しまなみ海道サイクリング旅の拠点にしたい、瀬戸田の銭湯併設の宿「yubune」

瀬戸田「yunune」

広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶサイクリングロード「しまなみ海道」。しまなみ海道が通る島のひとつに、レモンや柑橘類に恵まれた生口島(いくちじま)があります。2021年3月、生口島北西部の瀬戸田エリアに、銭湯を備えた宿泊施設「yubune(ユブネ)」が誕生。島唯一の銭湯で癒やされた、1泊2日の旅をご紹介します。

 

尾道からフェリー、車、自転車で渡れる瀬戸内海の島・生口島

瀬戸田港

生口島があるのは、しまなみ海道のちょうど中盤。しまなみ海道はサイクリストの聖地としても有名で、本州・広島県尾道市から、向島(むかいしま)、因島(いんのしま)、生口島、大三島(おおみしま)、伯方島(はかたじま)、大島の6つの島を経て、四国・愛媛県今治市までを結んでいます。

生口島の瀬戸田港は、JR尾道駅前の尾道港からフェリーで約40分、車では30~40分。自転車では尾道から2時間~2時間半ほどなので、サイクリングしながらアイランドホッピングを楽しむのもおすすめです。

Azumi Setoda アクティビティ

フェリーや車で生口島に渡って、島でレンタサイクルを利用するのもおすすめ。島の町並みや海、多島美を眺めながら、のんびりとサイクリングしてはいかがでしょうか。

しまなみ海道・瀬戸田「yubune」

今回ご紹介する銭湯併設の宿「yubune」は、瀬戸田港から徒歩2分ほどのところにあります。

向かいに立つ日本旅館「Azumi Setoda(アズミ セトダ)」の別棟として同時に開業し、島で唯一の銭湯として地元の人にも親しまれています。泊まるもよし、銭湯でサイクリングの汗を流すもよし。「yubune」は旅の拠点としてさまざまなシーンで利用できます。

▼「Azumi Setoda」詳細記事

 

しまなみ海道「yubune」

藍色ののれんをくぐると、売店や受付のあるロビーが。明るい色調の木や白い壁が、旅人をやさしく迎えてくれます。

 

檜が香る素朴ながら上質な客室

自転車持ち込み可能な土間付き客室「土間」

しまなみ海道「yubune」客室

「yubune」には全14室の客室があり、こちらは1階にある「土間」というお部屋。土間とは土足で入れるスペースのことで、かまどを置いて炊事場として使ったり、作業場として使われたり、農具の手入れをしたり、昔の日本の生活様式に欠かせない空間でした。この客室にも土間があり、自転車を持ち込んで置いておくことができます。

瀬戸田「yunune」客室

土間を挟んで両サイドに、掘りごたつのある畳敷きエリアとベッドエリアが。広さは約30平米あり、畳敷きエリアに布団を敷けば、最大3名まで宿泊可能。シンプルながら木のあたたかみを感じる空間で、ゆったりと旅の疲れを癒やすことができます。

しまなみ海道・瀬戸田「yubune」客室

お風呂は銭湯での入浴がおすすめですが、全客室にシャワールームが備わっています。洗面台も木のぬくもりと上質さを感じるデザイン。

 

リビングを中心に据えた客室「居間」

瀬戸田「yunune」客室

こちらは2階にある「居間」という客室。国産の檜がふんだんに使われ、お部屋に入るとやわらかい木の香りに包まれます。

居間はもともと家族がゆっくりと団らんを楽しむ役割を持つお茶の間のことで、フローリングのリビングエリア、両サイドに畳敷きエリアとベッドエリアが。上がり框(かまち)と呼ばれる段差のある立体的な造りが広い空間を演出しています。

しまなみ海道「yubune」客室

「土間」と同じく、広さは約30平米で、畳に布団を敷けば3名まで宿泊可能です。

 

しまなみ海道「yubune」アメニティ

客室では、オリジナルの自家焙煎珈琲やほうじ茶を楽しめます。ミニバーには、瀬戸田産のみかんジュースをはじめ、尾道のクラフトビールや瀬戸内レモンのチューハイなども(有料)。

しまなみ海道「yubune」アメニティ

部屋着はやわらかい肌触りのTシャツとパンツで、家にいるようにゆったりと過ごせます。銭湯に行く際に便利な帆布バッグも用意されています。

 

