「ツリーハウスに泊まってみたい」「ゆっくりと温泉をひとり占めしたい」「おいしい料理を心ゆくまで楽しみたい」、そんな大人の旅の夢を一度に叶えてくれるのが、奥湯河原の山の斜面に静かに建つ温泉宿、和の海鮮オーベルジュ「BOSCAGE Kariya(ボスケージ カリヤ)」。森の中に浮かぶ部屋で、自然に溶け込むように心ゆくまでゆったりと過ごす1泊2日の旅を紹介します。
BOSCAGE Kariyaへは、東京から新幹線や特急電車を利用して約1時間30分のJR「湯河原」駅で下車、さらにバスやタクシーを使って約20分で到着。車の場合は、東京から東名高速道路を経由して真鶴道路で約2時間。山間の道を箱根方面に上っていくと、美術館のようなスタイリッシュな建物が見えてきます。
6,000坪の敷地にたった5部屋。森に溶け込む静かな宿
奥に宿泊施設があるとは想像がつかない重厚な扉。この扉を開けると、非日常の旅が始まります。
奥湯河原の山の中、昭和初期に外交官・政治家として活躍した重光葵氏の別邸だった場所に建てられたという「BOSCAGE Kariya」。約6,000坪の敷地にたった5室だけという、とても贅沢な造り。どの部屋からも森がきれいに見えるように設計されています。
暮らすように過ごす、森の中の一棟独立型ヴィラにゆっくり滞在
森の中を散歩するようにデッキを通り、今回宿泊する離れの客室「BOSCAGE」へ。ボスケージ=森という名にふさわしい、森に佇む別荘のような木々に囲まれた完全独立型のヴィラタイプです。
ドアを開けると紅葉を敷き詰めたおしゃれな玄関。玄関の木材ひとつにもオーナーのこだわりが詰まっています。
フカフカのじゅうたんが敷き詰められた階段を上って、2階へ。
360度、大きな窓から降り注ぐ太陽の光の中央にベッドとソファが! まるで森の中に浮かぶツリーハウスに入り込んだようです。ベッドに横になれば目に入るのは森の木々と太陽の光だけ。窓から入る心地よい風が頬をなで、自分が森の一部になったような開放感で満たされます。
どこに目をやっても美しい自然と、各部屋のコンセプトに合わせたオーナーこだわりの家具、調度品が並ぶ空間に思わずうっとり。「森の自然をありのままに感じてほしい」というオーナーの想いにより、薄めの素材が採用されたカーテンもこだわりのひとつです。
チェックイン時には、サクッと揚げたてのぎょうざの皮にシラスとからすみをのせたウェルカムフーズのサービスが。さっそく冷蔵庫からシャンパンを出して乾杯!
冷蔵庫の中身は、すべてフリードリンク。シャンパン、ビール、ウイスキーや宿オリジナルのオレンジジュースまで1泊2日では飲みきれないほどのドリンクが用意されていました。温泉の後には冷凍庫に入ったハーゲンダッツのアイスを。
部屋でとことんくつろいでほしいというオーナーの想いは、部屋中にあふれています。例えば、グラス。シャンパン用、ビール用、ソフトドリンク用と3種類のグラスが備えられているので、ドリンクを変えるたびに洗う必要はありません。もちろん、コーヒー、紅茶、お茶も完備。ティータイムもバータイムも、どちらも自分次第で自由に楽しめます。
誰にも気兼ねせずに源泉かけ流しの温泉をひとり占め
ひと息ついたところで早速温泉へ。大きな窓に囲まれた森の中の温泉をひとり占め。チェックインに合わせて約62度の源泉を適温に冷まして貯めておくという、かけ流しにこだわった温泉です。熱ければ、水を足す前によく湯かき棒でかき回せば調整可能。誰に気兼ねすることなく窓から入る気持ちのよい風を感じながら、日ごろの疲れをじっくりと癒します。
アメニティはタイのラグジュアリーブランド「パンピューリ」。髪を洗うと、さわやかなジャスミンとミントの香りがバスルームいっぱいに広がります。
温泉に入った後は、魚柄のかわいい浴衣と湯上り用の靴下でくつろぎます。
湯治をするように温泉に出たり入ったりをくり返すときにうれしいのが、バスタオルの豊富なストック。ふわふわ質感のバスローブも用意されています。
部屋の周りはぐるりと散歩ができる360度の回廊。耳をすませば、優しくそよぐ風と鳥のさえずりだけが聞こえてきます。
今回お邪魔したのは、梅が五分咲きだった2月中旬。葉の落ちた木々の間からかわいい梅の花を望むことができました。自然のままの森を活かした、ここにしかない景観に癒されていきます。
大画面のプロジェクターで映画を楽しむ!
