煌びやかな世界遺産と四季折々の自然に恵まれた栃木県日光に、日常の喧騒から解放され、芳しいオリジナルの紅茶に癒される隠れ家的リゾートがあります。その名は「ふふ 日光」。2020年10月に、かつて皇室の方々が滞在した田母沢御用邸の隣地に開業しました。
全24室の客室はすべてスイート仕様で、地下1,500mから自家源泉を引いた温泉も全室で堪能できるほか、宮中晩餐会をかたどった夕食では、地元産の旬な食材を使った和洋折衷の料理で豪勢にもてなされ、時間の流れはゆっくりなもののチェックアウトの訪れが早いとも感じてしまう滞在です。
周囲の自然に溶け込んだ建築が目印
大木に囲まれ、まるで木々の影のように静かに佇む、ふふ 日光。漆黒色の木材と栃木県産大谷石で築かれた建物は御殿さながらで、バトラーの笑顔に出迎えられ、これからの展開に胸も高まります。
扉の先に見えるのは新春を彩り、吉祥を告げる梅の照明と、皇室のお印にも用いられるゴヨウツツジの姿。日本庭園のような、美術館のような、既に興趣の尽きない空間です。
チェックインは、午後のティータイムとともに
チェックインは、ふふラウンジにて。クラシック音楽が流れる傍ら、風にそよぐ庭園を眺めたり、座り心地の良いソファーに身を預けたり。家具の配置や背もたれの高いソファーのおかげで、プライバシー空間も保たれています。
ウェルカムドリンクのホットレモネードを飲み終えるころには、すでに非日常の時間が始まっていることに気付くはず。
ドリンクと一緒にいただきたいのが、1日数量限定の「御用卵の黒糖プリン」(600円)。ころんとした器がかわいらしい一方、蓋をあけてみると金箔と銀箔が絢爛な輝きを放ちます。日光の御用卵と黒糖による甘味は奥深く、ビターチョコにくるまれた白花豆や別添えの抹茶ソースをかけることで味の変化を楽しめます。
2組限定で、「くるみの風テラス」でアフタヌーンティー(2名分で4,000円。14時~17時)を楽しむのも素敵です。田母沢川沿いに築かれたテラスは、四方が緑の自然に囲まれ、清涼な風が吹き抜ける特別な場所。
料理長の古越 唯夫さん曰く、メニューには和洋折衷を取り入れ、季節らしさを表現しているということ。その言葉通り、練り切りには十五夜とうさぎの姿があどけなく、チョコレートに山椒や赤みそを使用するなど、創意に富んだ内容です。
紅茶も栃木県の紅茶専門店「Y‘s tea」が、「ふふ 日光」のためにオリジナルでブレンドしたもの。ふふブレンドティーはジャスミン茶と緑茶をブレンドし、さらに洋梨の可憐な香りがふわりと広がります。深紅のバラ色が特徴のロゼワインティーは通称・大人の紅茶で、シックな味わい。アフタヌーンティーは、ふふラウンジでもいただけます。
壮麗な空間が広がる「ふふラグジュアリープレミアムスイート」
1年の各季節を示す二十四節気(にじゅうしせっき)になぞった客室は全24室で、カテゴリは6つ。どの部屋も家具の色調や照明を唯一無二のものを起用することで、どれ1つとして同じ部屋がないことを実現させています。その中でも最上級に位置するのが、ふふラグジュアリープレミアムスイートです。
130平米以上の広さは大人4名にも十分なゆとりで、テラス付きなのが魅力。家族はもちろん、3世代でお孫さんと一緒に利用する方も多いと聞きます。
そして、プレミアム感を最大限に発揮しているのが2つの独立したバスルーム。石造り露天風呂では、水面に映り込む外の様子を大浴場さながらの広さで満喫でき、内風呂では、木の芳醇な香りに包まれた空間で癒しの時間を過ごせます。
ふふラグジュアリープレミアムスイートは館内に2室のみ。どちらも2つのバスルームが備わっていますが、1室はバスルームの面積が広い反面、もう一方の客室には暖炉が付いているなど、異なる意匠が凝らされています。
角部屋で2番目に広い「ふふラグジュアリーコーナースイート」
ウッド調の家具に、落ち着いた色合いの壁紙やテキスタイルが居心地の良さを演出している、ふふラグジュアリーコーナースイート。全3室で、1~3階の角部屋に位置しています。
