旅の醍醐味は「歴史や文化に触れ、土地の魅力を体感すること」という方も多いのではないでしょうか。そんな体験ができる場所が、のどかな自然に包まれた国頭郡恩納村(くにがみぐん おんなそん)に位置する「琉球村」です。
「琉球村」は、琉球王国時代の生活を再現し、現代に伝える沖縄のテーマパーク。ここでは懐かしい景色や伝統芸能に出会い、地元の人々と触れ合いながら古き良き時代に思いを馳せることができます。今回は見どころがいっぱいの「琉球村」のおすすめの楽しみ方をご紹介します!
目次
本島のほぼ中央部・自然豊かな恩納村へ
那覇空港から「琉球村」へ直接向かう場合は、沖縄自動車道・石川ICを経由して車で約50分。近隣には観光スポットも点在しているので、途中でいろいろ立ち寄りながら、一般道・国道58号を北上するルートもおすすめです。
路線バスで向かうなら、空港から名護行きのバスに乗って約80分。「琉球村」バス停で下車しましょう。バス停から徒歩約2分で、大きな門構えのエントランスに到着します。
中に入るとたくさんのシーサーがお出迎えしてくれました。
約95,000平米もの広大な敷地を有する「琉球村」。園内は無料ゾーンと有料ゾーンに分かれていて、入ってすぐの無料ゾーンには食事処やお土産店、体験施設が並んでいます。屋根付きなので雨の日でも安心して楽しむことができますよ。
より深く楽しみたいなら、ガイドツアーに参加を
有料ゾーンの手前には番所があります。事前に入村チケットを予約購入しておくと、特典がついてお得なのでぜひ活用しましょう。
「琉球村」では毎日、参加無料のガイドツアーを開催しています。事前申込は必要なく、その日の決められた出発スケジュール(1日4回)に番所に集まればOK。村内を知り尽くすスタッフが、1回約20分、丁寧に説明しながら案内してくれます。しかもツアー参加者全員に、琉球村でのお買い物に利用できる琉球村小判(100円分)のプレゼントつき!
番所を抜けてすぐの小道には、沖縄で暮らす魚たちのレリーフが飾られています。「これがグルクン。いっぺーまーさん(とってもおいしい)よ」。ガイドさんのやわらかな沖縄弁に旅情感が高まります。
古民家が立ち並ぶ昔ながらの原風景へ
邪気を払い、福を呼び込むシーサー
道を進むと、勇ましい姿のシーサーが現れました。シーサーは獅子をモチーフにした伝説上の生き物で、琉球王国時代から守り神として親しまれています。
対で置かれる場合は、口が開いているものと閉じているものがセットになっていることが一般的。開口しているのが雄で、閉口しているのが雌と言われています。しかし、ここに並ぶ4体のシーサーはどれも口を開けており、昔はこれが主流だったのだそう。
沖縄三大祭りのひとつ、大綱引き
シーサーに守られるように展示されていたのは、迫力ある大きな綱。これは沖縄の三大祭りの一つ、秋の風物詩でもある「那覇大綱挽き」で実際に使用されたものの一部です。
「那覇大綱挽き」は琉球王国時代からの伝統を引き継ぐ文化催事。国道を東西に分け、繁栄や幸福の願いを込めて巨大な綱を約30分引きあいます。綱は毎年作り替えられますが、平成22年の綱は全長200メートル、総重量43トンにもなり、ギネス世界記録に認定されたのだそう。
綱引き終了後は綱を切って持ち帰り、家内安全、商売繁盛、厄除けなどのお守りにする人も多いのだとか。ガイドさんも、自分で作ったお守りを見せてくれました。
旧仲宗根(なかそね)家
村内には築100~200年の古民家が10棟点在していて、電気もガスもなかった琉球王国時代の暮らしぶりをうかがい知ることができます。最初に立ち寄った旧仲宗根家は1800年代後半に建築された典型的な一般民家。二重になった赤瓦屋根が特徴的です。
琉球王国時代の民家には門扉がなく、代わりに「ヒンプン」と呼ばれる壁が設置されていました。外から家の中が見えないよう目隠しになるほか、台風の時に風が直撃するのを防ぐ役目もあったそう。なんとも沖縄らしいですね。
家の中には昔ながらの織り機と共に、伝統織物が紹介されています。沖縄では地域によってそれぞれ技法・特色が異なるさまざまな織物があり、交易品や琉球王府への献納品として発展を遂げてきました。
そのひとつ「八重山ミンサー」は、八重山諸島でつくられてきた織物。5つの四角と4つの四角で構成した絣模様が特徴で、「いつ(五つ)の世(四つ)までも、末永く」という想いを込めて女性が織り、愛する男性に贈ったのだそう。
海人が使っていた木造の船「サバニ」
沖縄の漁業の盛んな町では、毎年旧暦の5月4日頃に漁の安全や豊漁を祈願した「ハーリー」と呼ばれるレースが行われます。伝統漁船「サバニ」を漕ぎ競いあうというもので、海と共に暮らす海人(うみんちゅ)にとっては大切な伝統行事なのです。
オウギバショウで金運アップ?