サウナも満喫! 銭湯でゆったりリフレッシュ

しまなみ海道「yubune」銭湯

「yubune」でいちばんのお楽しみ、銭湯へ。「yubune」と向かいの「Azumi Setoda」の宿泊者は滞在中、何度でも無料で利用できます。

yubune

吸い込まれそうな美しいブルーが基調の大浴場「hinagi」は、瀬戸内海の昼の情景が表現されています。繊細なモザイクタイルの壁画は、美術家・ミヤケマイ氏によるもので、すべて天然の石が使われています。同じ青でもさまざまな色合いの石が使われ、青の奥深さを感じます。

しまなみ海道「yubune」銭湯

もうひとつ、白いタイルが特徴の大浴場「tsukinagi」は、瀬戸内海の月夜が表現されています。昼を描いた「hinagi」と異なり、海の生き物や情景からはどこか静けさを感じます。どちらの大浴場も、ジェットバスや水風呂があり、多彩な湯船を楽しめます。

しまなみ海道「yubune」サウナ
yubune サウナ

そして、サウナも併設されています。水風呂、外気浴のセットを楽しめるので、思う存分“ととのう”ことができます。

しまなみ海道「yubune」銭湯

脱衣所の欄間を見上げると、ここにも瀬戸田の風土にまつわるモチーフが描かれていました。

大浴場に備え付けられたシャンプーやコンディショナーなどのバスアメニティは「yubune」オリジナルで、ほのかに香るレモンが爽やか。男湯と女湯は奇数日に入れ替わります。

営業時間
7:00~22:00(宿泊者以外は10:00~20:00)
料金
yubune・Azumi Setoda宿泊者:無料
宿泊者以外:[平日]大人900円、子ども450円、幼児270円
[土日祝]大人1,200円、子ども600円、幼児360円
※GW、8月、年末年始は特別料金

 

しまなみ海道「yubune」ラウンジ
しまなみ海道「yubune」ラウンジ

「yubune」の2階には、宿泊者が自由に利用できるラウンジ「yuagari」があります。歴史をひもとくと、江戸時代の銭湯にはお茶を楽しめる娯楽スペースがあったそう。

社交の場として発展してきた銭湯。その歴史を汲みとったこの多目的空間では、おしゃべりしたり、くつろいだり、テーブルに並ぶ瀬戸内海にまつわる本を読んだり……。また、ワーケーションにもいいかもしれません。

しまなみ海道「yubune」ラウンジ

シンプルながらもディテールにもこだわりが光る「yuagari」。ここの欄間にも、日本家屋にあった品々を思わせるどこか懐かしいモチーフがデザインされていました。

 

瀬戸内海のマジックアワーは必見

瀬戸田港 夕日

日が暮れる頃、瀬戸田港にサンセットを見に出かけるのもおすすめ。ブルーとオレンジが溶け合う美しい空とおだやかな海、瀬戸内の島々、ときどき通る船。日常の喧騒から離れた、心穏やかな島時間を感じることができます。

瀬戸田 サンセット

月がのぼり始めた空も、また美しいもの。海沿いの道を少し散歩してみると、満天の星に出合うこともできました。

 

夕食は地元の食堂でしまなみ名物・レモン鍋に舌鼓

「御食事処 ちどり」

「yubune」には夕食付きの宿泊プランはなく、施設内にレストランも設けられていません。これは、ゲストが思い思いに瀬戸田を散策し、街の雰囲気を堪能しながら自由に過ごしてほしいという想いから。

というわけで夕食は、宿から商店街を抜けて、徒歩7分程度のところにある「御食事処 ちどり」へ。耕三寺の目の前にある風情ある食堂で、瀬戸内海でとれたタコや生口島のレモンを使った料理が楽しめます。

「御食事処 ちどり」瀬戸田レモン鍋

瀬戸田町は国産レモン生産量日本一を誇ります。その瀬戸田産のレモンが贅沢に使われた「瀬戸田レモン鍋」(2人前5,100円~/要予約)をオーダー。レモン鍋は「ちどり」の人気メニューで、収穫時期によってイエローレモンやグリーンレモンが鍋を美しく彩ります。

「御食事処 ちどり」瀬戸田レモン鍋

鍋の具材はタコ、タコのつみれ、鯛、牡蠣、豚肉、白菜、しめじ、えのきなど。醤油ベースの出汁にレモンの果汁がたっぷり染み込んで、爽やかでやさしい味わいに仕上がっています。シメはチーズリゾット、うどん、レモンチーズパスタからひとつチョイス。地元の旬をたっぷり堪能できるのがうれしい、瀬戸田ならではの夕食でした。

御食事処 ちどり

営業時間
11:00~15:00(土日祝は16:00まで)、18:00~21:00
定休日
火曜日
住所
広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田530-2
TEL
0845-27-0231
公式サイト
御食事処 ちどり

