豊かに育まれてきた里山の自然、日本海を望む絶景、海水を使い伝統的な製法でつくられる塩グルメなどが詰まった、その名も石川県「奥能登絶景海道」をドライブ。能登半島の先端で、豊かな自然を望みながら絶景走行を楽しみましょう。和倉温泉や朝市で有名な輪島観光の立ち寄りにもぴったりです!
「奥能登絶景海道」で景色の移り変わりを楽しんで
今回ご紹介するドライブルートの起点は、輪島の「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」。沿岸の国道249号線の中でも「奥能登絶景海道」と呼ばれるエリアを通り、「見附島(みつけじま)」まで走り抜けます。日本海の荒波を望む雄壮な景色や、おだやかな内海や砂浜、伝統的な塩田、棚田など、変化に富んだ景色を一度に楽しめるコース。起点となる白米千枚田へは、朝市で有名な輪島から車で約20分、和倉温泉からは車で約1時間の立地なので、能登観光と合わせて立ち寄るのにもぴったりです。
走行距離は、約70キロメートル。どこにも立ち寄らずにドライブすれば、およそ2時間弱で完走しますが、途中には思わず写真を撮りたくなる風景や、グルメスポットなどがいっぱい。満喫するなら1日欲しいところです。
里山里海のシンボル的景観「白米千枚田」
さっそく走行開始。まずは、起点となる「白米千枚田」へ。棚田は、道の駅「千枚田ポケットパーク」からすぐの場所にあります。夕焼けや冬場のライトアップを見る人たちで、夕方以降に混み合うことが多いため、昼間のうちに訪れるのがおすすめ。
道の駅の駐車場からは、棚田全体を見渡せる絶景が! 世界農業遺産にも認められている人気の観光スポットですが、現役の棚田として稲作が行われています。約1,000枚の小さな田が重なりあって傾斜を覆い尽くす様子は、一度は見ておきたい景色です。
棚田のあぜ道を歩いて見学することも可能。散策には15分程度をみておけば楽しめますが、海岸まで下ったり、海と反対の山側に広がる棚田にも足を運んだりする場合には、時間に余裕をもって訪れましょう。
水が引かれ始めた田植えの時期、海の風に緑色の稲が揺れる夏、黄金色の稲穂が美しい秋、そして冬場のイルミネーションと、季節ごとに異なる顔を見せるのは、里山の風景の魅力。何度来ても飽きさせません。
日本古来の農法が現在も受け継がれている白米千枚田で収穫されたお米は、道の駅売店にある「棚田米おにぎり」(1個180円)で味わうことができます。
フキの佃煮「きゃらぶき」、イカの身を内蔵で炒めた「イカのゴロ」など5つの味がありますが、中でも製塩が盛んな能登の天然塩を使った「天然塩むすび」がおすすめ。稲作に好条件と言われる棚田でつくられる、ふっくらとしたコシヒカリのうまみをじっくり堪能できます。
白米千枚田
- 住所
- 石川県輪島市白米町八部99-4
- 電話
- 0768-23-1146(輪島市観光課)
- イルミネーション
- 例年10~3月頃(2020年は3月15日まで)
※点灯時刻など詳細は公式Webページをご確認ください。
- 駐車場
- あり、無料。
第1駐車場:38台(バス4台)
第2駐車場:12台
- その他詳細
- 白米千枚田(輪島市公式)
塩街道で昔ながらの製塩体験!「塩の駅 輪島塩」
続いて、能登外浦の名産品である塩にまつわるスポットへ。国道249号線沿いの輪島から珠洲(すず)にかけての一帯には、老舗の製塩業社がいくつも集まっており、特に珠洲市の海岸線は「塩街道」とも呼ばれるほど。能登の海水を使った伝統的な製塩業が営まれています。
やってきたのは、白米千枚田から車でおよそ8分の「塩の駅 輪島塩」。株式会社 輪島製塩が運営する、昔ながらの製塩法を体験できる施設です。
塩街道一帯で行われているのは、「揚げ浜式製塩」。およそ500年前から行われている製塩方法です。粘土と砂を敷き詰めた塩田に、海水を均一に撒き、蒸発した塩分を煮詰めると、純度が高くほんのり甘い塩が完成します。白米千枚田とともに世界農業遺産に登録された、輪島にだけ伝えられる貴重な製法なのです。
そんな伝統の製法の中でも重要な工程の1つである「潮撒き」を無料で体験させてもらえます。海水を汲む「潮汲み」3年、「潮撒き」は10年、それぞれ習得までに時間がかかるという職人技。一見簡単そうですが、塩田にむらなく広がるように水を撒くのはとても難しく、作業の繊細さを身をもって体感できます。
他の工程も知りたいという方には、日差しのある夏季(4月後半~10月前半)は、塩田で製塩作業を体験できる有料プログラムも開催されます。
