長崎〜武雄温泉(佐賀)間を走る、西九州新幹線「かもめ」が開業し、西九州エリアへアクセスしやすくなりました。西九州新幹線「かもめ」、観光列車「ふたつ星4047(よんまるよんなな)」を利用して、1泊2日で長崎と佐賀の温泉、グルメを堪能するモデルコースをご紹介します。
目次
Day1
- ・旅のはじまりは新大村駅から
- ・老舗料亭「坂本屋」で長崎の卓袱料理に舌鼓
- ・「長崎街道かもめ市場」でお土産を購入
- ・観光列車「ふたつ星4047」で武雄温泉へ
- ・終着駅「武雄温泉駅」と「武雄温泉楼門」
- ・嬉野温泉「和多屋別荘」で美肌の湯につかる
Day2
西九州新幹線が開業!長崎と佐賀の観光がより便利に
西九州新幹線は、九州新幹線西九州ルートのうち、2022年9月23日に開業した長崎〜武雄温泉(佐賀)間の路線名称のこと。西九州新幹線の停車駅は、長崎県「長崎」「諫早(いさはや)」「新大村」、佐賀県「嬉野(うれしの)温泉」「武雄(たけお)温泉」の5駅。長崎〜武雄温泉間を最速23分で結びます。開業を機に、長崎県・佐賀県へのアクセスが良くなり、列車旅が注目されています。
九州らしいオンリーワンの車両をコンセプトに、JR九州のコーポレートカラーである赤を配色したデザインの「かもめ」。インテリアデザインはクラシックとモダンが組み合わされた、懐かしくて新しい空間を表現しています。
Day1
九州各所からのアクセス
今回の旅のスタートは長崎空港。そこから西九州新幹線に乗車するには、新大村駅が最寄り駅です。空港からの距離は約5kmで、長崎空港〜新大村駅間を乗合タクシー「おおむらかもめライナー」が運行しています。片道500円、運行時刻30分前までのインターネット予約が必要です。
福岡空港経由の場合は、福岡空港から博多駅まで福岡市地下鉄空港線に乗り、博多駅から武雄温泉駅までは特急「リレーかもめ」へ。その後、武雄温泉駅で西九州新幹線「かもめ」に接続します。
旅のはじまりは新大村駅から
長崎空港から約5kmの位置にある新大村駅。10:16発の「かもめ13号」に乗り長崎駅へと向かいます。西九州新幹線が開業するまで長崎空港〜長崎駅は約1時間かかっていましたが、西九州新幹線に乗ればわずか15分で到着します。
かもめの自由席は、明るい気持ちになれるようなイエローの座席。旅のはじまりを盛り上げてくれます。
老舗料亭「坂本屋」で長崎の郷土料理・卓袱料理に舌鼓
長崎駅に到着後、長崎の郷土料理・卓袱料理(しっぽくりょうり)を食べに、明治27年創業の老舗料亭「坂本屋」へ向かいます。
卓袱料理は、朱塗りの円卓を囲み、大皿に盛られたコース料理を直箸で取り分けていただく料理のこと。鎖国時代、海外に唯一の扉を開いていた長崎に来航した唐人により伝えられたのがきっかけで、和風、中華風、スペイン、ポルトガル風のアレンジを加えた長崎独自の食文化です。
始まりに、お鰭(おひれ=鯛の身の入ったお吸い物)を食べる以外は、食べ方の順番などはなく、円卓に並んだ料理を好きなように自分の箸で小皿に取って食べます。
メインは、東坡煮(とうばに)。豚の角煮ですが、中国の著名な詩人・蘇東坡( そとうば )が好んだことからこの名で呼ばれているのだそう。坂本屋では、豚肉を長時間茹でて脂を抜いた後に特製のタレに漬け込んでおり、そのひと手間のおかげで煮崩れせず、口の中でとろけるのだそう。
料亭御宿 坂本屋
- 住所
- 長崎県長崎市金屋町2-13
- 卓袱料理
- 昼(11:30~13:30入店):おひとり様3,960円~
夜(17:30~19:30入店):おひとり様11,000円~
※2名様より予約可。 - アクセス
- 長崎駅から車で約5分、徒歩で約15分
- 公式サイト
- 料亭御宿 坂本屋
「長崎街道かもめ市場」でお土産を購入
長崎駅へと戻り、次の列車に乗るまでの間に長崎駅の改札前にある「長崎街道かもめ市場」でお土産を買いましょう。長崎を代表するお土産店や飲食店を中心に、特色ある約50店舗が入ります。
