夏になると浴衣を着てお祭りに出かけたくなりませんか? 提灯のやさしい灯り、金魚すくいや屋台、遠くから聞こえるお囃子……。そんなお祭り気分を温泉宿に泊まりながら体感できるのが「星野リゾート 青森屋」です。
ここでは、青森の四大祭りを一度に楽しめるショーをはじめ、郷土料理や伝統工芸、方言など、青森の文化を一年中満喫できます。家族で、カップルで、友人同士で、誰と行っても童心に帰って無邪気に楽しめる、あっという間の1泊2日の滞在記を紹介します。
青森の文化をのれそれ(目いっぱい)楽しめる仕掛けが満載!
今回訪れたのは青森県の南部地方、三沢市にある「星野リゾート 青森屋」。コンセプトは「のれそれ(青森の方言で「目いっぱい」という意味)青森 ~ひとものがたり~」。その名の通り、一歩館内に入れば、青森の祭りや文化をのれそれ楽しめる仕掛けがそこかしこに! 約22万坪、東京ドームおよそ15個分という広大な敷地内には、池や古民家が点在する公園もあり、まるで泊まれるアミューズメントパークのようです。
東京方面からはJR東北新幹線八戸駅で下車し、青い森鉄道に乗り換えて三沢駅まで約20分。三沢駅からは無料送迎バスがあります(予約制)。または、八戸駅から車で約40分。空路なら、羽田~三沢空港間をJALが1日4往復飛んでいて、所要時間は1時間15~25分程度。最終便を除く3便の到着にあわせて無料送迎バスがあり、空港からホテルまでは約20分で到着します(予約制)。
心地よさを追求した半露天風呂付客室でくつろぎの時間を
さっそくチェックインし、「あずまし 半露天風呂付」の客室へ。「あずまし」とは青森の方言で「心地よい」という意味だとか。その名の通り、窓の外には庭の緑が広がり、広々とした部屋はゆっくりくつろげる心地よい空間になっています。ベッドスローは南部裂織(なんぶさきおり)、湯呑に八戸焼、八幡馬(やわたうま)の置物など、青森で長く愛されてきた工芸品がしつらえられています。
とろみのある古牧(こまき)温泉のお湯を青森県特産のヒバの湯船にたっぷりためて、ゆったりと半露天風呂で楽しむのがこのお部屋の醍醐味。やさしい肌あたりのお湯とヒバの香りに癒されながら、新緑を眺めていると、あまりの心地よさに時間が経つのを忘れてしまいます。
温泉は大浴場で楽しみたいという人には、スタンダードタイプの「あずまし」の客室がおすすめです。落ち着いた空間に青森の工芸品が置かれ、どことなく懐かしい雰囲気。大きな窓から新緑を眺めていると、心まで解きほぐされていくのを感じます。
大浴場へは、客室に用意されているかごにタオルを入れて。肌触りがよく着心地のいい作務衣は、館内着として食事のときにも着て行けます。
ねぶたを思いっきり満喫したい人におすすめの客室が、館内に1室だけある「青森ねぶたの間」。壁にもふすまにも随所にねぶたが設置されていて迫力満点! この部屋の制作には、著名なねぶた制作者・竹浪比呂央(たけなみ ひろお)氏をはじめ、15名のスタッフが集まり、約2カ月半もの時間を要したそうです。
部屋番号の8287号室は、「青森ねぶた祭」の開催期間(8月2~7日)を示しています。玄関を入り、ねぶたの踊り手・跳人(はねと)の足跡が床に描かれた廊下「跳人ロード」を進むと、ねぶたが待つリビングへ。次に何が飛び出すのか、ワクワクが止まりません。また、客室に入る前にインターフォンを押すのを忘れずに。ここにも仕掛けが隠されています。
寝室の天井のねぶた絵は、位置によって見える絵が変わる仕掛けが。立ったり座ったりしながら天井を見上げると、さまざまなねぶたを楽しむことができます。
シャワーからも源泉かけ流しの温泉が! 露天風呂とヒバ造りの内湯で温泉を堪能
泉質のよさで知られる古牧温泉。清々しい風を頬に感じながら、池に浮かぶように張り出した露天風呂「浮湯」につかれば、自然とひとつになるような開放感に満たされ、体の芯からリラックスできます。夏は新緑に囲まれ、冬には池にねぶたの山車や灯篭が浮かび、春にはねぶたの技法で作られた一本桜と、津軽びいどろの浮玉の灯りがきらめき、季節ごとに違う景色を楽しめるのも魅力。
内湯は壁、天井、浴槽、すべてに青森ヒバが使われ、木の香りに包まれます。弱アルカリ性のとろりとしたお湯を体にまとい、湯上がりは肌が潤ってすべすべに。シャワーから出るお湯も源泉かけ流しというからとても贅沢! おかげで髪までしっとりサラサラになったように感じます。
「しがっこ金魚まつり」で夏祭り気分を満喫
温泉から出たら、季節ごとのイベントが開催される「じゃわめぐ広場」へ。「じゃわめぐ」とは青森の方言で「ざわめく」という意味。取材に伺った夏は、青森ならではの夏祭りを体験できる「しがっこ金魚まつり」が開催されていました。
お祭り気分をより盛り上げるために、まずはかわいい金魚柄の浴衣を借りて(大人用550円、子ども用330円)、浴衣姿にチェンジ。青森の夏に欠かせない金魚ねぷたの灯篭が450個以上も並ぶ「金魚ねぷた灯篭回廊」や、金魚すくいなど、写真映えするスポットばかりです。わいわいガヤガヤ縁日のような広場に、まさに心がざわめきます!
