「熊野那智大社」で平安貴族に変身!古の参道を歩く旅

和歌山県那智勝浦町の山の中腹、荘厳な那智の滝のすぐ近くに鎮座している「熊野那智大社(くまのなちたいしゃ)」。熊野古道を歩きながら参拝できるのが魅力ですが、どれほど大変なものなのか?他にも名所や名産は何があるのか?など、那智勝浦エリアの見所をご紹介します。

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熊野那智大社

和歌山県に広がる雄大な自然は古の時代より自然崇拝の対象として崇められ、熊野信仰という独自の信仰を築き上げてきました。その後、世の流れに変動しながら神道、仏教、修験道の要素を取り入れ、訪れた人たちは皇族や平安貴族、武士や庶民にまで広がります。
特に熊野信仰で欠かせない「熊野那智大社」へは、平安時代からの道を歩いて参拝できるのが魅力。当時の貴族が着た衣装を借りられたり、落差日本一の那智の滝を間近で眺めたりと、ここでしか見られない数々の景色に出会えます。

熊野那智大社の参拝は大門坂からスタート

蟻(あり)の熊野詣と呼ばれた熊野三山の参拝 平安時代の熊野詣の様子を再現したジオラマ模型

熊野信仰で欠かせない存在なのが、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の三山です。歴史を遡れば2000年近く、この三山を参拝することを熊野詣(くまのもうで)といい、平安時代には熊野への道が大行列だったことから「蟻(あり)の熊野詣」とも呼ばれていました。

紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録されている

熊野三山を繋ぐ熊野古道は東西、南北に敷かれ、その数は計5本。熊野三山と併せて「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界遺産に登録されています。道自体が世界遺産に登録されているのは珍しく、世界でもスペイン、フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路と日本の熊野古道の3カ所のみです。

大門坂から熊野那智大社まで杉林や石段が続く

熊野古道からの参拝は山中を歩く熊野本宮大社が人気ですが、熊野那智大社でも参詣道を歩きながら向かうルートがあります。大門坂(だいもんざか)から熊野那智大社までの約2.5kmは、迫力ある杉林や石段が続く風光明媚な道。所要時間も1時間ほどなので、ウォーキング初心者でも完歩できると評判です。

大門坂

大門坂へはJR紀伊勝浦駅、もしくはJR那智駅から那智山へ向かうバスを利用。途中、「大門坂」バス停で下車し、車道沿いに進むと案内が出てきます。

気分がグッと上がる!平安衣装で記念撮影

熊野古道 大門坂茶屋

大門坂入り口から100mほどの場所にある「大門坂茶屋」では、平安時代の貴族が着ていた衣装をレンタルでき、非日常な体験ができると人気です。

大門坂茶屋 平安貸衣装

衣装も男性、女性、子ども用でそれぞれ60着以上あり、鮮やかな柄が目を引きます。着物と違い、上下が分かれているので、ズボンのような足運びができるのもうれしいポイント。衣装だけでなく、平安らしさが増す市女笠(いちめがさ)、そして足袋や草履も借りられます。

平安衣装で大門坂の夫婦杉で記念撮影

大門坂茶屋のすぐ近くには大門坂のシンボル・夫婦杉が並び、ここではぜひ写真撮影をしたいところ。平安時代さながらの写真に気分も高揚します。

大門坂の夫婦杉

夫婦杉の樹齢は約800年といわれ、高さは35m以上。圧倒的な存在感を放つ夫婦杉の間を通り、更に奥へと進みます。衣装は夫婦杉周辺での写真撮影コース(ひとり2,000円)のほか、そのまま参道を歩いて熊野那智大社まで向かうコース(ひとり3,000円)もあります。

だいもんざかぢゃや

大門坂茶屋

住所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山392-4
営業時間
9:00~16:00
定休日
なし
電話番号
0735-55-0244
アクセス
大門坂バス停より徒歩約7分

