれぞれ少し距離が離れているので、路線バスや高速バス、連絡船(高速船)、タクシーやレンタカーを使って移動するのがおすすめ。
長崎空港の1階には案内所があるので、各方面の出発時刻やのりばが分からない時は、気兼ねなく窓口の人に尋ねてみてください。
長崎市内へのアクセス
バスのりば4番または5番から乗車し「長崎駅前」下車。料金は片道1,200円、約43~55分の道のりです。
長崎市内には、平和公園やグラバー園など歴史と異国情緒あふれるスポットが点在。稲佐山からの夜景も必見です。
ハウステンボスへのアクセス
公共交通機関を使って長崎空港からハウステンボスへ行く場合は、高速バスまたは連絡船(高速船)の利用が便利です。高速バスを利用する場合は、長崎空港を出て左手奥にある2番のりばから乗車。乗車時間は約60分です。
連絡船を利用する際は、ターミナルにある連絡通路を通って船着場へ。そこからハウステンボスまでは約50分で到着します。
※平日は運休していることがあるため、各公式サイトで運行状況をご確認ください。
・ハウステンボス行きの高速バスの詳細はこちらでご確認ください
・ハウステンボス行きの連絡船(高速船)の時刻表はこちらでご確認ください
佐世保・平戸へのアクセス
佐世保駅までノンストップで高速道路を経由する「乗り合いジャンボタクシー」(30分前までに要予約)での移動が最速(約55分)。高速バスを利用する場合は2番のりばから乗車して「佐世保駅前」まで約1時間30分。料金は片道1,400円です。
平戸へは「佐世保駅前」から田平港(旧平戸口桟橋)行きバスで約1時間30分(片道1,350円)、もしくは「佐世保駅」から松浦鉄道で約1時間30分(片道1,340円)で到着できます。
佐世保には絶景スポットとして知られる九十九島(くじゅうくしま)があり、クルーズやカヤックで美しい自然が見られ、水族館、動植物園も点在。佐世保バーガーなどのグルメも魅力です。平戸へ赴けば、田平天主堂をはじめとしたのキリシタン関連の歴史的建造物や、平戸城などの見どころがあります。
大村・諫早・雲仙・島原方面へのアクセス
バスのりば3番から乗車。大村駅までは約12分(長崎空港~大村駅前:片道240円)、諫早駅前までは約50分(長崎空港~諫早駅前:片道640円)の道のりです。
雲仙や島原へ行くには、まずは諫早駅に向かいましょう。
雲仙には「諫早ターミナル」から島鉄バス雲仙行きに乗車で約80分。 島原駅へは、諫早駅で島原鉄道 に乗り換えて約1時間10分(島原鉄道 諫早駅~島原駅:片道1,460円)で到着します。
1年を通して楽しみ方が盛りだくさんの長崎。イルミネーションがきらめくハウステンボスをはじめ、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」となった教会や異国情緒あふれる街並み、ご当地グルメ、長崎の島々など、カメラを構えたくなる美しさと居心地の良さが魅力です。休日は飛行機に乗って長崎へ出かけてみませんか?
長崎空港
- 住所
- 長崎県大村市箕島町593
- 営業時間
- 6:15~22:00
- 定休日
- なし
- 公式サイト
- 長崎空港
撮影/井上 由紀子 取材・文/原口可奈子