ふふラグジュアリーコーナースイートは、76平米の広さで、大人3名まで宿泊可能。バスルームも広く、洗面台やシャワーブースが2つずつ設けられています。浴槽に段差があり、しっかりと肩まで浸かったり、半身浴で外からの涼風を浴びたり、寝湯でまどろんだりと様々な入浴ができるかたち。全客室とも自家源泉の温泉で、温度は常に42℃に保たれている徹底ぶりです。
気兼ねなく自分のペースで過ごせる「プレミアムスイート」
広さ70平米で、2名でゆったりと宿泊できる全6室のプレミアムスイートは、リビングルーム中央を占める大きなソファーが印象的。大切な人と一緒にテレビを見たり、おしゃべりに花を咲かせたり、ある時はそれぞれで読書をしたり、スマホを操作したりと思い思いの滞在スタイルが叶います。
そして、窓に面するカウンターは、この部屋の特等席。景色を眺めるのはもちろん、パソコンで作業するのにちょうど良い高さなので、テレワークをしながら、温泉や観光を楽しむ人もいるのだとか。
どの客室も壁一面の窓から樹木や草花によって彩られた風景を一望できますが、それは部屋から見える景色を絵画のように表現したいという想いから。桜や紅葉のほか、緑の葉っぱ一枚でも黄色や青みを帯びていて、さまざまな緑を目の当たりにします。
大正期を彷彿させる優雅なインテリア
客室の印象を決めている照明は、どれも多種多様。すずらんのような形から、提灯に似た楕円形まで、個性的な照明が勢揃いし、どこか昔懐かしい雰囲気を醸し出していますが、そこには特別な意図が潜んでいます。大正天皇が静養された田母沢御用邸に「ふふ 日光」が隣接していることにちなみ、あえてどの客室も大正期を彷彿させるような部屋に仕立てているのです。
部屋のムードをいっそう豪華に引き立てるのが、蓄音機のスピーカー。スマホを置くと、大正期と同時期に製造されたアメリカ製のビンテージスピーカーから音楽が流れ、普段聞いていた音にふくみが加わり、奥ゆかしいメロディーへと一変。その音の良さ、優雅な佇まいに魅了され、宿泊者から頻繁に問い合わせも受けるのだとか。
そのほか、日光らしさを感じられるオリジナルの三猿と眠り猫にも注目。愛嬌たっぷりな表情に、こちらも笑みがこぼれます。
吟味されたアメニティで滞在がさらに快適に
部屋の装いは全室異なりますが、アメニティは共通です。残り香を意味する余香(YOKOU)と名付けられたバスグッズとスキンケアアイテムは、肌に優しいオーガニックなもの。シャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュ、ボディジェルは、春の花の香りで、ベルガモットの春めく香りに気分も上がります。
クレンジングジェル、スキンローション、スキンジェルは、木漏れ日の香り。ラベンダーとゼラニウムをブレンドした落ち着いた香りは保湿に加え、癒し効果も期待できそう。また茶葉に海塩をブレンドしたオリジナルのバスソルト「紅茶の香りの湯」も用意されています。
上下に分かれた館内着は浴衣用の生地で、着用したままレストランも利用できます。スッキリとした紺色に、「ふふ 日光」のテーマカラーのゴールドが光ります。ほかにバスローブ、ワンピースタイプのナイトウェア、そして大浴場やレストランに行く際に便利な羽織が揃っています。
冷蔵庫にある飲み物は無料で、ミネラルウォーター、ビール、炭酸水、オリジナルのマスカットティーという充実ぶり。特に水出しのマスカットティーは爽やかな香りと味わいで、お風呂上りにぴったり。ほかにドリップコーヒーと、ふふブレンドティーのティーバッグもあります。
また対面せず、タオルなど必要なものをそっと届けてくれるバトラーボックスも好評。入浴後や手が離せないときも気兼ねなく頼めるサービスです。
ラウンジで一足先にほろ酔い気分
ひと段落したところで、ふふラウンジへ。16:00から19:30までの夕暮れ時、こちらでは、シャンパンや生ビールなどのアルコールと、日光麹甘酒、自家製レモネードなどのソフトドリンクをフリーで提供しています。
お風呂上りの熱った体にぴったりな飲み物が揃っていて、夕食前のひとときを過ごす人も多いとのこと。刻々と夜の帳が下りる様子を、グラスを傾けながら、のんびりと見守るのも一興です。
