1954年日本初の電波鉄塔として誕生し、長い間、名古屋のシンボルとして市民に愛されてきた「名古屋テレビ塔」。2005年には国の有形文化財にも登録されたという輝かしい歴史を持っています。
その後、電波を発信するという役目を終え、2020年秋、新たにタワーの中に宿泊できる世界初のスモールラグジュアリーホテル「ザ タワーホテル ナゴヤ(THE TOWER HOTEL NAGOYA)」として生まれ変わりました。さらにオープンから1年たたずに日本で唯一「アート愛好家のための必見ブティックホテル世界20選」に選ばれたという、今、国内外から注目されているホテルです。
東海地方の伝統文化を発信するアートで彩られた唯一無二のホテル
アクセスはJR名古屋駅から地下鉄市営桜通線で3駅の「久屋大通(ひさやおおどおり)」駅を降りてすぐという便利な場所。駅から地上に出ると、2020年9月に完全整備が整ったばかりという市民憩いのセントラルパークが南北に延びています。その公園の中央にそびえるのが「中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔)」。今回宿泊する「ザ タワーホテル ナゴヤ」は、その4~5階にあります。
ホテルのコンセプトは「ローカライジング」。東海地方に縁の深い作家が手掛けるアートやクラフトを採用したインテリアや照明を採用し、この地域の伝統や文化を世界に発信することをホテルの使命と考えています。
エレベーターの入り口からインパクトあるアート作品がお出迎え。この先どんなアートと出会えるのかと、期待で胸が躍ります。タワーの脇にある宿泊者、レストラン利用者専用のエレベーターで、チェックインカウンターのある4Fへ。
チェックインカウンターの後ろには、愛知県出身のアーティスト・杉戸洋氏が手掛けたモザイクタイルアートが。テレビ塔から見た今の風景と昔の風景が描かれています。
ルームキーとともに渡されたのは、本日宿泊する部屋の絵葉書。部屋をコラボレートしたアーティストによる解説を読むと、よりアートが身近に感じられます。
タワーの構造材である鉄骨がむき出しのまま活かされたロビー。映像やクラフトアートと相まって、まるで美術館に足を踏み入れたよう。建築やアートに興味のある学生が見学に来ることもあるというのも納得。ここにはホテルのオリジナル商品も並び、気に入ったものを購入することができます。
ロビーの奥にある喫煙所にユニークなアートを発見! タバコを吸わなくても見学したくなるユーモアあふれる空間です。
ロビーから部屋を隔てるのは、「まさかここから客室?」と思うような、STAY ONLYと書かれた重厚なドア。
カードキーをかざすとゆっくりとドアが開き、オブジェが飾られた宿泊者専用のスペースに入ることができます。
壁一面を占拠するセントラルパークの絶景が出迎える居心地のよい部屋
今回宿泊したのは、チェックインカウンターと同じく杉戸洋氏がコラボレートしたL13号室。部屋を入って目の前に広がるのは、南向きの壁一面の窓から見るセントラルパークの絶景! 緑に囲まれた水盤にタワーの姿が映し出され絵葉書のような風景です。
部屋中央の太い柱はタワーの鉄骨の一部。各部屋のコンセプトに合うようにお色直しされた鉄骨は、ここのホテルでしか出合うことができないインテリアです。
夜の眺めはこちら。セントラルパークや近くにある商業施設「オアシス21」(写真中央左)がライトアップされ、窓の外は日中とは一転。幻想的な雰囲気に変わります。
部屋に彩りを添えるのは杉戸氏のペインティング作品。テレビ塔ができた50年代の懐かしさを感じるアートがソファの色味と相まって、温かく居心地のいい空間を演出しています。
使いやすくコンパクトにまとめられたドレッサーや洗面台。かけたコートさえアートのひとつに見えるような“魅せる収納”がおしゃれです。
面台下の引き出しを開けると、アメニティが手に取りやすいように並べられています。客室に備えられたコスメやシャンプー類はすべて「F organics(エフェ オーガニック)」で統一。100%天然由来のコスメは、肌にも環境にもやさしいと女性に人気のブランドです。
持ち帰りOKのウォッシュタオルは、三重県発祥のガーゼ生地とタオル生地を組み合わせた「おぼろタオル」。肌にふんわりやさしい触り心地です。
ゆっくりとメディテーションができそうなシックな雰囲気のバスルーム。バスローブは世界の一流ホテルで多く採用されているというフランス「ガルニエティエボー」社のもの。部屋でゆったりとくつろいでほしいという、こだわりが随所に感じられます。
窓の外を見ながら、ネスプレッソや紅茶でゆっくりとティータイムも。
