「暑い」だけじゃない!グルメも、人も「あつい」街・熊谷
2018年の夏、国内観測史上最高気温となる41.1℃を記録。市内の熊谷ラグビー場が2019年に開かれるラグビーワールドカップ2019™日本大会の会場に選ばれるなど、その名を一度は耳にしたことがある熊谷。でも「どんなところ?」と聞かれても「暑い…」以外、二の句が継げない街・熊谷。
埼玉県北中部に位置する熊谷市は、層の「厚い」ご当地グルメ、街のあちこちに残る昭和の面影と「篤い」人情、地域を盛り上げようと奮闘する「熱い」人々が織りなす場所。家族で楽しめる観光スポットも盛りだくさんなんです。今回は、そんな熊谷の魅力を紹介します。
都心から最短約40分!熊谷駅は暑さ対策も見もの
都心から熊谷駅へのアクセスは、上越新幹線で「東京」駅から約40分、在来線なら高崎線「上野」駅から約65分、湘南新宿ライン(高崎線直通)「新宿」駅から約60分、上野東京ライン(高崎線直通)「東京」駅から約80分と、日帰り観光にもぴったり。
秩父鉄道を利用すれば、自然豊かな秩父方面にも行けて、1泊2日で楽しむこともできます。
「日本一暑い街」熊谷駅前には、冷却ミストが設置されているほか、正面口と南口の階段一面を「涼」「水」「青」をテーマにした「涼しさ体感アート」で演出。
環境省を中心に行われている「熱中症予防声かけプロジェクト」で、「ひと涼みアワード2017」トップランナー賞を受賞した、実は「暑さ対策日本一の街」熊谷の一面を垣間見れます。
駅前で鎌倉武士が迎え撃つ!?あついぞ熊谷直実
駅正面口で訪問者を迎えてくれるのは「熊谷次郎直実像」。彼こそは、熊谷が生んだ偉人にして熱い熊谷人を代表する鎌倉武士です。
源平合戦で源頼朝に仕え、「日本一の剛の者」と讃えられるほどの活躍を見せるも、無骨かつ直情的で、頼朝の命令を拒否して領地の半分を没収されたり、頼朝の面前で行われた領地問題の訴訟で口べたゆえに反論ができず、怒りのあまり自ら髪を切ってそのまま出家したり…。
また、歴史好きなら一度は耳にしたことがある「人間五十年〜」の一節が有名な幸若舞「敦盛」も、実は直実に由来します。一ノ谷の戦いで、我が子と同年代の若武者・平敦盛を泣く泣く討ち取った逸話が題材で、この銅像も一騎打ちに際して敦盛を呼び止める姿を模しています。なお、長崎の平和祈念像の作者でもある北村西望の作品です。
年端の行かない敦盛を討ったことも出家の理由とされ、反骨心にあふれるとともに情にも厚い直実の気質は、日本一の暑さに「あついぞ!熊谷」と胸を張って生きる、現代の熊谷人にも受け継がれていると言っても過言ではないでしょう。
熊谷次郎直実像
- 住所
- 埼玉県熊谷市筑波2
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約1分
都心から一番近い蒸気機関車!暑い熊谷がさらにヒートアップ
JR熊谷駅に隣接する秩父鉄道熊谷駅は、都心から最も近い蒸気機関車「SLパレオエクスプレス」の始発駅。熊谷駅は新幹線とSLが両方停車する稀有な駅でもあるわけです。
SLパレオエクスプレスことC58363型機関車は1944年に製造され、東北を中心に活躍して1972年に一度引退しました。
2018年は復活から30年目に当たり、今や秩父路観光を代表する蒸気機関車です。その無骨な勇姿がホームに姿を見せるのは、発車10分ほど前。停車中の運転室は見もので、機関助士が火室に石炭をくべる光景は圧巻です。
終点の三峰口駅まで約2時間40分。その名に「エクスプレス」とありますが、通常の電車に比べて1時間ほど時間をかけて進み、田畑や山々が心地よい速度で車窓を流れてきます。ちなみに「パレオ」の方は、2000万年前、秩父地方が海だったころに生息していた海獣パレオパラドキシアが由来です。
座席は、えんじ色の4人がけボックスシート。車内放送では、秩父出身の落語家・林家たい平師匠による各駅の見どころなどが流れ、かわいらしい衣装の売り子さんによるアイスクリームや駅弁SLパレオランチも販売。ただ乗車するだけではない、車窓の風景も車内の光景も楽しめるエンターテイメント型機関車です。
SLパレオエクスプレス
- 住所
- 熊谷市桜木町1-202-1 秩父鉄道熊谷駅始発
- 営業時間
- 平日10:12発、土・日曜・祝日10:10発
- 運休日
- 運行は主に土・日曜・祝日、一部平日 ※夏休み期間は平日運行も多め