座り心地のよいチェアに座って、鳥のさえずりと風の音をBGMにゆっくりと読書するのも贅沢な時間。
部屋にはプロジェクターが完備され、大画面で映画を楽しむことも! 備え付けのDVDも用意されているので、お茶を飲みながら大迫力の映画鑑賞。
チェックイン後は夕食までほとんどの方が部屋から一歩も出ないと伺って納得。温泉、フリードリンク、眺望、読書に映画、部屋で楽しむことが多すぎて外に出るのが惜しいほど。ここへ来たら、一日中部屋でゆったりと過ごすのがおすすめです。
独立型ヴィラのBOSCAGEの1階には、茶室タイプの和室があります。ここに座って窓から外を眺めると2階から見る景色とはまた違う、水墨画のような静かな自然が広がっていました。3名で宿泊する場合にはこちらに布団を敷いてもらいます。
1階にも温泉付きのバスルームが。2階のバスルームと比べて一面採光の落ち着いた雰囲気の石風呂。こちらも源泉かけ流しなので、湯かき棒でしっかりお湯をもんで好みの湯温にしながら温泉を楽しんで。
部屋ごとに違った森の景色を楽しめる5つの客室
BOSCAGEタイプ以外に、もうひとつの一棟ヴィラタイプが「銀杏(ぎんこう)」。アメリカのスピリチュアルスポットのひとつセドナをイメージしたというアースカラーでまとめられた落ち着いたインテリア。遮光カーテンを使用しているので夜は真っ暗な中で眠りにつけます。
レストラン棟の上には、洋間の「櫻」、和室タイプの「紅葉の間」「竹の間」があります。どの部屋も大きな窓一面から部屋ごとに違った風景を望み、ゆったりと過ごすことができる広い空間です。もちろんそれぞれの部屋にプライベート温泉が付いています。
「おいしい!」を超える、見た目も味も驚きにあふれる一期一会の夕食
いよいよ和の海鮮オーベルジュの真骨頂、夕食の時間。オーナーシェフである苅谷和彦さんが魚市場で水揚げされたものを見てからメニューを決めるというこだわりよう。供される料理のうち1~2匹は直前まで生けすで生きていた魚をさばいているため、その鮮度は抜群。
「お客様におもしろい!と思ってもらいたい」という苅谷さんが手がける料理は、和だけにとどまらない、一期一会ともいえる創作料理。「おいしい!」の一言では語りつくせない、想像を超える料理が次々に登場。そのたびに驚きの声をあげずにはいられません。
見た目にも美しい「甘海老 素麺」に続き、その日仕入れたものを提供するお造り。この日は伊勢海老とクエをこだわったお醤油で。牡蠣は、ピーマンと一緒に牛肉で巻くという驚きの発想!
歯ごたえプリプリのサザエが贅沢にもゴロゴロ入っている「サザエグラタン」、イサキにからすみを合わせた「地魚のカルパッチョ」など、意外な組み合わせが続きます。
デザートのようなかわいらしい盛り付けは「甘鯛松笠焼き」。和の焼き物にシャンパンクリームソースがよく合います。ひと口サイズのパニーニ風「セイコ蟹の焼サンド」は口の中に蟹の風味が広がり、「伊勢海老の蝦マヨ」は噛むと跳ね返してくるような弾力が新鮮さの証。
品数は多いけれど、一品ずつが小盛りなので、女性でも最後まで楽しむことができます。骨董品のような趣のある器もすべて、お茶をたしなむ女将がひとつひとつ吟味して選んだという特別なもの。
白子の上に乗るイクラが贅沢なポン酢和え、熱々の石鍋にはフカヒレとアワビの中華風あんかけおこげ。ジュジュ~という音とあんかけの香りに、食欲をそそられます。ブリとタイは甘辛いたれとともに、ご飯にかけて。
デザートは別腹。自家製焼きプリンとお薄をいただきました。
部屋に戻る頃には、森がライトアップされ窓からは幻想的な風景が広がります。夜になると、イノシシやシカ、アナグマなど、森にすむ野生の動物たちの姿を見かけることも。時間とともに移り変わる景色を楽しめるのも、この宿の醍醐味です。
朝も新鮮な魚が主役。清々しい空気とおいしい朝食を味わう
薄めのカーテンから陽の光を感じる朝。朝日に照らされた森の木々がキラキラ輝いて気持ちのいい空気に満たされています。何回も温泉に入り、素材を活かした料理を食べて、ゆっくり過ごし、朝日が部屋を明るくする時間に気持ちよく目覚めることができました。
朝食を食べにレストランへ。朝日が入りこみ、気持ちのよい空間です。
朝から新鮮なお造りをメインに、鰻のかば焼き、卵焼き、サラダなど、和の海鮮オーベルジュならではの朝食が並びます。
デザートはかわいらしいガラスのカップに入ったクリームぜんざい。ここでは、料理だけでなく器を見るのも楽しみのひとつです。
朝食後、オーナーシェフ・苅谷和彦さんと女将・和美さんご夫妻にお話しを伺うことができました。
長年、「自分で納得のいく新鮮な魚だけをお客様に提供したい」という想いがあり、1日たった5組限定の「BOSCAGE Kariya」を2019年にオープンさせたという苅谷さん。「常に市場で10本の指に入る新鮮な魚を仕入れ、その魚を見てからお客様に喜んでもらえる料理を創作して提供しています」。
ここに来たらお客様には思う存分料理を楽しんで、部屋では温泉に浸かってとことんリラックスしてほしいという気持ちでのおもてなしを心がけているそう。「ありがたいことにリピーターのお客様やクチコミのご紹介で来てくださるお客様が多いんですよ」と、苅谷さん。お料理とお部屋へのこだわりだけでなく、温かな人柄のオーナーや女将と話すのを楽しみに通うお客様も多いというのもうなずけます。
オーナーと女将、お二人の温かいお人柄が随所に感じられる料理やおもてなし、そしてお部屋の開放感に癒された1泊2日の旅。帰るときには呼吸が深くなったように感じました。「BOSCAGE Kariya」はここに来るだけで日常の疲れを癒すことができる、大人の隠れ家のような存在でした。
BOSCAGE Kariya
- 住所
- 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上683-2
- アクセス
- JR「湯河原」駅からバス・タクシーで約20分
- 客室数
- 5室
- 駐車場
- 5台あり、無料、予約不要
取材・文:山本美和 撮影:田辺エリ