令和2(2020)年7月の豪雨により甚大な被害を受けた熊本県阿蘇の杖立温泉(つえたておんせん)。20カ月を経て、営業停止を余儀なくされていた宿泊施設のほとんどが営業を再開。復旧から一歩進んだ復興をめざし、温泉街を活用した街歩きを楽しむ演出が続々とスタートしています。
鯉のぼりまつりで知られる「杖立温泉」とは
熊本県阿蘇郡小国町にある「杖立温泉」は、大分と熊本の県境を流れる杖立川沿いに宿が立ち並ぶ温泉街。
およそ1800年前に神功皇后が応神天皇を出産した際に産湯として使われたとの伝承も残る歴史ある源泉には、平安時代の初めに訪れた弘法大師空海も感銘を受けたとか。竹の杖を立ててみたところ、節々から枝葉が生じたことから「杖立」の名がついたとも言われています。
泉質の良さから「湯治の街」として愛されてきた「杖立温泉」で特に象徴的なのは、杖立川の上を数千もの鯉のぼりが泳ぐ「鯉のぼりまつり」。全国で見られる同様のイベントの発祥とされ、川を覆うように日差しを受けて泳ぐ鯉のぼりの姿は、杖立の春の風物詩とされてきました。
そんな「杖立温泉」ですが、令和2(2020)年7月の豪雨により、温泉街の中心部を流れる杖立川が氾濫。周囲の山で土砂崩れが起こり、旅館や温泉を含む街全域に川水と土砂が流れ込みました。
「鯉のぼりまつり」で鯉のぼりを吊すロープを張るためのポールを固定する基礎も流失し、昨春は開催が困難な状況に追い込まれました。しかし、多くの支援を受けて、令和4(2022)年度は4月1日から5月6日の期間で開催が決定しました。
第42回杖立温泉鯉のぼり祭り
- 開催期間
- 4月1日~5月6日(ライトアップは19:00~22:00)
- 場所
- 小国町杖立温泉(熊本県阿蘇郡小国町下城杖立)
- 駐車場
- あり(GW期間中には臨時駐車場開設)
スタンプラリーや蒸しみくじなど、街歩きを楽しくする演出が続々!
災害からの復旧に止まらず、さらに「杖立温泉」の滞在を魅力的なものにするための取り組みもスタート。歩いてめぐるとちょうど1時間ほどという規模感と、昔ながらの風情を残す温泉街ならではの景観を生かし、街歩きを楽しんでもらうためのさまざまきっかけが用意されています。
温泉街の各所には、アーティストである若木くるみさんデザインによるかわいらしいスタンプを設置。同デザインのエコバッグ(800円)にスタンプを押すことで、自分だけのオリジナルエコバッグを作ることができます。
スタンプを押す位置や回数によってバッグのデザインが変わるのはもちろん、今後は季節限定デザインのスタンプも予定されています。何度も足を運ぶ楽しみの一つになりそうです。
街のいたるところにあり、無料で温泉蒸気を蒸し料理に活用できる「蒸し場」で楽しめる「蒸しみくじ」も登場。街中心部の足湯「御湯の駅」にあるガチャガチャで購入したおみくじを蒸し場の蒸気に当てることで、白紙だったおみくじに運勢が浮かび上がります。
アーティストとコラボした手ぬぐいや「杖じい」探しも
さらに、小国町にある日本で唯一全館畳敷きの美術館「坂本善三美術館」とのコラボレーションも。美術館ゆかりのアーティストと杖立温泉のコラボ手ぬぐい6種は、1枚800円で購入でき、温泉街の各所にも飾られて彩りを添えています。
杖立温泉のキャラクターとして長年愛されてきた「杖じい」のマスコットも密かに人気です。地元の有志によって作られ、そっと街角に置かれていた杖じいが、豪雨災害で流失。ワークショップなどを通して新たに100体が用意されました。
温泉街のあちこちに隠された「杖じい」は、つい写真を撮ってSNSに上げたくなるほどユーモラスでキュート。懐かしさを感じさせる街の風景とともに、こうしたアイテムを探しながらのんびり街歩きを楽しむのもまた一興です。
復活した「鯉のぼりまつり」で約3,500の鯉のぼりが織りなす圧巻の風景を楽しむもよし、名湯を味わいながら風情ある温泉街をそぞろ歩くもよし、災害復興を経て新たな魅力が加わった杖立温泉。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
杖立温泉
- 住所
- 熊本県阿蘇郡小国町下城杖立
- アクセス
- 【車】大分自動車道「日田」ICより約40分
【電車・バス】JR久大本線「日田」駅より日田バス(杖立行き)「杖立温泉」下車