- アクセス
- 秩父鉄道熊谷駅発
- 料金
- 乗車区間の普通乗車券にSL座席指定券720円、またはSL整理券(自由席)510円追加 ※大人・小児同額
実は水の街!?熊谷市街を流れる星川シンボルロード
市北部には利根川、中部には荒川という関東を代表する二大河川に挟まれた熊谷は、ちょっと背伸びした表現を使えば「水の街」でもあります。
駅前には、元和9年(1623年)の荒川の氾濫によりできた星川という小川が東西に流れ、ここを中心に繁華街が広がるとともに、木々と彫刻、広場のある「星川シンボルロード」として市民の憩いのスポットにもなっています。
伝統手工芸の「熊谷染」は、この清流があったからこそ発展し、毎年7月19日~23日に行われる熊谷うちわ祭りでは、最大の見せ場「曳っ合せ叩き合い」の舞台となります。
また、太平洋戦争最後の空襲となった8月14日深夜の熊谷空襲で甚大な被害を出した地域でもあり、毎年8月16日には犠牲者の霊を慰める、とうろう流しが行われています。
星川シンボルロード
- 住所
- 埼玉県熊谷市鎌倉町・星川・筑波・銀座
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約3分、秩父鉄道上熊谷駅より徒歩約3分
熊谷らしさがたっぷりつまった!ご当地グルメの層も厚い
実は、小麦生産量が本州1位(平成25年農作物統計調査)を誇った熊谷。
そんな熊谷産小麦を50%以上使用し、熊谷で製粉・製麺されたブランドうどん「熊谷うどん」は、全国ご当地うどんサミットで準グランプリを獲得しています。
秩父鉄道熊谷駅の改札前にある「熊谷うどん 熊たまや」が提供しているのは、熊谷産小麦100%、長ネギやしょう油も熊谷産にこだわった「熊谷うどん」。
生麺を使用しているため、茹で上がりまで約10分。手渡されたゴマ入り鉢に、卓上の唐辛子や山椒といった6種の薬味をお好みでブレンドして、マイ七味を作って待ちましょう。
熊谷うどん 熊たまや
- 住所
- 埼玉県熊谷市桜木町1-202-1
- 営業時間
- 10:30〜20:00
- 定休日
- 無休
- アクセス
- 秩父鉄道熊谷駅改札口前
街を散策して目につくのは、昔ながらの喫茶店や甘味処や食堂。そして、そんなお店ののれんをくぐると、「ふらい焼」という見慣れないメニューが目に入ります。
実は、これぞ小麦の聖地・熊谷およびその周辺で愛されるソウルフード! その見た目から、安易に「熊谷風お好み焼き」などと呼んではいけません。小麦粉で作った薄い生地の上に長ネギや切りイカなどを乗せて焼くといった、お好み焼きとはまた別の手法で作られた「ご当地ファストフード」なのです。
「昔は家庭や駄菓子屋なんかで、子どものおやつとして食べられていたんですよ」と語るのは、星川シンボルロード沿いの小山食堂の女将さん。半世紀近く、この地で食堂を営む女将さんのふらい焼(400円) は、生地がふわっとした優しい味わいでした。
小山食堂
- 住所
- 埼玉県熊谷市星川2-30
- 営業時間
- 11:00〜18:00
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合は火曜)
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約7分
「あまりにも暑い熊谷に、涼し気な新名物を」と、暑さ対策の一環として2006年に誕生したのが、まるで雪を食べているかのようにふんわりとしたかき氷「雪くま」。「小山食堂」をはじめ、市内27店舗で夏場を中心に提供されています。
「そば処 木村屋」の「くまがや桜」(500円) は、「熊谷うまいもんカップ2018」で優勝を果たした逸品。
「日本さくら名所100選」にも選ばれている熊谷堤の桜を、酷暑の夏にも感じてほしいという若旦那の願いが込められています。桜の葉の塩漬けから作ったシロップにあんこが入り、桜餅を彷彿させる味わい。ボリューム満点なので、食べ切るころには体の芯から冷え切っていることでしょう。販売は、3月末の桜の季節から10月末ころまで。
店名に「そば処」とありますが、同店のうどんは「熊谷うどん」。平打ちの麺が特徴のオリジナル「星川うどん」も好評です。
そば処 木村屋
- 住所
- 埼玉県熊谷市筑波2-20
- 営業時間
- 11:00〜15:00、18:00〜20:00(金・土曜の夜は休)
