奈良のおすすめ撮影スポットをご紹介!
かつて都として栄えた奈良。世界遺産の東大寺、興福寺、春日大社をはじめ、国宝・重要文化財の建築・仏像などが多数残されています。今回は、古代ロマンあふれる奈良で晩夏~秋に見られる絶景を、奈良出身の写真家・高橋良典さんが撮影法とともに紹介します。
写真家
高橋 良典(たかはし よしのり)さん
1970年、奈良県生まれ。2000年にフリーの写真家として独立し、写真事務所「フォト春日」を設立。風景写真を中心とした作品をカレンダー・観光ポスター等へ提供。また、写真雑誌や出版物への写真提供、および原稿執筆を行う。生まれ育った奈良県の撮影と併行して、国内各地にて自然の織りなす旋律をテーマに撮影を続けている。
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員
目次
おすすめの絶景スポット【1】稲渕の棚田の彼岸花
日本の棚田百選のひとつ、明日香村にある稲渕の棚田では、9月中旬から下旬の時期に彼岸花が畔(あぜ)を彩ります。真っ赤な花と色づき始めた稲とのコントラストを写真に残すには、サイド光~逆光で撮るのがグッド!
一般的な記念写真を撮影する際、逆光やサイド光など、顔が暗くなってしまう光線で撮影するのは良くないと言われますが、風景や花の写真では積極的に狙ってみましょう。
稲淵周辺には駐車場がありませんので、石舞台古墳の駐車場に車を置いて、そこから約2km、20分ほどを歩いて向かうのがおすすめ。道中は棚田と彼岸花を一望できます。ここでは望遠レンズを使い、棚田のラインの美しさを切り取りました。
風景をより鮮やかに描くには偏光(CPL)フィルターを活用しましょう。使い方は簡単。レンズの前に装着してフィルターに付いている回転枠を回しながら、花の赤色や空の青色が鮮やかになるよう調整します。
稲渕の棚田に行った際は、ぜひ「案山子(かかし)ロード」も歩いてみてください。約30の手作りのユニークな案山子が飾られています。お気に入りを見つけるのも楽しいですね。
稲渕の棚田
- 住所
- 奈良県高市郡明日香村稲渕
- アクセス
- 【電車】近鉄「飛鳥」駅よりバス「石舞台」下車、徒歩約20分
【車】京奈和自動車道「橿原北」ICより約30分
おすすめの絶景スポット【2】九品寺周辺の彼岸花
奈良県御所(ごせ)市にある九品寺(くほんじ)。その周辺でも9月中旬から下旬にかけて、一面に広がった真っ赤なじゅうたんのような彼岸花を見られます。やや高台に位置しており、東側に奈良盆地を見渡すことができます。撮影する際は広角レンズを使って広さを表現すると良いでしょう。
スマートフォンの場合は難しいことを考えなくても画面全域にピントが合うのですが、一眼カメラの場合はしっかりと絞って、手前から奥までピントが合ったパンフォーカスに。この写真では絞りをF16に設定しています。撮影に夢中になって群生している彼岸花の中に入ったり、花を踏んでしまったりしないよう注意しましょう。
九品寺
- 住所
- 奈良県御所市楢原1188
- アクセス
- 【電車】近鉄「御所」駅よりバス「楢原」下車後、徒歩約5分
【車】南阪奈道路「葛城」ICより約15分
おすすめの絶景スポット【3】葛城一言主神社周辺の彼岸花
九品寺から少し南に位置する葛城一言主神社(かつらぎひとことぬしじんじゃ)は「一言さん(いちごんさん)」として親しまれ、その名の通り、一言だけなら願いを叶えてくれると信じられています。周辺には棚田があり、畔に咲いた彼岸花の赤い曲線美をうまく取り入れると、写真に奥行きが加わりますよ。
太陽が低い早朝の時間帯を狙って逆光気味で撮影すれば、稲と彼岸花の色がより引き立ちます。写真は光の扱いがポイントなので、晴れている日は太陽がどの位置にあるのかを考えながら撮影することが重要です。
ちなみに、九品寺から葛城一言主神社の間は葛城古道の一部としてハイキングコースにもなっています。緩やかなアップダウンがあり、約1.5km、徒歩で約20分ほどなので、ぜひ歩いてみてください。古道沿いには標識もしっかりと整備されているので迷う心配もありません。
葛城一言主神社
- 住所
- 奈良県御所市森脇432
- アクセス
