京都には観光スポットが多数ありますが、大人の京都旅におすすめなのが「南禅寺」。緑豊かな境内の四季折々の景色や、美しい庭園をのんびりと楽しめます。
また、有名な三門や水路閣、美しい庭園など南禅寺エリアならではのフォトジェニックなスポットを巡るのもおすすめ。南禅寺名物の湯豆腐など、歩いて回れるおすすめの立ち寄りスポットもあわせてご紹介します。
大人の京都旅にぴったりの南禅寺の魅力
南禅寺までのアクセス
左京区にある南禅寺までは、京都駅から京都市営地下鉄烏丸線で「烏丸御池(からすまおいけ)」駅へ。京都市営地下鉄東西線に乗り継ぎ、「蹴上(けあげ)」駅で下車し、徒歩約10分です。
または、京都駅前のバス乗り場より京都市営バスに乗っても、「南禅寺・永観堂道」と「東天王町」バス停のどちらからも徒歩10分ほどで到着できます。
緑豊かな南禅寺を参拝
南禅寺の正称は「瑞龍山太平興国南禅禅寺(ずいりゅうざん たいへいこうこく なんぜんぜんじ)」。臨済宗南禅寺派の大本山です。
360度の絶景「三門楼上」
南禅寺でも特に有名な建造物が「三門」。別名「天下龍門」とも呼ばれるこの門は、五鳳楼(ごほうろう)と呼ばれる楼が美しく、日本三大門のひとつに数えられています。もとは1295年に創立されましたが火災で焼失し、現在の三門は1628年に再建されたもの。
「絶景かな、絶景かな」というフレーズでおなじみ、歌舞伎『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』の石川五右衛門の伝説でも有名です。
紅葉の季節などの繁忙期は混雑するので、階段に注意して参拝しましょう。
歴史を感じさせる急な階段を上って、楼上へ。三門の高さは約22m。高い建物がない京都市街を見渡すことができますよ。
南禅寺の三門は2階建てになっています。楼上内陣には、本尊の宝冠釈迦座像(ほうかんしゃかざぞう)を中心に、月蓋長者(がっかいちょうじゃ)、善財童士(ぜんざいどうじ)、十六羅僕(じゅうろくらぼく)と、本光国師、徳川家康、藤堂高虎の像が置かれています。
また天井には鳳凰、天人(てんにん)の極彩色の図が描かれていて、こちらは狩野探幽、土佐徳悦の筆だとされています。内陣は撮影できないので、じっくり目で見て堪能してくださいね。
三門楼上からの景色もまた絶景です。遠くは京都市街の町並みのほか、緑豊かな四季折々の南禅寺の境内を見下ろすことができます。
南禅寺の中心「法堂」
三門をくぐったら、奥へ進みましょう。三門から法堂へと続く道は、特に緑が美しいのです。秋には紅葉も楽しめる人気スポット。
法堂は南禅寺の中心となる建物で、公式の法要などが行われます。現在の法堂は、1909年に再建されたもので、1990年に開山大明国師700年大遠忌記念行事として屋根葺替工事と敷瓦(しきがわら)取替工事が行われました。
法堂には本尊釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩の三尊像が安置されていて、床は一面の敷瓦、天井には今尾景年の大作と言われる幡龍(ばんりゅう)が描かれています。
白壁が美しい「本坊」と、美しいお庭「方丈庭園」
白と黒とのコントラストが美しい本坊の拝観券で、方丈庭園まで見られます。
本坊の左手にあるのは、大玄関。特別な行事の時にのみ使われる玄関です。通常は中に入ることはできませんが、石畳と玉砂利が美しく、特別な雰囲気があります。
本坊の廊下は、板張りになっています。
大玄関には、南禅寺の山号(さんごう)である「瑞龍」の文字が描かれています。
方丈へと続く廊下には、南禅寺オリジナルの映像を見られるスペースも。約10分間の映像で、南禅寺についてより深く知ることができますよ。
また、お茶券1人500円を購入すると、玄関を入ってすぐ右手にある滝の間で、滝を眺めながらお抹茶をいただくことができます。
お抹茶には、南禅寺オリジナルの紋菓つき。清涼の滝と呼ばれる滝が流れる音を聞きながら、ほっと一服するのもおすすめです。
複数の重要文化財を見られる「方丈」
南禅寺の方丈は、大方丈と小方丈からなり、どちらも葺きの国宝指定の建造物です。1611年に御所の建物の下賜を受けて再建されました。
本坊から進むとまず見えてくる大方丈の「御昼の間」は、この建物が御所にあった当時、昼の御座であった御帳(みちょう)の間であったスペース。近世の宮室建築を間近に見ることができます。
内部は重要文化財に指定された狩野派絵師筆による障壁画で彩られていましたが、400年もの歳月の経過により傷みが見られたため、2011年12月に124面中84面を当時の色合いで復元した新たな障壁画に入れ替えられています。