- 定休日
- 金・土曜日の夜、日曜日
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約5分
ハイボールシャンプー!?新感覚冷やしシャンプーで脳天から涼を
冷蔵庫でキンキンに冷やしたメントール系のシャンプーを冷水で洗い流す、山形県発祥の冷やしシャンプーが、「日本一暑い街」で独自の進化を遂げています。
それが「ハル理容院」が提供する、本場山形から取り寄せた冷やしシャンプーに炭酸ガスを直入した冷やしシャンプーの炭酸割り、その名も「ハイボールシャンプー」。
炭酸によりムース状と化したシャンプーを頭髪に噴射。しかも、洗い流しに用いる水にも炭酸水を使用するといったこだわりよう。
実施期間はGWころから9月いっぱいが目安。暑ければ暑いほど爽快感も増す、脳天から染み入る冷感をぜひ体感してみてください。
ハル理容院
- 住所
- 埼玉県熊谷市星川2-74
- 営業時間
- 水〜金曜日 9:00〜20:00 、土・日曜日 8:30〜19:00
- 定休日
- 月・火曜日
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約5分
2019年の熱闘の舞台!聖地・熊谷ラグビー場
「西の花園、東の熊谷」とうたわれるラグビータウン・熊谷。そのシンボルで、2019年9月から開かれる「ラグビーワールドカップ2019™日本大会」の舞台の一つとなるのが「熊谷ラグビー場」です。熊谷スポーツ文化公園内に、堂々たる偉容を誇らせています。
春の高校選抜大会はじめ、大学生や社会人など多くのラガーマンの夢をつむいできました。
ワールドカップに向けた改修により収容人数が24,000人になって、装いも新たに生まれ変わった熊谷ラグビー場。同大会では3試合(ロシアvsサモア、ジョージアvsウルグアイ、アルゼンチンvsアメリカ)が予定され、世界中から集まる観戦者を出迎えます。
熊谷ラグビー場
- 住所
- 埼玉県熊谷市上川上810
- アクセス
- JR熊谷駅北口より国際十王バス・葛和田行き「赤城神社」下車徒歩約5分
家族で一日遊べる新名所!人気のお風呂カフェ
テントの設営や調理をせず、手軽にラグジュアリーなキャンプが楽しめるグランピング。そんなグランピングと、湯治風呂など計8種のお風呂をドッキングさせたコンセプトで人気を集めているのが「おふろcafé bivouac(ビバーク)」。
茶色や緑をふんだんに使った森を連想させる館内には、キャンプ的要素がいっぱい 。
お風呂から上がったらリラックスできる館内着を身にまとい、暖炉の火を眺めながら静かに会話を楽しむもよし、テントに入って車座で語らうもよし。横になりたくなったら人工芝でごろり。ハンモックに揺られながら、まどろむことだってできます。しかもツリーハウスまでもがあり、その急な階段を上るときは、ちょっとした探検気分です。
体を動かしたくなったらボルダリング、子どもならキッズパークへ。夏場の屋上BBQといったアクティブに楽しめるゾーンも盛りだくさん。マンガ本1万冊を含め、計15,000冊の書籍が用意されていて、もちろんWi-Fiも無料です。
埼玉の地酒や地ビールも楽しめるカフェ&バー「okibi」や、女性にうれしいリラクゼーション&ビューティー「アウラ」も併設。宿泊も可能で、草原と山小屋を模した無料仮眠室のほか、木のやさしさを生かしたカプセルタイプの有料仮眠ブース(女性専用あり)も用意されています。
本格的グリル料理と多彩なワンプレートディッシュをいただけるのがレストラン「OUTGRESS」。木の温かさが感じられる店内にもまた、テントやランタンといったアウトドア的要素が満載。ローストビーフやハンバーグなど、手作りを重視したメニューがおいしさの秘密です。
おふろcafé bivouac
- 住所
- 埼玉県熊谷市久保島939
- 営業時間
- 10:00~翌朝9:00
- 料金
- フリータイム入館(館内着・タオル付き)通常料金:大人1,380円、小人690円、未就学児390円 ※深夜追加料金1,200円(小人、未就学児は保護者同伴)
- 定休日
- 臨時休館日あり
- アクセス
- JR熊谷駅北口より国際十王バス・深谷駅行き「高柳」下車徒歩約5分、JR籠原駅より徒歩約20分
おみやげには熊谷で育まれた埼玉三大銘菓「五家宝」を!
