山形県と宮城県の県境に位置する蔵王連峰。山形県側の麓に広がるのが開湯1900年と伝えられる名湯・蔵王温泉です。硫黄の香りと湯けむり漂う温泉街は、昭和レトロな商店や宿屋が建ち並ぶノスタルジックな雰囲気。それでいて、モダンなカフェや洗練されたデザインのみやげ物店などもあり、街には新しい風が吹き込んでいます。
せっかく蔵王温泉を訪れたら蔵王連峰の大自然と温泉の両方を欲張りに楽しみましょう。今回は、ロープウェイに乗って空から蔵王の豊かな自然を楽しみ、そして温泉街でおいしいもの、素敵なみやげをチェックしながらそぞろ歩きをする旅プランをご紹介します。
ロープウェイに乗車し、空中から蔵王の山並みを楽しむ
蔵王温泉へのアクセス
東京から蔵王温泉へ電車を利用する場合は、まず「山形」駅まで新幹線で約2時間30分、そこから山交バス蔵王温泉行きに乗車し、約40分で到着します。車なら東京からは約6時間30分ほどかかります。温泉街は約1kmの範囲に比較的コンパクトにまとまっているので、街歩きを楽しみつつ観光していきましょう。
蔵王温泉にはロープウェイの駅が複数あります。今回は「蔵王中央ロープウェイ温泉駅」からゆったり101人乗りの大型ゴンドラに乗車。空中散歩をしながら鳥兜山を目指します。空から眺めると遠く県境まで続く山並みの雄大さに驚かされるはず。特に例年10月からの紅葉の季節には、山あいから温泉街にかけて徐々に木々が色づく様子を楽しめますよ。
なお、冬の蔵王温泉の代名詞といえる自然現象“樹氷”を見たいなら「蔵王ロープウェイ山麓駅」から樹氷原を目指して。利用するロープウェイを事前にチェックして、季節によって変化する蔵王の魅力をたっぷり楽しんでくださいね。
「蔵王中央ロープウェイ」で鳥兜山山頂へ
まずは温泉街のほぼ中央にある蔵王中央ロープウェイ温泉駅へ。チケットを購入してここからゴンドラに乗りましょう。温泉駅から鳥兜山山頂付近の鳥兜駅まで、20分間隔でゴンドラが出発しています。
ゴンドラは101人乗りの超大型(現在は人数制限あり)。およそ7分30秒、延長距離1,787m、高低差524mの空の旅を楽しみましょう。専用ケージに入れればペットも乗車可。旅行前に専用ケージの大きさといった利用条件を確認しておくと安心です。
ゴンドラの中はほぼ全面窓になっており、見晴らし抜群。眼下には蔵王温泉街が広がります。
天気に恵まれれば遠く月山(がっさん)や鳥海山(ちょうかいさん)、飯豊連峰(いいでれんぽう)と県境の山々まで見渡すことができます。
蔵王中央ロープウェイ
- 住所
- 山形市蔵王温泉940-1
- 営業時間
- 8:30~17:00
※11月~12月16日は8:30~16:00 - 定休日
- 5月、11月に整備による運休あり
- 料金
- 大人往復1,500円、小学生以下往復750円(2022年12月1日から大人往復1,800円、小学生以下往復900円)
※幼児は大人1人につき1名無料 - 詳細
- 蔵王中央ロープウェイ
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約5分
「鳥兜山展望台」で温泉街を見晴らす
約7分30秒の空の旅を終え、鳥兜駅に到着。鳥兜駅周辺はブナ林といった広葉樹林が多く、初心者でも気軽に歩ける散策路が整備されています。
鳥兜山展望台は駅のそばにある標高1,387mの展望台。蔵王の温泉街や周囲の山々を大パノラマで見渡すことができる絶景スポットです。
絶景「ドッコ沼」周囲をトレッキング
鳥兜駅周辺には美しい湖沼群が点在しています。中でも見どころは「ドッコ沼」。鳥兜駅から中央第1リフトで100mほど下るとすぐ左手にある沼です。
中央第1リフト(夏季)
- 住所
- 山形市蔵王温泉中央高原