神秘的な空気が満ちた熊野古道の森

熊野古道の杉林

平安時代の貴族が行き来した道を自分たちも通りながら、当時と変わらない杉やシダの森へ入っていくのは不思議な感覚です。

多富気王子の跡地

大門坂は世界遺産にも登録され、道中には熊野九十九王子の最後、「多富気王子(たふけおうじ)」の跡地も残されています。熊野古道には王子と呼ばれる神仏を祀った場所が点在し、参拝に訪れた人たちはここで休憩したり、道中の安全を祈願したりと熊野三山に思いを馳せていました。

熊野古道の天気は変わりやすい

古道沿いには樹齢800年を超す楠の大樹や、空を覆うように伸びた杉林が続きます。多少の雨ならば木々が雨粒を防いでくれるので気になりませんが、熊野エリアの天気は変わりやすいので、雨具を持参すると安心です。雨が本格化すると怖いのが滑りやすくなる石段。傘だと片手が塞がってしまい、バランスを崩しやすくなるのでレインパーカーの方がおすすめです。

大門坂から熊野那智大社までの石段

大門坂から熊野那智大社までは、石段が約800段。斜めになっている所もあり、真っ直ぐに歩けない道のりをどう歩くか、視線を足元に移しながら歩くと徐々に集中力が高まり、頭と心がスッキリしてきます。歩き続けると徐々に自分自身が浄化されていく感覚を味わえます。

熊野三山の一角・熊野那智大社へ

熊野那智大社の社殿

いよいよ目的地の「熊野那智大社」に到着。社殿の周囲は深い緑の森に囲まれ、落ち着いた朱色の社殿とのコントラストは息を呑む美しさです。境内には神聖な気が漂い、こちらの気持ちも整います。

熊野那智大社の八咫烏

こちらでは主祭神の熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)、別名イザナミノミコトを祀っています。境内には三本脚をもつ八咫烏(やたがらす)を祀る「御縣彦社(みあがたひこしゃ)」があり、八咫烏が石に姿を変えて休んでいるとされる烏石(からすいし)もあります。

熊野那智大社の八咫烏の勝守

日本サッカー協会のシンボルにもなっている八咫烏は、熊野の神々のお使いと伝えられ、導きの神様として認識されています。熊野那智大社では勝守(800円)や神殿守(1,000円)など八咫烏が幅広く登場し、可愛らしいデザインのものも。

熊野那智大社と御縣彦社の御朱印

いただける御朱印は熊野那智大社と御縣彦社の2種類。2019年はユネスコ世界遺産に登録されて15周年ということで、記念の御朱印もあります。

くまのなちたいしゃ

熊野那智大社

住所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
参拝時間
6:00~16:30
電話番号
0735-55-0321
アクセス
バス停・那智山より徒歩約15分

ひっそりと佇む那智山青岸渡寺

那智山青岸渡寺

熊野那智大社を参拝したら、隣接する「那智山青岸渡寺(なちさんせいがんとじ)」もお忘れなく。こちらも世界遺産。鮮やかな熊野那智大社に対して、こちらは木材の渋みが建物全体から伝わり、入母屋(いりもや)造りの物々しさが印象的です。

豊臣秀吉の発願により竣工された那智山青岸渡寺の本殿

歴史は4世紀から始まり、6代目にあたる本殿の如意輪堂は豊臣秀吉の発願により竣工されました。本殿内にある鰐口(わにぐち)は参拝の際に鳴らす仏具ですが、その大きさは直径1.4m。重量は450kgにも及び、これは日本最大級のもの。豊臣秀吉の願文が刻まれています。

那智山青岸渡寺の御朱印

御朱印には、西国三十三所の文字が。近畿地方に点在する33ヵ所の霊場を意味し、全て参拝すると極楽往生できると信じられています。その1番目がここ、那智山青岸渡寺から始まっているのです。

那智山青岸渡寺の三重塔と那智の滝

三重塔と那智の滝の2ショットを撮影できますので、ぜひお見逃しなく。

なちさんせいがんとじ

那智山青岸渡寺

住所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山8
拝観時間
5:00~16:00
電話番号
0735-55-0401
アクセス
バス停・那智山より徒歩約15分

