日本きっての観光地である長崎県。なかでも多くの観光スポットが集まりコンパクトシティである長崎市は、時間に余裕があり、脚力に自信のある人は歩いて観光地を回ることも可能です。
交通手段としてはバスもありますが、エリアをまたいで観光するのであれば路面電車で「一日乗車券」を利用して回るのが便利です。今回は、長崎在住のトラベルライターが、長崎の路面電車の一日乗車券を使った便利な利用方法と路面電車と徒歩で回れる3つのおすすめコースをご紹介します。ぜひ路面電車を有効活用して、長崎観光を目一杯楽しみましょう!
長崎観光はちんちん電車の「電車一日乗車」で便利に回ろう!
長崎市民の足として親しまれている路面電車、通称「ちんちん電車」。チンチンと響く警笛の音から、そう呼ばれるようになったと言われています。1915(大正4)年に開通して以来、100年以上も長崎の街を走り続ける路面電車は、どこまで乗っても運賃は一律1回130円、降車時に払う後払い制です。日中は5〜9分に1本の間隔で走っています。
「電車一日乗車券」はどこで買う?
画像提供:長崎電気軌道株式会社
路面電車の便利な「電車一日乗車券」は500円。4回以上乗れば元が取れます。ただ、車内では買えないので、あらかじめ観光案内所や沿線のホテルのフロント、JR九州みどりの窓口、路面電車営業所などで購入しておく必要があります。
近くに電車一日乗車券の販売所がないという方は、スマートフォン画面を利用したモバイル乗車券が便利。無料の「長電アプリ」をダウンロードすれば、クレジットカードなどで購入できます。モバイル乗車券には、電車一日乗車券のほか、購入後24時間利用可能と宿泊者に便利な24時間乗車券が600円で販売されています。
SUICAやPASMOなどのICカードも使える!
2020(令和2)年3月22日から、路面電車で全国相互利用交通系ICカードも使えるようになりました。SUICAやPASMO、ICOCAなど、すでに日常で使っている交通系ICカードも利用可能になり、より一層便利に!
路面電車の車内でも、nagasaki nimoca(ながさき にもか)が販売されています(現金のみ、2,000円)。
路面電車の路線は4つあるため、乗り換えが必要になる場合も。のりつぎは31番「新地中華街」の電停のほか、2020(令和2)年7月より38番・45番の「市民会館」電停でも可能になり、のりつぎ券※があれば目的地まで追加料金なしで乗車できます。
乗り換えの仕組み自体が少しややこしいので、初めての長崎観光にはどれだけ乗っても同じ料金の一日乗車券やモバイル乗車券をおすすめします。
※のりつぎ券は2021年3月31日をもって終了予定のため現金での乗り換えはできなくなります。nimocaを含む全国相互交通系ICカードであれば引き続き乗り換えが可能です。
長崎では「さるく」という、長崎弁で「ぶらぶら歩く」という意味の方言があります。路面電車の電停周辺に観光スポットが点在していることが多いので、ぜひ長崎の街を路面電車とともに「さるいて」回って欲しいコースを3つご紹介します。
おすすめエリア1
75年前の歴史的な場所で平和への思いを馳せる「平和・原爆コース」
長崎に来たら外せないのが、平和公園エリア。少し市街地からは離れていますが、修学旅行生も必ず訪れる定番の観光地です。長崎は原爆が落とされた世界に2つしかない場所であり、平和を考えるためにもぜひ訪れて欲しいところ。平和公園以外にも、周辺には観光スポットが点在しています。
1. 平和公園・平和祈念像、天主堂の見える丘
「赤迫(あかさこ)」行の赤色の線または青色の線に乗車し、19番「平和公園」で下車。路面電車を27番「長崎駅前」の電停から乗ったとすると、15分もかかりません。平和公園への入口へは、「平和公園」電停から徒歩約2分です。
路面電車を降りたら角にファミリーマートがある方向に進み、通りを渡ります。階段、エスカレーターを登ると、水を求めて亡くなった原爆の犠牲者の冥福を祈るために造られた噴水と少女の手記の石碑がある「平和の泉」が。そこを奥に進むと、長崎市民の平和への願いを象徴して造られた平和公園のシンボルである「平和祈念像」があります。
ここ平和公園は、毎年原爆の落とされた8月9日に、平和祈念像前で世界の恒久平和を祈念する「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が行われる場所でもあります。
平和公園
- 住所
- 長崎県長崎市松山町
- 詳細
- 長崎市公式ページ
