伊豆半島の東側、遠くに大島や新島を見渡す相模灘に面した稲取は、金目鯛の特産地としても知られる港町です。稲取港で水揚げされる金目鯛は全国でも有数の漁獲量を誇り、特別に「稲取キンメ」と呼ばれるブランド魚になっています。
また、稲取は毎年1月下旬~3月下旬(2022年は1月20日~3月31日)に開催される「雛のつるし飾りまつり」でも人気の観光地です。稲取の観光スポットやイベント、おすすめグルメ情報をチェックして、楽しい伊豆旅行へとお出かけください。
東伊豆の稲取ってどんなまち?
稲取は伊豆半島の東側、相模灘に面した東伊豆町の港町です。東京からは新幹線を利用すると熱海で乗り換えて約1時間30分。特急踊り子号に乗れば、乗り換えなしの約2時間20分で伊豆稲取駅に到着します。
伊豆稲取駅改札の天井には、さっそく「雛のつるし飾り」が。かわいらしい雛が出迎えているようです。
高級ブランド魚「稲取キンメ」で有名な港街
伊豆稲取駅から坂を下って5分ほど歩くと稲取漁港が見えてきます。この稲取漁港で水揚げされた金目鯛は「稲取キンメ」と呼ばれる高級ブランド魚。その洗練された味わいで、「日本一うまい魚」と呼ばれるほどです。
役場の前に据えられた「稲取キンメ」のオブジェ。稲取の人はキンメのことを「ぎんでえ」と呼びます。
港の直売所では水揚げされたばかりの新鮮な魚を購入することができます。
雛のつるし飾り発祥の地
稲取は、雛壇の左右につるし人形を飾った「雛のつるし飾り」の発祥の地として知られています。
毎年1月下旬~3月下旬には、まちのあちこちに雛壇が設置されて、「雛のつるし飾りまつり」を開催し、多くの観光客でにぎわいます。
おもてなしの仕掛けがいっぱいの稲取
小さなまちのあちこちに、おもてなしの仕掛けがたくさんあります。地元の人とちょっとした軒先で楽しい会話が弾みますし、つい足をとめて、写真を撮りたくなるようなスポットも。地元の人も、観光で訪れる人も、どちらも笑顔になれるまち。それが稲取の魅力かもしれません。
港町にはネコがよく似合います。思わずシャッターを切りたくなります。
置いてあるベンチに書かれている言葉からも、おもてなしの心を感じられます。
子や孫の健やかな成長を願う気持ちがこもった雛のつるし飾り
雛のつるし飾りとは、江戸時代後期に生まれた、稲取独自の伝統の飾りもののこと。子や孫の健やかな成長を願う気持ちが、雛飾りの一つひとつにこめられています。
雛のつるし飾りは、布の切れ端を使って手づくりした人形を赤い紐に縫い付け、雛段飾りの両側に吊るして飾ります。竹の輪に吊るす紐の本数や人形の個数は自由ですが、お祝い事としてかならず奇数になるようにします。
また、紐に縫い付けられた人形には、それぞれに意味があります。たとえば、神さまのお使いとされる「うさぎ」は呪力で赤ちゃんを守ってくれるように。女性を象徴する「桃」は厄払いや多産、長寿延命。「俵とねずみ」はご飯に困らないように、などの願いが込められています。
雛のつるし飾りスポットをめぐろう
1年中つるし飾りを見られる「雛の館なぶらとと」
伊豆稲取駅から歩いて7分ほどの場所にある「雛の館なぶらとと」は、雛のつるし飾りの常設展示館です。
明治時代に作られたものや、現代風にアレンジした小さなサイズのものなど、多数の雛のつるし飾りが展示されています。
雛の館なぶらととのスタッフの方からは、雛の吊るし飾りにまつわるエピソードや飾りの由来など、さまざまな話を聞くチャンスも。雛のつるし飾りまつりをより一層楽しむことができますよ。
雛の館なぶらとと
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取396
- 営業時間
- 9:00〜17:00
- 入館料
- 100円
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約7分
「素盞嗚神社雛段飾り」の118段の階段に飾られる雛人形とつるし飾り
雛の館なぶらととから12分ほど歩くと、素盞嗚(すさのお)神社に到着。1617年に創立されたこの神社では、毎年つるし飾り祭りの時期だけの特別展示として、神社の階段を使った雛人形と雛のつるし飾りが展示されます。
雛人形を飾る段数は118段。これだけの雛壇の段数は日本一だとか。階段には約380体の雛人形が整然と並べられ、その両脇には雛のつるし飾りが展示されています。毎朝、雛人形や飾りを地元の人が並べるそう。
素盞嗚神社の本殿からは、雛段、伊豆急電車、稲取湾を見渡すことができます。伊豆急行線の車窓からも楽しめるようにと、イベントの開催期間は、一部の列車が片瀬白田~伊豆稲取間の神社の参道前を徐行運転しています。
本殿からの階段にずらりと並べられた雛人形はなかなか見ることのできない光景です。その向こうには伊豆急の姿も見えます。
