全国各地のJRグループ6社と自治体、地元の観光事業者、旅行会社などが一体となって行う大型観光キャンペーン「デスティネーションキャンペーン」。2022年は4月~6月に四国がアフターデスティネーションキャンペーン、2022年7月~9月に岡山がデスティネーションキャンペーンを開催と、近県同士で盛り上がりを見せそうです。
特に岡山と香川は瀬戸内海を挟みながらも鉄道がつながっているので、アクセスも良好。2016年にデビューした「ラ・マル・ド・ボァ」や子どもに人気の「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」など、4つの観光列車に乗りながら2県の絶景を巡る4日間のモデルコースを前半の岡山編、後半の香川編でご紹介します。
1日目(金)10:00 旅のはじまりは岡山駅から
岡山駅は新幹線の停車駅でもあり、東京からだと新幹線で約3時間、名古屋・京都・大阪からだと1時間~1時間半ほどの道のりです。
1日目は翌日の観光列車に備えて岡山駅周辺に宿泊します。身軽になって観光したいなら、岡山駅にある「ねこのてステーション」が便利。荷物を一時的に預かってくれるほか、周辺のホテルに荷物を届けてくれるサービスも実施しています。
ねこのてステーション
- 手荷物受付時間
- 8:00~13:30
- 手荷物一時預かりサービス
- 8:00~20:00
- アクセス
- 岡山駅2階 東西連絡通路沿い 「新幹線改札口」すぐ
- 公式サイト
- ねこのてステーション
1日目(金)10:30 まずは近場の有名観光地「岡山後楽園」へ
この日は一日かけて岡山の名所巡り。午前中は岡山駅の近くにある「岡山後楽園」へ。日本三名園のひとつで、桜に新緑、紅葉と四季折々の植物が訪れた人たちの目を楽しませてくれる憩いの場になっています。
13年の歳月をかけて1700年に完成した大名庭園は、歴代藩主の意向が次々と加わった合作ともいえる庭園です。例えば庭園の中心にある唯心山(ゆいしんざん)は、3代目藩主によって築かれたもの。築山によって平面的だった庭園に奥行ができ、立体感が生じただけでなく、現在は展望台としても活躍しています。
池に小川、滝など水の存在感がある岡山後楽園には、立派な鯉がゆらりゆらりと泳いでいて、餌やりはお子さんだけでなく大人にも人気。また石の上では亀がのんびりと甲羅干しする様子にほっこりするはず。さらに江戸時代から由縁のあるタンチョウも敷地内の鶴舎で飼育され、その優美な姿を観賞できます。
岡山後楽園
- 住所
- 岡山県岡山市北区後楽園1-5
- 時間
- 3/20~9/30 7:30~18:00(最終入園17:45)、10/1~3/19 8:00~17:00(最終入園16:45)
- 休園日
- 年中無休
- 電話番号
- 086-272-1148
- 入園料
- 大人(中・高校生を除く15歳~64歳)410円、シニア(65歳以上)140円
- アクセス
- 岡山駅からバスで約10分~15分、徒歩で約25分
- 公式サイト
- 岡山後楽園
1日目(金)午後 江戸時代の町並みが残る「倉敷」へ
岡山駅から在来線に乗ること約17分、倉敷駅に到着します。水運が盛んな港町として徳川幕府の天領だった歴史があり、今でも「倉敷美観地区」と呼ばれるエリアは、白亜と墨黒のコントラストが美しい白壁土蔵の町並みが広範囲に残っていて、タイムスリップしたかのような情緒が感じられる人気観光スポットです。
岡山県の名産をいただけるカフェやレストラン、おみやげ屋さんや雑貨店なども揃っているので、そぞろ歩きでも充分に堪能できるほか、中心を流れる倉敷川では川船流しの体験も。
かつて大量の物資を積んでいた川船が今は観光客を乗せ、船頭さんの解説を聞きながら、ゆったりとしたスピードで進みます。普段とは異なる目線になるため、より非日常や風情を味わえると評判です。
くらしき川舟流し
- 時間
- 9:30~17:00(30分毎に運航)