日本料理「節中」が披露する雅なご馳走
レストランは、鉄板焼き「候」と日本料理「節中」の2か所。個室仕様の節中では、二十四節気の名前が各部屋に付けられていて、そこからも四季の巡りを大切にしている様子がうかがえます。
地元産の食材を使うことで日光の旬を味わってもらうこと、そして、皇室ゆかりの地にいるからこそ、宮中晩餐会をイメージした贅沢な内容となっていることがこだわり。和の食材を洋の調理方法で用いるほか、逆も然り。和洋折衷の幅広い料理の数々は、味だけでなく、絢爛な食器と相まって眼福でもあります。
八寸に代わって「ボン・ボニエール」と称して登場した江戸切子や有田焼。それぞれの器には秋鮭や秋茄子、柿などの旬の食材や湯葉など名産が盛られています。フランス語でボンボン(砂糖菓子)を入れる容器を意味するボン・ボニエールは、皇室の贈り物としても有名。幸せが宿る器といわれておりますが、美食が詰まった料理に相応しい名前です。
そして、三種の神器をイメージした料理は見た目も楽しい一品。秋刀魚のマリネで草薙剣(くさなぎのつるぎ)、豚足のパネで八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、ビゴール豚の生ハムにくるまれた茄子のパプトンで八咫鏡(やたのかがみ)を表しています。
フォアグラなど高級食材も使われ、特に日光霧降高原牛のフィレ肉のグリエでは、香りづけのトリュフが目の前でふんだんにスライスされ、芳醇な香りがふわりと漂います。
釜を直火で炊いた炊き込みご飯には、しいたけ、ひらたけ、まいたけなど地元産のきのこが入り、おこげと湯気につられ、もう一口とご飯がすすみます。
炎が揺らめくラウンジで一日の締めくくり
お客さまに満腹で食事を終えて欲しいという気持ちから、料理の量も多め。そのため時間を置いて、〆のデザートをふふラウンジでいただくことも可能です。周囲が闇に染まるころ、ラウンジの照明も絞られ、中央の暖炉に火が灯ります。ソファーに座り、ゆらゆらと揺れる炎を眺めながら過ごす時間も格別。ゆったりと流れる大人の時間を楽しみましょう。
飲み物は、ウィスキーが10種類以上揃っているほか、デザートワインやブランデー、ロイヤルブルーティーなども選べます。
部屋への帰り道、たいまつや照明が明るく視界を照らすなか、空を仰げば満天の星々が見られ、柔和な気持ちとともに1日目が終了です。
朝日を浴びながら大浴場でお目覚め
2日目の朝、鳥たちのさえずりに導かれるように大浴場へ。露天風呂と内風呂があり、露天風呂では川のせせらぎがBGM。透明で匂いもしないアルカリ性単純温泉の湯はしっとりとして、起きたばかりの体に心地よいです。
脱衣所にはスキンケアセットのほか、タオル類を常備。さらにミネラルウォーターと小ぶりの缶ビール、そしてアイスキャンディー4種とアイスシュー3種といった無料サービスも充実していて、湯上りのひとときも心地よく過ごせます。
贈り物のように届く、滋味深い朝食
夕食に引き続き、朝食もまず登場から魅せられます。漬けまぐろや丸茄子、卵焼きなどが銀色の箱に入った状態で出てきますが、これは献上箱をイメージしたもの。箱の上に置かれた縁起物の鈴が、より卓上を色めかせます。
サラダはシャキシャキと歯ざわりが小気味よく、野菜の色彩も瑞々しくて鮮やか。野菜は栃木県産で、そのなかには農薬・肥料を使わない吉原ファームのものも。
鰆(さわら)の子どもにあたる、さごしの西京味噌焼きはふっくらとした肉厚な身に味噌の香ばしさが加わり、萬古焼の土鍋で炊いた栃木県産こしひかりとの相性が抜群。ほかに納豆や漬けまぐろもあり、白ご飯がすすみます。
栗皮色したお鍋の中身は、霧降高原豚の角煮と巻き湯葉の炊き合わせ。噛むごとに角煮からは旨みが、湯葉からは出汁の優しい味わいが広がり、頬も緩みます。麺も入っていますが、のど越しが良いコンニャクなので、カロリーが抑えられているのも嬉しいポイントです。
朝食の締めに登場するグリーンカレーは、和とも洋とも異なる、その意外性に驚くはず。実は、あえて香辛料を使ったメニューを選ぶことで、満腹状態から消化を促すことが狙い。ピリッとした辛味はあるものの、自家製のお豆腐が味をまろやかにし、後を引かない味付けになっています。
