日本全国に多数存在する城。外観の美しさはもちろん、塀や堀の造り、城にまつわる歴史などさまざまな魅力があり、多くの観光客を集めています。ただ、「城めぐりに興味はあるけど、たくさんある中からどこに行けばいいのかわからない」、そんな人も多いのでは。そんなビギナーにおすすめの城を、城郭ライターの萩原さちこさんがピックアップ。まずは旅行がてら、この10の城を訪れてみてはいかが?
萩原 さちこさん
城郭ライター・編集者。(公財)日本城郭協会 理事・学術委員会学術委員。(一社)城組 代表理事。執筆業を中心に、講演、メディア・イベント出演などを行う。著書に『城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術〜』(講談社ブルーバックス)、『地形と立地から読み解く戦国の城』(マイナビ出版)、『日本の城語辞典』(誠文堂新光社)、『日本100名城と続日本100名城めぐりの旅』(ワン・パブリッシング)など。
公式サイト:城メグリスト
長野県松本市
松本城
現存する5重6階の城のうち、日本最古の国宝にあたる松本城。白と黒のコントラストがバックに連なるアルプスの山々に映え、美しい景観を生み出しています。
江戸時代に描かれた城下町の絵図をはじめ、松本市出身の故・赤羽通重、か代子夫妻の火縄銃や兵装品のコレクションなど、貴重な展示物も見どころのひとつ。また、日没から22:00までのライトアップを毎日実施しており、日中とは異なる幻想的な光景を楽しめます。
最古の現存五重天守。5つの国宝天守群は、戦国時代と江戸時代の異なる時期の建造で完成。軍事装置の有無や建物内の雰囲気などに注目してみてください。現在では全国唯一の黒漆塗りで、重厚な輝きにも息を飲みます(萩原さん)
- 住所
- 長野県松本市丸の内4-1
- 時間
- 8:30~17:00(最終入場16:30)
※時期により異なる - 定休日
- 年中無休(年末を除く)
- 料金
- 大人700円、小中学生300円、小学生未満無料
- アクセス
- 【電車】JR「松本」駅より徒歩約20分、またはJR「松本」駅よりバス「松本城・市役所前」停下車
【車】長野自動車道「松本」ICより約20分 - 公式サイト
- 国宝 松本城
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石川県金沢市
金沢城
加賀百万石前田家の居城であった金沢城を一般開放した金沢城公園。国の史跡に指定されており、隣接する兼六園と並び、金沢の名所として古くから親しまれています。
慶長7(1602)年の落雷により天守は消失、宝暦9(1759)年の火災で城のほとんどが消失してしまいましたが、平成13(2001)年に菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓を復元。建物自体が展示物になっているほか、夜間はライトアップも楽しめます。
別名・石垣の博物館と呼ばれる石垣の名城です。多種多様な積み方の石垣が、野外博物館のように城内のあちこちに点在しています。異なる石垣の表情をたどりながら歩くだけでも楽しめます。建物のデザインも独創的(萩原さん)
- 住所
- 石川県金沢市丸の内1-1
- 時間
- 7:00~18:00
※時期により異なる - 定休日
- 年中無休
- 料金
- 入園料無料
※入館料(菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓・橋爪門)は別途必要
18歳以上320円、6歳~18歳未満100円 - アクセス
- 【電車】JR「金沢」駅よりタクシーで約10分
【車】北陸自動車道「金沢森本」ICより約20分、または「金沢西」IC、「金沢東」ICより約30分 - 詳細
- 金沢城公園 - 石川県
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静岡県三島市
山中城
天文年間から永禄年間、小田原に本城を置いた北条氏が番城(城主を置かない城)として築城した山中城。傾斜が急な斜面に囲まれた山城で、「岱崎出丸(だいさきでまる)」は遠くに富士山や駿河湾を一望できる絶景スポットとしても人気です。
石を使わず土だけで作られている「障子堀(しょうじぼり)」や「畝堀(うねぼり)」など、約400年前の遺構がそのまま復元された貴重な防御壁は、ぜひ見ておきたいポイント。緑あふれる園内をゆったり散策してみては。
天守や石垣が誕生する前の、戦国時代の土づくりの城デビューにおすすめ。堀底を複雑に掘り残した「障子堀」をはじめ、戦国時代の軍事施設としての城の威力と戦い方がわかります。晴れていれば富士山も見えます(萩原さん)
- 住所
- 静岡県三島市山中新田410-4
- 時間
- 散策自由
※売店は10:00〜16:00(冬季は10:30〜15:30) - 定休日
- 月曜日、年末年始
- 料金
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「三島」駅よりバス「山中城跡」停下車、徒歩約8分