太古の昔より信仰を集めてきた那智の滝

那智の滝

なぜ山奥に熊野那智大社や那智山青岸渡寺が築かれたのか…答えは近くを流れる那智の滝の存在です。落差133mは日本一を誇り、平時には毎秒1トンの水量が流れ落ちます。その轟音は山中に響き渡るほど。滝のすぐ横には熊野那智大社の別宮である「飛瀧神社(ひろうじんじゃ)」があります。

自然崇拝の対象として信仰を集めてきた那智の滝

仏教が伝来する以前より、那智の滝は自然崇拝の対象として信仰を集めてきました。滝に向かって直接参拝するのは他に類を見ない方法ですが、その迫力ある姿には有無を言わさない気高さと強さが宿っています。

飛瀧神社(ひろうじんじゃ)のお滝拝所

境内にはお滝拝所(300円)があり、すぐ間近まで見に行けると好評。延命長寿のご利益があるという滝の水を飲める場所もあり、使用した盃は持ち帰れます(1枚100円)。
前日までの降水量で自在に姿を変える那智の滝。多い時は豪雨に打たれるほどの水量を浴びますので、レインパーカーや傘、タオルがあると安心です。

飛瀧神社 御朱印

熊野那智大社の御祭神と関係の深い飛瀧神社では、ここでしか手に入らないお守や御朱印があります。こちらの神社もユネスコ世界遺産なので、世界遺産15周年を記念する限定の御朱印は2019年いっぱいいただけます。

熊野詣 熊野那智大社

熊野詣が流行った平安時代、多くの人たちは京都から向かったので、一番遠い場所に位置する熊野那智大社は三山の中でも最後に訪れる場所でした。三山のうち、参拝する順序は厳格に決まっていませんので、現在はアクセスしやすい場所から巡って大丈夫です。ただ、那智の滝の迫力は凄まじく、ここで熊野詣を締めくくれば感動のフィナーレになります。

なちのたきとひろうじんじゃ

那智の滝と飛瀧神社

住所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
参拝時間
7:00~16:30
電話番号
0735-55-0321(熊野那智大社)
アクセス
バス停・那智の滝より徒歩約1分

那智勝浦の名産・マグロ料理に舌鼓

熊野那智大社 勝浦町

熊野那智大社を訪れる際に立ち寄りたいのが那智勝浦町。駅前や港前には足湯もある温泉地であり、そのうえ漁業も盛ん。特に生マグロの水揚げ高は日本一で、冷凍せずに生のまま食べるマグロは、吸い付くようなもちもちっとした食感が魅力です。臭みの元となるドリップが生じないので、マグロ本来の味を堪能できます。

勝浦漁港 「にぎわい市場」

勝浦漁港に隣接している「にぎわい市場」では、その日に獲れた魚を新鮮なままいただけます。最奥のイベントスペースでは、解体ショーも1日1回実施。

勝浦漁港「にぎわい市場」 「もち鮪」

海鮮丼を提供している「鮪の脇口」では、数種類のマグロ丼を頂け、切り身の販売も。ビンチョウはマグロとしては淡白な味わいが特徴で、赤身の味を堪能したいならキハダや本マグロがおすすめです。特に濃厚な旨味を持つものは自社ブランドの「もち鮪」と呼ばれ、出会える確率は100匹に1匹程度といわれています。

勝浦漁港にぎわい市場

住所
和歌山県東牟婁郡那智勝浦町築地7-12
営業時間
日~金曜日 8:00~16:00(飲食のL.O.15:30)
土・祭日前の日曜日 8:00~18:00(飲食のL.O.15:30)
定休日
火曜日
電話番号
0735-29-3500
アクセス
紀伊勝浦駅より徒歩約5分

豊かな水の資源に出会える那智勝浦エリア

大社が築かれた年はそれぞれ異なりますが、偶然にも熊野三山は滝や川の近くに鎮座するなど水との関わり合いが深いのも特徴的。那智という地名も、もともと大いなる河や滝を意味するサンスクリット語に由来しています。那智の滝や温泉、また生マグロの水揚げ高が日本一など海からの恩恵も受けている那智勝浦エリア。ぜひ訪れた際は、この地域に根付いた水の恵みを満喫してみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文/浅井みらの

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