- 運転期間
- 6月下旬~10月下旬 ※冬季はスキー場のリフトとして運行
- 営業時間
- 9:00~16:30
- 料金
- 大人往復500円、4歳~小学生往復250円(来季より大人往復700円、4歳~小学生往復350円)
- 詳細
- 蔵王中央ロープウェイ・蔵王スカイケーブル
- アクセス
- 蔵王中央ロープウェイ鳥兜駅から徒歩約1分
ドッコ沼はエメラルドグリーンに輝く透き通った沼。仏具の独鈷(とっこ)に似ているので独鈷沼といわれるようになったのだとか。周囲は約350m、水深約2mで奥に目をやるほど湖面が神秘的な緑色に輝いています。
ドッコ沼周囲は整備され初心者のトレッキングにぴったり。ベンチも用意されているので、美しい沼を眺めながらひと休みできますよ。グリーンシーズンの美しさはもちろん秋のドッコ沼は必見。10月初めになると、温泉街よりもひと足早くドッコ沼周囲の木々は色付き始め、エメラルドグリーンの湖面と美しい対比を見せてくれます。
ドッコ沼
- 住所
- 山形県山形市蔵王温泉
- 詳細
- 山形県公式観光サイト
- アクセス
- 蔵王中央ロープウェイ鳥兜駅から徒歩約15分
「Forest inn SANGORO」でランチ
ドッコ沼周囲を歩いていると、お腹がだんだんすいてくるはず。ドッコ沼すぐ右手にあるForest inn SANGOROでランチをいただきましょう。
ぱっと目をひく大きな三角屋根のロッジに入ると、中はヨーロッパの山小屋を思わせるようななんとも温かみのある空間。火が燃える暖炉、重厚なアンティーク家具、つやをたたえたウッディーなフロア。2階の宿の泊まり客はもちろん、カフェのみに訪れた人も心ゆくまでくつろぐことができます。
ランチメニューはピザやハンバーガー、オムハヤシライスと種類豊富。この日はボリューム満点「米山ポークのポークチャップ」(2,200円)をオーダーしました。
熱い鉄板の上でじゅうじゅう音をたて、濃厚なケチャップソースの香りを漂わせながら運ばれるポークのステーキ。2cmを超える厚みですが、低温調理で仕上げているので、ひと口頬張ると思いの外柔らか。甘じょっぱいソースに絡めていただけばポークの甘みがじゅわりと口いっぱいに広がります。
スイーツを味わいたい人には「塩キャラメルぷりん」(400円)がおすすめ。塩キャラメルソースのなめらかな手づくりプリンは、温めてもおいしい一品です。期間限定のピスタチオ味もあるので、好みでチョイスしましょう。
Forest inn SANGORO
- 住所
- 山形市蔵王温泉中央高原
- 営業時間
- 10:00~16:00
- 定休日
- なし
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから車で約30分
風情たっぷりの温泉を紹介
「酢川温泉神社」を参拝して共同浴場へ
お腹が満たされたら山を下りて、温泉街をぶらりとお散歩。まずは温泉街のシンボル酢川温泉神社を参拝しましょう。蔵王温泉街の中央を走る高湯通りから続く急な上りの参道の上に祀られています。階段を上がるのは大変ですが、参拝の後は眼下に広がる温泉街の景色を楽しめますよ。
酢川温泉神社のすぐそばには上湯共同浴場(大人200円)があります。温泉街には、ほかに「下湯共同浴場」「川原湯共同浴場」が100m圏内にあるので、はしご湯をするのもおすすめです。
酢川温泉神社
- 住所
- 山形市蔵王温泉坂の上関神811-6
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約14分
上湯共同浴場
- 住所
- 山形市蔵王温泉45-1
- 営業時間
- 6:00~22:00
- 定休日
- なし
- 料金