 

瀬戸田の静かな丘の上にある向上寺へ、朝散歩

瀬戸田

「朝の散歩も気持ちがいいですよ」とスタッフの方に教えていただき、朝食前に、宿の近くにある静かな丘まで足を伸ばしてみました。

瀬戸田・向上寺

丘の上に佇む「向上寺」の三重塔の先には、雄大に広がる瀬戸内海と島々。ここは、宿から徒歩10~15分、瀬戸田の港町を一望できる穴場スポットです。散歩にちょうどよい距離で、澄んだ空気を味わいながら、ゆっくりと朝の散歩を楽しむことができました。

 

「Soil Setoda」で海を眺めながら朝食を

Soil Setoda

朝散歩で新鮮な空気を堪能した後は、朝食です。「yubune」の朝食は、瀬戸田港の目の前に位置する「Soil Setoda(ソイル セトダ)」でいただきます。「Soil Setoda」は2021年4月にオープンした宿泊施設で、1階には地域に開かれたダイニング「MINATOYA」があります。

yubune 朝食

朝食は和食と洋食のカンパーニュのチキンメルトサンドから選べます。和食のセットは、広島県産コシヒカリのおにぎり、近海でとれた鯛の出汁が香る味噌汁、県内で自然農法で栽培された「TEA FACTORY GEN」のお茶など、地元の食材にこだわった滋味深い朝食をいただけます。おだやかな朝の海を眺めながら、贅沢な時間を過ごしました。

 

「しおまち商店街」をぶらりと巡り、地元の人のあたたかみにふれる

瀬戸田・しおまち商店街

朝食後は、瀬戸田の町へと繰り出してみました。「yubune」から、昨夜夕食に出かけた「御食事処 ちどり」、人気の観光スポット「耕三寺」まで、昔から続く青果店や酒屋をはじめ、古い家屋を活用した食堂やカフェなどが立ち並ぶ「しおまち商店街」が続いています。

瀬戸田港は潮の変わり目に位置し、江戸時代から明治時代にかけては、航行に適した潮の流れを待つ“しおまち”の港町として栄えました。この商店街も、かつては1日に1万人もの人の往来があったのだとか。

瀬戸田・しおまち商店街「岡哲商店」

まずは、おいしそうな香りに誘われ、「岡哲商店」を覗いてみることに。芸能人らの写真やサインがびっしりと飾られ、足を止める観光客もたくさんいて、何やら人気店の予感……。

瀬戸田・しおまち商店街「岡哲商店」コロッケ

ここは地元で65年続く精肉店。精肉店の隣では、岡田豊子(おかだとよこ)さんが揚げたてのコロッケを販売しています。コロッケは1つ100円。気さくに話しかけてくれる岡田さんのファンも多く、この笑顔に会いにリピートする観光客も多いのだとか。

揚げたてサクサクのお肉屋さんのコロッケは、サイクリストのエネルギーチャージにも大人気。しおまち商店街でぜひ味わいたい、瀬戸田グルメです。

瀬戸田・しおまち商店街

商店街には地元ならではの海産加工物が並ぶお店も。特に干しダコは見た目にもインパクト大! おみやげにもおすすめです。

瀬戸田・レモン色郵便ポスト

また、瀬戸田でぜひ見つけてほしいのは、レモン色に彩られた郵便ポスト。これは、尾道市や地元郵便局などが企画した瀬戸田オリジナルのポストで、地元の住人や子どもたちがペンキで塗ったものだそう。“レモンの島”ならではのかわいい色合いが、観光客にも人気です。

 


しまなみ海道・瀬戸田「yubune」
しまなみ海道「yubune」銭湯
瀬戸田・しおまち商店街「岡哲商店」
瀬戸田水道

瀬戸内の海を眺めたり、レモンや海の幸などを堪能したり、商店街をそぞろ歩きしたり。さまざまな島の恵みと人のあたたかさにふれた、瀬戸田での1泊2日。地域や風土を存分に感じ、充実感あふれる時を過ごせたことで、「また来たい!」という気持ちになりました。

島の憩いの場、銭湯を備えた「yubune」に宿泊して、しまなみの旅を心ゆくまで味わってください。

 

yubune

住所
広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田269
アクセス
瀬戸田港より徒歩約2分
駐車場
無料
チェックイン
16:00(最終チェックイン22:00)
チェックアウト
12:00

※撮影時のみマスクをはずしています

撮影:大林博之 取材・文:アンドウミク

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