世界遺産「熊野古道」伊勢路でも特に人気の「馬越峠(まごせとうげ)」と「松本峠」。この2つの峠を歩きながら歴史を学べる無料の公式オーディオガイドが登場しました。
一般社団法人東紀州地域振興公社(三重県熊野市)と株式会社ON THE TRIP(東京都港区)が協働したこの新しい取り組み。GPSと連動したオーディオガイドを通じて、新たな熊野古道の巡り方を提案しています。
美しい石畳の道、馬越峠と松本峠
熊野古道・伊勢路は、伊勢(三重県)から熊野三山(和歌山県)に至る巡礼の道です。この道はいくつもの峠を越え、古来より多くの人々に歩かれてきました。
今回リリースされたオーディオガイドは、その中でも特に人気の高い「馬越峠」と「松本峠」に焦点を当てています。
馬越峠は、美しい石畳の道と尾鷲ヒノキや杉の美林が特徴で、およそ400年前に紀州藩により整備された歴史を持ちます。
一方、松本峠は伊勢神宮から熊野速玉大社に向かう最後の峠であり、異なる時代に敷かれた石畳を同時に体験できる場所です。
オーディオガイドでその地の歴史や物語を深く知る新たな体験
このオーディオガイドは位置情報と連動しており、「ON THE TRIP」のスマートフォンアプリをダウンロードして、そのスポットを訪れると、自動的に音声が再生される仕組みになっています。
たとえば、馬越峠の石畳ではこのような音声ガイドが再生されます。
馬越峠の石畳道は江戸時代の初め紀州藩により整備されたもので400年前のもの。登り口から峠までの2kmの石畳道は整備された当時のままの姿で残されています。
道幅は、偉い人を駕籠に乗せて運ぶことも考えて2.7mを基本としました。敷石は大きく平らで、折り重なるように敷かれています。これらの石は周辺の山や谷からの花崗岩を用いており、歩きやすいように歩幅に合わせて敷かれているためストレスなく歩くことができます。
松本峠ではこのような音声ガイドが。
峠には400年ほど前の江戸時代の初めころに建てられた身長170cmほどの地蔵さんが旅人を見守ってくれています。
ところで、この地蔵さんには穴が空いています。なぜでしょうか? これは鉄砲の穴ともいわれ、こんな言い伝えがあります。
むかしむかし、大馬新左衛門という鉄砲の名人が松本峠を越えて隣町に行った、その帰り道のこと。空はもう暗くなり、夜になっていました。新左衛門がこの場所を通りかかったとき、行きにはなかったはずの大きな影があらわれました。「妖怪だ!」新左衛門はその影を狙って鉄砲を打ちました。しかし、その影はビクともしない。おそるおそる近づいてみると、実はその影は、新左衛門が隣町に行っている間に村人たちによって運ばれて、この地に建てられた地蔵さんだったのです。
ただ美しい景色を眺めるだけでなく、スマートフォンをポケットに入れたまま、耳で聴きながら、その場所が持つ歴史や物語を深く知ることができます。
このオーディオガイドを通じて、訪れる人々が歴史の足跡に立ち止まり、深い感動を得ることができるでしょう。熊野古道を歩くことは、ただのハイキングではなく、時を超えた旅へと変わります。歴史と自然が織りなす物語を体験しに、熊野古道・伊勢路への旅を計画してみてはいかがでしょうか。
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