現場で活躍する職人さんの解説は、年間を通じて聞くことができます。この部屋では、ミネラルが固まってできる塩とニガリの製造を見学。
たくさんの工程を経て完成する「輪島塩」(790円)は売店で直売されています。一般的な食塩と比べて、種類豊富なミネラルを含んでおり、塩辛くなくとてもまろやか。おにぎりや天ぷらなどに使えば、塩のうまみを感じさせながら、素材の味もしっかりと引き出してくれます。
塩の駅 輪島塩
- 住所
- 石川県輪島市町野町大川17-2
- 時間
- 3~11月:8:30~17:00
12~2月:9:00~16:30(冬季の営業は土・日・祝のみ)
- 電話
- 0768-32-1177
- 駐車場
- あり、無料、約20台。
- その他詳細
- 輪島塩 公式Webページ
塩を活かしたお土産が充実「奥能登塩田村(道の駅すず塩田村)」
続いて訪れる塩スポットは、「奥能登塩田村(道の駅すず塩田村)」。「塩の駅 輪島塩」から車で約10分で到着です。こちらでも、揚げ浜式による塩づくりが行われています。体験や展示も楽しめますが、注目したいのは塩を使ったグルメ! 道の駅のショップへ向かいましょう。
うまみが自慢の「奥能登揚げ浜塩」(小袋入り400円)を始め、さっぱりとしてコクのある能登のご当地ドリンク「塩ラムネ」「塩れもん」(各200円)や、塩スイーツ「和っふる」(各250円)など、オリジナル商品が手に入ります。
他ではあまり見かけない「塩花蜜」(600円)はお土産にもぴったり。能登のはちみつに天然塩をブレンドしたご当地コラボ商品です。甘じょっぱいながらも、濃厚なはちみつとしっかりとした味わいのある天然塩の組み合わせなので、とてもマイルド。いつものはちみつと同じように、ヨーグルトやパンケーキにかけていただきます。
塩スイーツの王道「塩ソフトクリーム」(350円)も見逃せません。甘みを引き立てるだけでなく、しっかりと塩を味わえる一品です。
奥能登塩田村(道の駅すず塩田村)
- 住所
- 石川県珠洲市清水町1-58-1
- 時間
- 9:00〜17:00(最終入館16:30)
- 料金
- 大人100円、小・中学生50円(資料館入場料)
- 製塩体験
- 5月1日〜9月30日まで、要予約。大人2,000円、14:00〜16:00の2時間制。
- 電話
- 0768-87-2040
- 駐車場
- あり、無料、海側18台・山側15台。
- その他詳細
- 奥能登塩田村 公式Webページ
心も静まる囲炉裏端、歴史のロマン感じる「時国家」
里山里海の幸に触れたあとには、心静まるような立ち寄りスポットも。「塩の駅 輪島塩」と「道の駅すず塩田村」の間に位置する「時国家(ときくにけ)」は、平安時代末期に能登へ流された平時忠(たいらのときただ)の子孫の屋敷で、当時のままの貴重な建造物を中に入り見学することができます。
どこか気品の漂う囲炉裏端(いろりばた)は、居心地がよくつい長居をしてしまいそう。休憩がてら訪れて、歴史のロマンに触れてみてください。
時国家
- 住所
- 石川県輪島市町野町西時国
- 時間
- 10:00~16:00
- 開館期間
- 4~11月の土・日曜日、5月3〜5日
- 料金
- 大人500円、小・中学生200円
- 電話
- 0768-32-0075
- 駐車場
- あり、無料、約50台。
- その他詳細
- 時国家 公式Webページ
「揚げ浜塩」をモチーフにしたおしゃれなカフェ「しお・CAFE」
再び車を走らせおよそ15分。ランチやカフェの利用で訪れたいのは、先ほど見学した伝統的な「揚げ浜塩」をテーマにした「しお・CAFE」です。
古民家を大胆に改装した店内は、歴史が感じられる木の質感を活かしたくつろぎの空間。大きな窓からは奥能登の海を望めます。
おすすめメニューは、「奥能登地サイダー しおサイダー」を生地に使うことでふわふわに仕上げたパンケーキ。写真の「バナナ&チョコレートソース」(1,000円・税抜)のようなデザート系だけでなく、「能登のミラクルソルト」で仕上げた食事系パンケーキ「エッグインクラウド」(1,200円・税抜)などもあり、ランチにぴったりです。
「しおサイダー」を使ったおしゃれなカクテル(450円・税抜)も気分を高めてくれます。写真の「里海」は、グレープフルーツテイスト。能登の里山里海を表現した6種が揃います。ドライバーも安心のノンアルコールなのがうれしいところ!
