5年半ぶりに全館営業を再開!創業当時の風情を残した新しい「道後温泉本館」で湯浴みを楽しむ

道後温泉本館

2024年7月11日、5年半の月日をかけて保存修理をしてきた国指定の重要文化財「道後温泉本館」が、全館営業を再開しました。

日本三古泉の一つといわれ、古くは『伊予風土記』に登場し、聖徳太子も訪れたという日本一歴史が古いといわれる道後温泉。日本全国のみならず海外からも多くの観光客が訪れ、全館営業再開後はますますにぎわいを見せています。生まれ変わったばかりの道後温泉の楽しみ方をご紹介します。

 

道後温泉本館

「道後温泉」駅は松山空港から空港リムジンバスで約43分、JR「松山」駅からは市内を通る伊予鉄道市内電車で約25分と、どこからもアクセスのいい場所。バスや電車を降り、観光客でにぎわう道後温泉商店街を抜けると、威風堂々とした姿の道後温泉本館が見えてきます。

 

明治時代の城大工が手掛けた威風堂々とした建築様式

道後温泉本館

道後温泉本館の改築は明治27(1894)年。道後湯之町の初代町長・伊佐庭如矢(いさにわ ゆきや)氏が財政を心配した周囲の反対を押し切り、「100年後もよそが真似できないものを」という想いで、老朽化していた道後温泉本館の改築に着手しました。城大工が手掛けた三層楼の建物や本館正面玄関の唐破風(からはふ)など、重厚感のある姿を今に残しています。

 

道後温泉本館

北側が明治時代に正面玄関があった神の湯本館棟。建物のてっぺんにある振鷺閣(しんろかく)の上で羽ばたく道後温泉のシンボル・白鷺は、当時の正面玄関があった方を向いています。左の建物は皇室専用浴室「又新殿(ゆうしんでん)」がある又新殿・霊の湯棟。

 

夜の道後温泉本館

道後温泉のシンボル・白鷺がとまる振鷺閣が赤く灯り、ライトアップされた夜の道後温泉も風情があります。

 

道後温泉本館

正面玄関の右にある売り場でチケットを購入して、いざ温泉へ! 木の板を踏みしめながら進むと、入り口で昔ながらの番頭さんのようなスタッフの方がチケットを確認してくれます。

 

「霊の湯三階個室」で浴衣に着替えて、ゆったりくつろぐ

霊の湯二階席
霊の湯二階席

道後温泉には「神の湯」と「霊の湯(たまのゆ)」という2つの浴室があります。「神の湯」はお湯だけを利用することもできますが、「霊の湯」は「霊の湯二階席」「霊の湯三階個室」「しらさぎの間」「飛翔の間」の利用でのみ入浴可能。こちら「霊の湯二階席」。大正時代に建てられた南棟にあります。

 

霊の湯二階席

料金
大人2,000円/60分
※お茶、おせんべい、貸浴衣、貸タオル・貸バスタオル付き。又新殿の自由観覧可

 

霊の湯三階個室
霊の湯三階個室

今回、選んだのは「神の湯」「霊の湯」どちらにも入浴ができる「霊の湯三階個室」(大人2,500円/90分)。かつては「上等」と呼ばれ、夏目漱石の小説『坊っちゃん』にも登場するお部屋です。

 

道後温泉本館の浴衣

霊の湯三階個室の利用者の貸浴衣は白鷺模様。道後温泉滞在中は、浴衣に着替えて館内を歩いて浴室へ行ったり、休憩室でくつろいだり、祖父母の家に遊びに来たときのような雰囲気でゆっくりと過ごせます。

 

道後温泉本館の貸タオル

ズバリ「貸タオル」と大きくデザインされた貸タオル。気に入って持ち帰ってもバレてしまうのでご注意を(笑)

 

道後温泉本館

狭くて細い三階の廊下や急な階段の建築様式など、あちらこちらに城建築の名残があり、歴史の中を歩いているような気分に。

 

小説『坊っちゃん』にも登場する石造りの浴室「神の湯」

「神の湯」男子浴室
神の湯の男子浴室

まずは1階にある石造りの「神の湯」へ。浴室の扉を開くと、中央にある「湯釜」と呼ばれる湯口が目に飛び込んできます。石造りの浴槽と湯釜が醸し出す独特の雰囲気が道後温泉の特徴。砥部焼(とべやき)の陶板壁画は男性と女性の浴室で描かれている壁画が異なります。男子浴室の壁画は、道後温泉を発見したといわれている白鷺がモチーフ。

 

道後温泉本館

小説『坊っちゃん』の中にこのお湯が登場します。東京からやってきた坊っちゃんは、このお湯のあまりの気持ち良さに、誰もいないときにここで泳いでしまいます。それが見つかって掛けられたのが「湯の中で泳ぐべからず」という注意書き。これにちなんだ「坊っちゃん泳ぐべからず」の木札が陶板壁画の横にあるのでお見逃しなく!