そして、さらに平和祈念像の右奥を進むと、天主堂の見える丘があり、「浦上(うらかみ)天主堂」を眺めることもできますよ。カトリック教徒の多いこの地域に信者によって建てられ、被爆で甚大な被害を受け建て直された現在の浦上天主堂。現在も信者たちの祈りの場ではありますが、観光客向けに一般公開されており無料で一部堂内を見学できます。興味のある方は、そこから徒歩5分ほどの浦上天主堂を訪れてみては。
浦上天主堂
2. 原爆落下中心地、長崎原爆資料館
平和公園の散策の後は、入口まで戻って通りを渡ると、「原子爆弾落下中心地」があります。徒歩1分もかかりません。自然に囲まれていて近くにベンチもあるので、少し疲れたらここで一休みしても。
原爆落下中心地を過ぎて奥に進み、下の川(しものかわ)を渡って階段を上がると、「長崎原爆資料館」があります。
長崎原爆資料館は有料ですが、併設の「国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館」は原爆の犠牲者の名簿が納められた追悼空間、遺影や手記をはじめとした平和に関する様々な情報を閲覧でき、無料で見学できますよ。
長崎原爆資料館
- 住所
- 長崎県長崎市平野町7-8
- 開館時間
- [5〜8月]8:30〜18:30[8月7〜9日]8:30〜20:00[9〜4月]8:30〜17:30
※入館はいずれも閉館30分前まで
- 休館日
- 12月29~31日
- 観覧料
- 一般200円、小中高生100円
- 詳細
- 長崎原爆資料館公式ページ
3. 一本柱鳥居、山王神社
長崎原爆資料館から長崎大学坂本キャンパス方面に徒歩10分ほど歩くと、「一本柱(いっぽんばしら)鳥居」と「山王神社」があります。20番「原爆資料館」または21番「大学病院」の電停から徒歩7~8分ほどなので、路面電車に乗るより歩いた方がいいでしょう。
原爆の爪痕が今も残る一本柱鳥居と山王神社境内にある被爆クスノキは、時間に余裕があればぜひ見ておきたい場所です。
山王神社
- 住所
- 長崎県長崎市坂本2-6-56
- 詳細
- 山王神社公式ページ
おすすめエリア2
街歩きも楽しい長崎のまちなかを巡る「出島・中華街・眼鏡橋コース」
このエリアは、長崎市の街中にある有名観光スポットが凝縮されています。平和公園散策の後に行くなら、20番「原爆資料館」または21番「大学病院前」の電停から「崇福寺(そうふくじ)」行の青色の線に乗って、30番「出島」の電停で降車。
出島・中華街を散策した後、31番「新地(しんち)中華街」の電停から「蛍茶屋(ほたるぢゃや)」行の緑色の線に乗り、37番「めがね橋」へ向かいましょう。
1. 出島、長崎出島ワーフ
「出島」や「長崎出島ワーフ」へ行くなら、最寄りの電停の30番「出島」で降りましょう。
「長崎出島ワーフ」は、出島の逆側を水辺の方に5分ほど歩くと見えてきます。複合商業施設の出島ワーフはベイサイドにあり、レストランやカフェが並んでいます。天気のいい日はテラスで長崎港を眺めながら、食事やカフェが楽しめます。
長崎出島ワーフ
「出島」電停から出島ワーフの反対側には、鎖国時代のオランダ貿易の拠点「出島」が電停を降りたすぐ目の前に。新地中華街も出島から徒歩4分ほどの距離にあり、歩いても近いですよ。
出島
2. 新地中華街
日本の三大中華街の1つである「新地中華街」へ。路面電車で行くなら、31番「新地中華街」の電停で降りましょう。出島からも近いので、出島を見学後に新地中華街へ向かう場合、歩いて行くか、「出島」の電停から1つ先の「新地中華街」まで行って、降りると橋の先に中華街の門が見えます。
ここでは、長崎名物ちゃんぽんや皿うどん、長崎の名物料理の食べ歩きが楽しめます。
新地中華街
3. 眼鏡橋、ハートストーン、カフェ
中華街散策の後は、31番「新地中華街」の電停から「蛍茶屋」行の緑色の線に乗りましょう。3つ先の37番「めがね橋」の電停で降りて、日本三名橋の1つにも数えられる「眼鏡橋」へ。
「めがね橋」の電停から見えるファミリーマートがある角を右に曲がると、電停から徒歩2分ほどで中島川と呼ばれる川に出ます。たくさん橋がかかっていますが、前田園本店 栄西庵のすぐ目の前にある「袋橋」からの眺めが絶景です。
眼鏡橋
- 住所
- 長崎県長崎市魚の町と諏訪町の間
- 詳細
- 長崎市公式ページ