個室もしくはカウンター席で朝食をいただきますが、カウンターだと目の前に庭園が広がり、朝のまばゆい光景を望みながら食事をとれるのが魅力。さらに料理は目の前から説明してくれるので、会話も弾みます。
過ごしやすい春や夏だと、朝食を10時からのブランチに変更して、「くるみの風テラス」でいただくことも可能(限定2組 / 追加料金なし)。その場合、ゆっくりと食事を楽しめるよう、通常11:00のチェックアウトが1時間延長されます。
オリジナル商品と日光の名品が並ぶ「スーベニール」
「ふふ 日光」の思い出を自宅で振り返ったり、大切な人におすそ分けしたりしたいと思ったら、スーベニールへ。オリジナルの紅茶5種をはじめ、客室にいた眠り猫や三猿を購入できます。
さらに客室で香っていたアロマ「SPRING GOLD」もあります。日光をイメージし、ベルガモットやネロリなどがブレンドされたオリジナル商品です。また、バスグッズとスキンケアアイテムでお馴染みの余香シリーズも、旅の余韻に浸るのに相応しい一品です。
最後まで日光を堪能し、帰路へ
名残惜しさを感じながらのチェックアウトですが、こちらで申し込める特別なアクティビティも必見。隣接の日光田母沢御用邸記念公園では、宿泊者が無料でうけられる特典もあります。
世界遺産地区 日光 サイクリング
日光の町並みや世界遺産を颯爽と走り抜ける「世界遺産地区 日光 サイクリング」では、大谷川河川敷のオフロードや樹齢300年の日光杉並木など、普段とは一味違う日光の風景に出会えます。(ご予約は直接「ふふ 日光」へお問い合わせ」)
日光東照宮将軍の間 特別参拝プライベートツアー
「日光東照宮将軍の間 特別参拝プライベートツアー」では、日光で欠かせない名所を人混みが少ない午後の時間帯に見学します。江戸時代に起源を持つ、堂者引き(どうじゃびき) という案内人が専属で付きますので、じっくりと巡れます。(ご予約は直接「ふふ 日光」へお問い合わせ」)
日光田母沢御用邸記念公園
「ふふ 日光」に隣接している「日光田母沢御用邸記念公園」では、ふふ 日光のスタンプを見せると音声ガイドが無料になります。江戸、明治、大正と多岐にわたる時代の建築様式をもつ集合建築群は、同時期の御用邸の中では最大規模のもの。国の重要文化財にも指定されています。
滞在毎に一歩ずつ、快適な空間となる「ふふ 日光」
エントランスの庵治石(あじいし)は、初心を継承する意味を込めて1店舗目「ふふ 熱海」から移設されたもの。
全国でスモールラグジュアリーリゾートを展開する「ふふ」。その名前にはお客様が、ふふっとほほ笑んで帰ってほしいという願いのほかに、スタッフの想いも込められています。
「将棋の駒にある歩(ふ)は、前に1つずつしか進めない駒ですが、それでも着実に進んでいけば、いつか金将と同じ働きをする『と金』になります。だからこそ、私たちも大切な家族をもてなすように、しっかりと1つずつ、お客さまとともに歩んでいきたいです」と、バトラーの野田純さん。
その言葉通り、滞在中に分かった宿泊者の嗜好は、ふふ全体に共有され、次の滞在に活かされます。アレルギーや追加リクエストを、随時伝えるのは気が滅入るもの。到着時に自分好みの状態で迎えてくれるのは嬉しさと同時に安堵さえも覚えるはず。
豊かな自然と温泉、ここならではの紅茶と食、それにスタッフの優しさと笑顔に癒されて。「ふふ 日光」のシンボルは、アヤメをモチーフにしていますが、その花言葉は「希望」。訪れる人たちの気持ちを明るくする、まさに希望が芽吹く場所です。
ふふ 日光
- 住所
- 栃木県日光市本町1573-8
- アクセス
- JR日光駅、東武日光駅よりタクシーで約10分
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:22:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 駐車場
- 有り:無料(予約不要)
撮影:久保田耕司 取材・文:浅井みら野