阿蘇の光芒スポットと撮影テクニックをプロに聞きました!
九州の中心に位置する熊本は、阿蘇山など雄大な自然を有する観光地。夏になると菊池渓谷をはじめ、光の筋がくっきり見える光芒のシーズンを迎え、この美しい風景を撮ろうと全国から多くの人が訪れます。また、雄大な阿蘇の大自然で心地良い風に吹かれ、温泉で日頃の疲れを癒すのもおすすめ。今回は、写真家・清家道子さんが熊本・阿蘇周辺エリアの光芒スポットを中心に、プロの撮影法を紹介します。
写真家
清家 道子(せいけ みちこ)さん
日本写真家協会会員。 福岡県生まれ。1987年よりカラーコーディネーターとして福岡で起業。20年以上、カラーデザインやカラーマーケティングなどの仕事を手がける。2009年より趣味だった写真を本格的に始め、風景写真家に。地元九州を中心に、日本全国の美しい風景を撮影。2012年より企業カレンダーを手がけるほか、写真雑誌への寄稿、カメラメーカーでの講演、撮影会なども行っている。YouTube「清家道子チャンネル」では、風景ショートムービーや撮影テクニックなどを配信中。
目次
おすすめの絶景スポット【1】菊池渓谷
熊本県菊池市の東部、阿蘇くじゅう国立公園の一角にある「菊池渓谷」は、梅雨が明けると光芒のシーズンです。これを目的に全国から多くの観光客やカメラマンが訪れ、最近ではインスタグラマーの方も見かけるようになりました。土・日などは三脚がずらっと並ぶこともありますので、早めに準備して向かうようにしましょう。
光芒が出るのは夜明け。太陽が昇り始めると渓谷の上流から太陽の光が差し込み始め、渓流の靄(もや)にその光が描き出されます。条件としては天気が良いことと、渓流にうっすら靄がかかっていること。ですから、雨の日の翌朝などが狙い目です。
太陽が昇る時間は日によって違いますので、事前にアプリなどで確認しておきましょう。光芒が見られるのは、梅雨明け~8月上旬くらいです(それ以外でも場所によっては見られる場合があります)。
菊池渓谷の一番奥に広がる「広河原」の様子です。ここでは、やはり朝早い時間から三脚が並んでいます。三脚を立てる場所がない場合は、少し下に降りると撮影できるポイントがあると思いますので、あきらめずに探してみてください。撮影に必要な機材はカメラ、三脚、PLフィルター、また、あれば滑りにくい靴も。朝は肌寒いので、一枚上着もあると良いでしょう。
カメラの絞りはF9~F16くらい絞って撮影します。シャッター速度は表現にもよりますが、0.6 秒~1.3秒くらいを目安にしてください。
菊池渓谷
- 住所
- 熊本県菊池市原5026
- アクセス
- 【電車】JR「熊本」駅より熊本電鉄バス「菊池温泉」まで約70分、菊池温泉より予約制「きくち観光あいのりタクシー(土・日・祝・振休・GW運行)」で約30分
【車】九州自動車道「植木」ICより約40分 - 料金
- 高校生以上200円(菊池渓谷の清掃、環境美化のための協力金)
- 公式サイト
- 熊本県 菊池渓谷
おすすめの絶景スポット【2】鍋ヶ滝
「鍋ケ滝」も光芒スポットとして大人気です。鍋ケ滝公園の入園は、2021年11月4日よりWebからの事前予約制となっていますのでご注意ください。この場所はCMのロケ地として話題になり、インスタグラムなどにもたくさん投稿されていますよね。そこで、ちょっと見方を変えたカットも撮ってみましょう。
例えば、光芒の一部分を切り取って雰囲気の違う一枚に仕上げてみましょう。何かほかの被写体をメインにするだけで、自分らしい写真になります。こちらはF16シャッター速度1秒で撮影。三脚を使用しています。とても人気のスポットですので、ほかの方と譲り合って撮影するようにしましょう。
鍋ヶ滝公園
- 住所
- 熊本県阿蘇郡小国町黒渕
- アクセス
- 【車】大分自動車道「日田」ICより約60分
- 料金
- 高校生以上300円、小・中学生150円
- 詳細
- 鍋ヶ滝 「ウェブからの事前予約制 - 小国町」
おすすめの絶景スポット【3】夫婦滝
縁結びの滝としても知られる「夫婦滝」の光芒も、とても人気が高いです。こちらも夜明けから光芒が出始めますので、時間を確認してから訪れてみてください。菊池渓谷に比べると撮影できる場所が狭いですが、三脚を使用し、PLフィルターを付けてシャッター速度1秒前後で光の筋を描いてみましょう。
夫婦滝
- 住所
- 熊本県阿蘇郡南小国町満願寺
- アクセス
- 【電車】JR「阿蘇」駅より車で約25分
- 詳細
- 夫婦滝 | 観光 | 熊本県阿蘇郡南小国町 公式ホームページ
おすすめの絶景スポット【4】カッパ滝
