アートによるまちづくりに取り組んでいる青森県十和田市。十和田市現代美術館を中心に、街の風景にさまざまなアートが溶け込んでいます。また、目抜き通りである十和田市官庁街通りは「日本の道・100選」に選出され、春には美しい桜並木が訪れた人々を魅了。そんな街歩きが楽しいアートのまち・十和田の魅力をご紹介します。
アートがあふれる十和田の散策へ
十和田市へのアクセスは、JR七戸十和田(しちのへとわだ)駅が玄関口。東京駅からは東北新幹線で3時間ほどで到着します。JR七戸十和田駅から中心街へは、十和田観光電鉄バスに乗り換えて約40分、またはタクシーで約20分の距離です。
十和田市観光物産センター
街歩きに欠かせない情報収集は、市の中心部にある複合施設「アートステーショントワダ」内にある「十和田市観光物産センター」へ。観光案内カウンターが併設されていて、街歩きに役立つパンフレットなどが入手可能。最後にご紹介しますが、物産コーナーには地域の魅力的な産品がそろっていて、お土産選びにも便利です。
十和田市観光物産センター
- 住所
- 青森県十和田市稲生町15-3(アートステーショントワダ内)
- 開館時間
- 9:00~19:00(物産販売10:00~18:00)
- 休館日
- 1月1日
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「官庁街通」下車、 徒歩約2分
- 詳細
- 十和田市観光物産センター
十和田市官庁街通り
アートステーショントワダの目の前に延びているのが、「日本の道・100選」に選定されている「十和田市官庁街通り」です。かつて軍馬補充部用地だったことから駒街道とも呼ばれ、通りには馬にまつわるオブジェや現代アートの作品が点在。1.1kmの道の両側に161本の松と155本の桜が植えられ、風情ある景観を楽しめます。
- 住所
- 青森県十和田市西二番町、西三番町、西十二番町、西十三番町
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「官庁街通」下車、 徒歩約1分
- 詳細
- 官庁街通り駒街道|青森県十和田市
体験型の作品が楽しい!「十和田市現代美術館」
アートステーショントワダから徒歩約2分、アートのまち・十和田を訪れたら必ず立ち寄りたいのが「十和田市現代美術館」です。十和田市の中心市街地にある官庁街通り全体を美術館に見立てるという、まちづくりプロジェクト「Arts Towada」の中核施設として、2008年に開館しました。
官庁街通りに面しており、建物の中だけでなく、外にも作品が展示されています。
全国のアートファンによく知られている十和田市現代美術館ですが、2021年に常設展示の入れ替え・新作公開が行われ、さらに見どころが増えました。そのうちの一つが、塩田千春氏による《水の記憶》。空間全体を包むのは赤い糸。赤い色は生命を表し、糸は人と人との縁をつなぐことを表現しています。
十和田市現代美術館には、作品の中に鑑賞者が入り込むような体験ができるものが多くあり、ふだん美術鑑賞をしない方にもおすすめ。そういった「体験型」と呼ばれる作品の一つが、レアンドロ・エルリッヒ氏の《建物ーブエノスアイレス》。思わず写真に撮って誰かに見せたくなる不思議な空間で、大人も子どもも楽しく過ごせそうです。
こちらは、ロン・ミュエク氏の《スタンディング・ウーマン》。高さ約4mの女性像はすごい迫力です。
十和田市現代美術館
- 住所
- 青森県十和田市西二番町10-9
- 営業時間
- 9:00 ~ 17:00(最終入館16:30)
- 休館日
- 月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌日休館)、年末年始
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「十和田市現代美術館前」下車すぐ
- 詳細
- 十和田市現代美術館 | Towada Art Center
美術館の作品を鑑賞した後は、館内にある「カフェ&ショップ cube」へ。軽食やドリンクをいただきながら休憩できるほか、展示作品にちなんだオリジナルグッズやおしゃれな雑貨、文房具などを購入できます。