- 【電車】近鉄「御所」駅よりバス「宮戸橋」下車、徒歩約30分
【車】京名和自動車道「御所南」ICより約10分 - 公式サイト
- 葛城一言主神社 | 奈良県御所市いちごんさん
おすすめの絶景スポット【4】藤原宮跡のコスモス
飛鳥時代の都城・藤原京があった橿原(かしはら)市の藤原宮跡(ふじわらきゅうせき)では、毎年10月上旬~下旬に見渡す限りのコスモス畑が広がります。どう撮っても画になる絶景は狙いを定めるのに迷うところですが、早朝や夕方に訪れることで変化をつけると良いでしょう。ただし、朝夕の風景はうまくカメラに収めるのが難しいもののひとつ。空の明るさを肉眼に合わせればコスモスが暗くなりますし、コスモス畑の明るさを肉眼に合わせると、空が白飛びしてしまいます。
そこで登場するのがハーフNDフィルターです。このフィルターは長方形のガラス板の半分がND(光量を減らすために使うグレーのフィルター)になっており、空にND部分がかかるようレンズ前にかざして使うことで、空と地上の明暗バランスを整えてくれます。
ハーフNDフィルターがない場合は、カメラの明暗調整機能を活用すると良いでしょう。まずは1枚撮ってみて、うまく写らない場合はその強度を強めて、朝夕の空とコスモス畑の露出バランスを取りましょう。スマートフォンの場合は、上記機能が自動で働いて肉眼に近い印象で写してくれます。
※明暗調整機能とは…
カメラメーカーによって異なりますが、代表的なものとして、オートライティングオプティマイザー、Dレンジオプティマイザー、アクティブDライティングなどの呼び名があります。
こちらは、望遠レンズでコスモスの風景だけを切り取りました。空を入れずに構成する方が、写真の明暗バランスが取りやすいでしょう。
もちろん、コスモスと青空の風景も美しいですね。
藤原宮跡
- 住所
- 奈良県橿原市醍醐町
- アクセス
- 【電車】近鉄「大和八木」駅よりバス「橿原市藤原京資料室前」下車 、徒歩約4分
【車】京奈和自動車道「橿原北」ICより約20分
橿原市でランチや休憩におすすめのお店
橿原市に行ったら、カフェレストラン「ドラムヤカタ」にお立ち寄りを。こちらはお店の2階がギャラリーになっており、普段から写真展などが開催されています。実はオーナーの松尾清嗣さんは、風景写真界を代表する写真家の一人。その人柄に多くの写真愛好家が訪れ、ジャズが流れる店内では写真談議に花が咲きます。
店内には常時、松尾さんの写真が飾られています。
おすすめメニューはオムライス。シンプルなものほど難しく、味わい深いという意味では料理も写真も同じですね。食後は、奈良県南部に位置する天川村の名水「ごろごろ水」を使ったコーヒーを楽しみましょう。そして、旅の中での食事はぜひ写真に残しておきたいところ。窓に向かって座り、柔らかな逆光で撮影すると良いでしょう。
ドラムヤカタ
- 住所
- 奈良県橿原市新口町157-3
- アクセス
- 【電車】近鉄「新ノ口」駅より徒歩5分
【車】京奈和自動車道「橿原北」ICより約10分 - 公式サイト
- ドラムヤカタ
おすすめの絶景スポット【5】葛城高原のススキ
大阪と奈良の境に位置する葛城山へは、葛城登山口駅よりロープウェイで葛城山上駅まで約6分の空中散歩。そこから山頂付近の葛城高原へはゆっくり歩いて約20分で到着します。9月下旬~11月上旬ころには辺り一帯に黄金色のススキが広がり、天気の良いときは大阪湾まで望むことができます。
ススキを撮影するときは特に光の向きが重要です。穂がキラキラと光って見える逆光で狙いましょう。
夕刻が近づくにつれて光の色が黄色味を帯び、ススキがより美しく輝きます。可能なら日没まで粘りたいところですが、ロープウェイの営業時間は17:00まで。間に合うように下山しましょう。もしくは、山上の葛城高原ロッジに宿泊し、心ゆくまで夕日を狙うのもおすすめです。
葛城高原
- 住所
- 奈良県御所市櫛羅
- アクセス
- 葛城山ロープウェイまで
【電車】近鉄「御所」駅よりバス「葛城ロープウェイ前」下車
【車】南阪奈道路「葛城」ICより約15分
撮影・文/高橋 良典
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