ひと息ついたころ部屋に届けられるのがウェルカムドリンク。3つのテイスティンググラスには、「バニラの香りの玉露」「レモンの香りの煎茶」「バラの香りのほうじ茶」。それぞれのお茶に合う、おすすめのプチフールが用意され、旅の疲れを癒してくれます。
好きなアートで部屋選びをするという新感覚のホテル
「ザ タワーホテル ナゴヤ」は、スイートルーム2室を含む全15室。それぞれ異なる作家のアート作品が部屋を彩っています。ほかのホテルと違うのは、部屋のタイプで選ぶのではなく部屋のアートや雰囲気で宿泊予約をする点。ただ宿泊するのではなく、新しいアートとの出会いを堪能するようにアートの中で過ごすことができる唯一無二のホテルなのです。
例えば、L10号室は16歳まで名古屋で過ごしたという写真家・瀧本幹也氏とコラボレート。テレビ塔の窓部屋を活かした角部屋には、宇宙を感じさせるアート作品が並びます。
エントランスやバスルームは、テレビ塔の鉄柱がそのままオブジェのように配置されたアーティスティックな佇まい。
5Fにある2室のスイートルームは、都心のホテルには珍しい専用のテラス付き。結婚式前後に家族でくつろぐ部屋として予約する人も多いそうです。
モノトーンでまとめられたスタイリッシュな雰囲気の「PARK TERRACE SUITE(パークテラススイート)」。広々としたテラスでセントラルパークの風を感じながらくつろぐ時間は、特別な日にピッタリの過ごし方でしょう。
もう1室のスイートルームは、大きなソファや木目調のテーブルを配した「FOREST TERRACE SUITE(フォレストテラススイート)」。ラグジュアリーな中にも温かみを感じられる居心地のよい空間です。
館内には至るところにアート作品が飾られています。美術館散策気分でお気に入りのアート作品を探すのも楽しい時間。部屋にある館内アートマップを手に館内の散策を。
5F入り口には宿泊者専用の無料のトレーニングジムがあります。バイクやダンベル、タオルや水なども用意されています。
スイーツ好きにはたまらない!アフタヌーンティーでくつろぎの時間
時間とおなかに余裕があれば、ぜひタワーの2Fにあるレストラン「Lily(リリィ)」でアフタヌーンティーを。
セントラルパークの眺望を目の前に楽しむアフタヌーンティーは、非日常感を味わえる贅沢な時間です。季節のプチスープなど6種類のセイボリーと8種類のスイーツ、飲み放題のドリンクが3,000円でいただけます。
スイーツ好きにぜひおすすめしたいのが、色とりどりの20種類以上の焼菓子がワゴンで運ばれてくる「ミニャルディーズ」(+1,000円)。パティシエが手作りで毎日作っているというスイーツを好きなだけリクエストできるという、スイーツ好きには夢のようなプランです。特にカヌレやマドレーヌは大人気!
レストラン Lily(リリィ)のアフタヌーンティー
- 営業時間
- 13:30~16:30(L.O.14:30)※前日16:00までに要予約
- 料金
- セイボリー6種×デザート8種×ドリンク 3,000円(別途サービス料10%)
- 電話番号
- 052-953-4452
宙に浮いたレストランで地元産の器と食材を楽しむ極上のフレンチ
ディナーはホテル4Fのフレンチレストラン「Glycine(グリシーヌ)」へ。日が暮れ始めると、淡い間接照明にさわひらき氏のアート作品が浮かび上がり、幻想的な空間に。そこはまるで宙に浮いたレストランです。
八事石坂(やごといしざか)にあった予約の取れないレストランとして地元で有名なフレンチレストラン「グリシーヌ」が、ホテルのオープンとともにこちらへ移転。地元作家が手掛けた美しい食器に盛り付けられたお料理は、目で愛で、舌で味わう独創的なフレンチ。旬を追いかけながら月ごとに変わるディナーコースは、ソムリエが厳選するワインや日本酒とともに楽しめます。
今回伺った10月は「秋の訪れ」がテーマ。“恵みの秋”を1枚のプレートに集めた前菜をサーブされると、その美しさに思わず感嘆のため息が。プレートも食器はそれぞれ作家さんのこだわりがつまったもの。その上に地産地消を意識した食材を使ったお料理が並びます。
見た目の美しさ、食感の驚き、深い味わい、器もメニューもシェフ・辻村修氏によってプロデュースされたという、アートホテルにふさわしい“食べる芸術品”! 窓から見える夜景さえも、アートの一部のようにディナータイムを彩ります。
メインに登場したのは地元産の「三河赤鶏」。トリュフをはさんだ鶏むね肉は、驚くほど弾力がありしっとり。コク深いトリュフ入り黄色ワインソースとの相性は感動ものです!