屋外の「アート広場」に常設展示されている芸術家・草間彌生氏の作品をモチーフにしたマグカップや、各作家の作品をプリントしたクリアファイルなどが人気です。
カフェ&ショップ cube
- 営業時間
- 9:00~17:00(カフェラストオーダー16:30)
- 休館日
- 月曜日(月曜日が祝日の場合は、翌日休み)、年末年始
広場や街の中にもアートが点在
美術館の通りを挟んで向かい側にある「アート広場」では、名前の通りアート作品が芝生の広場に設置され、誰でも自由に鑑賞できます。草間彌生氏の8つの彫刻群《愛はとこしえ十和田でうたう》(制作年:2010年)は、アートのまち・十和田を代表する作品の一つ。
アーティストユニット、インゲス・イデーの彫刻《ゴースト》《アンノウン・マス》も。広場では子どもたちが自由に走り回ったり、作品の中に入ってみたり。ポップでカラフルな作品は、何枚も写真を撮ってしまいます。美術館から屋外へ、さらに街の中へと誘われるのが、十和田のアートスケープの醍醐味です。
十和田市現代美術館 アート広場
- 住所
- 青森県十和田市西三番町3
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「十和田市現代美術館前」下車すぐ
官庁街通りや昔ながらの商店街にも作品が展示されています。こちらは、日高恵理香氏による《商店街の雲》で、ベンチとして利用されています。十和田の街歩きが魅力的なのは、こんなふうに点在するアート作品を見つけたり、触れたりできるからかもしれません。
桜の季節は十和田市役所の展望テラスへ
十和田市現代美術館から歩いて5分ほど、官庁街通り沿いにある十和田市役所では、桜の季節になると本館3階の展望テラスを一般開放しています(桜の期間のみ 9:00〜21:00)。ここから官庁街通りの桜並木と近隣の公園に咲く桜を一望でき、ぜひ立ち寄ってほしい絶景フォトスポットです。
十和田市役所
- 住所
- 青森県十和田市西十二番町6-1
- 開庁時間
- 8:30~17:15
- 休庁日
- 土・日・祝祭日、年末年始(12月29日~1月3日)
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「市役所前」下車すぐ
- 詳細
- 青森県十和田市
すぐに売り切れ!相馬菓子舗の「紅玉アップルパイ」
青森を訪れたらぜひ食べたいスイーツが、アップルパイ。街歩き中に小腹が空いたときにぴったりです。十和田市役所から北に徒歩約4分、相馬菓子舗のアップルパイ(1個300円)は、リンゴ2分の1個をそのままの形で焼き上げたかわいらしい形。
使っているのは青森県産の「紅玉」。酸味があり、生食用ではあまり出回らない品種です。加熱調理することで上品でさっぱりした甘みに変わり、りんご本来のおいしさを楽しめるアップルパイになっています。
こちらのアップルパイは、メディアにも取り上げられるほど人気があり、店頭に並ぶとすぐ売れ切れてしまいます。どうしても食べたい!という方は、前日までに電話予約しておくことをおすすめします。
相馬菓子舗
- 住所
- 青森県十和田市西十一番町22-7
- 営業時間
- 9:00~18:00
- 定休日
- 火曜日(臨時休業有り)※店の後ろに駐車場有り
- アクセス
- 【車】JR「七戸十和田」駅より車で約20分
安藤忠雄氏による設計「十和田市教育プラザ」
建築好きにも楽しい十和田の街歩き。相馬菓子舗から徒歩約6分、官庁街通りに戻って「十和田市教育プラザ」を見に行きましょう。直線的なコンクリートの壁が印象的なこの建物は、世界的にも有名な建築家・安藤忠雄氏によるもの。
市民図書館と教育研修センターの機能を併せ持つ施設で、桜の古木を活かした中庭や、官庁街通りに向いた閲覧席など素敵な空間がいくつもあります。地域の図書館がこんなにかっこいいなんて、羨ましくなってしまいます。
十和田市教育プラザ
- 住所
- 青森県十和田市西十三番町2-18
- 開館時間
- 9:00〜20:00
- 休館日
- 毎月第4木曜日、年末年始、蔵書点検期間
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「市役所前」下車すぐ
- 詳細
- 十和田市民図書館
ランチは十和田名物のバラ焼きを!
