山形県の蔵王は、雄大な蔵王連峰に抱かれた山岳リゾートエリア。東北屈指の規模と歴史を誇る温泉地としても有名です。ここ数年は絶景スポットやロケーション抜群のカフェなど、話題のスポットが続々と誕生し、一層のにぎわいをみせています。
深呼吸したくなる蔵王の美しい自然を楽しむ、おすすめのモデルコースをご紹介。非日常感あふれるスローな時間を過ごしましょう。
目次
「蔵王」とは
山形県と宮城県の県境にある、蔵王連峰の雄大な自然に恵まれたエリア・蔵王。国内外から観光客が訪れていますが、多くの人はこの地に湧く「蔵王温泉」が目当て。東北有数の規模と歴史を誇る温泉リゾートとして、広く知られている場所です。蔵王温泉の湯は、泉質が似ていることから「東北の草津」とも称されています。
また、山形市中心部から車で30分ほどというアクセスの良さも魅力。東京駅から山形駅までは、JR山形新幹線を利用し、2時間25分~55分ほどで到着します。
四季折々の楽しみ方
初夏の新緑や冬の樹氷など、蔵王では季節ごとに趣のある風景を楽しめます。紅葉は、例年9月中旬頃から色づき始め、見頃を迎えるのは10月中旬頃。秋色に染まる山々をロープウェイから眺めたり、トレッキングでより間近に観察したりと、思い思いの方法で景色を楽しみましょう。
ウインターシーズンには、一層の盛り上がりをみせます。真っ白な雪に覆われたゲレンデは、スキーやスノーボードを楽しむ人で大にぎわい。
冬の絶景・樹氷も必見です。特に1月中旬から2月下旬にかけてのシーズンがピーク。ロープウェイを利用すれば、迫力の樹氷原を近くで見学することも可能です。樹氷をライトアップするイベントも毎年開催されています。
「蔵王ロープウェイ」に乗り、大自然を空中散歩
まずは、「蔵王ロープウェイ」で空中散歩を楽しみましょう。このロープウェイは、ふもとにある「蔵王山麓駅」と、中間の「樹氷高原駅」、山頂の「地蔵山頂駅」の3つを結んでいます。
蔵王山麓駅から樹氷高原駅までの所要時間は約7分、樹氷高原駅から地蔵山頂駅までは約10分。それぞれ15分間隔、3分間隔のスケジュールで運行しています。
蔵王山麓駅に着いたら、ゴンドラに乗って樹氷高原駅へ。晴れていれば雄大な蔵王連峰の緑と、空の透き通るような青の美しいグラデーションが一望可能。秋には紅葉、冬には樹氷。四季折々のドラマチックな眺望を楽しめます。
フォトジェニックな「百万人テラス」へ!
「蔵王ロープウェイ」の見どころは、ゴンドラからの景色だけではありません。大自然を満喫できるスポットが各所に点在しています。
そのひとつが、蔵王ロープウェイの中間駅・樹氷高原駅にある「百万人テラス」。広々とした高原には、絶景を見渡せるソファやビーチベッドが設置されており、どこから見ても絵になるビューポイントです。
6月から10月にかけては、樹氷高原駅から「ユートピア夏山リフト」が運行しているので、それに乗って「ユートピアテラスミニ」に行くのもおすすめ。木製のブランコが建つアート作品のような空間に、一目見た瞬間から心を奪われます。
市街地を見下ろす絶景スポット「山頂テラス」
終点・地蔵山頂駅の屋上には「山頂テラス」があります。標高1,600メートル超のデッキから見晴らす市街地は、まるでミニチュアのよう。頬をかすめる涼やかな風も気持ちよく、いつまでもここにいたくなるような心地よさを感じます。
地蔵山頂駅の周囲は、約1.8キロメートルの初心者でも気軽に挑戦できるトレッキングコース(所要時間約30分)になっています。駅から100メートルほど離れた場所に鎮座しているのは、高さ2.34メートルの「蔵王地蔵尊(ざおうじぞうそん)」です。この地蔵の建立後に蔵王山での遭難者が少なくなったことから、「災難よけ地蔵」と呼ばれるようになったのだとか。
ちなみに、別路線の「蔵王中央ロープウェイ」に乗って向かう、鳥兜山(とりかぶとやま)展望台に建つ「蔵王大黒天(ざおうだいこくてん)」、さらに、「蔵王スカイケーブル」の中央高原駅前に建つ「蔵王大権現(ざおうだいごんげん)」をあわせた3つの神様を参拝する「蔵王三大神めぐり」も人気です。気になる人は、3カ所に足を運んでみましょう。