- 詳細
- 山中城跡(国指定文化財「史跡」)-三島市
滋賀県彦根市
彦根城
国宝に指定された3階3重屋根の天守をはじめ、三重櫓(さんじゅうやぐら)や太鼓門櫓(たいこもんやぐら)など重要文化財も数多く見られる彦根城。なかでも、21頭の馬をつないでおける大規模な馬屋は全国でもほかにない、貴重な建造物です。
天守閣から一望する雄大な琵琶湖や、四季折々の草花を眺められる大規模な池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)など、美しい景色が楽しめることでも人気。ゆるキャラのひこにゃんに会えるイベントも毎日開催されています。
城の中心部を大堀切で独立させ、効率よく迎撃。攻略困難なファイトモードの設計も魅力です。国宝の天守は、隠し狭間や隠し部屋など、美観を損ねず防御性を兼ね備えているところに築城時の社会情勢がうかがえます(萩原さん)
- 住所
- 滋賀県彦根市金亀町1-1
- 時間
- 8:30~17:00(彦根城、玄宮園は16:30最終入場、開国記念館は16:45最終入場)
※天守、天秤櫓、太鼓門櫓、西の丸三重櫓、馬屋は16:45閉門 - 定休日
- 年中無休(開国記念館は12/25~31まで休館)
- 料金
- 彦根城の観覧料金+玄宮園/一般800円、小中学生200円
彦根城の観覧料金+玄宮園+博物館/一般1,200円、小中学生350円 - アクセス
- 【電車】JR「彦根」駅より徒歩約15分
【車】名神高速道路「彦根」ICより約15分 - 公式サイト
- 国宝 彦根城
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京都府京都市中京区
二条城
慶長8(1603)年、徳川家康が天皇が住む京都御所の守護と、将軍上洛の際の宿泊所として建城した二条城。15代将軍・徳川慶喜が大政奉還を行った地でもあり、徳川幕府のはじまりから終わりまでを表す歴史遺産として知られています。
国宝に指定されている二の丸御殿や重要文化財の唐門(からもん)、東大手門など貴重な建造物が点在し、見どころも多数。天守閣跡からは京都の街並みや美しい庭園を眺められます。
全国に4つしか残っていない城の御殿のひとつ、国宝の二の丸御殿が最大の魅力。3代将軍・徳川家光が建てた、当時最高峰の技術を投じた桃山文化の極みで、部屋ごとに異なる障壁画や欄間彫刻などに注目です(萩原さん)
- 住所
- 京都府京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
- 時間
- 8:45~17:00(16:00最終入場)
※二の丸御殿は8:45~16:10 - 定休日
- 12/29~31
※二の丸御殿観覧休止日/毎年1月・7月・8月・12月の毎週火曜日、12/26~28、1/1~3 - 料金
- 入城料+二の丸御殿観覧料/一般1,300円、中高生400円、小学生300円、小学生未満無料
- アクセス
- 【電車】地下鉄「二条城前」駅より徒歩すぐ
【車】名神高速道路「京都東」IC、または「京都南」ICより約30分 - 公式サイト
- 二条城 世界遺産・元離宮二条城
兵庫県姫路市
姫路城
正平元(1346年)、武将・赤松貞範が姫路の地に築いた姫路城。西国統治の重要拠点として、羽柴秀吉、池田輝政、本多忠政など名だたる武将が城主を務めました。
江戸時代初期に建てられた天守群や櫓、門などの建造物が現存し、平成5(1993)年には奈良の法隆寺とともに、日本初の世界文化遺産に指定。白鷺(しらさぎ)が羽根を広げたような白漆喰総塗籠(しろしっくいそうぬりごめ)が美しく、「白鷺城」とも呼ばれています。
世界文化遺産に登録されている、世界中の人の琴線に触れる日本の宝。計82の現存建造物があります。8つの国宝から構成される天守群は、どこから見ても美しい造形美が魅力。お気に入りの角度を探してみてください(萩原さん)
- 住所
- 兵庫県姫路市本町68
- 時間
- 9:00~17:00(16:00閉門)
- 定休日
- 12/29、30
- 料金
- 18歳以上1,000円、小中高生300円、未就学児無料
- アクセス
- 【電車】JR「姫路」駅より徒歩約20分、またはJR「姫路」駅よりバス「大手門前」停下車、徒歩約5分
- 公式サイト
- 姫路城
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兵庫県朝来市
竹田城
標高約353.7mの古城山(こじょうざん)山頂にある竹田城跡。天守のない総石垣造りが特徴で、山全体が虎が臥せをしている様子に見えることから「虎臥城(とらふすじょう・こがじょう)」とも呼ばれています。
おすすめの季節は9月から11月下旬の早朝。濃い霧が竹田城跡全体を包み込み、まるで雲に浮かんでいるような幻想的な風景を楽しめます。古城山の向かい、朝来山(あさごやま)の中腹にある展望スポット・立雲峡(りつうんきょう)からの光景も必見です。