- 定休日
- 3~11月 第2月曜日(祝日は除く)、12~2月 平日(土日祝のみ運航)、年末年始
- 電話番号
- 086-422-0542(倉敷館観光案内所)
- 購入方法
- 倉敷館観光案内所(倉敷市中央1-4-8)にて当日販売(予約不可)
- 料金
- 大人500円、子ども250円(5歳〜小学生以下)
- 公式サイト
- くらしき川舟流し
ファッションやジーンズに興味があれば聖地「児島」へ
倉敷のほかにも日帰りできる魅力的な場所が岡山にはたくさんあります。例えば、国産ジーンズ発祥の地として名高い「児島(こじま)」も興味深い場所。古くから繊維産業が盛んで、主力製品の学生服を生産する傍ら、ジーンズにも着手。海に吸い込まれそうな深いインディゴのデザインは、技術力ともに国内外から注目されています。
「児島ジーンズストリート」には、地元メーカーなど30近いジーンズショップが並んでいるので、お気に入りの1本を探そうと一軒一軒をはしごしてしまうはず。
ジーンズ好きによる、ジーンズのための一大テーマパーク「ベティスミス ミュージアム&ヴィレッジ」では、ミュージアムやショップに加え、体験プログラムも充実。10分ほどで完成するデニムポーチにリベットを打つ体験や約1時間かけて世界にひとつだけのジーンズをつくることもできます。
児島ジーンズストリートとベティスミスは少し離れた場所にあるので、広範囲で巡る際はバス一日乗車券「児島ジーンズバス」が便利です。
ベティスミス ミュージアム&ヴィレッジ
- 住所
- 岡山県倉敷市児島下の町5-2-70
- 時間
- 9:00~18:00(体験の最終受付17:00 ※変更する場合あり)
- 定休日
- 年末年始
- 電話番号
- 086-473-4460
- 公式サイト
- 株式会社ベティスミス
児島へは岡山駅から在来線で約40分。児島は倉敷市の一部なので倉敷美観地区から児島行きのバスも出ています。バスだと1時間ほどかかるので、ゆっくりと見て回りたいなら倉敷と児島のどちらか1カ所に絞った方がおすすめです。
焼き物や日本刀の名産地「備前エリア」へ
岡山駅から在来線に乗ること約40分で到着する伊部(いんべ)駅は、備前焼の窯元が集まる地域。釉薬を使用せず、土と炎によって彩られた備前焼は日本六古窯のひとつに数えられ、駅周辺では、カップやドリップホルダーなど日常に使いやすい商品を購入できます。窯元のひとつ「一陽窯」では制作風景を見学でき、土ひねりの体験も可能です(3日前に予約)。
一陽窯
- 住所
- 岡山県備前市伊部670
- 時間
- 10:00〜17:00
- 定休日
- 年中無休
- 電話番号
- 0869-64-3655
- アクセス
- 伊部駅より徒歩約5分
- 公式サイト
- 一陽窯
窯での置き場所によって模様や色合いが変わる備前焼は、すべてが唯一無二の作品。茶褐色の焼き物は素朴でありながらも奥深さがうかがえます。伊部駅に併設されているカフェ「軽食喫茶UDO(ウド)」では、コーヒーを備前焼のカップでいただけ、岡山産フルーツをつかったスイーツとの相性も抜群。町歩きの休憩場所にぴったりです。
軽食喫茶UDO
- 住所
- 岡山県備前市伊部1657-7 伊部駅1F
- 時間
- 10:00~17:00(ランチは14時迄)
- 定休日
- 不定休
- 電話番号
- 0869-93-4701
焼き物だけでなく、日本刀の名産地としても歴史がある備前エリア。「備前おさふね刀剣の里」は、日本刀の魅力を存分に知ってもらえるよう企画や展示方法にもこだわった博物館のほかに工房も併設されていて、職人さんの作業風景を間近で見ながら会話もできるのが魅力です。
備前おさふね刀剣の里へは岡山駅からバスが出ていて、所要時間は1時間ほど。電車で向かう場合は、最寄り駅の長船(おさふね)駅で下車(岡山駅から約30分)し、日本刀が車体にデザインされた「備前おさふね刀剣タクシー」(事前予約制)の利用がおすすめです。博物館は混雑時には入館できない可能性があるので、事前予約をした方が安心。予約はホームページもしくは電話で受け付けています。