期間限定イベント「サマーナイトクルーズ」も要チェック
蔵王ロープウェイでは、毎年8月と9月の土・日、祝日を中心に13日間限定の「サマーナイトクルージング」を開催。普段は運行しない夜の空中散歩を楽しめるとあって、毎年注目を集めているイベントです。
夜景を楽しんだり、ライトアップされた蔵王地蔵尊を参拝したりと、満天の星の下で非日常を満喫しましょう。
蔵王ロープウェイ
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉229-3
- 営業時間
- ロープウェイ山麓線(蔵王山麓駅~樹氷高原駅間)/8:30~17:00
ロープウェイ山頂線(樹氷高原駅~地蔵山頂駅間)/8:45〜16:45
※いずれも時期により変更の場合あり - 定休日
- 無休(悪天候の場合は運休)
- 運賃
- ロープウェイ山麓線/片道1,000円、ロープウェイ山頂線/片道1,800円、
夏山リフト/片道300円 - アクセス
- JR「山形」駅から車で約30分、または山交バス「蔵王温泉バスターミナル」から徒歩約10分
- 公式サイト
- 蔵王ロープウェイ
ランチは「かしぇる」で蔵王ジンギスカンを
せっかく旅行に来たなら、その土地ならではの料理を味わいたいもの。ランチタイムには、蔵王名物のジンギスカンを堪能しましょう。
昭和初期、山形では羊毛生産のために多数の羊が飼育されていました。しかし、化学繊維の普及で羊毛需要は減少。その際、羊毛農家への救済措置として羊肉料理が推奨されたことで、ジンギスカンが広まりました。
そんな背景があり、蔵王の温泉街にはジンギスカンを味わえる食堂や専門店が多くあります。そのなかのひとつ「かしぇる」は、カフェのような空間でジンギスカンを楽しめるお店。蔵王山麓駅から北へ車で約3分の距離です。
一押しは、モモと肩ロースを味わえる「ミックス」(1,900円)。焼き方は自由ですが、鍋の上に野菜をまんべんなく敷き詰め、その上に肉をのせて焼くのが蔵王温泉流なのだそう。
ほどよく焼き色がついたらひっくり返し、仕上げに鍋肌で肉をジュワッと焼いたら完成です。厚くカットされたジンギスカンは、噛むたびに旨みが口の中に充満します。生ラムを使っているため、やわらかく、臭みもまったくありません。
ジンギスカンと相性抜群のタレは、紅玉やニンニク、生姜などをブレンドしたフルーティな味わい。肉汁をたっぷり吸い込んだ野菜も絶品です。
メニューには「手打ちそば」(800円~)もラインナップ。蕎麦は山形を代表するグルメのひとつなので、ジンギスカンと蕎麦の両方をオーダーし、家族や友人とシェアするのもいいですね。
かしぇる
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉196
- 営業時間
- 11:00~14:00(L.O.13:30)、18:00~21:00(L.O.20:30)
- 定休日
- 火曜日
- アクセス
- JR「山形」駅から車で約35分、または山交バス「蔵王温泉バスターミナル」から徒歩約5分
「Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂」で温泉アイテムをゲット
温泉に入る前に立ち寄っておきたいのが「Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂(ザオウオンセン ゆたびや たかゆどう)」。「かしぇる」から車で約1分の場所にあります。
ここは、なんと日本初の温泉コーデショップ。店内には、湯桶やタオル、石鹸(せっけん)といった、湯めぐりの際にあるとうれしいアイテムがそろいます。オリジナルアイテムだけでも40種類以上という、バラエティの豊富さも魅力です。
ここでぜひ手に取ってほしいのが、「蔵王温泉湯巡りタオル」(2枚セット 1,126円)。思わず顔をうずめたくなる、ふんわりとやわらかな肌ざわりが特徴です。男女問わず使える、洗練されたデザインなのもうれしいポイント。
