鹿児島・薩摩半島の南端にあり、海風がそよぐ温泉地「指宿(いぶすき)」。砂に身体を埋めて汗を流すというユニークな「砂むし温泉」でも知られています。
その指宿温泉の中で、2020年の楽天トラベルの人気宿ランキングで第1位に輝いた「鹿児島 砂むし温泉 指宿白水館」。約1,000坪もの広さを誇る温泉大浴場「元禄風呂」や砂むし温泉を同時に体験できる温泉宿で、2022年に創業75周年を迎える老舗です。オーシャンビューの客室、砂むし温泉、指宿温泉のお湯、鹿児島の味覚が並ぶ夕食や朝食……。海沿いに立つ絶景の宿、「指宿白水館」の宿泊記をご紹介します。
指宿の人気No.1温泉旅館「指宿白水館」
「指宿白水館」は1947年に創業し、創業者の下竹原弘志さんが海沿いに群生する美しい松林を見つけたことがきっかけで、1960年に現在の地に移転。2004年には日韓首脳会談の会場となり、当時の小泉純一郎首相と韓国・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を、近年は将棋の竜王戦の会場として、羽生善治九段や藤井聡太竜王ら、数々の要人をもてなしてきました。
楽天トラベルの指宿温泉の人気宿ランキングでは第1位に輝くなど、伝統と格式、海を目の前に臨む立地、砂むし温泉や充実した大浴場で人気を集めています。
そんな指宿白水館までのアクセスは、鹿児島空港より車で約1時間半。公共交通機関を使う場合は、最寄りのJR指宿駅まで、鹿児島空港からはバスで約2時間、鹿児島中央駅からは特急で55分前後、快速なら60分前後。指宿駅からはタクシーで7分ほどで到着します。指宿駅から1日1便、無料送迎バスも運行しています。
この旅館の敷地面積は約5万坪と広大! 大きく「白水館」と書かれた看板を見つけ、立派な松林を抜けて、エントランスへ向かいます。
館内に入り、まず金色を基調にした豪華絢爛なフロントに圧倒されます。チェックインを済ませ、日本の伝統美を感じる温泉旅館での滞在がはじまります。
ロビーに用意されたウェルカムドリンクは、知覧茶、ゆず水に、なんと芋焼酎まで! この日は、指宿の蔵元「田村合名」の芋焼酎「純黒」が。さっそく鹿児島らしいおもてなしを堪能しました。
オーシャンビューのラグジュアリーな客室「離宮・和洋室」
指宿白水館には離宮、磯客殿(いそきゃくでん)、花の棟、薩摩客殿の4つの客室棟があり、今回宿泊した客室は「離宮・和洋室」。雄大な海を望み、12.5畳の畳スペースとツインベッドを備えた、総面積約84平米のとてもゆとりある空間です。定員は6名で、ファミリーやグループ旅行から、カップル・夫婦での記念日旅行などにもおすすめ。また、大浴場と同じ建物にあり、楽に移動できるので、温泉三昧を楽しみたい人にもおすすめです。
離宮の客室には、1室ずつ花の名前がつけられ、調度品にも同じ花の絵柄があしらわれています。今回宿泊した客室「うめ」は、テーブルやソファの脚にも梅の花が彫られていました。
大きな窓からの眺望も離宮の魅力。眼下には美しい庭園、そして錦江湾と対岸の大隅連山の絶景が広がっています。
床の間に飾られているのは、女将が毎日生けているという生花。日本ならではの文化、おもてなしの心を感じます。
そして、歯ブラシなどのアメニティが入ったポーチは、鹿児島県奄美大島の伝統工芸「大島紬(おおしまつむぎ)」の柄。この旅館のオリジナルです。滞在の思い出に、持ち帰ることができます。さらにうれしいのが、離宮の客室には、「雪肌精」のクレンジングオイル、化粧水、乳液が用意されていること。贅沢な温泉旅を演出してくれます。
源泉かけ流しの温泉付き客室「磯客殿」
4つある客室棟のうち、プライベートな空間で温泉を楽しみたい人にうってつけなのが「磯客殿」。2021年10月に、客室の檜風呂で源泉かけ流しの天然温泉を楽しめるようリニューアル。窓を開ければ半露天風呂気分で、潮風に吹かれながら湯浴みができます。
この「磯客殿・和室」は、広さ約45平米で、定員は5名。足元から高くとられた窓からは、青い海原を望みます。
指宿名物「砂むし温泉」と、9つの湯船を持つ温泉大浴場「元禄風呂」