 

道後温泉本館

木造の雰囲気はそのままに広々と使いやすい脱衣室。保存修理後は冷暖房を新設し、洗面台が個別カウンター式に変更されました。

 

「神の湯」女子浴室
神の湯の女子浴室

「神の湯」の女子浴室。道後温泉とゆかりの深い、大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)が描かれています。保存修理前は男子浴室でしか見られなかった「坊っちゃん泳ぐべからず」の木札が、女子浴室でも見られるようになったそう。

 

男子浴室は豪華な造り、女子浴室は開放感のある空間が特徴の「霊の湯」

「霊の湯」男子浴室
霊の湯の男子浴室

霊の湯の休憩室を利用した人だけが入れる「霊の湯」。こちらは、もともと皇室の随伴者用の浴室だったといわれる男子浴室。大理石など高級石材を使用した豪華な造りが特徴です。

 

「霊の湯」女子浴室
霊の湯の女子浴室

中央の湯釜の上から大国主命と少彦名命が見守る女子浴室。広々とした浴槽は、80cmほどと少し深め(一般の温泉は40~50cmの深さが多い)。気持ちよく肩までつかれます。

 

「霊の湯」女子浴室
霊の湯の女子浴室

「神の湯」「霊の湯」ともに、道後温泉の泉質はアルカリ性単純泉。肌を薄いヴェールで包み込むような優しいお湯は美人の湯とも呼ばれています。

道後温泉は18本ある源泉からくみあげられた約20~55度のお湯を、約42度になるようにブレンドされた、全国でも珍しい温泉です。その都度、天候やお湯の状態に合わせてブレンドされ、いつでも無加温・無加水、源泉かけ流しのお湯が提供されています。少し熱めですが、出たり入ったりをくり返すと、体の芯からポカポカ。一気に疲れが抜けてきます。

 

坊っちゃん団子とお茶

「霊の湯三階個室」に戻ると、お茶と「坊っちゃんだんご」が運ばれてきました。お茶は湯上りにちょうどおいしくいただけるように、冷ましてから提供しているそう。ほてった体にちょうどいい、ぬるめのお茶と甘いお団子の優しいおもてなしに、ほっとひと息。

 

道後温泉本館

道後温泉オリジナルのうちわも用意されていました。売店で購入も可能です。

 

神の湯二階席
神の湯二階席

ちなみに「神の湯」にも、55畳もある大広間の「神の湯二階席」があります。同じ位置がみんな白くなっている柱に目が止まりました。これは温泉客が柱に寄りかって涼むので、長い年月をかけてちょうど柱の背中が当たる部分だけ白くなってしまったのだとか。休憩室の柱一本にも、多くの人に愛された道後温泉の長い歴史を感じます。

 

神の湯二階席

料金
大人1,300円/60分
※神の湯入浴、貸浴衣、お茶、お茶菓子(せんべい)付き

 

日本唯一の皇室専用浴室の「又新殿」で豪華絢爛の建築様式を見学

又新殿
又新殿の御居間

「霊の湯」の休憩室は「又新殿(ゆうしんでん)」の自由観覧付き。明治32(1899)年に完成した又神殿は、日本唯一の皇室専用の浴室です。贅をつくした豪華絢爛な部屋は、道後温泉でしか見ることのできない貴重な文化財。

 

道後温泉本館
又新殿の洞の間(ほらのま)

今回の修復工事で125年前のふすまの銀箔が貼り替えられ、完成当時の輝きがよみがえりました。写真に写すと反射するほどキラキラしています。

 

又新殿の浴室
又新殿の浴室

御影石で造られた浴槽の中央に湯釜が鎮座している、厳かな雰囲気の浴室。この浴室が使われたのは、昭和27年に常陸宮正仁親王がご入浴されたのが最後だそうです。

 

100年前の建物を100年後にも残す……変わらないけれど新しい道後温泉

道後温泉本館

2つの浴室と様々な休憩室で、ゆっくりと過ごせる道後温泉。明治時代の改築当時そのままの、木のぬくもりあふれる湯屋には、疲れた心と体を癒やすようにゆったりとした時間が流れていました。

「新しい道後温泉はどこが変わったのですか?」とスタッフの方に伺うと、「表面的には何も変わっていないんです。むしろ変えずに耐震性を高めることに苦労をしました」とのこと。文化財でありながら生活に密着した公衆浴場でもある道後温泉は、これからの100年先にもこの姿を残すために、時間をかけて見えない部分に手を入れ、新しく生まれ変わりました。改築当時の姿をそのまま残しているからこそ、令和の時代により新鮮さを感じるのかもしれません。次の休日には心と体を癒やしに新しい道後温泉へ遊びに出かけませんか?

 

道後温泉本館

住所
愛媛県松山市道後湯之町5-6
営業時間
6:00~23:00
料金
・神の湯階下(60分):大人700円、小人350円
・神の湯二階席(60分):大人1,300円、小人650円
・霊の湯二階席(60分):大人2,000円、小人1,000円
・霊の湯三階個室(90分):大人2,500円、小人1,250円
・霊の湯三階貸切室 しらさぎの間(90分):大人1組6,000円(人数x1,300円)、小人650円
・霊の湯三階貸切室 飛翔の間(90分):大人1組3,000円(人数x1,300円)、小人650円
※休憩室は場所によって営業時間が異なります
電話
089-921-5141(道後温泉コンソーシアム)
公式サイト
道後温泉本館

 

取材・文/山本美和 撮影/田辺エリ

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