提供:テレビ宮崎
2023年4月に行われたG7宮崎農業大臣会合で、宮崎市が各国の大臣に贈呈した「宮崎漆器(しっき)」が注目を集めました。この漆器は、宮崎漆器工房(宮崎市大島町)で9カ月もの工程を経て製作されたもので、その美しさに大臣たちから感嘆の声が上がりました。手に触れると滑らかさと温もりが感じられ、艶やかで上品な仕上がりが特長です。
大島漆器工房では障がい者や施設職員などおよそ40人の職人たちが制作を行っています。太平洋戦争末期の集団疎開地であったこの地には琉球塗りの技術者が存在し、これが漆器作りの起源となりました。1957年に県が雇用の場として社会福祉施設法人が運営する授産所を設置。琉球塗りをルーツとする漆器工房が完成しました。
20代でこの工房に入り、30年間、下地付け一筋のベテラン松浦晴美さん。
18歳から50年以上漆器制作にひたむきに向き合う上杉祐一さん。漆器が褒められると「気持ちがいいですね」と話します。
工房最年少の23歳 温水謙さん。伝統工芸士を目指す温水さんは妥協を許さない仕事ぶり。研ぎの加減がよくないと、前の工程に戻らないといけない繊細な工程を8〜10時間かけて作業するそうで、週に2枚ほど作成しています。
「一枚でも多く」ではなく、「一枚でも綺麗なもの」を作ろうと心がけて作っていると話します。
伝統工芸士 岩元学さん。小さなホコリや音などを遮断した息を呑むような空間の中、数カ月かけてできた土台となる器に漆(うるし)をのせていきます。
漆を塗った後は「漆室(うるしむろ)」で乾燥します。他の塗料と違って乾くのに湿度が必要な漆は、水分を取り込んで中の酵素と反応してから乾燥するので、漆室に入れて湿度をしっかり管理しながら一晩中かけて乾かします。
仕上げは堆錦(ついきん)と呼ばれる絵付け。宮崎漆器の特徴は、漆から作った色付き堆錦餅を薄く伸ばし切り取って加飾。琉球塗りの流れをくむ南国特有の艶やかな風合いの柄が施されています。
矢野テル子さんは27歳の時にこの施設に入所。この道50年以上の堆錦職人で、去年宮崎県の伝統工芸士に認定されました。
故郷に思いを馳せながら、宮崎の地で漆器作りを伝えた琉球塗の技術者たち。宮崎漆器へと名前を変えたその器は宮崎の特産品となり、地元の職人達が大切に育て続けています。
宮崎漆器工房
- 住所
- 宮崎県宮崎市大島町北ノ原1029
- TEL
- 0985-25-3668(月曜から金曜 8:00~17:00)
- 公式サイト
- 宮崎漆器工房
※この記事は、2023年6月3日にテレビ宮崎「U-doki」で放送された内容を転載したものです。
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