「天空の城」として一躍有名に。晩秋の早朝、雲海に浮かぶ幻想的な姿が見られます。山上に累々と残る石垣は、1600年以前に積まれた全国的にも希少なもの。趣ある野面積みの石垣です。技巧的な設計も見事(萩原さん)
竹田城
- 住所
- 兵庫県朝来市和田山町竹田古城山169
- 時間
- [3/1~5/31]8:00~18:00(最終登城17:30)
[6/1~8/31]6:00~18:00(最終登城17:30)
[9/1~9/22]6:00~17:00(最終登城16:30)
[9/23~11/30]4:00~17:00(最終登城16:30)
[12/1~1/3]10:00~14:00(最終登城13:00) - 定休日
- 1/4~2月末は冬季閉山のため入城不可
- 料金
- 高校生以上500円、中学生以下無料
- アクセス
- 【電車】JR「竹田」駅より徒歩約40分
【車】北近畿豊岡自動車道「和田山」ICより約10分(各駐車場まで) - 公式サイト
- 竹田城跡
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岡山県高梁市
備中松山城
現存する天守を持つ12の城のうち、標高約430mと最も高い場所に建つ備中松山城。天守は約11mと最も高さが低いものの、石垣の天守台や正面に造られた唐破風(からはふ)などにより、荘厳な趣を感じられます。
また、山城らしく城までの山道が険しいことも特徴。その分景色がすばらしく、城下町を一望できるほか、9月下旬~4月上旬の早朝には城全体が雲海に包まれる絶景を眺めることもできます。
戦国時代の巨大山城の一部を、江戸時代に石垣づくりの城にリフォーム。2つの時代の姿が共存する城です。天守や二重櫓などの現存建造物のほか、岩盤上のダイナミックな石垣が見どころ。とくに大手門跡付近は圧巻です(萩原さん)
- 住所
- 岡山県高梁市内山下1
- 開館時間
- 9:00~17:30
※時期により異なる - 料金
- 大人500円、小中学生200円
- アクセス
- 【電車】JR「備中高梁」駅よりバス「松山城登山口」停下車、徒歩約30分(ふいご峠駐車場まで)
【車】岡山自動車道「賀陽」ICより約30分(城見橋公園駐車場まで) - 公式サイト
- 備中松山城 - 高梁市公式ホームページ
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愛媛県松山市
松山城
愛媛県松山市の中心部、標高約132mの勝山(かつやま)山頂に本丸を築いた松山城。裾野には二之丸(二之丸史跡庭園)、三之丸(堀之内)があり、広大な平山城の造りになっています。
重要文化財に指定されている天守は、3重3階地下1階。現存する12天守のうち唯一、徳川家とゆかりのある印の「葵の御紋」が付いています。また、壮大な石垣が築かれているのも特徴のひとつ。特に堀之内から望める「登り石垣」は全国的にも珍しいとされています。
迷うのが楽しい、巨大迷路のような城です。天守にたどり着くまでの道のりに巧妙なトラップが散りばめられ、ゲーム感覚でバーチャル城攻めを楽しめます。神業のような、地形に沿った石垣のカーブも圧巻です(萩原さん)
- 住所
- 愛媛県松山市丸之内
- 時間
- 天守/9:00~17:30
ロープウェイ /8:30~18:00
※時期により異なる - 定休日
- 天守は12月第3水曜日
- 料金
- 松山城天守観覧券/大人520円、小学生160円
ロープウェイ&リフト往復券/大人520円、小学生260円
※小学生未満は大人1名につき2名まで無料 - アクセス
- 【電車】JR「松山」駅よりバス「大街道」停下車、徒歩約5分
- 公式サイト
- 松山城
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熊本県熊本市中央区
熊本城
慶長12(1607)年、加藤清正が茶臼山(ちゃうすやま)に築城した熊本城。細川忠利や宮本武蔵など数々の偉人が訪れたほか、明治10(1877)年の西南戦争では籠城戦の舞台となりました。
平成28(2016)年に起こった熊本地震により多くが被害を受けましたが、令和3(2021)年には震災復興のシンボルとして、天守が完全復旧。展示や内装も全面リニューアルされ、新しい熊本城を楽しめるようになっています。
大地震から5年、天守がリニューアルオープン。充実した展示は見ごたえがあります。復旧工事中限定の特別見学通路からは連続枡形を見下ろせ、「過剰防衛のトリプルシステム」を駆使したすさまじい防御力を実感できます(萩原さん)
- 住所
- 熊本県熊本市中央区本丸1-1
- 開園時間
- 9:00~17:00(最終入園16:30)
※天守閣の入場は16:30まで - 休園日
- 12/29~31
- 料金
- 高校生以上 800円、小中学生 300円、未就学児 無料
- アクセス
- 【電車・バス】JR熊本駅より熊本城周遊バス乗車「熊本城」停下車すぐ
【車】九州自動車道「熊本IC」より約30分 - 公式サイト
- 熊本城
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