アミューズからデザートまで8品。目と舌で存分にフレンチとアートを楽しんでいると、気づけば3時間。すっかり時間が経つのを忘れていました。
お部屋でゆっくりと過ごしたい人には、ホットドックなどの軽食を中心としたルームサービスも充実しています。
Glycine(グリシーヌ)
- 営業時間
- ランチ 12:00~14:30(L.O.13:00)/ ディナー 18:00~22:00(L.O.19:30)
- 料金
- ランチ 5,500円~(別途サービス料10%)/ ディナー 8,800円~(別途サービス料10%)
- 電話番号
- 052-953-4454
宿泊者専用に解放されたスカイデッキで名古屋の夜景をひとり占め
「ザ タワーホテル ナゴヤ」宿泊者の特権のひとつは、地上90メートルに位置するスカイデッキ「MIRAI360」からの夜景。日中は誰にでも解放されている展望台が、22~26時の間は宿泊者専用になります。
専用エレベーターで上がった展望台はとても静かでロマンチック。さらに屋外のスカイバルコニーでは、日本夜景遺産にも選ばれた眺望を楽しみながらお酒を味わうこともできます。
地元食材を集めた五感で楽しむ「記憶に残る朝食」
多くのリピーターに高い評価を得ているのが、宿泊者のみが利用できる朝食。フレンチのシェフ・辻村修氏が全力で手がけたという和朝食は、「記憶に残る朝食を」というコンセプトのもと、宝箱のような木の箱を開けると地元産の器に地元産の食材を使った美しい料理が並びます。
岐阜県のブランド米「龍の瞳」を地元名古屋の鋳造メーカーである「バーミキュラ」でゲスト一組ごとに炊きあげられるごはんは絶品。名古屋コーチンの卵に5種類の醤油から好みのものを選んで、贅沢な卵かけごはんを堪能できます。
チェックアウトの12時までたっぷり部屋でくつろいだら、1泊2日のアートを楽しむ旅も終わりを迎えます。
今回宿泊したL13号室の絵葉書をおみやげに、次はどのアートに囲まれた部屋を選ぼうか……と、思いはもう次の旅へ。何度来ても新しい発見がある、アートに囲まれた非日常空間での滞在は「ザ タワーホテル ナゴヤ」でしか味わえない醍醐味です。
ザ タワーホテル ナゴヤ
- 住所
- 愛知県名古屋市中区錦3-6-15先
- アクセス
- 【電車】JR名古屋駅より地下鉄桜通線「久屋大通」駅8A出口よりすぐ
【車】名古屋高速道路都心環状線「東新町出口」より車で約3分 - チェックイン
- 15:00(最終24:00)
- チェックアウト
- 12:00
- 総部屋数
- 15室
お天気のいい日は1Fの「Farm&」でカジュアルなティータイムを
チェックイン前やチェックアウト後、時間があればテレビ塔の1Fカフェテラス「Farm&(ファームアンド)」へ。天気のいい日はテラス席で気持ちいい風を感じながら、クラフトビールやレモネードと、地元農家から取り寄せた食材を使ったこだわりの自家製ホットドックを。夏にはビアガーデンなどのイベントも企画されます。
Farm&(ファームアンド)
- 住所
- 愛知県名古屋市中区錦3-6-15先1F
- 電話番号
- 052-953-4451
- 営業時間
- CAFE 11:00~17:00 / DINNER 17:00~22:00(L.O.21:00)
撮影/田辺エリ 取材・文/山本美和