素盞嗚神社雛段飾り
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取15
- 開催期間
- 2022年2月19日~3月13日
- 展示時間
- 10:30~15:00(雨天中止)
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約10分
華やかな現代風飾りが印象的な「文化公園 雛の館」
素戔嗚神社からのんびり歩いて20分ほどで「稲取文化公園」へ。公園の中には、雛のつるし飾りまつりのメイン会場となる「文化公園 雛の館」と、無料で楽しめる足湯処「雛の足湯」があります。
「雛の館」は、雛のつるし飾りまつりの期間中だけ開館している展示会場です。会場には100対をこえる雛のつるし飾りが展示されていて、その数に圧倒されます。中でも、「煌びやかな豪華な現代風飾り」をイメージしたという、華やかなつるし飾りが印象的です。
入口正面のジャンボつるし飾りは6,409個の人形が使用されています。
めずらしい「金目鯛の鯛の鯛つるし飾り」も展示されています。「鯛の鯛」とは、鯛の胸びれの骨のこと。骨が鯛のかたちをしていることから、「鯛の鯛」と呼んで、地元では縁起物として重宝してきました。金目鯛1匹から2枚の鯛の鯛が取れます。
さらには、世界でたったひとつの「雛のデコつるし飾り」。約43,200個のスワロフスキー・エレメントでデコレーションされた雛のつるし飾りです。
文化公園 雛の館
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1729
- 開催期間
- 2022年1月20日~3月31日
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 入館料
- 500円
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約12分
「雛の足湯」で歩き疲れた足をひと休み
文化公園内にある「雛の足湯」は屋外と屋内のどちらも利用可。足湯はそれぞれが10人入れるほどの広さです。
ブロックごとに温度が異なるので、好みの温度を選んでからゆっくり浸かりましょう。
足湯に浸かりながら園内の桜をのんびり眺めてひと休みできます。(※写真は2019年の様子)
雛の足湯
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1729
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 入館料
- 無料
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約12分
稲取キンメと地元グルメを味わおう
高級ブランド魚「稲取キンメ」に、稲取発祥のB級グルメ「肉チャーハン」。雛のつるし飾りまつりの開催期間中だけ営業している和菓子店など、稲取で味わえるグルメスポットをご紹介します。
稲取キンメを味わうなら「きんめ処 なぶらとと」へ
「きんめ処 なぶらとと」は、稲取漁港前にある金目鯛専門店。こちらで提供される金目鯛は、稲取漁港で水揚げされた稲取キンメのみ。お刺身定食のほか、煮付けやしゃぶしゃぶ定食、どんぶりなどのメニューがあります。
おすすめは、金目鯛のお造りとたたきが味わえる「きんめ鯛お刺身定食」(2,916円)。おみそ汁にも鯛の身が入っているのがうれしい定食です。
新鮮でプリプリとした食感の金目鯛は、脂がのっていながらもあっさりとした味わいです。
東伊豆名物の「伊豆ニューサマーサイダー」(324円)もこちらでいただけます。さっぱりとした味わいのオレンジソーダで、甘さ控えめです。
きんめ処 なぶらとと
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取396
- 営業時間
- 11:00~15:00
- 定休日
- 火曜日
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約10分
「かっぱ食堂」で地元B級グルメの肉チャーハンを食す
稲取のもうひとつの名物といえば、地元名物のB級グルメ「肉チャーハン」。元祖ともいわれる「かっぱ食堂」へ。ちなみに、店名の「かっぱ」は先代のニックネームなのだとか。
肉チャーハン(950円)とは、玉子チャーハンのうえに豚バラ肉と野菜の炒めものを乗せた一品。とろみのついた濃いめのタレとご飯の相性が抜群です。
こんなところにもかっぱがいました。
かっぱ食堂
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取400-4
