明治時代、国内外の賓客をもてなす迎賓館として建てられ、現在は高級ホテルとして活用されている京都東山の「長楽館」。その最上階にある通常非公開の和室「御成の間(おなりのま)」が、6年ぶりに特別公開されています。
数々の偉人が訪れた名建築の、普段目にすることができない趣に満ちた空間を堪能できる貴重な機会です。
歴史上の偉人も多く訪れた京の迎賓館「長楽館」
京都市有形文化財に指定されている「長楽館」は、煙草王と呼ばれた明治時代の実業家・村井吉兵衛(むらい きちべえ)の別邸として、明治42(1909)年に建てられたモダン建築。事業の多角化とともに政財界に幅広い人脈を築いていった村井が、国内外の賓客をもてなす迎賓館として使用したのがその始まりです。
当時の来賓名簿には、初代内閣総理大臣・伊藤博文や、大隈重信、山縣有朋、新一万円札の顔として話題の渋沢栄一など、そうそうたる偉人たちの名が連ねられています。なかでも伊藤博文は、「長楽館」という名前を考案した名付け親でもあるそう。
幾何学的な造形が美しいルネッサンス風の外観から一転、内装にはロココ調やネオ・クラシック、アール・ヌーヴォーといったさまざまな建築様式が取り入れられています。
建物は現在「ホテル長楽館」として運営されています。京都市の文化財に指定されている本館にはレストランやカフェ、スイーツブティック、バーを。そして併設する新館に全6室のゲストルームを備えます。
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モダンな洋館で異彩を放つ豪奢な和室「御成の間」
西洋の建築スタイルがちりばめられた本館3階の一角にあるのが、書院造の「御成の間」です。幕末から大正にかけて活躍した日本建築の権威・大島盈株(おおしま みつもと)が手がけた和室で、普段は立ち入ることができません。
その「御成の間」が2024年7月12日~9月30日まで、京都市と京都市観光協会が主催するキャンペーン「京の夏の旅」の一環として特別公開されています。一般向けに開放されるのは実に6年ぶりのことです。
「御成の間」は金銀砂子(きんぎんすなご)を用いた絢爛豪華なふすま絵をはじめ、天井には格式高い折上格天井(おりあげごうてんじょう)の意匠が用いられています。
また、フランスの名門ラグジュアリーブランド「バカラ」製のシャンデリアが飾られるなど、東洋と西洋の文化が融合した豪奢な空間です。
高台に立つ長楽館、その最上階に位置する御成の間は、窓からの眺めも見どころのひとつ。室内の華頭窓(かとうまど)からは京都の街並みが一望できます。
御成の間の隣にある茶室「長楽庵」も通常非公開ですが、この期間は見ることができます。
表千家の「残月亭」の写しと伝えられる茶室で、丸窓に和柄のステンドグラスが美しい、静謐な空間が広がります。
特別公開期間中の平日(8月12〜16日を除く)に「御成の間」を訪れた来場者には、本館1階のギフトショップ「長楽館BOUTIQUE」で購入代金が割引となるうれしいサービスも。当日の拝観券を提示することで、各商品が15%OFFで購入できます。
店内には、オーガニック素材にこだわったパティシエ手作りのケーキ、クッキー、ジャムなどが並べられていて、贈り物として喜ばれること間違いありません。
第49回京の夏の旅 長楽館「御成の間」特別公開
- 開催期間
- 2024年7月12日~9月30日 ※除外日あり
- 公開時間
- 【平日】11:00~17:00
【土日祝】13:30~17:00
【8月13・15・16日】13:30~17:00
【8月14日】14:00~17:00
いずれも16:30受付終了 - 料金
- 大人 800円、小学生 400円
明治維新や文明開化を経て、日本の近代化が大きく進んでいった時代から実に100年以上、京都を代表する洋館として存在感を放ち続ける「長楽館」。明治末期の京にタイムスリップしたような華麗なるモダン建築で、特別なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
ホテル長楽館
- 住所
- 京都府京都市東山区八坂鳥居前東入円山町604
- 総部屋数
- 6室
- アクセス
- JR「京都」駅からタクシーで約15分、京阪電車「祇園四条」駅から徒歩約10分
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