こちらのタオルと「蔵王温泉湯巡り手拭い」(1,126円)、「高湯堂ロゴ入り檜(ひのき)湯桶」(6,600円)の3商品は、蔵王温泉内の入浴施設で提示すると、立ち寄り入浴料が割引になります。温泉好きの人は、ぜひゲットしましょう。
蔵王温泉の白濁した湯と硫黄の香りを再現した入浴剤「蔵王白華」(5包入り 1,100円)は、お土産にぴったりのアイテムです。自宅に帰ったあとも、これを使えば蔵王の名湯に浸かっているような気分に。
館内では「こけしあーと」(4寸 1,300円)に挑戦することもできます。無地のこけしに筆ペンで絵付けする体験型のお土産で、予約なしでも参加可能です。
下書き用のノートには、絵付けのイメージとともに、旅の思い出やおすすめのスポットなどのコメントがびっしり。訪れた際には、これから来る人へ向けてメッセージを書き留めてみてください。
Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉19
- 営業時間
- 4月〜11月/9:30~12:00、13:00~17:30
12月~3月/9:30~12:00, 14:00~19:00 - 定休日
- 火曜日、水曜日
- アクセス
- JR「山形」駅から車で約35分、または山交バス「蔵王温泉バスターミナル」から徒歩約4分
- 公式サイト
- Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂
「蔵王温泉大露天風呂」で体も心もリフレッシュ
高湯堂でタオルや手ぬぐいなどを購入し、支度を整えたら、待ちに待った温泉へ。蔵王の名湯と絶景の両方を楽しみたい人にぴったりなのが、渓流沿いにある日帰り入浴施設「蔵王温泉大露天風呂」です。
ここの泉質は、「石鹸いらずの湯」とも呼ばれる強酸性の硫黄泉。乳白色のにごり湯を、ぜいたくに掛け流しで堪能できます。
自然石を組んだ湯船は、一度に200人が入れるほどの大きさ。周囲の木々から降り注ぐ木漏れ日や、川のせせらぎ、鳥のさえずりなど、自然の息吹を間近に感じられるのも、「蔵王温泉大露天風呂」の魅力です。
また、6月から10月までの期間は、日にち限定で夜営業を行っています。カンテラ(携帯式の手提げランプ)の灯りに照らされる旅情に満ちた湯に浸かれば、心身ともにリフレッシュできそうです。
蔵王温泉大露天風呂
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉853-3
- 営業時間
- 9:30~17:00(最終受付16:30)
※土・日・祝日は9:30~18:00(最終受付17:30) - 定休日
- 11月下旬~4月中旬
- 入浴料
- 大人700円、子ども400円
- アクセス
- JR「山形」駅から車で約36分、または山交バス「蔵王温泉バスターミナル」から徒歩約17分
- 公式サイト
- 蔵王温泉大露天風呂
おやつタイムは「UNITE CAFE」へ。バギーで絶景ドライブも!
温泉を堪能したあとは、ロケーションの良さが評判の「UNITE CAFE(ユニテカフェ)」でひとやすみ。「蔵王温泉大露天風呂」からは車で約5分の距離です。
店内やテラス席からは緑輝くゲレンデが一望でき、どの場所からも美しい木々を眺められます。
湯上がりに味わいたいのが、「生くるみソフト」(700円)です。すっきりとした甘みのミルクアイスに、自家製のくるみ餡をミックス。香ばしいくるみ餡に隠し味として加えられた地元店の豆腐が、風味の良さを引き出しています。
ほっと一息ついたら、敷地内にある「天空回廊」を巡ってみるのはいかがでしょう。ここは、ゲレンデの傾斜部分を利用して作られた散策コース。カフェから頂上にある展望デッキまでは階段でつながっており、その間にも2カ所の展望デッキがあります。頂上までは歩いて8分ほどと、気軽に歩ける距離です。
2023年7月からは、第3展望デッキでパンケーキを味わえる、1日2回・1組限定の天空プラン(1名3,000円)がスタート。頂上までは、なんとバギーの送迎付きです!
