信州一大きい、諏訪湖のほとり。明治44年創業の「信州・上諏訪温泉 琥珀色の自家源泉を持つ宿【ホテル鷺乃湯】」(以下ホテル鷺乃湯)は、上諏訪温泉で最も古い歴史ある湯宿。ここでしか入れない、貴重な琥珀色の自家源泉を持ち、県外から訪れる温泉ファンも多数います。そんな名旅館に、ラグジュアリーな新客室とフリードリンク付きのラウンジが登場。好きなときに好きなだけ極上湯に浸かり、信州の恵みを生かしたお料理に舌鼓…。新旧が調和するお宿で、1泊2日の贅沢滞在をご紹介します。
入浴施設から旅館へ。長い歴史に彩られた湯宿
現在は上諏訪温泉を代表する大きな旅館ですが、もともと「ホテル鷺乃湯」は、明治38年頃、諏訪湖周辺の葦原から湧き出る温泉を利用した「入浴施設」として造られました。その後、明治44年に、「含鐵(がんてつ)硫黄温泉さぎのゆ」と名前を変え、諏訪湖周辺で初の宿泊施設として開業。震災や戦争による激動の時代から紆余曲折を経て、改名や改修工事を繰り返しながら、現在まで引き継がれてきました。
新宿からあずさで約2時間30分。上諏訪温泉駅から歩いて10分ほど、諏訪湖沿いの有名な日帰り温泉「片倉館」のお隣に「ホテル鷺乃湯」はあります。
エントランスをくぐると、老舗らしいクラシカルなロビーがお出迎え。足元にはホテル名の「鷺」を描いた絨毯が一面に広がり、天井にはシャンデリアがキラキラとまばゆい光を放ちます。
そんな歴史が垣間見えるのが、入り口に飾られた絵画です。ここに描かれているのは、まだ宿が現在の姿になる前の「諏訪観光ホテル」時代のもの。唐破風(からはふ)造りの屋根が目を引く、本格的な和風建築です。
また、ロビーから続く廊下には、「ホテル鷺乃湯」に逗留した、文人墨客のさまざまな作品が展示されています。特に、日本画家の池上 秀畝(いけがみ しゅうほ)による屏風絵は圧巻!大きさも、豪華さも見ごたえがあります。
多彩なアートを楽しみながら廊下を進むと、すっと伸びる竹の庭園が現れます。これらはすべて本物の竹でできており、「和の心地よさを感じてもらいたい」という宿の思いが込められた、わびさびを感じられる場所です。
2種類の庭園と足湯でリフレッシュ
「ホテル鷺乃湯」の魅力は、屋外にもたくさん。中庭には息をのむほど美しい、枯山水の庭園があります。
そして、枯山水の庭園の反対側にも、緑豊かな庭園が。つつじ、あじさい、牡丹、シャクナゲ……など、四季折々でいろいろな花が咲き庭園を彩ります。
ちなみに、110年以上の歴史を持つ宿のルーツともいえる自家源泉は、この緑揺れる庭園から湧き出しています。
庭園のもう一つの楽しみが、自家源泉からも近い「葦湯(足湯)」。浴槽は、熱湯とぬる湯に分かれていて、好きな方を選べるのもうれしいポイントです。
足湯と呼ばず、あえて「葦(あし)湯」と銘打ってますが、その理由は、かつてこの辺りまで、葦が茂る諏訪湖だったため。明治初期の諏訪湖は、今よりもっと大きく、面積が現在の2倍近くあったのだそう。
心も肌も潤う新客室「秀蘆閣プレミアム露天風呂付きツイン」
今夜泊まるお部屋は、2024年春、秀蘆閣4階にリニューアルオープンした「プレミアム露天風呂付きツイン」。快適性を追求したデザインになっていて、ベッドに寝そべりながらゆったりとTVが楽しめます。
また、ベッドはシモンズ社製の最高級ラインナップを採用。こだわりのダブルピローで、朝までぐっすり眠ることができます。
さらに、奥のリビングスペースには、大人2人が一緒に横になれるくらいの大きなソファーを配置。ここにもTVがあり、ゆったり横になりながら、YouTubeなど動画配信サービスで好きな番組を見るのもおすすめです。