- 大人200円、小人100円
- 詳細
- 上湯共同浴場
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約6分
温泉はこちらもチェック!「蔵王温泉大露天風呂」
温泉街から少し離れた渓流沿いにあるのが蔵王温泉大露天風呂(大人700円)。暖簾をくぐり、階段を下りて風呂へと向かいます。
階段の先、大自然の中にあらわれたのは、一度に200人も入浴できるという野趣満点の風呂。自然石でできた湯船に源泉が贅沢にかけ流されています。強酸性の蔵王の湯でじっくり体を温めましょう。湯に浸かり川のせせらぎや鳥のさえずりに耳を傾けていると、自然の中に身体が溶け込んでいくようです。
蔵王温泉大露天風呂
- 住所
- 山形市蔵王温泉新屋敷853-3
- 営業時間
- 9:30~17:00 ※最終受付は16:30、土曜、日曜、祝日は9:30~18:00 ※最終受付は17:30
- 定休日
- 11月下旬~4月中旬
- 拝観料
- 大人 700円、子ども400円
- 詳細
- 蔵王温泉大露天風呂
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約17分
絵付け体験におしゃれなおみやげ選び、注目スポットも
「Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂」でこけしの絵付けに挑戦
高湯通りにあるZao Onsen 湯旅屋 高湯堂は、2020年に誕生した日本初の温泉コーデショップ。温泉や温泉街を楽しむためのグッズが並んでいます。
店内には、下駄に湯かご、手ぬぐいや化粧品などがずらり。オリジナルアイテムが豊富で、洗練されたデザインは実際に手に取って使ってみたくなるものばかり。自分用にしようか、誰かへのおみやげにしようか、ついつい長居して迷ってしまいます。
Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂では、体験型おみやげとして「こけしあーと」(1,300円)を実施しています。高湯通り休憩所でメモ用紙にイメージを描いたら、6色の筆ペンで無地のこけしに絵付けスタート!5分程度であっという間に仕上げる人もいれば、数十分も集中して絵付けしていく人もいるのだそう。
ただただ旅を楽しむ気持ちで筆を走らせれば、思いがけずこけしもにっこにこ。素敵な思い出の品が仕上がりますよ。
Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂では、さらに蔵王温泉を楽しむグッズも販売。「蔵王温泉湯巡りタオル」(1,126円)といった対象商品を購入すると、なんと蔵王温泉の17カ所の温泉が割り引きに!他にも温泉街をもっと満喫してもらうための企画が行なわれているので、お店の方に色々訪ねてみてくださいね。
Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂
- 住所
- 山形市蔵王温泉19
- 営業時間
- 9:30~12:00、13:00~17:30 ※12月~3月は9:30~12:00、14:00~19:00
- 定休日
- 火曜、水曜
- 詳細
- Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約4分
お酒好きは外せない「山形酒のミュージアム&湯けむり屋台つまみ」
お酒好きの方にぜひ立ち寄って欲しいスポットが山形酒のミュージアム&湯けむり屋台つまみ。なんと山形県内53の全酒蔵の代表銘柄を呑み比べられるというのです。お店の壁や棚には酒瓶がずらり。レアな瓶もあるので詳しい人なら思わず見入ってしまうかも?
