鹿児島県・指宿(いぶすき)名物の「砂むし温泉」。砂に埋もれて汗を流すユニークな入浴法で、指宿では約300年前から受け継がれてきました。そして、その効能は大学の医学調査でも実証されているのだとか。「どこで体験できる?」「どうやって入るの?」「マナーは?」といった砂むし温泉に関する疑問を解消し、入浴方法を体験レポートとともに詳しくご紹介します。
指宿名物「砂むし温泉」とは
薩摩半島の最南端にあり、鹿児島湾沿いに温泉宿が立ち並ぶ指宿温泉。その指宿の名物「砂むし温泉」とは、砂に埋もれる入浴法です。指宿のビーチの砂は単なる砂ではなく、海岸に温泉が自然湧出する場所があり、温泉に浸った砂であることが特徴。江戸中期の元禄時代に、砂浜に身体を埋め、湯治をしていたという記録が残されているほど歴史があります。
砂むし温泉の効能
指宿の砂むし温泉の効能は1985年、鹿児島大学医学部の田中信行教授らによる調査で実証済。温泉を含んだ重い砂に埋もれることで全身に圧力がかかることや、温泉の熱で血管が拡張されることによって、血液の循環が促進され、老廃物の排出や炎症性・発痛性物質を洗い出す効果などが期待できるそう。
その他、神経痛・リウマチ・腰痛・関節痛・骨折・脳卒中後麻痺・むちうち・やけど・虚弱児・アトピー・痔・ぜんそく・糖尿病・胃腸病・月経障害・不妊症・貧血・冷え性・便秘・肥満・全身美容などに効能があるとされています。
指宿の砂むし温泉に入れる施設
砂むし温泉は指宿の旅館やホテル、立ち寄り温泉施設で体験可能。砂浴場をもつ旅館・ホテルには、今回取材した「鹿児島 砂むし温泉 指宿白水館」があります。指宿白水館では、宿泊者以外の外来利用も可能です。
鹿児島 砂むし温泉 指宿白水館
- 砂むし温泉 営業時間
- 6:00~8:30、15:30~22:00
- 定休日
- 年中無休(メンテナンス休館あり)
- 料金
- [宿泊者]大人1,100円、子ども770円
[外来入浴]大人4,400円、子ども1,870円
※元禄風呂入浴料込み(砂むし温泉のみの利用は不可)
※外来入浴の受付を中止する場合あり - 住所
- 鹿児島県指宿市東方12126-12
- アクセス
- JR「指宿」駅よりタクシーで約7分(1日1便、無料送迎バスあり)
▼詳細記事
そのほか、
などでも砂むし温泉を体験可能。宿によっては、宿泊者限定のところもあるので、日帰りで訪れる際には事前に確認しておきましょう。
旅館・ホテル以外では、「砂むし会館 砂楽(さらく)」が日帰りで利用可能。波打ち際で(満潮時や悪天候時は屋根付きの砂浴場で)、海岸に自然湧出する温泉に浸った砂での砂浴を体験できます。
砂むし会館 砂楽
- 営業時間
- 8:30~20:30(21:00閉館)
※平日は12:00~13:00の間、清掃のため受付休止
※繁忙期は最終受付時間が早まる場合があり - 定休日
- 年中無休(7・12月に臨時休館あり)
- 料金
- 中学生以上 1,100円、小学生以下 600円
※砂むし入浴には砂よけ用のタオルが必要、200円で販売あり - 住所
- 鹿児島県指宿市湯の浜5-25-18
- アクセス
- JR「指宿」駅よりタクシーで約3分
「砂むし会館前」バス停すぐ - 詳細
- 指宿温泉 砂むし会館 砂楽
10分ほどで大量発汗! 砂むし温泉の入り方・マナー
砂むし温泉がある宿のひとつ、「指宿白水館」で体験してきたのでレポートします! 指宿白水館の砂むし温泉は約1,000坪の温泉大浴場「元禄風呂」を併設しているので、砂むし入浴後、そのまま温泉に浸かれるのが特徴です。
まずは大浴場前のカウンターで料金を支払い、専用の浴衣と帯を受け取ります。それを持って脱衣所へ。
下着も含めすべての衣類を脱いで、浴衣だけを着ます。(浴衣は左のえりが上にくるのが正解。相手から見て、「y」の字になっているのが正しい着方です。)タオル、飲料水は浴室内に用意されているので手ぶらでOK! 入浴前にまず、しっかり水分を摂っておきましょう。
