星野リゾートとJR東日本がコラボ!フルーツ王国・福島を走る観光列車「福がくるくるフルーティア」

福島県のシンボル・磐梯山のたおやかな稜線を横目に走る赤と黒の観光列車「フルーティアふくしま」。通常なら福島県産のフルーツを使ったスイーツとのどかな車窓風景を楽しめますが、2022年11月に磐梯山のふもとにある「星野リゾート 磐梯山温泉ホテル」とコラボ企画を実施。

「福がくるくるフルーティア」という特別列車が誕生し、この時のために考案されたオリジナルスイーツに星野リゾートらしい感動体験が加わって、地域の魅力と愛が詰まった内容となっています。

 

JR東日本が手掛ける観光列車「フルーティアふくしま」とは?

フルーティア

「走るカフェ」をコンセプトに掲げている「フルーティアふくしま」は、桃や梨など福島が誇る旬のフルーツを豊かな自然が映る車窓とともに堪能できる観光列車です。4~11月は郡山駅から喜多方駅を往復する磐越西線ルート、12~3月は郡山駅から仙台駅を往復する東北本線ルートの2パターンで運行しています。

 

フルーティア
フルーティア

シンボルマークには、フルーティアの由来となったフルーツとティーポッドが描かれ、渋さの中にもかわいさが光るデザインです。車内でいただけるフルーツを使ったスイーツは月ごとに変わり、往路と復路によって異なりますが、どのメニューも福島の地元で人気のカフェや青果店が提供するものを味わえます。

スイーツや運行日に関する詳細はJR東日本の公式サイトで確認でき、乗車の3日前まで「のってたのしい列車予約サイト」から予約可能です。会津の観光にも注力するJR東日本が、同じく地域の魅力を通したおもてなしに定評がある星野リゾートに声を掛けたことで、今回の「福がくるくるフルーティア」が始まりました。

 

会津の歴史と文化が満載の「星野リゾート 磐梯山温泉ホテル」

磐梯山
写真提供:星野リゾート 磐梯山温泉ホテル
猪苗代湖

「福がくるくるフルーティア」で、スイーツや接客を担当したのが、「星野リゾート 磐梯山温泉ホテル」です。磐梯山のふもと、猪苗代湖を望める位置にあり、新緑に紅葉と四季折々の景色が魅力ですが、一番のにぎわいを見せるのは極上のパウダースノーに包まれる冬です。

 

星野リゾート  磐梯山温泉ホテル
写真提供:星野リゾート 磐梯山温泉ホテル

界やOMO(おも)などのブランドを運営する星野リゾートの中で、こちらは「個性的な宿泊施設」に分類されていますが、その理由が雪山を優先にしたサービスの数々。ホテル正面には「星野リゾート アルツ磐梯」のゲレンデが広がり、チェックアウトは13時と朝イチに滑走した後も焦らず身支度を整えられるなど、スキーヤーファーストなサービスが受けられるのです。

 

星野リゾート  磐梯山温泉ホテル
星野リゾート  磐梯山温泉ホテル

さらに会津の歴史文化体験ホテルとして、館内を飾るのは県内で随一の所有数を誇ると言われる赤べこです。会津の郷土玩具である赤べこが大小さまざまで出現し、ロビーの木々には緑や黄色、赤など多色のべこが飾られて四季の移ろいを表現しています。

 

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いよいよ「福がくるくるフルーティア」の登場

福がくるくるフルーティアの応援団

「福がくるくるフルーティア」が走るのは、磐梯山温泉ホテルの最寄り駅である磐梯町駅から郡山駅まで。通常なら50分ほどで到着する距離ですが、この日は約1時間30分かけて運行するため、磐梯山をはじめとした雄大な風景とスイーツを存分に楽しめます。磐梯町駅は普段なら観光列車が停まらず、在来線も1時間に1本という静かな駅ですが、この日は応援団が駆け付けて晴れの門出を盛り上げました。