村内に植えられている樹木たちも、南国の雰囲気を盛り上げてくれます。開いた扇のような形をしている「オオギバショウ(別名:タビビトノキ)」は、風水的に金運アップに良いとされているのだそう。木に優しく触れながら、願掛けしてみましょう!
沖縄県の蝶「オオゴマダラ」
続いて案内されたのは「喋々ハウス」。ハウス内には亜熱帯植物や原色の花々が咲き、本土では見られない蝶「オオゴマダラ」が飛び回る姿を見ることができます。
沖縄県の蝶として制定されている「オオゴマダラ」は、日本最大種のひとつ。大きな白地の羽を広げゆっくりと舞うのが特徴で、その優雅な姿から「南国の貴婦人」の愛称で呼ばれています。
旧國場(こくば)家
琉球村に建つ古民家のうち8棟は国の登録有形文化財に指定されていて、この「旧國場家」もそのひとつ。移築された古民家の中では比較的新しく、昭和のはじめに建てられたものだそう。沖縄の伝統的な民家の造りを踏襲しつつも、全面の窓にガラスを使うなど近代的な建築が取り入れられています。
正面右手のお座敷は自由に上がることができます。暑い時期にはクーラーも効いていて、おすすめの休憩スポットです。
聞こえてきた三線の音色に引き寄せられ近づいていくと、ネーネー(お姉さん)が「はいたい、めんそーれ!(こんにちは、いらっしゃい)」とうちなーぐち(沖縄弁)で声をかけてくださいました。村人との交流を気軽に楽しめるのも、琉球村の魅力です。
ここでは、琉球泡盛の飲み比べも楽しむことができます(4種500円、6種(古酒のプレゼント付き)1,500円)。古酒(クース)と呼ばれる3年以上貯蔵された泡盛は、まろやかで優しい味わい。ついつい盃が進みます。
飲み比べた泡盛はすべて、旧國場家の向かいにある「咲元酒造」で造られたもの。1902年に首里で創業した「咲元酒造」は、2020年に琉球村内に移転し、今なお由緒ある泡盛造りを継承する泡盛蔵です。
居心地がよすぎてついのんびりしていたら、「そろそろエイサーの公演がはじまるから、行きましょうね~」とガイドさん。案内はここまでとなり、名残惜しくも、石垣が連なる路地を公演会場へと急ぎます。
真剣な演舞が胸を打つ、伝統芸能公演
エイサーをはじめ沖縄の伝統芸能を鑑賞できるステージは、琉球村に来たなら外せないお楽しみのハイライト。毎日数回開催されていて、夏季は屋内の「きじむなー劇場」、そのほかの時期は屋外の広場が会場となっています。公演時間は番所や公式サイトで事前にチェックしておきましょう。
沖縄民謡にあわせた手拍子と共に、和やかな雰囲気で公演がスタート。続いての琉球古武道では、棒を使った華麗な技を披露してくれました。
艶やかな紅型衣装を羽織って踊る琉球舞踊。優雅かつ趣のある所作に見ほれます。
エイサーは旧盆に行われる沖縄の伝統行事です。「イヤササ!」という力強い掛け声や胸に響く太鼓の音、ダイナミックかつソウルフルな演舞に、観ている側のテンションも否応なしに上がります。
気分も最高潮に達したところで、テンポの速い沖縄民謡「唐船ドーイ」が流れ出したら、クライマックスの合図。観客も一緒になって、手踊りのカチャーシーで盛り上がりましょう! 終了後は演者のみなさんと一緒に記念撮影を楽しめますよ。
ランチタイムもグルメで沖縄を満喫
存分に楽しんだらちょっとお腹が空いてきたので、休憩を兼ねていったん無料エリアへ戻ります。一度有料ゾーンの村を出ても、再入場ができるのがありがたいところ。今回は沖縄の食材や旬の素材を使ったメニューがそろう「きじむなあ食堂」に伺いました。
オーダーしたのは、ミニそばともずくの漬物がついた「タコライスセット(1,300円)と、沖縄の炊き込みご飯「じゅーしー」と小鉢がセットになった「沖縄そばセット」(1,000円)。フードコート形式なので、料理を受け取ったら好きな席に座っていただきます。
テーブル席の正面にはステージが設置されていて、毎日12:30から15分間、民謡と琉球舞踊のショーが開催されます。沖縄民謡や琉球舞踊など本格的な沖縄の芸能を鑑賞しながらランチを満喫!お昼のタイミングがあえば、ぜひ体験してほしいおすすめの過ごし方です。
思い出を心に刻むワクワク体験
自分だけのオリジナル! シーサー絵付け体験
琉球村を巡っていたら、沖縄の暮らしに欠かせない守り神シーサーを我が家にも連れて帰りたくなりました。そこで「自分だけのオリジナルシーサーを作ろう!」と、絵付け体験コーナーに立ち寄ってみることに。 1体1,800円で、素焼きのシーサーに好きな色を塗って持ち帰ることができます。
アクリル絵の具はすぐ乾くので、上から色を塗り重ねることも可能。どんなデザインにしようか迷ってしまったら、さまざまな見本を見ながら好みの色や模様を決めましょう。約1時間で、世界にひとつのカラフルなシーサーが完成しました!