人気商品は、新幹線「かもめ」の限定グッズ。文房具にハンカチなどの身の回り品のほか、長崎名物のカステラもあります。
列車旅のお供になるグルメも良いですね。その場で揚げてもらえる「長崎かんぼこ 喜味冨」や個包装された長崎カステラは、車内での軽食用に購入する人も多いそうです。
時間に少し余裕がある場合は、地酒と料理が楽しめる「かもめ横丁」や、ちゃんぽんや五島うどんの食べられるレストランゾーンがおすすめ。1955年創業の長崎の老舗喫茶「サン ウミノ」のテイクアウト専門店も入っています。
長崎街道かもめ市場
- 場所
- 長崎駅改札前
- 営業時間
- ご当地レストラン:11:00~22:30
かもめ横丁:11:00~23:00
土産物産・実演:8:30~20:00
※営業時間と定休日は変更の可能性あり。 - 詳細
- 長崎街道かもめ市場(ながさき旅ネット)
観光列車「ふたつ星4047」で武雄温泉へ
午後からは観光列車「ふたつ星4047」に乗って、海の車窓を楽しみながら武雄温泉へと向かいます。
午前・午後の2便運行で、午前便は10:22に武雄温泉発の「有明海コース」を、午後便は14:53に長崎発の「大村湾コース」を走ります。午前と午後でルートが変わり、停車駅や車窓からの景色も異なるので、旅の目的地にあわせて乗車便の予定を立てましょう。
ふたつ星4047は、金~月曜日および祝日を中心に各ルートで運行しています。運行日は公式サイトを確認しましょう。
今回乗車したのは「大村湾コース」。波静かで琴の海と称される大村湾沿いを走ります。車窓からの景色は、まるで海の上を進んでいるようでした。
3両編成で全車指定席、2号車に共用スペースや販売カウンターを配置した「ラウンジ40」を連結しています。
座席はリクライニングシート、窓方向を向いた2人掛けのソファ席、3〜4人で利用できるBOX席があります(ソファ席・BOX席は窓口のみで販売)。1号車はモダンな赤色のシート、3号車はレトロな茶色のシートです。
2両目の「ラウンジ40」には、ゆったりとくつろげるソファ席や窓側に向いたカウンター席があり、誰でも自由に利用できます。
車内販売では、沿線の“おいしいもの”も取り揃えています。ぜひ食して欲しいのが「長崎スフレ」。長崎市内にある洋菓子店「ママン・ガトー」でしか食べることのできない人気メニューを車内販売用にアレンジしています。大村湾コースのみの予約販売(数量限定)で、車内のオーブンで焼き上げるので、ふわふわの出来立てを味わえます。口の中でとろける食感!車内で本格的なスフレが食べられるなんて感動です。
他にも「ふたつ星うれしの冷茶」や「ふたつ星伊木力みかんゼリー」など、沿線ゆかりのおいしいものがたくさんあるので、景色を見ながらのんびりと楽しみましょう。
オリジナルのグッズの販売もあり、風呂敷やタオル、マスキングテープなどをお土産に持ち帰れます。
大村湾を一望できる「千綿(ちわた)駅」に停車
列車はレトロな駅舎が特徴的な「千綿駅」で約10分間停車します。停車中は風情ある駅舎や「琴の海」とも称される大村湾をバックに写真撮影を楽しみます。
「ふたつ星4047」と大村湾を1枚に入れた写真を撮るのがおすすめです。
出発時間になると、地元の人が列車に向かって手を振ってくれて、温かい気持ちになりながら出発します。
車内イベントの「波佐見焼(はさみやき)転写体験」に挑戦
車内では有料の体験もあり、地元・波佐見焼の歴史や生産方法を学びながら「波佐見焼転写体験」ができます(当日車内で受付・定員10名)。波佐見焼の白いお皿に、JR九州のオリジナルイラストが描かれた転写シールを貼っていき、水で濡らしながら転写すれば完成。旅の思い出にもおすすめです。
体験中にハウステンボスを通過。ついつい手元に目が行ってしまいますが、移り変わる車窓もお見逃しなく。
ふたつ星4047
- 運行日
- 金、土、日、月曜日および祝日を中心に各ルート1日1本
※運行日は公式サイトを参照 - 運行時刻
- 有明海コース(長崎本線経由):武雄温泉(10:22発)→長崎(13:15着)
