谷崎潤一郎や与謝野晶子も愛した有馬温泉最古の宿「有馬温泉 陶泉 御所坊」で歴史を感じるひとときを

有馬温泉 陶泉 御所坊

日本三大古湯の一つであり、古くは藤原定家、足利義光、豊臣秀吉など、歴史に名を馳せる偉人たちが通い、関西の奥座敷として栄えてきた有馬温泉。そんな長い歴史を持つ有馬温泉でも最古の湯宿として、1191年に創業した「有馬温泉 陶泉 御所坊」(ごしょぼう)です。悠久の歴史を感じる宿で、ゆったりと流れる時間に身をまかせてくつろぐ。「有馬温泉 陶泉 御所坊」で過ごす、贅を尽くした1泊2日の旅を紹介します。

登録有形文化財の歴史ある建物「有馬温泉 陶泉 御所坊」

美術作家の綿貫宏介氏がプロデュース

有馬温泉 陶泉 御所坊

「有馬温泉 陶泉 御所坊」は川沿いに建つ木造三階建の風情ある建物。昭和初期の建物がベースとなり、古き良き時代を伝えるその姿は、国の登録有形文化財に指定されています。

 

玄関には美術作家の綿貫宏介氏の手による木彫り看板が。館内は、綿貫氏が全面的にプロデュースを手掛けたという、和と洋の美しさが融合した独自の世界観に包みこまれています。

アクセス

新神戸駅から電車やバスで約30~45分。車なら駐車場までお出迎え

有馬温泉 陶泉 御所坊

有馬温泉街のほぼ中心にある滝川沿いに位置し、窓からは四季折々の草花を堪能できる「有馬温泉 陶泉 御所坊」。電車なら新幹線を利用して新神戸駅で下車、神戸市営地下鉄北神線、神戸電鉄有馬線を乗り継いで約30分で神戸電鉄有馬温泉駅に到着。そこから徒歩5分ほどで着きます。

 

また、新神戸駅からJR高速バスで約45分、大阪駅から阪急高速バスで約1時間、と乗り換えなしでアクセスすることも可能。

 

車の場合には、各方面から六甲有馬ロープウェイ有馬温泉駐車場を目指し、その隣にある有馬里駐車場へ。車の無料送迎で宿まで向かいます。送迎車の中には、外国人専用ホテルのイメージそのまま、レトロな車も。

 

有馬里駐車場

住所
兵庫県神戸市北区有馬町滝の畑1229-1

館内

谷崎潤一郎が愛した、昭和初期の日本の建築美を満喫

有馬温泉 陶泉 御所坊

広々とした玄関に到着すると「いらっしゃいませ」という声と笑顔で迎えられ、温かな気持ちになります。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

伺ったのはまだ寒さの残る2月末。玄関横の待合いスペースには大きなこたつがしつらえられていて、道中で冷えた足を温めてくれました。囲碁や雑誌も用意され、チェックイン前にここでゆっくりと時間を過ごすこともできます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

趣深い廊下や階段を進みながら、今日泊まる部屋へ。廊下には美術作家・綿貫氏の作品が優しい光に照らされて、まるで小さな美術館のよう。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

伝統的な日本家屋の面影がそこかしこに残る館内を歩くと、懐かしい感じを覚えます。ほのかな灯りに照らされた小さな階段や天井、廊下の静けさは、谷崎潤一郎が『陰翳礼讃(いんれいらいさん)』で記した、日本特有の美意識を体現しているような空間です。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

館内には綿貫氏が残した漢詩が飾られています。御所坊をうたったこの漢詩は、御所坊のテーマともいえる作品だそう。

客室

居心地のよいデラックスルームで過ごす至福の時間

有馬温泉 陶泉 御所坊

宿泊するのは、館内に8室ある天楽(デラックスルーム)。その中には谷崎潤一郎、吉川英治、与謝野晶子などの文人たちが執筆にいそしんだ面影が残り、小説のファンが多く訪れるといいます。

 

日本家屋のつくりを生かした8つの客室は、部屋ごとに間取りが違い、それぞれが違う雰囲気。今回宿泊するのは、「TAN」という約63.9平米もある広々とした部屋。扉を開け、部屋専用の廊下を通って客室へと向かいます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

ここは和室10畳、洋室8畳、奥の間6畳の広々とした部屋とバスタブ付きの贅沢なつくりです。リラックスの部屋、語らいの部屋、お休みの部屋をシーンに分けて使ってほしいというのがこの部屋のコンセプト。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

川沿いの窓から入る光がやさしく照らす奥の間の机。作家・谷崎潤一郎の作品『猫と床造と二人のおんな』に登場するほど、谷崎氏のお気に入りの宿だったという御所坊。谷崎もこんな重厚な木の机の前に座ってペンを握っていたのかも…と想像するのも楽しい時間です。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

洋室には窓向きにマッサージチェアが2台しつられてありました。家族や友人とマッサージをしながらおしゃべりに興じられるなんて、至福の時間!