客室で少しゆっくりしたら、指宿に来たなら絶対にはずせない「砂むし温泉」へ。砂むし温泉は約300年前から指宿に伝わる入浴方法です。温泉成分が含まれた砂に身体を埋めることで、砂の重さによる圧力と温泉の熱で血行促進効果が期待できます。
10分ほど入っていると、玉のような汗が! 指宿白水館の砂むし温泉は、毎日およそ80度の温泉で洗浄・消毒していて、衛生面も安心です。
砂むし温泉
- 営業時間
- 6:00~8:30、15:30~22:00
- 料金
- 大人1,100円、子ども770円
▼詳細記事
シャワーで砂を流したら、そのまま隣接する大浴場「元禄風呂」へ。砂むし温泉で血行がよくなった状態で温泉に浸かることで、より温泉の成分を身体に取り入れることができると言われています。泉質は、天然の保湿成分と呼ばれるメタケイ酸とカルシウムイオンを豊富に含む美肌の湯。
約1,000坪という広さを誇る元禄風呂では、元禄時代、江戸の庶民の社交場であった銭湯の様子が描かれた女湯の「浮世風呂」や男湯の「花魁風呂」、ブクブクと気泡が湧く「泡泉」、露天風呂など、男女それぞれ9つものお風呂を楽しめます。北海道の神黒石を敷いた「樽風呂」は、遠赤外線効果で新陳代謝を促してくれるそう。
内湯だけでなく、露天風呂も広々としていて開放的! 男湯からは美しい松の庭園と海も見渡せます。
肩や腰をほぐす効果が期待できるうたせ湯も。塩分濃度が高い「塩湯」で楽しめます。
元禄風呂
- 営業時間
- 5:30~9:30、15:00~24:00
(5:00~15:00、17:30~25:00はもう1ヵ所の大浴場「松雲」も利用可能)
幻の焼酎「森伊蔵」も無料で試飲できる「焼酎道場」
温泉で癒されたあとは、元禄風呂を出た先にある「焼酎道場」へ。黄金千貫(こがねせんがん)や紫芋といったさつまいも、麦、米、さとうきびなど、さまざまな原料から造られた鹿児島の焼酎が約200種類も並び、購入はもちろん、バーのようにお酒を楽しんだり、16:00~19:00には約50種類を無料で試飲することも可能。ここで試飲して、夕食時に楽しむ銘柄を選ぶのがおすすめです。
特に見逃せないのが「森伊蔵」。鹿児島産の有機栽培のさつまいもを主原料に造られた芋焼酎で、なかなか手に入らないことから「幻の焼酎」とも呼ばれます。抽選や高島屋など、限られた場所でしか購入できない逸品ですが、蔵元と白水館創業者の下竹原さんの縁が深いことから、ここでは購入だけでなく、試飲も可能。森伊蔵は無料で試飲でき、長期熟成された「極上 森伊蔵」はグラス1杯2,200円で飲むことができます。
焼酎道場
- 営業時間
- 6:30~9:30、16:30~23:00(試飲は16:00~19:00)
鹿児島の旬と郷土料理を味わう豪華な夕食
夕食は鹿児島の旬の食材にこだわった和食会席料理を堪能。前菜、吸い物、お造り、炊合せ、焼物、合肴、強肴(しいざかな)、揚げ物、酢の物、ご飯、香の物、止め椀、果物、甘味となんと14品も! 贅を尽くした料理でおもてなしをしたいという想いが込められています。
献立は月ごとに変わり、この日は、霧島サーモンのお寿司や、枕崎産の鰹の酒盗など、7品も盛られた前菜から。夏らしい鱧のお吸い物に続いて、奄美のマグロや伊勢海老、鯛、タコの豪華なお造り4種盛りが登場。そして、炊合せには鹿児島名物・黒豚の角煮が。やわらかく煮込まれ、上品な甘みと旨味を感じる黒豚は絶品でした。
強肴の黒毛和牛ステーキに続いて登場したのは、揚げ物の芋天と鹿児島の郷土料理「ガネ天」。さつまいもや野菜のかきあげのことで、ガネとはカニを意味し、見た目がカニに見えることから「ガネ天」と呼ばれています。芋天には、栗のような甘みが特徴の指宿のさつまいも「マロンゴールド」が使われています。
ご飯は鹿児島県産米ミルキークイーン、止め椀は郷土料理「薩摩汁」が。薩摩汁は鶏肉が入っていることが特徴で、生姜を効かせた指宿白水館ならではの味に舌鼓。最後は風味豊かな知覧茶のアイスと旬のフルーツを味わい、幸せな満腹感に浸りました。
庭を眺めながらいただく雅な朝食
離宮からは美しい朝日が見えると聞き、翌朝は少し早起き。この日は雲間から眩いほどきれいな朝日が顔を出してくれました! オーシャンビューで東向きの離宮ならではの感動の絶景です。
