博多と由布院を結ぶJR九州の観光列車、特急「ゆふいんの森」。博多~由布院間を2往復、博多~別府間を1往復、毎日3往復運行しています。温泉リゾート地・由布院へと向かう道中を、車窓から見える自然豊かな風景がいっそう盛り上げてくれます。さらに、車内では沿線のグルメやオリジナルグッズの販売、記念撮影など楽しみが盛りだくさん。
1989年3月の運行開始から35周年を迎えた観光列車の草分け的存在、「ゆふいんの森」の魅力と楽しみ方を詳しくご案内します。
乗った瞬間からリゾート気分! 由布院への期待が高まる車内デザイン
まずは、乗った瞬間からリゾート気分に浸れる内装からご紹介します。
高い位置から楽しむダイナミックな車窓
グリーンにゴールドが美しく調和した上品な車体。「ゆふいんの森」は、窓と座席を高い位置に設けた「ハイデッカー構造」のため、高い視点からのダイナミックな風景を楽しめるのが魅力です。
クラシカルで上品なインテリア
内装は、木をふんだんに使い、照明やシートはクラシカルな雰囲気。まるで高級ホテルでくつろぐように、列車での旅を特別な時間に演出してくれます。
「ゆふいんの森」の車両は、1989年の運行開始時からあるⅠ世(ゆふいんの森3・4号で運行)と、豪華列車「ななつ星in九州」や「或る列車」なども手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治さんがデザインしたⅢ世(同1・2・5・6号で運行)の2タイプあります。
Ⅲ世の4号車はデザインが異なり、森の中にいるような気分に浸れます。
ボックスシートや展望シートも! 多彩な座席タイプ
基本は横2席×2列の座席配置ですが、大型テーブル付きのボックスシートもあります。こちらは、3名以上で利用可能。車窓の風景を眺めながら、家族や友人と語らう時間は、お互いの距離をいっそう縮めてくれそうです。
そして、最前部と最後部には展望席も。180℃広がる大パノラマは迫力満点! これぞ列車旅といった風情が味わえます。1車両に8席だけ(最前部4席・最後部4席)の人気席なのでご予約はお早めに。
見どころ盛りだくさん! 車窓からの景色
列車での旅の楽しみは、なんといっても車窓から広がる絶景。雄大な山々や線路に沿うように流れる玖珠(くす)川の景色、のどかな田園風景が旅情を盛り上げてくれます。
博多から由布院・別府へ向かう場合、進行方向右手の方が見どころが多いので、写真を撮りたい方は右側の座席(C・D列)を予約しておくといいでしょう。見どころは車内アナウンスで紹介してくれるので、見逃す心配はありません。
【天ケ瀬駅】 2段落としの滝「慈恩の滝」
博多から由布院に向かう場合、天ケ瀬駅を出たら右側(D列側)に注目! 道路の奥に2段落としの滝、「慈恩(じおん)の滝」が見えてきます。付近には、趣あふれる温泉や温泉旅館もたくさんあるので、時間に余裕があれば、途中下車して観光するのもおすすめです。
【豊後森駅】 昭和初期に建てられたSLの車庫「旧豊後森機関庫」
豊後森(ぶんごもり)駅のすぐ横、博多から向かう場合は右手(D列側)に「旧豊後森(ぶんごもり)機関庫」が。
この地は、かつて久大線の重要な中継ポイントとして栄え、機関車の車庫が置かれていました。やがて蒸気機関車が姿を消し、この車庫も廃止されましたが、現在でも、機関車を車庫に導く転車台、扇形の機関庫が残されていて、車内から見ることができます。国の登録有形文化財、近代化産業遺産にも認定されています。
【由布院駅】 由布院に近づくとシンボルの「由布岳」がお出迎え
由布院駅に近づくと、博多から向かう場合は左(A列側)に「由布岳」が見えてきます。標高1,583m、東峰と西峰の2つの頂を持ち、「豊後(ぶんご)富士」とも呼ばれる由布岳。由布院到着を知らせてくれているようで、気持ちが盛り上がります。
とっておきの旅を演出してくれる充実の車内サービス
大パノラマが楽しめるサロンスペース
Ⅰ世(ゆふいんの森3・4号)だけにあるサロンスペースは、より広い窓で風景を楽しめます。木のぬくもりを感じる空間が、外に広がる緑豊かな山々やのどかな田園風景を引き立ててくれます。
サロンスペースでは、豊後森~由布院駅間で客室乗務員による由布院の観光案内が行われます。おすすめのお店や温泉情報などを聞いていると、これから訪れる由布院への期待が高まります。
オリジナルパネルで記念撮影はいかが?
車内では、日付が入った「ゆふいんの森」オリジナルパネルを借りて撮影ができます。ぜひ、旅の思い出にパネルを持って写真を撮りましょう。
そして、お子さまは制服での記念撮影もおすすめ。制帽と制服で車掌になるもよし、スカーフを巻いて客室乗務員になるもよし。「ゆふいんの森」だけの、忘れられない1枚を残せますよ!
沿線地域のおいしいものを取りそろえた車内販売
ビュッフェ(車内の売店)では、沿線地域の食材を使ったグルメやドリンクを販売しています。
行列ができる人気スイーツが買える!