しお・CAFE
- 住所
- 石川県珠洲市片岩町ノ部12番
- 時間
- 10:30~19:00 ※冬季変更あり
- 定休日
- 水曜(祝日の場合は営業)
- 電話
- 0768-87-2111
- 駐車場
- あり、無料、10台。
- その他詳細
- しお・CAFE 公式Webページ
遮るものなく奥能登の絶景を眺望!「禄剛埼灯台」
しお・CAFEから一気に北東方面へ進み、車でおよそ30分。能登半島最奥の岬に立つ「禄剛埼(ろっこうさき)灯台」から能登の海を眺望しましょう。 明治16(1883)年に建てられた現役の灯台が目印。「恋する灯台プロジェクト」にも選出された、「海から昇る朝日」、「海に沈む夕日」の両方が見られるロマンティックなスポットです。周囲には遮るものが何もないため、海と空を独り占めしているような開放的な気持ちを味わえますよ。
灯台の建つ岬は断崖絶壁。その下は千畳敷と呼ばれる海食台地で、日本海の荒波を感じさせます。
灯台から南に折り返すと、能登で見かけることの多い漆黒の「能登瓦」の連なりを見下ろせる場所が。こちらは能登の風情を味わえる宿泊施設とのこと。耐久性を追求して生まれた艶やかな黒の美しさもまた、能登ならではの光景です。
禄剛埼灯台
- 住所
- 石川県珠洲市狼煙町イ-51
- 電話
- 0768-82-7776(珠洲市観光交流課)
- 駐車場
- あり、無料、約110台。
(道の駅狼煙駐車場を利用。灯台まで約450メートル)
- その他詳細
- 禄剛崎灯台(石川県観光連盟Webページ)
沖合にそびえる「見附島」は一見の価値あり!
半島の先端を折り返し、南東方面へと約40分。長年の浸食によって形作られた「見附島」は、能登半島の象徴として親しまれています。全周約400メートル、高さは約30メートルという迫力で、見た目が軍艦そっくりな様子から、別名「軍艦島」とも。珠洲市名産の七輪の材料である、珪藻土でできています。
上陸することはできませんが、引き潮の時刻には踏み石で近くまで行くことができます。軍艦がこちらに進んでくるようで、圧巻の迫力! 時間帯によって、様々な表情を見せてくれます。
「えんむすびーち」とも呼ばれる岸辺には縁結びの鐘も。カップルで音色を響かせれば、2人の素敵な思い出になること間違いなし!
見附島
写真提供/公益社団法人石川県観光連盟
里山里海のめぐみにあふれる「奥能登絶景海道」では、自然の中の絶景や塩グルメなど見どころ満載のドライブが楽しめます。最後に訪れた見附島からさらに足を伸ばして、日本百景にも選ばれた「九十九湾(つくもわん)」で、SUPや遊覧船など夏場のアクティビティを楽しんだり、名物のイカを味わったりと、今回ご紹介しきれなかった魅力もまだまだあります。
和倉温泉や輪島朝市からも向かえる屈指の絶景ドライブロードを、ぜひ訪ねてみてください。
取材・写真・文/檀原 照和