ソファーとは別に、オットマン付きのリラックスチェアも完備。思い思いの場所で完全オフモードになれますよ。
このお部屋は、広々とした専用バルコニー付き。デッキチェアに座ってゆったりと過ごしたり、諏訪湖を眺めながら、湖風に吹かれながらリフレッシュしたりできます。
客室には諏訪湖ビューの露天風呂も。石造りの浴槽には、自家源泉と諏訪市の混合泉がなみなみと注がれています。
浸かってみると、なめらかな湯が体を包み込み、いつまでも入っていたくなる心地よさを堪能できます。
洗面台は、グループ旅行や家族旅行に便利なダブルシンク仕様です。2人同時に身支度ができて、朝の忙しい時間帯もノーストレス。
テンションが上がる要素は、他にも。こちらのお部屋には、女性なら誰もが「一度は使ってみたい!」と思う、憧れのリファのドライヤーがあります。
さらに、男女別の「ポーラ」のアメニティや、アメリカの調剤薬局(アポセカリー)発の歴史あるコスメブランド「C.O.Bigelow(シー・オー・ビゲロウ)」も用意されており、至れりつくせり。
今回泊まるお部屋以外に、2024年にリニューアルされたコンフォートツインの客室もおすすめ。こちらは、和モダンでくつろぎが感じられるデザインになっています。お部屋によっては、大きな窓から片倉館を眺められます。
そして、ベッドサイドには、諏訪に関する本や諏訪湖の花火大会で打ち上がる尺玉をディスプレイ。もちろん火薬は入っていませんが、花火玉を眺めながら過ごしていると、諏訪へ来た実感が湧き上がります。
エグゼクティブラウンジで乾杯
客室だけでなく、ぜいたく気分をぐっと高めてくれる「エグゼグティブラウンジ」も2024年夏に完成しました。
ここを利用できるのは、「秀蘆閣プレミアム露天風呂付きツイン」を含む、最大8ルームのゲストだけ。限られた人しか利用できない、スペシャルな空間です。
ラウンジは15時から18時30分まで、セルフサービスでアルコールを含むドリンクが飲み放題!生ビールやスパークリングワインも、サーバーから注いで好きなだけ楽しめます。また、チョコレートやクッキーなど、スナックやおつまみ類も用意されています。
お酒好きにとって、ここで過ごす時間は、最高にぜいたくなひととき。自分を甘やかしてあげながら、エネルギーチャージできます。
上諏訪温泉で唯一の琥珀色のモール泉
ひと息ついたところで、大浴場へ。大浴場の入り口には、明治44年の温泉分析表が掲げてあります。泉質名をチェックすると「含鉄炭酸硫黄泉」と書かれていることが分かります。
硫黄泉は空気に触れて酸化すると、白濁する性質を持つことから、開業当初の源泉は白い色をしていました。その湯が、白鷺のように美しかったため「鷺乃湯」と名付けられたのだとか。今は琥珀色の湯ですが、昔は白かったと思うと不思議ですよね。
「温泉は生き物」という言葉があるように、地殻変動などで、成分が変わることもしばしば。脱衣所に掲げてある現在の温泉分析表と見比べてみるのも楽しいですよ。
内風呂は、重厚感あふれる造り。湯船には、紅茶のような琥珀色の湯が満ちています。
湯の色が琥珀色になる理由は、植物が長い年月をかけて蓄積していく、植物由来の「モール成分」が入っているため。
浸かれば、大地のような香りがふわり。炭酸水素塩泉(重曹泉)の効果も相まって、じんわり温まり、お肌がつやつや&すべすべになります。
宿自慢の露天風呂は、明治44年の唐破風造りの屋根を受け継ぎ、移築したもの。時代を超え、今は露天風呂の屋根として、空間を華やかに彩っています。見上げれば、風格ある格天井が広がり、まるで別世界へきたかのよう!この露天風呂は、かつてJRのポスターに登場したこともあります。