備前おさふね刀剣タクシーの予約方法
長船駅から備前おさふね刀剣の里までの往復が含まれたタクシープラン。予約受付は利用日の1カ月前10時から1週間前までで、有限会社ネイチャー・ワールド自動車が電話(0869-26-8855)と予約サイトで受け付けています。
備前おさふね刀剣の里
- 住所
- 岡山県瀬戸内市長船町長船966
- 時間
- 9:00~17:00(最終入場16:30)
- 定休日
- 月曜(祝日の場合はその翌日)、祝日の翌日、12/28~1/4
- 電話番号
- 0869-66-7767
- 料金
- 一般500円、高校・大学生300円
- アクセス
- バス停留所「船山」から徒歩約10分
アート好きなら瀬戸内国際芸術祭の開催地「宇野」へ
2022年は3年ごとに開催される瀬戸内国際芸術祭の開催年。4月14日から11月6日までの期間、休みを挟みながら春・夏・秋の3会期にわたって行われます。瀬戸内海に面した「宇野」に到着すると、イタリア出身のアート作家エステル・ストッカーさんが手掛けた作品であり駅舎でもある建物がお出迎え。まるで建物自体がラッピングされたようなデザインです。
さらに港の方へ進むと、宇野を代表するアート作品「宇野のチヌ」が登場。チヌ(クロダイ)は、今年の祭典に向けてお色直しをされたばかりで、七色の色彩はいっそう鮮やかになりました。
すぐ近くの「宇野コチヌ」はすべり台にもなっているので、ぜひ遊べるアート作品を体験してみてください。複数の作品が展示されている港周辺は、瀬戸内海も一望でき、穏やかな雰囲気に包まれています。
2日目(土)9:41 「ラ・マル 備前長船」に乗車
観光列車尽くしの旅が始まる2日目。岡山駅を起点に走る「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」の中でも、岡山駅から日生(ひなせ)駅をつなぐ「ラ・マル 備前長船」は、2021年7月にデビューしたばかり。2022年は、6月と9月の土日に運行する予定です。
「ラ・マル」と親しまれている車両に入ると、桜のウッドフロアに車窓に面したカウンター席とふかふかな2人席が配された空間が広がり、さながら貴賓室のよう。
至るところにアート作品も展示され、「せとうちのアートな観光列車」と謳っていることを再認識させられます。
車内に流れるオリジナルBGMのスムーズな調べに耳を傾け、ふと車窓に目を向ければ青空に緑が広がるのどかな田園風景。停車駅では駅員さんたちによるお出迎えを受け、こちらも笑顔で手を振り返したくなります。心もぽかぽかとあたたまるのは「晴れの国おかやま」の成せる業なのかもしれません。
車内販売カウンターでは、地元特産品を扱ったおみやげ品や軽飲食を販売。車体をイメージしたオリジナルグッズもあり、マスキングテープはおしゃれで使い勝手の良いデザインと好評です。
日生だけでなく、宇野や広島県の尾道(おのみち)、香川県の琴平へ運行することもありますが、方面ごとに異なるヘッドマークを先頭部に取り付けているので、ぜひ注目してみてください。「ラ・マル 備前長船」のデザインは、備前焼と日本刀で欠かせない炎がモチーフになっています。
ラ・マル 備前長船の予約方法
乗車券、普通列車の指定席グリーン券の2種類が必要。JRの主な駅、主な旅行会社もしくはJR西日本ネット予約サービス「e5489」にて、乗車日の1カ月前10時から購入できます。
2日目(土)11:00 日生で瀬戸内海クルーズを堪能
およそ1時間10分におよぶ電車旅も終着駅の日生駅で終了。駅から出るとすぐ目の前には瀬戸内海が広がり、ぽっかりと浮かぶ島々の姿も。港からは定期船だけでなく、遊覧船も運航しているので、せっかくなら日生諸島をぐるりと巡ってみるのがおすすめです。