十和田市教育プラザから徒歩約9分、アートステーショントワダの隣にある「司バラ焼き大衆食堂」は、お肉と玉ねぎを甘辛ダレで焼く十和田のソウルフード「十和田バラ焼き」が食べられるお店。2014年にご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で1位に輝きました。
ランチは十和田バラ焼きに白ご飯とスープ、お漬物がセット(牛1,200円/豚1,000円)。目の前にどーん!とバラ焼きの鉄板が登場し、タレを絡めた牛バラ肉と玉ねぎを自分で焼いて食べます。やり方はスタッフさんが教えてくれるので安心です。
ご当地グルメには、ご当地のお酒を。「奥入瀬(おいらせ)ビール」は、奥入瀬の源流水を使って作られる、十和田市のブルワリーが生産するクラフトビールで、十和田バラ焼きとの相性も抜群です。
「司バラ焼き大衆食堂」は、昼前からお客さんでにぎわう人気店。「バラ焼き」のバラにちなんで、店を出るお客さんには「ラビアンローズ(バラ色の人生を)!」と声がかかります。明るいおもてなしに、ほっと心が癒やされます。
司バラ焼き大衆食堂
- 住所
- 青森県十和田市稲生町15-41
- 営業時間
- ランチ/11:00〜14:30 (L.O. 14:00)、17:30〜22:30 (L.O. 22:00)
- 定休日
- 月曜日(月曜日が休日の場合は火曜日休み)※日曜日はランチタイムのみ営業
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「官庁街通」下車、 徒歩約2分
- 詳細
- 司バラ焼き大衆食堂
商店街のアートスポット「松本茶舗」
十和田市中央商店街の中にもアート作品が展示されたお店があります。「司バラ焼き大衆食堂」から徒歩約7分、名物店主がいる老舗お茶屋「松本茶舗」を訪ねてみましょう。店頭に「店内に展示室があります」との表示があり、気軽に立ち寄ってOKです。
茶器や食器などが並ぶ店の奥に、不思議な音を奏でる作品が。店主の松本さんは、十和田がアートのまちになっていく姿をずっと見てきた方。さまざまなアーティストとも親交があり、旅人と地域をつなぐ交流や企画を行っています。
「アートは難しいなんて遠慮しないで、一緒に素人談義に花を咲かせましょう」と松本さん。かつて火災の多かった商店街では、防災用地下室を作った時代があり、現在はその空間も作品となっています。街の記憶に再び光を当てる、アートにはそんなパワーもあるのですね。
松本茶舗
- 住所
- 青森県十和田市稲生町17-5
- 営業時間
- 9:30~19:00
- アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「十和田市中央」下車すぐ
- 詳細
- 松本茶舗 - お茶と 有田焼 キッチングッズ
隈研吾氏が手掛けた「市民交流プラザ(トワーレ)」
「松本茶舗」の向かいに建っているのは、国立競技場を設計した建築家・隈研吾氏が手がけた「市民交流プラザ(トワーレ)」。代名詞でもある木を使ったデザインが間近で見られます。
市民交流プラザ(トワーレ)
- 住所
- 青森県十和田市稲生町18-33
- 開館時間
- 9:00〜21:00
- 休館日
- 12月29日~翌年1月3日(年末年始)
※ただし、設備の保守点検などの臨時休館あり - アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「十和田市中央」下車すぐ
- 詳細
- 市民交流プラザ「トワーレ」|青森県十和田市
輝く壁画アート「十和田市地域交流センター(とわふる)」
市民交流プラザ(トワーレ)から徒歩約4分、「十和田市地域交流センター(とわふる)」は藤本壮介氏による建築作品で、壁面にはシルバーに輝く壁画が描かれています。こちらは、鈴木ヒラク氏の《光と遊ぶ石たち》という作品で、青森や秋田で発見された縄文時代の環状列石がモチーフの一つになっています。