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

お着きのお茶菓子はフロント前の売店でも販売されている、綿貫氏がパッケージデザインをした本高砂屋のアーモンド菓子「マンデルチーゲル」と飴。お茶はドイツの紅茶ブランド「ロンネフェルト」のカモミールティーが用意されていました。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

日本茶派なら京都宇治園のほうじ茶や緑茶を。ユーモアあふれるパッケージデザインは、もちろん綿貫氏によるものです。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

部屋に用意されている透けにくい藍染の浴衣は、肌触りのよい木綿素材。綿貫氏がデザインをした御所坊のトレードマーク「車輪」が目を引きます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

御所坊では「できる限り地球環境に配慮したよい品」をという考えのもと、歯ぶらしは燃料としても再利用できる竹ぶらしを採用。アメニティは真珠で有名な「ミキモトコスメティックス」がそろっています。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

大浴場ではゆっくり「金泉」を楽しみ、シャンプーは部屋で……。そんなときにうれしい速乾性の高いダイソンのドライヤーを完備。女優ミラーも用意され、女子二人旅でも気兼ねなくゆっくりとメイクができます。

 

和室にベッドを設えた和モダンな雰囲気のスーペリアルーム

有馬温泉 陶泉 御所坊

和室に大きなベッドを2台しつらえた中庸(スーペリアルーム)。和と洋が融合した和モダンな部屋は、家のようにくつろげる居心地のよい空間です。比較的、階段移動が少なく大浴場にも近いので、ご年配の方にも人気だそう。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

3室あるスーペリアルームの中の一室「BUN」の洋室。春になると部屋の窓からは歌人・与謝野晶子が詠んだ糸桜を眺められるという絶好のポジションで、お茶をいただきながらゆったりした時間を過ごせます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

ワーケーション用のデスクも用意されています。仕事の合間に温泉、温泉の合間に仕事。普段以上に仕事がはかどりそうです。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

御所坊グループが経営している「おもちゃ博物館」のレトロなおもちゃもインテリアの一つ。古い建物の中に、随所に遊び心を感じられる設えも御所坊の魅力です。

 

贅をつくしたスイートルームは「終の宿」がテーマ

有馬温泉 陶泉 御所坊

三世代、四世代に愛されて“終の宿”になるようにと、使いやすさと贅の限りをつくした心楽(プレミアムスイートルーム)。広いリビング、ベッドルーム、和室の3部屋をそなえた約130平米の部屋は、5~6名で宿泊できます。その居心地のよさに魅了され、「この部屋を!」と指名するリピーターも多いそうです。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

「寝心地の良さ」にこだわった広々としたベッドルーム。トイレも2カ所に用意されています。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

まるで大浴場のような広さを誇る、源泉かけ流しの「金泉」と白湯。この温泉をひとり占めできるのは、プレミアムスイートルームだけに与えられた贅沢です。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

夜は客室内のBARでお酒を!木工作家・迎山直樹氏が手掛けた木のぬくもりあふれる家具にも癒やされます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

長期滞在ができるようにと、フロントを通らずにそのまま町散歩にも出かけられるという裏玄関を備えた凝った設計。そんな暮らすように滞在できるつくりも、リピーターが多い理由の一つかもしれません。

温泉

源泉かけ流し半露天・半混浴の温泉「金郷泉」

有馬温泉 陶泉 御所坊

部屋でひと休みしたら、タオルを持って温泉へ。有馬温泉は世界でも珍しい非火山性の温泉で、海水の約1.5~2倍の塩分が含まれているので、保温効果が高いことでも有名です。また療養泉として認められた成分が7種類も含まれた万病に効く湯として、古くから愛されてきました。御所坊の大浴場「金郷泉」は、鉄分を多く含んだ茶褐色の「金湯」をかけ流しで堪能できる貴重な湯処です。

 

また不透明な湯の特質を生かし、半露天半混浴というユニークなスタイル。半露天風呂が低い敷居で仕切られ、家族と顔を合わせて会話をしながら温泉を楽しめます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

温泉成分が強いため、湯上り前には白湯に入るのがおすすめ。女性用の白湯はジャグジータイプ。ほどよい刺激の泡がこりをほぐしてくれます。

御所泉源の新鮮なお湯を貸し切り風呂で味わう「湯屋 松風」

有馬温泉 陶泉 御所坊

御所泉源にもっとも近い場所にある古民家を改装してつくられたという、貸し切り風呂「湯屋 松風」(宿泊者5,500円/60分 ※要予約)。壁一面にはモザイクアーティスト・NATSUKOSHI氏が手掛けた、有馬温泉ゆかりの三羽カラスのタイルアートが描かれています。「金郷泉」以上に色の濃い茶褐色の湯に身を沈めると、泉源から湧き出たばかりの新鮮なお湯が肌に薄いベールをつくり、体を芯から温めてくれます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