大村湾コース(大村線経由):長崎(14:53発)→武雄温泉(17:45着) - 主な値段
- 有明海コース(武雄温泉→長崎):4,180円
大村湾コース(長崎→武雄温泉):4,500円
※全車指定席。乗車日によって金額が異なります。 - 詳細・予約
- JR九州「ふたつ星4047」
思い出を振り返りながら終着駅「武雄温泉駅」へ
楽しかった観光列車の旅も終着駅へ。17:45に佐賀県の武雄温泉駅に到着します。
「温泉街の歴史と新しさを感じる駅」をコンセプトに設計され、佐賀県産木材を活用した温かみのある駅です。コンコースの格天井には、「隠して見せる」をコンセプトにした武雄温泉楼門にある4つの干支のパネルが分散されて配置されています。天井を見ながら探してみてくださいね。
改札の前にはお土産屋さんを兼ねた観光案内所やカフェもあり、乗り換え時間も有意義に楽しめます。
駅から徒歩8分の場所にある「武雄温泉楼門」
1300年の歴史がある武雄温泉。そのシンボルといえば、駅から徒歩約8分の場所にある「武雄温泉楼門(ろうもん)」です。朱色と白が鮮やかで竜宮城を連想させます。天平式楼門と呼ばれ、釘を1本も使用していない独創的な建築物で、国の重要文化財に指定されています。
設計は東京駅などを手掛けた辰野金吾。2階天井の四隅には、ねずみ、うさぎ、うま、とりの彫り絵があり、東京駅の丸の内駅舎の天井と合わせることで十二支が完成するのだそう。辰野氏の遊び心を感じます。
楼門の奥には大衆浴場があり、ノスタルジックな雰囲気の中で入浴を楽しむことができます。
武雄温泉楼門
- 住所
- 佐賀県武雄市武雄町武雄7425
- 見学会時間
- ボランティアガイド案内付き:9:00~10:00(受付9:30まで)
- 見学会料金
- 大人500円、子ども250円(町内宿泊者は大人400円、子ども150円)
- 見学会実施日
- 2024年3月31日までの毎週火曜日を除く毎日
- 公式サイト
- 武雄温泉楼門(武雄市観光協会)
再び西九州新幹線で嬉野温泉へ。「和多屋別荘」で美肌の湯につかる
武雄温泉駅から西九州新幹線「かもめ」に乗り、嬉野温泉駅へ向かいます。
佐賀県の嬉野温泉は、江戸時代から宿場町として人々に親しまれてきました。なめらかな湯ざわりが特徴で、日本三大美肌の湯の1つと称されています。日帰り温泉も多く、宿泊の時間が取れない場合は立ち寄り湯の利用もおすすめです。
今回は、嬉野川をまたぐ広大で豊かな2万坪の広々とした敷地内に、複数の宿泊棟を有する「和多屋別荘」に宿泊します。非日常の圧倒的な空間の中、癒やしの体験が待っています。
御影殿(大浴場)、浮世風呂(露天)、貸切風呂、内湯には全て自家源泉から直接温泉を注いでおり、嬉野の美肌の湯を存分に楽しめます。
夕食は、地元の「瀬頭酒造」と「きたの茶園」とコラボレーションした日本料理店「利休」でいただきます。地元農園の野菜、玄界灘や唐津産の魚介類など、佐賀県産の食材を使用した和食と日本酒・有機栽培茶とのマリアージュを楽しみます。
食後は館内のバー「副島園 the BAR」で今日の余韻に浸りましょう。無農薬、減農薬栽培に取り組む嬉野の茶農家「副島園」が運営するバーで、嬉野茶はもちろん、お茶を使用したカクテルやスイーツを提供します。
和多屋別荘
- 住所
- 佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙738
- 総部屋数
- 102室
- アクセス
- 嬉野温泉駅から車で約5分、長崎自動車道「嬉野」ICより約5分
Day2
嬉野温泉で「ティーツーリズム」を楽しむ
ゆったりと休んだ翌日は、気分にあわせて目的地を選んでみてはいかがでしょうか。嬉野温泉で過ごす場合は、ティーツーリズムへの参加がおすすめ。
嬉野で生まれたティーツーリズムは、「一杯のお茶を求めて旅が計画される」というコンセプトのもと、茶師(茶農家)と対面し、栽培へのこだわりや品種の特徴などをプレゼンテーションしてもらいながら3杯のお茶と、2種の菓子を味わう「茶話(さわ)」を楽しめます。