- 営業時間
- 11:00〜15:00
- 定休日
- 水曜日
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約7分
季節限定!「畳石」のきんつばは売り切れ必至
素盞嗚神社へ向かう途中にあるのが「畳石」。こちらは雛のつるし飾りまつりの開催期間中だけ営業しているきんつばのお店です。期間限定だけあって、観光客の多い土日は午前中で売り切れになる可能性が高いです。きんつばを購入したい場合、伊豆稲取駅についたら、まずは畳石を目指すのをおすすめします。
江戸城の石垣をつくるために切り出された巨大な石が店名の由来。
名物のきんつばは甘さ控えめ。ずっしり詰まった粒あんの上品な味わいが楽しめます。
角石と名付けられたきんつばは、1個200円。5個入り(箱付き)は1,100円になります。
畳石
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取223-1
- 営業期間
- 雛のつるし飾りまつり開催中
- 営業時間
- 8:30~16:00
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約10分
まだまだある! 雛のつるし飾りスポット
雛のつるし飾りまつりのもうひとつのメイン会場「むかい庵」
「文化公園 雛の館」と並ぶ、雛のつるし飾りまつりのもうひとつのメイン会場が「むかい庵」。
まつり期間中、江戸時代の雛人形や海をイメージした現代風のつるし飾りなど、稲取の昔ながらの雛飾りを中心に約70対のつるし飾りが展示されています。(※写真は2019年の様子)
むかい庵
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取8-1
- 開催期間
- 2022年2月19日~3月13日
- 開館時間
- 9:00~17:00
- 入館料
- 500円
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約10分
階段の上と下から雛人形が楽しめる「三嶋神社」
「きんめ処 なぶらとと」のすぐ近くにある三嶋神社では、まつり期間中に34段の石段に約140体の雛人形が飾られています(※2019年の情報です)。階段下からの眺めと、階段を登って上から見下ろした景色の両方が楽しめます。
三嶋神社
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取745
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約8分
境内に雛飾りのある「八幡神社」
稲取の鎮守さまとして信仰されている八幡神社にも雛飾りがあります。2018年から、雛のつるし飾りまつりの会場のひとつとなりました。
まつり期間中に飾られる雛飾りは、静かな境内にあることでいっそうおしとやかに見えます。
八幡神社
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1191-1
- 開催期間
- 2022年1月20日~3月31日
- 公開時間
- 9:00~17:00
- 入場料
- 無料
- アクセス
- 伊豆稲取駅から徒歩約15分
早春の稲取を訪れて、旬の稲取キンメと雛のつるし飾りを楽しもう
稲取では季節によってさまざまなイベントやグルメなど楽しみがたくさんありますが、稲取キンメと雛のつるし飾りを一度に楽しめる早春に訪れるのが一番おすすめです。
25周年を迎える2022年の「雛のつるし飾りまつり」では、記念の花火大会がサンライズテラスで1月15・22~26日に、稲取漁港で1月27~30日・2月20日に開催されます。開始時間は20:30から(荒天中止)。
稲取は昔ながらの雰囲気を残した温泉街としても知られています。夜は花火を楽しみながら、町内にある共同浴場や足湯をめぐって旅行気分を満喫してみてはいかがでしょうか。
早春に稲取を訪れた際は、伊豆急行線で2駅離れた「河津駅」にもぜひ立ち寄ってみてください。2月上旬から咲き始める「河津桜」で、一足早く桜の景色を楽しむことができます。
雛のつるし飾りまつり
- 開催期間
- 2022年1月20日~3月31日
※新型コロナウイルスの感染状況により、イベントを縮小または中止することがあります。 - 場所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取
- 詳細
- 稲取温泉旅館協同組合
取材・撮影・文/平野有希
※新型コロナウイルスの感染状況により、イベントを縮小または中止することがあります。
※写真は2019年開催時の様子です。