お酒は1杯から(1杯300円~)味わえます。また呑み比べコースもあり(800円~)、さまざまなお酒を少しずつ味わう貴重な体験ができます。味の違いはもちろん、日本酒大好きなスタッフの解説も楽しいですよ。
現在(2022年9月時点)は、週末のみの営業ですが、今冬に向けてリニューアルオープンを予定しているそう。地元のそば粉を使ったそば店やスキー博物館を併設することを予定しているので、ますます注目度がアップしそうなスポットです。
山形酒のミュージアム&湯けむり屋台つまみ
- 住所
- 山形市蔵王温泉951
- 営業時間
- 11:00~22:00
- 定休日
- 月曜~金曜
- 詳細
- 山形酒のミュージアム&湯けむり屋台つまみ
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約5分
観光の合間に「そばカフェMONZA。」でひと休み
おやつの時間には、せっかくならその土地ならではの味を堪能したいもの。そんな時は「ZAOセンタープラザ」に併設しているそばカフェMONZA。がおすすめです。「山形ジェラート 2種盛り」(550円)なら、特産のそばとラ・フランスを使ったジェラートを味わうことができます。
テイクアウトの際はコーンに入れて、店内で食べる際はお皿に盛って提供されます。そばのジェラートは香ばしく少しナッツのような風味。ラ・フランスはくちどけがよくさっぱり。冷たいスイーツに一気に気分がリフレッシュされます。
そばカフェMONZA。では、スイーツのほかにそばを使ったグルメをラインナップ。板そばはもちろん、そば粉ガレットやそばの実のハンバーガーなど、変わり種メニューもあります。ランチスポットの候補にもおすすめですよ。
そばカフェMONZA。
- 住所
- 山形市蔵王温泉903-2
- 営業時間
- ランチ11:00~14:00、カフェ14:00~16:00
- 定休日
- 火曜
- 詳細
- そばカフェMONZA。
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約5分
「ZAOセンタープラザ」のおすすめ「蔵王銘菓 樹氷ロマン」
そばカフェMONZA。があるZAOセンタープラザは、宿泊施設やみやげ店、日帰り風呂を備えた複合施設。温泉街の中心部にあるので立ち寄りやすいですよ。
みやげ店には、山形の特産品を使ったお土産がたくさん。定番のものや日持ちがするものも多いので、たくさんの人に分けるおみやげ選びにはうってつけです。
一番人気は「蔵王銘菓 樹氷ロマン 16本入り」(756円)。40年以上前から山形みやげの代表として知られる名品です。歯ごたえのあるウエハースの間にホワイトクリームがたっぷり。甘すぎない適度なバランスが老若男女ともに愛される理由です。みんなで分けやすい個包装な点もうれしいポイントです。
お持ち帰りはできませんが……こちらも人気の「そば粉入りソフトクリーム」(440円)。メープルコーンと少し香ばしさのあるそばソフトクリームが相性抜群な逸品。店内のイートインスペースで食べてももちろんOKです。
ZAOセンタープラザ
- 住所
- 山形市蔵王温泉903-2
- 営業時間
- 9:00~18:00
- 定休日
- 火曜
- 詳細
- ZAOセンタープラザ
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約5分
宿泊は大正ロマン漂う「蔵王源泉 おおみや旅館」へ
蔵王源泉 おおみや旅館は創業1000年を超える老舗宿。木造のぬくもりあふれる館内には、竹久夢二の版画が飾られどこか美術館のよう。ロビーから部屋にいたるまで漂う大正ロマンが魅力の宿です。
温泉は源泉かけ流し。たっぷりの蔵王温泉の湯に浸かることができます。木造りの柔らかな肌あたりの浴槽に、ゆらりと舞う湯の花が温泉の泉質の確かさを証明しています。
夕食には山形牛や米の娘(こ)豚などブランド肉をたっぷり味わうことができます。地産地消にこだわった料理は味わい深く、蔵王温泉の旅を大満足なものにしてくれますよ。
蔵王源泉 おおみや旅館
- 住所
- 山形市蔵王温泉46
- 総部屋数
- 32部屋
- アクセス
- 山交バス蔵王温泉バスターミナルから徒歩約6分
旅の終わり、昼間歩いた蔵王温泉街を夜に歩いてみてはいかがでしょうか。蔵王温泉観光協会では「星と湯けむり夜さんぽ」を実施中。蔵王温泉街の各旅館では、「ZAO」の文字や温泉マークなどを映し出す提灯を貸出しています。カラフルな提灯を持って、風情ある温泉街の散歩を楽しめば、旅の思い出にまた一つ彩りが添えられるはずです。
星と湯けむり夜さんぽ
- 詳細
- 星と湯けむり夜さんぽ
いかがでしたか?今回は、ロープウェイに乗って空から蔵王の豊かな自然を楽しみ、そして温泉街でおいしいもの、素敵なみやげをチェックしながらそぞろ歩きをする旅プランをご紹介しました。
せっかく蔵王温泉を訪れたら、蔵王連峰の大自然と温泉の両方を楽しんでみてくださいね。
取材・文/星 真知子 撮影/株式会社Harty 澤田 千春