福岡県うきは市にあるフルーツサンドショップ「うきはんと」がつくる一品。うきは市で採れた旬のフルーツとうきは市のベーカリーで焼いたしっとりパン、上質なふわとろクリームを使用したフルーツサンドです。
※販売列車限定、1日数量限定となります。
沿線の素材や列車らしさにこだわったオリジナル弁当
「ゆふいんの森」では沿線の素材や列車らしさにこだわった、車内オリジナルのお弁当を3種類販売しています。乗った人しか味わえないお弁当が、旅をより特別なものにしてくれます。
こちらは「ゆふいんの森おおいた和牛弁当」(3,000円/事前予約制)。おおいた豊後牛の中でも肉質4等級以上の「おおいた和牛」を使用しており、ローストビーフ、しぐれ煮、厚切り肉の3種類をぜいたくに味わうことができます。
「ゆふいんの森弁当」は、きのこ入りの炊き込みご飯と由布院の野菜を楽しめる和をモチーフにしたお弁当(1,500円/事前予約制)。「ゆふいんわっぱ」は、お手軽サイズの4種類のおにぎりが入った彩り豊かなお弁当です(1,000円/事前予約制)。
※お弁当の事前予約は「ゆふいんの森 公式サイト」にてご確認ください
沿線の地ビールやソフトドリンクが旅を華やかに演出
Ⅰ世(ゆふいんの森3・4号)にはビールサーバーを搭載していて、なんと列車内で生ビール(600円)が味わえます。
ビールサーバーを搭載していないⅢ世(ゆふいんの森1・2・5・6号)では、由布院の地ビール「ゆふいん麦酒」(700円)を販売。山々に囲まれた由布院の清涼な水で作られた地ビールは、芳醇でまろやか、爽やかな後味が残ります。
お酒を飲まないけれど気分を盛り上げたい方には、由布院の天然水でできた「ゆふいんサイダー」(300円/画像左)がおすすめ。炭酸のシュワシュワ感が爽やかな味わいです。
由布院の老舗旅館監修のレシピで作った「柚子みつスカッシュ」
「柚子みつスカッシュ」(400円)は、由布院の老舗旅館「玉の湯」内の「ティールーム ニコル」直伝のレシピで作られています。柚子の爽やかな酸味と香りが気分をリフレッシュさせてくれるドリンクです。
オリジナルグッズも充実のラインナップ
旅の思い出を彩ってくれる「ゆふいんの森」オリジナルグッズも見逃せません。客室乗務員がデザインした35周年タオル(1,200円)をはじめ、キーホルダー(750円)、アクリルキーホルダー(600円)、列車型マグネット(750円)、ラバーコースター(800円)まで、バラエティに富んだ品ぞろえ。ビュッフェ(車内の売店)で購入できます。
途中下車の旅もおすすめ! 沿線の観光名所
九州の小京都「日田」
江戸時代には徳川幕府の直轄地「天領」として栄えた大分県日田。旧家が立ち並ぶ「豆田町」は、天領だった頃の面影が感じられます。さらに、日田といえばB級グルメ「日田やきそば」が有名。鉄板でパリパリに焼いた麺の香ばしさはクセになります。街歩き、グルメ、温泉、すべてが楽しめるスポットです。
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温泉リゾート地「由布院」
豊かな自然に抱かれた温泉リゾート地「由布院」は、由布岳を望む絶景露天風呂から、昔ながらの共同湯までバリエーション豊かな温泉が楽しめます。宿泊施設も、老舗の高級温泉宿から、ペンション、オーベルジュなど、豊富にそろいます。また、美術館が点在し芸術に触れられる「芸術の街」としても有名。心も体も癒される場所です。
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日本を代表する温泉地「別府」
温泉湧出量、源泉数ともに全国1位の「別府」。毎年多くの観光客が訪れる人気の温泉地で、旅館やホテルが軒を連ねています。居酒屋や飲食店も多く、ゆっくり温泉に入った後は、夜の街に出かける楽しみも。温泉の噴気や熱泥、熱湯が噴出している“地獄”を見て回る「別府地獄めぐり」は、地球の鼓動を感じられるような迫力です。
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博多から由布院へ向かう「ゆふいんの森」での旅。雄大な景色や沿線のグルメ、限定グッズなど、目的地に着く前から楽しみがいっぱいです。移動の時間も楽しく彩ってくれる列車の旅へ、ぜひ出かけてみませんか?
ゆふいんの森 運行情報
- 料金(大人・片道)
- 博多~由布院 5,690円(乗車券+指定席特急券)
※全車指定席(乗車前に駅の窓口等で指定席券を購入のこと。列車内では購入できません。)
※チケットは1ヵ月前より発売 - チケット予約サイト
- JR九州 インターネット列車予約サービス
- 停車駅
- 博多、鳥栖、久留米、日田、天ケ瀬、豊後森、由布院、大分、別府
- 時刻表
- [下り]
1号 博多 9:17 → 由布院 11:31
3号 博多 10:11 → 由布院 12:30 → 別府 13:27
5号 博多 14:38 → 由布院 16:50
[上り]
2号 由布院 12:01 → 博多 14:19
4号 別府 14:43 → 由布院 15:56 →博多 18:10
6号 由布院 17:17 → 博多 19:28
取材・撮影・文/横田ちえ
取材協力/九州旅客鉄道株式会社