ちなみに、元禄風呂に入ってから砂むし温泉に入ることも可能ですが、砂むし温泉で血行を高めてから元禄風呂に浸かることで、より温泉の効能を得ることができると言われています。そのため、砂むし温泉→元禄風呂の順がおすすめです。
指宿白水館の砂むし温泉は、屋根付きのため、天候を気にせず楽しめます。そして、最大70人が同時に体験できるほど広々! 現在は感染症対策として、1人ひとり、間隔をとって案内してもらえるので安心です。
約80度の温泉で砂を洗浄・消毒している点も指宿白水館の砂むし温泉の特徴です。区画ごとに毎日洗浄・消毒しているため、きれいな砂で体験できます。
いよいよ砂むし入浴! まずは木枕とタオルがセットされた場所に仰向けで寝転びます。砂の上を歩くだけでポカポカ! 表面の温度は約50度、下を掘ると約60度の温かさなのだとか。
寝転ぶと、スタッフの方が身体の上にこんもりと砂を盛ってくれます。ザックザックと砂をのせられると、どんどん重くなってきます。温泉を含んだ砂はなかなかの重さで、身体にのる砂は約15~20kgにもなるのだそう。
窓の外には指宿の空と庭の木々の美しい風景が広がり、心地よい圧迫感と温かさが身体を包み込みます。約54度の砂に埋もれていると、ドクドクと心拍数が増えているのを実感します。
スマートフォンなどを持ち込めないため、自身の携帯電話・カメラで写真撮影はできませんが、フォトサービスもあります(1,100円)。
約10分経過したころには汗がぶわっと! サウナでもこんなに汗をかかないのに、と驚きました。
もし途中でぬるくなってきたと感じたら、リクエストすると、下のほうの熱い砂をかけ直してもらえます。反対に熱い場合は、少し身体を動かして調節したり、リクエストすると、下半身だけ砂をかけてもらうことなども可能です。一度砂から出て、休憩を挟み、また入ることはできません。
砂むし温泉に入る時間は10分程度が目安。時間制限は特になく、最長で40分ほど入った人もいるそうですが、無理は禁物! 出たくなったタイミングで、自力で砂から這い上がります。ちょっと重たいですが、手や足から動かして、ゆっくり徐々に起き上がります。手だけ出た状態はまるでゾンビみたい……?(笑)
砂から出るとスッキリ! 開放感にあふれ、楽しくリフレッシュできました。入浴後もしっかりと水分補給を。たっぷり汗をかいた後の冷たいお水は最高です!
浴衣も肌も、汗と砂まみれ。砂浴場と元禄風呂の間にあるシャワーで、浴衣を脱ぎ、砂をしっかり洗い流します。浴衣と帯は専用ボックスに入れて返却。
シャワーで砂を落として、身体を洗ったら、美肌の湯と呼ばれる指宿の天然温泉に浸かりましょう。元禄風呂は約1,000坪もの広さがあり、露天風呂、うたせ湯、江戸庶民の社交場であった元禄時代の銭湯の様子が描かれたお風呂など、男女それぞれ9つものお風呂を楽しめます。
・脱衣所で下着や水着、衣類はすべて脱いでから入りましょう
・お湯に浸かる前に、身体を洗って汚れを落としましょう
・浴槽にタオルを浸けてはいけません
・髪が長い人は、ゴムでしばったり、タオルを巻いたりして、髪の毛が浴槽に浸からないよう気をつけましょう
・上がる際は、浴室内で身体を軽くふいてから脱衣所に向かいましょう
砂むし温泉に関するよくある質問・注意事項
何分ぐらい入るの?
10分程度が目安です。
禁忌症は?
高血圧(180/100mmHG以上)・心臓病・不整脈・狭心症・肺疾患・妊娠中・炎症・発熱の症状がある方は入浴できません。入浴前の飲酒も控えましょう。
カップルで一緒に入れる?
取材した旅館「指宿白水館」では、砂浴場は男女共用なのでカップルでも一緒に入れます。(大浴場・脱衣所は男女別)
子どもも入れる?
年齢制限はなく、泣いたり嫌がったりしなければ、小さなお子さんでも大丈夫です。(目安として3歳前後)
生理中でも入れる?
生理中は入ることができません。
ユニークな入浴方法を楽しみながらデトックスできる、指宿名物の「砂むし温泉」。指宿のほか、大分県・別府など、国内にいくつか砂風呂はありますが、指宿のような天然温泉の砂むし風呂は世界的にも珍しく、一度は体験したいものです。砂むし温泉を体験しに、鹿児島・指宿にぜひ足を運んでみてください!
取材・撮影・文/小浜みゆ