琉球紅型を身にまとって、記念撮影
村へ再入場する前にどうしてもトライしたかったのが、琉球紅型の着物体験です。1時間2,000円で衣装を着たまま村内を散策できるので、映える写真が撮れること間違いなし!
スタッフの方が手際よく着付けてくださいます。女性用の着物だけでなく、男性用やキッズ用も用意されていますよ。
王国時代は高貴な人たちしか身に着けられなかったという琉装。髪飾りや花笠も着けたら、実に華やかな装いに。この衣装のまま、再び村へ戻って記念撮影といきましょう。
伝統衣装で楽しむ優雅な村内散策
ガジュマルやヤシの木、赤瓦…昔懐かしい沖縄の原風景に溶け込んで、まさにタイムトリップしたようなベストショットが撮れました。
旧玉那覇(たまなは)家
古民家のひとつ旧玉那覇家の前を通ると、「ひじるーちゃーぐぁ、うさがみそーれー(冷たいお茶を召し上がれ)」と声をかけてもらいました。琉球村オリジナルブレンドの琉球茶をいただきながら、陽気なネーネーとゆんたく(お喋り)のひと時を楽しみます。
旧玉那覇家は、仕切りのない広々とした畳間と大きな土間を備えた開放感のある造り。心地よい風が吹き抜けます。この日は、居合わせたニーニー(お兄さん)が縁側で三線の弾き方を教えてくれました。
ヤギ小屋には、サユリちゃんとユウジロウくん。沖縄では家畜として重宝されてきたヤギですが、ここではみんなを癒やしてくれる人気者です。
旧玉那覇家の横には、神を招いて祭事を行なう場所「神アシャギ」がありました。壁のない四柱造りの竹茅葺き屋根の建物ですが、現在ではコンクリート建てのものも多いそう。
水牛の「だいちゃん」にご挨拶
たっぷりと散策を満喫し出口へ向かうと、その手前で水牛のだいちゃんが待っていてくれました。だいちゃんは、昔ながらの製糖所(サーターヤー)で機械の周りをぐるぐると回り、サトウキビから汁を絞る仕事を担っています。
立派な角がありますが、とても優しい顔をしています。直接触れたり写真を撮ったりすることもできますよ。
楽しかった思い出をお土産と一緒に持ち帰ろう
無料ゾーンに戻って衣装を返却したら、最後は沖縄ならではのお土産選びといきましょう。ショップの外には鮮やかな絵付けが施された沖縄の焼き物「やちむん」がずらり。
旧國場家で試飲を楽しんだ「咲元酒造」の泡盛も各種そろっています。そのほか、かりゆしウェアや琉球ガラス、紅芋タルトやサーターアンダーギーといった定番のお菓子まで、沖縄らしさが詰まったお土産がよりどりみどり。旅の思い出にぴったりの一品を見つけることができますよ。
昔ながらの文化や歴史にどっぷりと浸り、体感することができる琉球村。子どもから大人まで誰もが楽しめるテーマパークなので、初めて沖縄を訪れる方はもちろん、沖縄の魅力を再発見したい方もぜひ一度訪れてみてください。
琉球村
- 住所
- 沖縄県国頭郡恩納村山田1130
- 営業時間
- 9:30~17:00(最終入園16:00)
- 休館日
- なし
- 料金
- 大人2,000円、高校生1,500円、6歳~15歳800円、6歳未満入場無料
- 駐車場
- あり(無料)
- アクセス
- 【車】沖縄自動車道 : 石川ICから約15分
【バス】バス停「琉球村」から徒歩で約2分 - 公式サイト
- 琉球村
撮影・取材・文/吉野友紀