方丈庭園は、小堀遠州作と伝えられる枯山水庭園。1951年に国指定の名勝となった、「虎の子渡しの庭」と呼ばれる巨大な石を横に寝かして配置された庭です。
大方丈の背後に接続した小方丈の中でも有名な障壁画が、国の重要文化財に登録されている南禅寺小方丈の「群虎図(ぐんこず)」。狩野探幽筆と伝えられる40面の障壁画は、豪華で猛々しい虎が生き生きと描かれています。障壁画は撮影禁止ですが、襖絵「群虎図(水呑の虎の図)」は御朱印帳にも使われています。
小方丈の庭園は、別名「如心庭(にょしんてい)」といわれています。心字型(しんじがた)に庭石を配した禅式枯山水の石庭で、悟りの心の風景を表しているとされています。
さらに奥へと進んだ場所にあるのが、「六道庭(ろくどうてい)」。六道輪廻の教えを考える庭とされています。杉苔の美しい庭を、ぜひゆっくりと眺めてください。
庭園を楽しむ「南禅院」
南禅寺は、亀山天皇が1289年に出家して法皇となり、離宮を寄進して禅寺として大明国師を開山としました。南禅院は離宮の遺跡であり、また南禅寺発祥の地でもあります。
南禅院庭園は鎌倉時代末期の代表的な池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)で、京都の三名勝史跡庭園のひとつに指定されています。
南禅院の方丈は、徳川綱吉の母・桂昌院の寄進で1703年に再建された、総桧の入母屋造こけら葺きの建物。内陣中央には重要文化財に指定された亀山法皇御木造が安置されています。
庭園にある池は上池と下池からなり、上池は竜の形を模しているとされています。南禅院はこの池の周りをぐるりと回りながら、美しい庭を観賞することができます。創業当時のおもかげを残す南禅院の庭園をゆっくりと散策して、鎌倉時代に思いを馳せてみては。
南禅寺
- 住所
- 京都市左京区南禅寺福地町
- アクセス
- 【電車】市営地下鉄東西線「蹴上」駅より徒歩約10分
【バス】京都駅より京都市営バス「南禅寺・永観堂道」または「東天王町」下車、徒歩約10分 - 拝観時間
- 8:40~17:00
冬期(12月~2月28日)8:40~16:30 - 定休日
- 12月28日~31日
- 拝観料
- 三門:大人600円、高校生500円、小中学生400円
方丈庭園:大人600円、高校生500円、小中学生400円
南禅院:大人400円、高校生350円、小中学生250円 - 電話
- 075-771-0365
- 詳細
- 南禅寺公式ページ
- 拝観上の注意
- 建物内の撮影は原則不可
南禅寺から歩いて巡れる周辺スポットも充実
外国人にも人気のフォトジェニックな「水路閣」
南禅院の目の前、南禅寺の境内にある「水路閣」。琵琶湖から京都市内へと引かれた琵琶湖疏水の一部で、1888年に完成しました。全長93.2mのレンガ・花崗岩で造られたアーチ橋脚の構造物で、国および京都市指定の史跡です。
この水路閣のアーチ橋脚が美しいと、若者や外国人からも人気。アーチ橋脚の奥行きを活かせば、こんな味のある写真も撮影できますよ。
ちなみに、こちらの水路閣は現役。現在も琵琶湖疏水がとうとうと流れています。水路閣の様子は、一般の人でも近くで眺めることができます。
美しい庭園を楽しむ「天授庵」
南禅寺方丈や水路閣から徒歩2分ほどの場所にある「天授庵」は、南禅寺塔頭(たっちゅう)のひとつ。枯山水の庭と池泉回遊式の庭がある、庭を楽しむ施設です。
枯山水の庭では、敷石と苔の美しいコントラストが楽しめます。秋には一面が美しい錦に染まる紅葉スポットとしても人気で、夜には紅葉のライトアップも楽しめます。(2023年の紅葉ライトアップは中止)
枯山水の庭と池泉回遊式の庭との間は、門で仕切られています。それぞれ違った趣があり、2つの庭を一度に楽しむことができます。
池泉回遊式の庭には、大きな池が2つ。1つ目の池の水面には池の周りに植えられた木々が映り込み、幻想的な風景が広がっています。
2つ目の池には蓮が広がっています。池の周りをぐるりと歩きながら、角度によって異なる景色を楽しむことができます。
天授庵(南禅寺塔頭)
- 住所
- 京都市左京区南禅寺福地町
- アクセス
- 【電車】市営地下鉄東西線「蹴上」駅より徒歩約10分
【バス】京都駅より京都市営バス「南禅寺・永観堂道」または「東天王町」下車、徒歩約10分 - 拝観時間
- 9:00~16:45
冬期(11月15日~2月末)9:00~16:30 - 拝観料
- 大人500円、高校生400円、小中学生300円
- 定休日
- 11月11日午後~12日午前は行事のため休止
- 電話
- 075-771-0744
珍しい造りのトンネル「ねじりまんぽ」