袋橋、眼鏡橋の奥に魚市橋(うおいちばし)という橋がありますが、そこから階段で川沿いの石畳に下りると、女性の心をくすぐるフォトスポットが。長崎の街にはいくつものハートストーンが隠されていますが、ここのハートストーンは特に有名です。ぜひ探してみてくださいね。よく若い女性たちが写真を撮っているので、すぐに見つかると思いますよ。
この中島川周辺はおしゃれなカフェや土産屋が集まっているので、散策がてらお店巡りも楽しめます。
おすすめエリア3
長崎土産を探すならここ。異国情緒の雰囲気が漂う「旧外国人居留地コース」
眼鏡橋周辺散策の後は、旧外国人居留地エリアへ。長崎随一の観光名所「グラバー園」があるエリアです。
37番「めがね橋」の電停から緑色の線で「石橋」行に乗ります。50番「大浦天主堂」の電停で降りてもOKですが、おすすめは51番「石橋」の電停で降りてグラバー園へ向かう裏口コースです。
1. グラバースカイロード
終点の51番「石橋」の電停で降りて、すぐ先の方に見える深堀精肉店(カウベル深堀)とシマダ果実店がある方面に進み、その間の通りを右に曲がって進むと、電停から徒歩2分ほどで「グラバースカイロード」という斜行エレベーターが見えてきます。
これを利用して5階まで昇り、降りましょう。その高さからは、こんな長崎の美しい景観が見えますよ。
グラバー園の入口まで行くには、先の垂直エレベータに乗り換えます。この辺りは夜もライトアップされるので、時間に余裕があれば昼だけでなく夜も訪れてみてください。
グラバースカイロード
2. グラバー園
垂直エレベータで昇るとグラバースカイロードの展望台があり、そこからの夜景も格別です。展望台から少し進むと「グラバー園」の第2ゲートがあるので、そこからグラバー園の中へ入りましょう。
グラバー園
- 住所
- 長崎県長崎市南山手町8-1
- 開園時間
- 8:00〜18:00(最終入園受付は20分前)
※イベント開催時などには夜間開園あり。詳細は公式ページでご確認ください。
- 定休日
- 無休
- 入園料
- 大人620円、高校生310円、小・中学生180円
- チケット
- グラバー園 入園Eチケットの予約はこちら【楽天ポイントが貯まる・使える】
- 詳細
- グラバー園公式ページ
3. 大浦天主堂
グラバー園を散策した後、グラバー通りの坂を下ると見えてくるのが、世界遺産であり国宝でもある「大浦天主堂」です。白亜の美しい外観やマリア像がお目見えします。
大浦天主堂
- 住所
- 長崎県長崎市南山手町5-3
- 拝観時間
- 8:00~18:00(最終入館は17:30まで)
- 休館日
- 無休(教会行事により休館する場合あり)
- 拝観料
- 一般1,000円、中高生400円、小学生300円
- 詳細
- 大浦天主堂公式ページ
- 拝観上の注意
- 建物内は撮影禁止。撮影には特別許可の申請が必要です。
4. グラバー通り
グラバー園出口から始まり大浦天主堂の前を通って長崎名物のカステラを販売する和泉屋や文明堂、オランダ物産館がある方面に続く土産屋が建ち並ぶ通りが「グラバー通り」です。
400メートルほどのこの通りは長崎の特産品が一堂に集まるお土産ストリートなので、長崎らしいお土産を探すならここがおすすめ。
5. オランダ坂
グラバー通りを下って、50番「大浦天主堂」の電停まで来たら、そのまま横断歩道を渡り、オランダ通りに入ります。左手にホテルニュータンダが見えたら、手前の石畳の坂を右手に登りましょう。「大浦天主堂」電停から、徒歩6分ほどで石畳の美しい坂道「オランダ坂」に到着します。
旧居留地時代に長崎の人々は東洋人以外を「オランダさん」と呼んでいたため、この居留地にある坂を「オランダさんが通る坂」という意味でオランダ坂と名付けられたと言われています。
オランダ坂
- 住所
- 長崎県長崎市東山手町
- 詳細
- 長崎県観光連盟公式ページ
オランダ坂の石柱の先に「東山手甲十三番館」があり、旧外国人居留地の代表的な建物の中にカフェがあります。坂道や散策に疲れたら、カフェで異国情緒を感じながらゆっくりしていきましょう。
帰りは「大浦天主堂」の電停まで戻るか、オランダ坂入口にあるホテルニュータンダを越えると、大浦海岸通りに出ます。右に行くと47番「メディカルセンター」、左に行くと48番「大浦海岸通」の電停があるので、緑色の線に乗り、目的地に合わせて乗り換えてくださいね。
東山手甲十三番館
路面電車とさるいて回る、長崎の1日観光プランはいかがでしたか? 長崎にはまだまだたくさんの観光スポットや夜景スポット、季節のイベントやお祭りもあります。ぜひ何度も訪れて、景観と共に長崎の街を堪能してくださいね。
取材・写真・文/Miyaks