 

福がくるくるフルーティア

赤と黒に塗られた車体の登場は一見、派手な印象を受けるかもしれませんが、こちらでは見慣れた配色。馴染みのある赤べこを彷彿させ、会津らしさが感じられるデザインになっています。振り返れば、さきほど登場した応援団の法被(はっぴ)も赤べこカラーです。

 

赤べこに扮したスタッフ
赤べこに扮したスタッフ

車内に入るとすぐに、明るい「いらっしゃいませ」の声と赤べこに扮したスタッフがお出迎え。乗車中の時間も楽しく過ごしてほしいという想いから、磐梯山温泉ホテルのスタッフ自らが作成した衣装は愛くるしく、星野リゾートのこだわりが現れています。

 

くつろぎの空間が広がる車内

長いカウンターが設けられた1号車
写真提供:JR東日本

2両編成で、長いカウンターが設けられた1号車は、さながらバーのような雰囲気。こちらでドリンクを注文できるほか、誰でも自由に座れるカウンター席もあるので、座席がある2号車から移動して別の雰囲気を味わうこともできます。

 

スイーツ

磐梯町駅を出発する前に1号車に立ち寄ってみると、カウンターには色鮮やかなブドウが並び、最後の仕上げの真っ最中。できたてのスイーツをすぐに味わえる贅沢を楽しみに、今か今かと発車時間を待ちながら座席へ戻ります。

 

2号車のボックスシート
写真提供:JR東日本

座席が配された2号車は、車窓に面した1人掛けシートと2人・4人掛けボックスシートがあり、大きな窓が特徴的。おしゃべりに花を咲かせたり、会津の景色を眺めたりと思い思いの時間を過ごせます。

 

名産の食材を味わえるスイーツセット

ミニャルディーズ5種

やわらかなソファシートに座って一息つくと、目の前には1品目の「ミニャルディーズ5種」が既に待ち構えていました。フランス語で「可憐」、「ひとくちサイズのお菓子」を意味し、ちょこんとかわいげに盛られた様子はまるで郷土玩具の起き上がり小法師のよう。

 

ミニャルディーズ5種

磐梯山温泉ホテルが考え出したスイーツは福島の食材にこだわり、選んだ中には武者せんべいや田楽味噌、蕎麦の実に酒粕といった和の要素が強いものも。それらを洋菓子へいかしたことで伝統食品の新たな可能性がうかがえます。

 

武者せんべいを用いたフィナンシェ

武者せんべいを用いたフィナンシェには、江戸末期に創業した味噌専門店「満田屋(みつたや)」の味噌を使ったガナッシュが加わり、味噌の甘みとキャラメリゼしたナッツとの相性が絶妙。かむほどにお互いの味が混ざり合って、味の変化を楽しめる名作です。

 

プチシュー

手に取ると酒粕特有のふわっとした香りが鼻をくすぐるプチシューは、相性が良い和梨とともに。芳醇な香りと爽やかな味わいを同時に楽しめる、五感で堪能するスイーツです。

 

上から見るとかざぐるまに

小菓子を載せた台を真上から眺めると、ある玩具だと気付きます。子どもの時にふぅーっと息を吹きかけて遊んだ、かざぐるまです。くるくると回ることから、会津ではお正月の初市で販売され、商売繁盛の縁起物として親しまれているのです。

 

錦のごとく赤や黄色、緑の色が流れる車窓風景

車窓から見える紅葉
車窓から見える田園風景

どのスイーツから手を付けようかと贅沢な悩みを抱えながら、ふと車窓に目を向けると紅葉に染まる山並み、収穫を終えた水田、風に揺れるすすき、山間に築かれた民家といった多彩な景色が次から次へと流れていきます。

 