「ねじりまんぽ」は、三条通から南禅寺へ向かう道路の造成に伴って1888年に完成したトンネル。「まんぽ」とは、トンネルのことを指す古い言葉なのだそう。
トンネルの上部にある、台車に乗った船が行き交うインクラインの重さに耐えられるように、内部のレンガが斜めにねじれているように巻かれていることから、ねじりまんぽという名で呼ばれています。
フォトジェニックと人気の「蹴上インクライン」
ねじりまんぽから徒歩2分ほどのところから入れる「蹴上(けあげ)インクライン」。インクラインとは、傾斜鉄道のこと。国の史跡にも指定されています。フォトジェニックな写真が撮影できるとして人気の高いスポットです。
また、桜のスポットとしても知られ、春には満開の桜の下で写真を撮るのもおすすめです。
琵琶湖疏水の蹴上船溜から南禅寺船溜までの区間は高低差が大きいため、かつては船ごとインクラインの台車に載せて運搬していたのだそう。
蹴上インクラインは現在は使われていませんが、一部当時のレールを再び敷設して復元しています。ぜひこの風景を活かして、ノスタルジックな雰囲気のある1枚を撮影してみてください。
ねじりまんぽ・インクライン
- 住所
- 京都市左京区南禅寺福地町
- アクセス
- 【電車】市営地下鉄東西線「蹴上」駅より徒歩約4分
【バス】京都駅前より京都市営バス「岡崎法勝寺町」下車、徒歩約10分
南禅寺を訪れたら外せない、湯豆腐の老舗「順正」
南禅寺グルメといえば、やはり湯豆腐。南禅寺の湯豆腐は、江戸時代の京都の案内書『花洛名勝図会(からくめいしょうずえ)』にも掲載されているほど、その歴史が古いのです。
そのため、南禅寺周辺には現在も湯豆腐の名店が軒を連ねています。南禅寺方丈や水路閣から徒歩4分ほどの場所にある「南禅寺 順正(じゅんせい)」は、そんな湯豆腐の名店のひとつ。
「ゆどうふ(花)」(3,630円)は、女性や小食の人にもおすすめのボリューム。ゆどうふをメインに、焚合(たきあわせ)、田楽、進肴(すすめざかな)、小鉢、御飯、香物が付いて、いろいろなものを気軽に楽しめるコースになっています。
クツクツと軽く煮た時に、柔らかさと大豆の風味を楽しめるように計算されたお豆腐は、木綿豆腐とは思えないほどふんわりとなめらか。特製のたれでいただきましょう。
食後には、ぜひ庭園散策を。書院玄関脇から国の登録有形文化財の石門をくぐると、東山を借景にした庭園が広がっています。大きな池には鯉が泳ぎ、四季折々の景色が楽しめる美しい庭園散策は腹ごなしにもピッタリです。
庭園にある「順正書院」は、国の登録有形文化財。江戸時代に医学学問所として建てられた建物で、幕末の京都の案内書にも記されています。大名や文人墨客が集った歴史ある書院を眺め、思いを馳せてみるのも。
南禅寺 順正
- 住所
- 京都府京都市左京区南禅寺門前
- アクセス
- 【電車】市営地下鉄東西線「蹴上」駅より徒歩約5分
【バス】京都駅より京都市営バス「南禅寺・永観堂停留所」下車、徒歩約10分 - 営業時間
- 11:00~21:30(L.O.20:00)
- 定休日
- 不定休
- 電話
- 075-761-2311
- 詳細
- 南禅寺 順正公式ページ
もうひとつの湯豆腐の名店「八千代」
南禅寺方丈や水路閣から徒歩約7分の場所にある「八千代」は、南禅寺参道沿いにある草庵茶室にならった簡素枯淡な趣のある宿。
庭園レストランは「料庭」と名付けられ、老舗料亭の京料理と植治(うえじ)の庭を味わえる空間です。
八千代の庭園は、小川治兵衛(おがわじへえ)によるもの。山県有朋の別邸・無鄰庵(むりんあん)や円山公園、東京の旧古河庭園といった、明治から大正にかけての名庭園を数多く手がけた近代を代表する名庭師による意匠は必見です。夏は緑を眺めながら、春にはお花見をしながら、湯豆腐や京料理を楽しむことができます。
八千代
- 住所
- 京都府京都市左京区南禅寺福地町34
- アクセス
- 【電車】市営地下鉄東西線「蹴上」駅より徒歩約5分
- 営業時間
-
昼の部 11:00~15:00(L.O.14:00)
夜の部 17:00~21:00(L.O.19:30)
※年末年始・紅葉期・桜時期の営業時間
昼の部 11:00 ~ 16:00(L.O.15:00)
夜の部 17:00 ~ 21:00(L.O.19:30) - 定休日
- 無休
今回は、大人の京都旅におすすめの南禅寺とその周辺のスポットをご紹介しました。京都市の中でも緑豊かなエリアである南禅寺とその周辺エリア。庭園が多いので、秋の紅葉はもちろんのこと、四季折々の景色が楽しめるのでぜひ訪れてみては。
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取材・撮影・文/河合理恵