他にもサイクリングしながらお茶を楽しむ「茶輪(ちゃりん)」、茶畑へのアテンドや料理とのティーペアリングなどを楽しむ「茶泊(ちゃはく)」など、お茶にまつわる多彩なメニューが揃います。
嬉野市内には茶畑に設けられた3つの「茶空間」(天茶台・杜の茶室・茶塔)が点在。絶景空間で茶師が淹れるお茶を味わう体験は、贅沢なことこの上なしです。
嬉野には、茶・温泉・肥前吉田焼と3つの伝統文化が根付いています。日本の地方都市において、この3つの文化が共存する場所はなく、唯一無二の魅力を持つ土地ともいわれています。茶器にも注目しながら、ティーツーリズムを楽しんでみてください。
ティーツーリズム
嬉野から足を延ばして西九州新幹線で諫早へ
西九州新幹線に乗り、嬉野温泉駅から諫早駅まで向かって島原半島・雲仙市まで足を延ばしてみるのもおすすめです。
諫早駅〜小浜温泉・雲仙温泉エリアには、定額タクシーを利用すると楽にアクセスできます。
定額タクシー
- 料金
- 雲仙温泉エリア:片道11,000円/1台
小浜温泉エリア:片道8,000円/1台 - 詳細・予約
- 定額タクシープラン(雲仙観光局)
雲仙の農園レストラン「Locanda del Campo」で海と山を感じるランチ
雲仙市の過ごし方でおすすめしたいのが、海と山を眺めながらの絶景ランチ。雲仙普賢岳の麓・千々石町の畑の中にひっそりと佇む「Locanda del Campo(ロカンダ・デル・カンポ)」で、地元食材を使ったイタリア料理を味わえます。
目の前の畑で自家栽培した野菜も料理に登場し、素材の旨味を感じます。温暖な気候と肥沃な火山灰土が広がる大地で育てられた野菜はみずみずしく、濃厚で自然な甘さになるのだそう。
ランチは4皿か8皿のコースから選べます。今回はアンティパスト4皿に、パスタとリゾット、メインとデザートの8皿のコースを堪能しました。
諫早四月大根と、島原半島で罠にかかった猪を使ったトルタや、雲仙こぶ高菜を使ったタリオリーニなど、雲仙で長く栽培され続けている伝統野菜とジビエを合わせた料理に、お二人がこの土地を愛しているのが伝わってきます。
Locanda del Campo
- 住所
- 長崎県雲仙市千々石町己333
- 営業時間
- ランチ11:30〜13:00/ディナー17:30〜19:00
- 電話・予約
- 0957-47-6270
- 公式サイト
- Locanda del Campo
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- 住所
- 長崎県雲仙市小浜町北本町905-70
- 営業時間
- 4~10月:10:00~19:00(蒸し釜 最終受付18:00、終了18:30)
11~3月:10:00~18:00(蒸し釜 最終受付17:00、終了17:30) - 定休日
- 毎月第3水曜日、1月4・5日、その他荒天時や源泉清掃日など
- 関連サイト
- 小浜温泉旅館組合
日本一海に近いといわれる「大三東駅」
諫早駅から島原鉄道に乗り換えれば、約1時間で絶景駅で知られる「大三東(おおみさき)駅」に行くこともできます。
屋根も柵もない開放的なホームにポツンと、ベンチと駅名標がある様子はまるで映画のようです。干満の差が日本一大きく、満潮時には一面に広がる有明海を、干潮時には遠浅の干潟を眺めることができます。
大三東駅
- 住所
- 長崎県島原市有明町大三東丙135-2
- アクセス
- 諫早駅から島原鉄道で約1時間
- 注意事項
- 車両撮影・車での来訪について
- 公式サイト
- 島原鉄道
新たな発見がある西九州へ
車での観光がメインだった西九州エリアですが、西九州新幹線の開業で、より便利に快適に観光を楽しめるようになりました。「ふたつ星4047」と組み合わせれば、さらに鉄道旅が充実すること間違いなし。道中も楽しみながら、長崎・佐賀の旅を楽しんでくださいね。
取材・文・撮影/加藤あやな 取材協力:九州旅客鉄道株式会社