下からの温泉蒸気を利用した温泉蒸し風呂。サウナほど苦しくなく、呼吸がラクにできるほどよい熱さは、いつまでも入っていたくなるほどの心地よさ。汗がじんわり出てきて、疲れがどんどんほぐされていきます。横には有馬温泉と縁の深い薬師如来の金の像が見守っていました。

 

夕食

伝統と独創性を兼ね備えた御所坊独自の山家料理

有馬温泉 陶泉 御所坊

温泉で疲れが癒やされた頃、今回の旅のもう一つの目的である夕食の時間になりました。テーブルに次々に運ばれてくるのは、それぞれが一つのアート作品のように盛り付けられた、美しいお料理。器もすべてオリジナルというこだわりようです。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

まず運ばれてきたのは大きな木箱に入った寄せ盛り。まるで宝箱を開封する気分でワクワクしながら蓋を開けると、そこには色鮮やかな6品の前菜とお造りがおさめられていました。御所坊は質のいい鮮魚が集まることで有名な、明石浦漁港の出入りが許された神戸唯一の宿。この日はひらめとしまあじの鮮魚が並び、どちらも新鮮でぷりぷりっとした弾力。「おいしい!」の言葉が止まりません。

有馬温泉 陶泉 御所坊

「この箱を開けるとき、お客様がどんな表情をされるのか、毎回緊張しています」と、料理長の三上真一さん。「私たちの料理はいつもお客様に喜んでもらえるものは何かを一番に考えているので、箱を開けたときにお客様の笑顔を見るとほっとします。御所坊の料理は山家(さんが)料理と称していますが、その意味は我が家の料理、つまり御所坊流の料理のことです。ここへ旅をしに来られて、自分の家のようにくつろぎながら最高の料理を楽しんでもらいたい。そんな想いから、ただ新鮮な食材を提供するのではなくそこに新しいアイディアや工夫を加え、常にアップデートした料理を食べていただきたいと思っています」。そんな三上さんの料理を目当てに来るゲストも多いというのも納得です。

 

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

あられのカリッとした食感とぶりの相性が絶妙な煮物「鰤(ぶり)あられ」。ひと口食べれば、ぶりのうまみとやさしいお出汁が溶け合って口に広がります。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

一本釣りの鰆(さわら)の新鮮さはそのままに、最新の減圧調理器でタレをしっかりしみこませた、ふっくらやわらかな焼き魚。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

早春が旬のたらの芽、こごみ、蕗のとうの天ぷらと海老の春巻き揚げ。胡麻油たれにつけて食べれば、山菜の香りが引きたちます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

神戸ビーフステーキは嚙むほどに深い甘みとコクがあるのに、後味はさっぱり。岩塩、生姜味噌のお好みのものをつけて。ごはんにも合う生姜味噌はお土産品としても販売しています。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

この日のデザートはミルクムース苺ソース。お腹がいっぱいの最後でもペロリと食べられるやさしい甘さです。

 

盛り付けの美しさに驚き、口にして細やかな味わいに感動し、ゆっくり時間をかけて山家料理を堪能しました。
お腹も気持ちもいっぱいになって部屋へ戻ると夜具が敷かれ、ほのかにお香の香りがします。そんな細やかな心遣いにも心が温まりました。

朝食

豪華な朝食の後はレトロモダンなサロンでモーニングコーヒーを

御所坊 

早起きをして温泉に入り、お腹が空いたところで朝食の時間に。ずらりと並べられた豪華な朝食は、選び抜かれたシンプルな素材と滋味深い味が魅力。中でも人気は丹波黒豆の香りがふわりと香る黒豆湯どうふ。炭火でいぶした明石海苔はパリッとした食感でごはんがすすみます。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

朝食後はコーヒーをいただきに、1Fのサロンへ。ここは明治時代、外国人専用ホテルが立ち並んでいた頃には、ダンスホールとして使われていたというお部屋。レトロモダンな雰囲気に当時の面影を彷彿とさせます。日中はカフェとしても営業しているそう。

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

春になると大きな窓から、与謝野晶子が詠んだ糸桜の姿も。静かで落ち着いた空間でコーヒーを飲んでいると、ここだけゆっくりとした時間が流れている気がしてきます。

 

源泉かけ流しの金泉で疲れを癒やし、こだわりの山家料理を味わい、広々とした部屋でゆっくりと過ごす、身も心も解放された1泊2日の旅。長い歴史に育まれた美しい建築と、今の時代に合った快適さを兼ね備えた居心地のいい空間は、1度泊まればまたすぐに帰って来たいと思う魅力にあふれています。忙しい毎日に疲れたら、あなただけの特別な時間を過ごしに「有馬温泉 陶泉 御所坊」に出かけてみませんか?

 

有馬温泉 陶泉 御所坊

住所
兵庫県神戸市北区有馬町858
チェックイン
15:00
チェックアウト
10:00

 

撮影/大林博之 取材・文/山本美和

 

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