宇土谷川(うとだにがわ)の川辺に位置するキャンプ場・公園「遊水峡」。その奥にある美しい滝が「カッパ滝」です。ここは光芒は出ませんが、9月の午後には虹を見られることも。虹を撮るときはPLフィルターを使い、虹の色が一番きれいに見えるよう調整しましょう。この滝の特徴は、個性的な岩肌と木々、そして苔の緑の色合いの美しさです。
こちらは横構図より縦構図の方が収まりが良いと思います。滝の流れは、やはりスローシャッターが美しいですね。面倒でも三脚をしっかりと据えて撮影しましょう。
初夏から真夏にかけての渓谷は緑がとても美しいです。渓流全体を撮影したら、ぜひ足元の小さな風景にも目を向けてみましょう。キラキラした映り込みがきれいですよ。これは三脚を立てて、スローシャッター(1秒)で水の表面をなめらかに表現しました。
木漏れ日も美しい季節です。上を見上げると、葉っぱが透過光を受けて緑色が輝いています。
こういうときは望遠レンズが便利です。レンズの絞り開放(F2.8など)で撮影すると、爽やかな印象の写真を撮ることができます。そして、順光よりも逆光の方がイメージにあった写真が撮れますので、撮影するときは常に太陽の方向を意識することが大切です。
カッパ滝
- 住所
- 熊本県阿蘇郡小国町西里
- アクセス
- 【車】大分自動車道「日田」ICより約40分
- 詳細
- 遊水峡【公式ホームページ】
おすすめの絶景スポット【5】外輪山&阿蘇五岳
阿蘇の巨大なカルデラを囲む「外輪山(がいりんざん)」。その周辺にはのどかな風景が広がり、いたる所で牛の放牧が見られます。
ここは、安全な場所に車を停めてから撮影を楽しんでください。特に初夏には、牛道(牛が草を食べながら歩いた後にできる道のこと)が見られ、私たちの目を楽しませてくれます。PLフィルターを付けて青空を入れ、夏らしい写真に仕上げてみましょう。
こちらは外輪山の新緑の様子です。
お釈迦様が仰向けに寝ている姿に似ていることから、涅槃像(ねはんぞう)と呼ばれている「阿蘇五岳(あそごがく)」。根子岳(ねこだけ)、高岳、中岳、烏帽子岳(えぼしだけ)、杵島岳(きしまだけ)を総称して阿蘇五岳と呼ばれますが、写真を撮るときは涅槃像の姿がきれいに収まるよう、ファインダーで確認しながら撮影しましょう。
阿蘇山
- 住所
- 阿蘇中岳火口/熊本県阿蘇市黒川
- アクセス
- 【電車】JR「阿蘇」駅より産交バス「阿蘇山西駅」下車など
【車】九州自動車道「熊本」ICより約80分 - 詳細
- 阿蘇山
おすすめの絶景スポット【6】池山水源
熊本には環境省が選定する名水百選の水源も数多く存在し、その中の一つが「池山水源」です。毎分30トンという豊富な湧水を誇るこの水源は原生林に囲まれており、いつ訪れても癒されるおすすめスポットです。美しい水の様子を写真に収めてみましょう。
水の中に沈む葉っぱもクローズアップして撮ると、自分らしい写真になります。足元の美しい風景をぜひ見つけてみましょう。この写真は手持ちでシャッター速度を早めにし、ブレないように撮影しています。
池山水源
- 住所
- 熊本県阿蘇郡産山村田尻14-1
- アクセス
- 【電車】JR「宮地」駅から車で約30分
- 詳細
- 池山水源 - 産山村
おすすめの絶景スポット【7】上色見熊野座神社
「上色見熊野座(かみしきみくまのいます)神社」はSNSで話題になり、近年大人気のスポットです。
撮影は春から夏にかけて緑が映える季節、早朝の朝靄に包まれた時間帯がおすすめ。PLフィルターを付けて、山道から続く林の美しい緑色を最大限に出して撮ってみましょう。レンズは標準レンズを使い、木々が真っ直ぐになるように構図を決めます。
神社の階段はかなり長いので、歩きやすい靴を履いていくと良いでしょう。
上色見熊野座神社
- 住所
- 熊本県阿蘇郡高森町上色見2619
- アクセス
- 【電車】南阿蘇鉄道「高森」駅より車で約10分
おすすめの絶景スポット【8】かぶと岩展望所
阿蘇といえば雲海も有名で、1年を通して条件が合えば出会うことができます。特に雲海が出る条件が揃いやすいのが、夏が終わって初秋の季節です。
前日に雨が降っている、そして夜明けには雨が上がっている、湿度が高い、風がない…こういった条件が揃うと、雲海が見られるかもしれません。ぜひ、「かぶと岩展望所」から雲海を狙ってみましょう。雲海の向こうから出てくる太陽を見ると、「今日はいいことがあるかも!」と思えます。このように太陽をキラリと写したい時は、絞りF11~16がおすすめ。三脚を使って記念に残る一枚を撮ってみましょう。
かぶと岩展望所
- 住所
- 熊本県阿蘇市西小園
- アクセス
- 【車】九州自動車道「熊本」ICより約45分
撮影・文/清家 道子
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