岡山県出身のデザイナー、水戸岡鋭治さんがデザイン監修した観光船「NORINAHALLE(ノリナハーレ)」は、地元の方言をもじった遊び心が感じられる名前に加え、赤と白の船体、そしてカラフルな色が散りばめられた装飾が特徴です。
島の間を縫うように進む船上からは、カキの養殖いかだを間近で眺めたり、島同士をつなぐ巨大な橋の下をくぐったりと、周囲の景色が目まぐるしく変化する様子を楽しめます。
NORINAHALLE
- 運航会社
- 大生汽船株式会社
- 電話番号
- 0869-72-0506
- 公式サイト
- 大生汽船株式会社
2日目(土)12:30 ランチは「渚の交番 ひなせうみラボ」で旬の食材に舌鼓
港に戻ってきたら、今度は橋伝いにレンタサイクルもしくはタクシーに乗って、頭島(かしらじま)を目指します。2021年にオープンした海洋教育施設「渚の交番 ひなせうみラボ」に入っている「キッチン星の」は、海の絶景を独り占めできるレストラン。
地元の食材にこだわり、鰆(さわら)やカツオ、ぶりなど旬の魚介が登場する食事は新鮮なうえ味も濃厚。お造りは肉厚に切られているので弾力ある食感が楽しめ、カツオでお馴染みの藁(わら)焼きを岡山県の特産品である鰆で代用するなど創作に富んだメニューにも注目です。
レストランは2階に位置し、1階には特産品やおみやげ屋さんが並ぶショップが併設。そのままだと廃棄処分になる牡蠣の殻を備前焼とコラボしたSDGsを意識したオリジナル商品も販売しています。
渚の交番 ひなせうみラボ
- 住所
- 岡山県備前市日生町日生3518-5
- 時間
- 9:00~17:00、レストランは11:00~17:00(ランチL.O.13:45)
- 定休日
- 水曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
- 電話番号
- 0869-72-2000
- 公式サイト
- ひなせうみラボ
2日目(土)15:21 「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」で香川県へ!
日生駅を後にし、岡山駅に戻ってきたら本日2度目の観光列車「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」へ。瀬戸内海の青い海をイメージした車体にはアンパンマンのなかまたちが描かれ、気持ちも高まります。
2両編成で、1車両は風が吹き抜ける屋外仕様、もう1車両は天井から壁までカラフルに彩られた屋内仕様になっており、1枚のグリーン券で屋外と屋内の両方に座れます。児島駅を出発したら屋外で風を感じつつ、中盤になったら屋内でのんびりと車窓から景色を眺めるという過ごし方も可能です。
アンパンマンやばいきんまんのオブジェが飾られていたり、記念撮影ブースがあったりと、ファンの心をくすぐる装飾が満載。さらに一部の床はガラス窓になっていて、線路など床下の様子が見られます。特に瀬戸大橋を渡って四国に渡る際、足元に海面が広がる光景は迫力満点です。
2022年3月から9月までは、「アンパンマン列車スタンプラリー」も開催中。「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」などの列車や岡山駅でスタンプを集め、一定の数を獲得したらアンパンマングッズが当たる抽選に応募できます。
瀬戸大橋アンパンマントロッコの予約方法
乗車券、普通列車用グリーン券の2種類が必要。全国のみどりの窓口、主な旅行会社、JR四国のワープ支店、ワーププラザもしくはJR西日本ネット予約サービス「e5489」にて、乗車日の1カ月前10時から購入できます。
ガタンゴトンとトロッコに揺られ、穏やかな瀬戸内海を眺めながら、いつしか降車する坂出(さかいで)駅に到着。そこから2駅隣の丸亀駅周辺にて2日目は宿泊します。いよいよ旅は後半の香川編に突入です。
取材・写真・文/浅井みらの