十和田市地域交流センター(とわふる)
- 住所
- 青森県十和田市稲生町16-1
- 開館時間
- 9:00〜21:00
- 休館日
- 12月29日~翌年1月3日(年末年始)
※ただし、設備の保守点検などの臨時休館あり - アクセス
- 【電車】JR「七戸十和田」駅より十和田観光電鉄バス「官庁街通」下車、 徒歩約2分
- 詳細
- 十和田市地域交流センター(とわふる)
ほっこり過ごせるコミュニティスペース「14−54」
アーケード街の中にあるコミュニティスペース「14-54(イチヨンゴーヨン)」は、「まちに開かれた場所」として作られていて誰でも気軽に立ち寄ることができます。カフェも併設されていて、街歩きの休憩ポイントにおすすめ。
ライブラリーの機能も持っていて、十和田市現代美術館の蔵書を閲覧できるほか、卓球台やゲーム機などがあり、世代を問わず、地元の常連さんや観光客が交流できるオープンスペースです。日によっては作品展やイベントも開催されます。
飲食コーナーは曜日によって異なり、火曜日と水曜日は野辺地町(のへじまち)から「bloom cafe」が出店。木曜日〜日曜日は「14-54」が運営する「14-54 ピッツェリア」がオープンしています。人気は「マルゲリータ」(レギュラーサイズ1,000円)など。
コミュニティスペース「14−54」
- 住所
- 青森県十和田市稲生町14-54
- 営業時間
- 10:00〜17:00
「bloom cafe」
火・水/11:30〜16:30(L.O. 16:00)
「14-54 ピッツェリア」
木・金・土・日/11:00~16:30 - 定休日
- 月曜日
- アクセス
- 【車】JR「七戸十和田」駅より車で約20分
- 詳細
- 14-54 - Queen & Co.
お土産探しは「十和田市観光物産センター」へ
街歩きの最後はお土産選び。オープンスペース「14-54」から徒歩約3分、旅の始まりに訪れた十和田市観光物産センターに戻って、十和田らしい商品を探しましょう。店内には地元事業者が作る野菜や果物の加工食品、お菓子やお酒、工芸品などが並びます。
定番人気の一つが地酒「鳩正宗(はとまさむね)」。十和田にある酒蔵が地元の米と水にこだわって醸造。八甲田・奥入瀬の伏流水が使われています。
「南部裂織(なんぶさきおり)」は、古布を裂いて横糸にする伝統織物。江戸時代、貴重な布を大切に使うことから始まった文化ですが、その色彩の豊かさや同じ柄がない一点物としての価値などから、女性に人気のお土産となっています。
足を伸ばして「十和田湖・奥入瀬渓流」エリアへも
十和田観光でアートな街歩きとともに人気なのが、風光明媚な十和田湖・奥入瀬渓流。自然豊かな国立公園であり、新緑と紅葉の季節にはたくさんの人でにぎわいます。十和田の中心市街地から奥入瀬渓流の入り口である焼山(やけやま)地区までは、路線バスで約50分、焼山から十和田湖畔休屋(やすみや)までは約45分です。
遊歩道が整備されていて、トレッキングを楽しむのにぴったり。おすすめは奥入瀬渓流沿いの散策で、ところどころにバス停があるので無理せず歩けます。また、周辺には宿泊施設や観光施設、観光案内所もあり、自分らしい過ごし方を見つけられるはず。時間があるなら、ぜひ訪れてほしいエリアです。
心が解放される、アートなまち・十和田
街中に点在するアート作品を鑑賞しながら、いつもと少し違った観光ができる青森県十和田市。地元の方とのちょっとした交流が、街歩きをさらに楽しくしてくれます。街を巡るうちに心が解放されていく、そんな素敵な時間を過ごせるはず。次の旅行はぜひ、十和田へ出かけてみませんか?
取材・写真・文/Junko Saito