車窓からの風景

自然が織りなす風景をぼーっと眺めていたら、山によって紅葉の色づきも異なるのだと発見。そして、福島の紅葉は黄色より赤が多めのよう。あちらの山は秋真っ盛りだけど、こちらの山はもう晩秋みたいといった、都市では気付きにくい秋の進み具合も見受けられます。

 

味覚だけでなく眼福も得られるメインスイーツ

3種のぶどうのタルト 干し柿とアーモンドクリーム

今回の一番の見どころであるスイーツ「3種のぶどうのタルト 干し柿とアーモンドクリーム」は、登場シーンからしてドラマチックで、期待や驚き、そして笑いといったエンターテイメント性が満載です。

 

タルトを背負っている赤べこ

まず主役のタルトよりも真っ先に目がいくのが、タルトを背負っている赤べこ。背中のかごにすっぽりとタルトが収まり、右へ左へゆらゆらと首が揺れている様子は、自分の晴れ舞台を見てほしいと視線を送っているような、タルトに手を付けられるのを拒んでいるような。赤べことスイーツという異色の組み合わせに好奇心が掻き立てられます。

 

フルーツがふんだんに盛られたタルト

そしてシナノパープル、ピオーネ、シャインマスカットがふんだんに盛られたタルトは光沢を帯びていて、一つひとつが宝石のよう。まずはぶどうをそのまま堪能し、徐々にクリームやタルト生地へフォークを入れていきます。時おりアーモンドクリームに潜んだ干し柿がやわらかな甘みと食感をもたらし、食べ飽きないアクセントに。ホールを丸ごと自分で平らげる夢のひとときです。

 

磐梯山温泉ホテルの久慈さん

初めてJR東日本との共同プロジェクトに携わった、磐梯山温泉ホテルの久慈さんは、「星野リゾートとして参画するにあたり、ホテルならではの楽しいひとときを列車内でもお過ごしいただきたいと思いました。『福島の福』をテーマに縁起物である風車や赤べこを登場させたり、普段からお付き合いのある地域の食材を使ったりすることで、お客さまと地域の方にも幸せな気持ちになっていただきたいです」と、表情を輝かせます。

 

会津の風景

「自然と文化の距離が近いのが会津の魅力だと思います」と話す久慈さん。「磐梯山の傍には、アルツ磐梯や猫魔スキー場があったり、会津で有名な鶴ヶ城も実は磐梯山や猪苗代湖から近かったりします。ここでは人の生活のすぐ近くに自然があり、どちらも互いに寄り添っているんです」。

 

福島の食と自然を満喫しに会津へ

福がくるくるフルーティアのスイーツ

黄色や赤に彩られた磐梯山が雪に覆われ始めると、「星野リゾート 磐梯山温泉ホテル」はスキーヤーとスノーボーダーでにぎわい、白銀から若芽色に山肌が移ろい始めると、「フルーティアふくしま」では春のスイーツが登場するなど、来たる季節の楽しみが続いていきます。

鉄道とホテル業界の垣根を越えて始動した共同プロジェクトですが、関わった誰もが福島好きに変わりありません。好きこそ物の上手なれ。多くの好きが結集した「福がくるくるフルーティア」は、訪れる人たちに福を呼び寄せる、まさに幸せが詰まった空間でした。

 

フルーティアふくしま

運行区間
磐越西線:郡山駅〜喜多方駅間
東北本線:郡山駅〜仙台駅間
運行日
2022年10~11月の土日、12月3・4・10・11日
2023年1月9・14・15・21・22・28・29日、2月11・12・18・19・25・26日
※運転日は変更になる場合があります。
販売箇所
のってたのしい列車予約サイト
公式サイト
フルーティアふくしま(JR東日本)

 

星野リゾート 磐梯山温泉ホテル

住所
福島県耶麻郡磐梯町更科清水平6838-68
総部屋数
145室
アクセス
JR磐越西線「猪苗代」駅、磐越自動車道「磐梯河東」ICから県道で約10km

 

取材・写真・文/浅井みらの 

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