頂上は、蔵王を360℃見渡す絶好のロケーション。蔵王連峰を独り占めできるぜいたくなカフェタイムは、最高の旅の思い出になります。
また、「UNITE CAFE」は宿泊施設も併設。天空回廊へのバギー送迎や、デッキ席で焚火ができるオプションの付いた宿泊プランも用意されています。
UNITE CAFE
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉丈二田752-2
- 営業時間
- 10:00~16:30(L.O.16:00)
- 定休日
- 水曜
- アクセス
- JR「山形」駅から車で約35分または山交バス「蔵王温泉バスターミナル」から徒歩約11分
- 公式サイト
- UNITE CAFE
旅の2日目に楽しみたい!蔵王の人気スポット
蔵王の観光を楽しむには、2日以上の滞在がおすすめです。ご紹介したモデルコースを楽しんだ翌日には、こちらへ行ってみるのはいかがでしょうか。
神秘の沼「ドッコ沼」
「蔵王大権現」から約5分歩くと、エメラルドグリーンに輝く神秘の沼「ドッコ沼」があります。周囲は約350メートル、水深は2メートルほど。透明度の高い水面に周囲の緑が映り、幻想的です。
周囲は散策路にもなっており、休憩にぴったりなベンチや、鳴らすと健康になるといわれている「健康の鐘」など見どころも多数。天へと高く伸びるブナ林や、可憐な野草など森の豊かな色彩に癒やされます。
もちろん、秋の紅葉も圧巻。ため息が出るほどに美しい秋の「ドッコ沼」での森林浴は、とびきりのリフレッシュになりそうです。
ドッコ沼
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉
- アクセス
- 蔵王スカイケーブル「中央高原」駅から徒歩約5分、または蔵王中央ロープウェイ「鳥兜」駅から徒歩約15分
蔵王の魅力を再発見できる「蔵王ブルワリー&クラングダイニング」
蔵王温泉の玄関口に建つ「蔵王ブルワリー&クラングダイニング」は、山形市初のクラフトビール醸造所兼ブルワリーレストラン。創業者が「蔵王の魅力を再発見できる場所にしたい」という想いを込めて、2022年3月にオープンした施設です。
ビールのおいしさを引き出す仕込み水には、蔵王連峰の湧き水を使用。樹氷をイメージした真っ白なビールや、山形を代表するフルーツ・さくらんぼを使ったビールなど、土地の魅力を最大限に引き出すクラフトビールを醸造・販売しています。
最近では、観光客だけでなく地元の人も多く訪れるそう。閉店間際でも客足が途絶えない様子から、地域に親しまれていることと、確かな味の良さを感じられます。
こちらでぜひ試してほしいのが、定番のクラフトビールを味わえる「クラフトビール4種飲み比べ」(1,200円)です。
テイスティングできるのは、すっきりとした甘みの「SNOW MONSTER(スノーモンスター)」、さくらんぼの香りが広がる「YAMAGATAさくらんぼALE(ヤマガタサクランボエール)」、芳醇な味わいの「MATSUNOMORI ALE~Re-fresh~(マツノモリエール リフレッシュ)」、ホップの苦味がきいた「ZAO CLASSIC IPA(ザオウ クラシック アイピーエー)」の4種類。気に入ったクラフトビールは、お土産にゲットしましょう。
地元食材をふんだんに使った料理も楽しむことができます。名物は、蔵王山をイメージした「蔵王Crang Pizza(クラングピッツァ)」(1,580円)。もっちりとした生地の上には、地元産の新鮮野菜がたっぷりのせられています。塩気がきいていて、ビールが進みそう。
ほかにも、ピザやスペアリブ、カレーなど、ビールに合うよう作られたメニューが豊富。スタッフがおすすめのペアリングも教えてくれます。
蔵王ブルワリー&クラングダイニング
- 住所
- 山形県山形市蔵王上野字南坂1096-18
- 営業時間
- 10:30~16:30(L.O.16:00)
※土・日・祝日は10:30~17:00(L.O.16:30) - 定休日
- 水曜日
- アクセス
- JR「山形」駅から車で約25分、または山交バス「蔵王二小前」バス停から徒歩約5分
- 公式サイト
- 蔵王ブルワリー&クラングダイニング
絶景に温泉、グルメなど、旅に欠かせないポイントが盛りだくさんの蔵王。なにより、どのスポットも癒やし要素が満点で、大人のヒーリング旅に最適です。
蔵王には、老舗旅館から気軽に宿泊できるロッジやコテージまで、多彩なタイプの宿がそろっています。スケジュールや好みに合わせて宿を選んだら、日々の喧噪から離れ、蔵王の自然にじっくりふれてみてはいかがでしょうか。
取材・文/菅原 聡子 撮影/株式会社Harty 川島 啓司、澤田 千春