「埼玉三大銘菓は?」という問に、当の埼玉県民ですら即答はできないはず。しかし、熊谷人なら「草加せんべいと川越の芋菓子、そしてわが街の五家宝(ごかぼう)!」と声を大にして答えることでしょう。水飴などで固めた棒状のおこし種をきな粉でラッピングした和菓子で、関東近郊ならスーパーでも目にするかもしれません。でも本場、熊谷の五家宝はひと味もふた味も違います。
明治20年(1887年)創業の「堀内製菓」の五家宝は、ふっくらとやわらかいおこし種と繊細なきな粉の味わいが特徴。毎日800〜1000本、1本1本がご主人による手作りです。
見た目はもちろん、語り口も熱いご主人。小学校での体験教室も開催し、五家宝と五家宝を育んできた熊谷の文化を子どもたちに伝える活動も行っています。文化や伝統、そして「熱さ」がこうして引き継がれていくんだなと感じられる逸話でした。
同店のオリジナル五家宝。通常の12倍の長さに当たる60cmの「末永く」は、贈り物にもぴったりです。
堀内製菓
- 住所
- 埼玉県熊谷市本町2-15
- 営業時間
- 9:00~18:00(売り切れ次第閉店)
- 定休日
- 日曜日
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約9分
熊谷は農業産出額埼玉県内3位を誇り、中でも小麦は全国有数の産地! 市内北部には、めぬまねぎや妻沼茶豆、やまといもといった特産品を有する妻沼地域が広がっているなど、とにかく野菜がおいしい土地柄です。
そんな熊谷産の旬の野菜が揃っているのが「地産市場かまくら」。三色オクラなどの変わった野菜が多く並んでいるのも、チャレンジ精神旺盛な熊谷の農家さん直送の店ならでは。それぞれのおすすめ調理法が、名札そばに書かれているのもうれしいポイント。
土の力強さを感じられる濃厚な熊谷野菜を、小旅行の思い出に食卓で食してみませんか?
地産市場かまくら
- 住所
- 埼玉県熊谷市鎌倉町84
- 営業時間
- 9:00〜18:00
- 定休日
- 月曜日
- アクセス
- JR熊谷駅より徒歩約13分、秩父鉄道上熊谷駅より徒歩約3分
最大の魅力は思い思いの「あつさ」で街を盛り上げようとする人々!
実は熊谷には、紹介した以外にも自慢の野菜を生かしたグルメや遊べるスポットが盛りだくさん。そしてそれらは、「ぶっちゃけ熊谷は田舎だけど、その熊谷を生かしておいしいものを作ってやろう!」「暑さ日本一という土地だけど、暑さに負けない楽しい街にしてやるぞ!」という市民の思いによって生み出されたものだったりするのです。
熊谷の真の魅力は、そんな人々が織りなす文化。無骨で不器用だけれど、どこか憎めない熊谷直実の街で、心に響く熊谷的な「あつい」何かを一つでも見つけられたら、きっと少しだけ人生が豊かになるかも。
取材・写真・文/木村雄大
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