離宮に宿泊すると、朝食は和定食。庭を望む食事処で、雅な時間を過ごせます。
鹿児島名産の魚・キビナゴの煮付けや、エテカレイの干物、黒豚味噌、有明海産の焼き海苔など、ご飯が進みそうな料理がずらり。鹿児島名物のさつまあげは棒天、いわしつみれ、ごぼうと3種類もいただきました。
鹿児島名物が並ぶ朝食バイキングも
磯客殿や花の棟、薩摩客殿に宿泊すると、朝食はバイキングになります。和食から洋食まで約70種類もの料理が並び、好きなものを好きなだけ堪能できます。
さつまあげをはじめ、鹿児島産「紅はるか」のふかし芋、指宿市が日本一の生産量を誇るオクラをはじめとした地元の野菜、郷土菓子「あくまき」など、鹿児島ゆかりの料理もたくさん! フルーツやデザートまで食べ放題というからうれしいかぎりです。
※状況によってはバイキングを中止し、和定食になることもあります
「薩摩伝承館」で豪華絢爛なコレクションを鑑賞
10:00にチェックアウト後、敷地内にある「薩摩伝承館」へ。「ここに来れば薩摩が分かる」をコンセプトに、島津斉彬や西郷隆盛が生きた幕末から明治にかけての薩摩の歴史と文化を伝える美術館です。
館内には指宿白水館のオーナーが約60年かけて収集したおよそ3,000点のコレクションから、300点ほどが展示されています。
特に薩摩の繁栄を目指した島津斉彬が生産を奨励し、ヨーロッパにも輸出された「金襴手薩摩焼(きんらんでさつまやき)」は目を見張る美しさ。それらを飾る「金襴の間」の壁にはおよそ1万枚もの金箔、腰壁には薩摩焼の名窯「沈壽官(ちんじゅかん)窯」十五代目による陶板が用いられています。
2階には、主に民需品として栄えた黒い薩摩焼「黒薩摩」や、西郷隆盛をはじめとした薩摩の偉人にまつわる品などが展示されています。注目は500年以上前、明の時代に中国の磁器の都・景徳鎮(けいとくちん)で作られた「豆彩鶏図杯」(通称:チキンカップ)。大変貴重な品として、いくつかの展示物はテレビ番組でも取り上げられたこともあるのだとか。
薩摩伝承館内のミュージアムショップでは、コーヒーやお茶の無料サービスがあり、鑑賞後はテラスでコーヒータイムを。コーヒーはエチオピア産のイルガチェフ・モカ。オリジナルのフェアトレードコーヒーで、ワインのような風味を楽しめます。松林や池を眺めながら風を感じ、コーヒーを飲む時間はとても贅沢なひとときです。
薩摩伝承館
- 開館時間
- 8:30~18:00
- 定休日
- 無休(メンテナンス休業あり)
- 料金
- 大人1,500円、大学生1,200円、高校生600円、小中学生300円
宿泊者は大人1,000円
ヤシの木に囲まれたプールでリゾート気分を満喫
指宿白水館には屋外プールもあり、例年7~9月末まで営業しています。海のすぐ目の前というロケーションで、ヤシの木が並び、南国リゾート感満載! ジャグジーや子ども用プールもあり、浮き輪の無料貸出などもうれしいポイント。プールサイドに隣接する「喫茶あこう」ではクリームソーダやジュースなどを楽しむこともでき、夏の女子旅やカップルでの旅行、家族旅行にもおすすめです。
屋外プール
- 営業期間
- 7~9月(プールサイドは年中利用可)
- 営業時間
- 9:00~19:00
指宿名物の「砂むし温泉」、多種多様な温泉を備える「元禄風呂」、鹿児島の食を存分に楽しめる夕食・朝食と「焼酎道場」、オーシャンビューの贅沢な客室、行き届いたおもてなしなどを満喫した2日間。今回宿泊した全室オーシャンビューの「離宮」のお部屋は、家族旅行やグループ旅行はもちろん、カップル・夫婦での記念日や特別な日の旅行にもうってつけ。今度の大切な人との旅行は、老舗の温泉旅館でありながら、リゾート気分も味わえる「指宿白水館」に出かけてみませんか。
鹿児島 砂むし温泉 指宿白水館
- 住所
- 鹿児島県指宿市東方12126-12
- アクセス
- JR「指宿」駅よりタクシーで約7分(無料送迎バスあり)
- 駐車場
- 無料
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン20:00)
- チェックアウト
- 10:00
- 定休日
- メンテナンス休館あり
取材・撮影・文/小浜みゆ