少し離れた場所から見ると、風格ある屋根の存在感をより感じられます。凛とした美しさを眺めながらの入浴は非日常感たっぷり。
立派な露天風呂に目が行きがちですが、実はこの小さな湯船も魅力的。
ここは自家源泉100%の完全かけ流し。加水・加温・循環ろ過を一切していない、ピュアな源泉です。
泉質は、pH7.58のナトリウム-炭素水素塩泉(低張性弱アルカリ性高温泉)。肌の汚れや古い角質を落としてくれるだけでなく、天然の保湿成分「メタケイ酸」が規定値の3倍以上含まれているため、お肌がしっとり潤います。
ちなみに、この湯船に浸かると、細かい泡がふつふつと体につきますが、これは源泉がフレッシュな証。
大浴場は男女別で2つあり、深夜に入れ替わります。もう1箇所の源泉露天風呂は、陶器製の浴槽になっています。
湯上がりに、レトロなマッサージ器で足の疲れを癒せるのも、この宿ならでは。電源をONにすれば、今なお現役で動きます。
お宿の前には「諏訪市湖畔公園」があり、歩いて散策するのにちょうどいい距離です。さえぎるものが一切なく、夕暮れ時は、感動のサンセットタイムを楽しむことができます。
夕食は信州牛がメインの会席膳
夕食は「個室食事処」でいただきます。室内に入ると、テーブルいっぱいに広がる小鉢の多さに驚きます。
この日は、特製花梨酒から始まり、旬のお野菜を使った6種盛りの前菜、お蕎麦、鰻の蒸物など、種類豊富な小鉢がずらり。
ここ上諏訪温泉周辺は、「真澄」「舞姫」「麗人」など歴史ある酒蔵が軒を連ね、飲み比べが楽しい町。夕食でも、個性豊かな諏訪の銘酒5つを一度に楽しめる「きき酒セット」(1,320円・サービス料別)をオーダーできます。
自慢の食を堪能しながら、地酒をいただきます。その土地のおいしい料理には、やっぱりその土地で造られた地酒がよく合います。
信州のお魚といえば、外せないのが信州サーモン。この日は、お造り一種として登場。適度な脂とまろやかなうまみがあり、しっかりとした歯ごたえを感じられます。
こちらは、大きな活あわびを蒸し上げた逸品。食べてみると、驚くほどふっくらとやわらかく、塩加減も絶妙です。
そして、メインは信州プレミアム牛しゃぶしゃぶです。
見事な霜降り具合からも分かる通り、信州プレミアム牛は、長野県が定めた「おいしさ基準」を満たしたお肉だけに与えられる称号。つまり、肉質・脂身・香り、すべてが最上級の牛肉です。信州産の赤ワインとペアリングもおすすめです。
美しいお肉を、お湯にさっとくぐらせたら、ゴマポン酢だれにつけていただきます。きめ細やかな霜降り肉は、素早く口の中で溶けていきます。食べるたびに舌が喜ぶ、至福の味わい。ジューシーで甘い香りの脂と繊細なやわらかさにうっとりです。
朝からお刺身付き!至福の朝ごはん
朝食は、ご飯に合うおかずが豊富な品数で提供されます。焼き魚だけでなく、お刺身も食べられて山里海の幸に囲まれる、ぜいたくなラインナップ。炊き立ての甘い香りが立つ信州産の新米は、何度もおかわりしたくなるおいしさです。
「ホテル鷺乃湯」は、独自の自家源泉に浸かり、こだわり抜かれた上質な客室で特別な時間を過ごせる名旅館。特別な日には、ワンランク上の癒やしを心ゆくまで味わってみませんか?
信州・上諏訪温泉 琥珀色の自家源泉を持つ宿【ホテル鷺乃湯】
- 住所
- 長野県諏訪市湖岸通り3-2-14
- アクセス
- JR上諏訪駅より徒歩約8分、諏訪ICより約15分
- 駐車場
- 50台 無料
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:18:00)
- チェックアウト
- 10:00
- 総部屋数
- 49室
取材・撮影・文/安藤美紀