次は金魚すくい(1回330円)に挑戦。2匹しかすくえなかったものの、子どもの頃に戻って無我夢中で楽しみました。すくった金魚は、金魚鉢を借りて(440円)客室で鑑賞することもできます。また、すくえなくても、色とりどりの金魚を客室で愛でることができる「貸し金魚」(550円)もあります。
金魚すくいで使うポイを水につけると運勢が浮かんでくる「ポイみくじ」(1本550円)。かわいい赤と黒の金魚の柄と一緒に浮き出てきたのは「まつり吉」。せっかく出た「吉」のおみくじは、金魚柄の巾着に入れて持ち帰れます。家族や友だちと運比べをするのも楽しい時間です。
なんと「りんごジュースが出る蛇口」も! 蛇口をひねるとりんごジュースが注ぎ、一年中無料でいただけます。夏祭りの中で飲む甘くてフレッシュなりんごジュースは格別!
青森名物のホタテを釣れるレアなアクティビティ(3分間500円)も通年楽しめます。水槽いっぱいにいるホタテを釣るなんて楽勝!と思いきや、貝と貝の間に上手く針を引っかけるのがなかなか難しくて何度も失敗……。やっと釣り上げると、ホタテの重量感に驚きました。釣った枚数に応じてプレゼントがあり、10枚釣り上げると、なんと青森直送の活ホタテを30枚ももらえます!
※2022年7月現在、9:30~11:00に開催しています
遊び疲れたら、じゃわめぐ広場に隣接する「ヨッテマレ酒場」で「金魚ねぷたアイス」(990円)を食べながら休憩を。青森が生産量日本一というカシスを使ったシャーベット、りんご、飴細工で、何とも愛嬌のある金魚ねぷたを表現しています。カシスのさっぱりした味わいとりんごのシャキシャキ感が絶妙のコンビネーション。冷たくて、湯上がりにもおすすめです。
しがっこ金魚まつり
- 開催時期
- 2022年6月1日~8月31日
- 時間
- 16:00~22:00(アクティビティにより異なる)
青森で親しまれている山海の幸や郷土料理を味わえる夕食ビュッフェ
夕食は青森の味をビュッフェ形式で心ゆくまで堪能できる「のれそれ食堂」へ。広いビュッフェ台に50種類以上お料理がのれそれ(目いっぱい)並び、食堂に入った瞬間からテンションが上がります。
青森名物のホタテやマグロをはじめ、南部せんべいが入った「せんべい汁」、イカをミンチにして揚げた「いかめんち」、アップルパイなど、青森で親しまれている食材や郷土料理がずらり! 天ぷらはエビやとうもろこしのほか、りんごの天ぷらといった変わり種も。
ライブキッチンからは、割烹着姿のかっちゃ(青森の方言で「お母さん」の意味)がホタテやサバなどを焼く炉端焼きのいい香りが! プリプリッとしたホタテの食感と香ばしいしょうゆの味がたまらず、何回もおかわりしてしまいました。
ホタテとエビのお刺身も食べ放題! 噛むと跳ね返すような弾力感と甘みは感動もの!
パイナップルに似た見た目から「海のパイナップル」とも呼ばれるホヤを初体験! 少し苦みのある大人の味は青森の日本酒にピッタリです。
※時期により提供内容が異なる場合があります
青森の四大祭りを一度に楽しめるショーを毎晩公演する「みちのく祭りや」
夕食後は、青森四大祭りを一度に楽しめる青森屋オリジナルのショーを観に「みちのく祭りや」に。全国的には「青森ねぶた祭」が有名ですが、実は同時期に「五所川原立倭武多(ごしょがわらたちねぷた)」「弘前ねぷたまつり」「八戸三社大祭(はちのへさんしゃたいさい)」も行われていて、青森四大祭りとして青森の夏を彩ります。
「みちのく祭りや」は6名のねぶた師によって作られた作品が並び、青森四大祭りを体感できる臨場感あふれる空間。ねぶた師の立田龍宝(たつた りゅうほう)氏がデザインした木製のねぶた切り絵なども見ることができます。
ショーではねぶたの賑やかさだけでなく、青森の四季の情景や、厳しい冬を耐えて夏の祭りに込める熱い想いも表現。津軽三味線の切ない音が胸に響くシーンも。
3つのねぶたが出そろう姿は圧巻! 左から弘前ねぷた、青森ねぶた、八戸三社大祭。それぞれ独特の形で、競うように勇壮な姿を見せてくれるのが印象的です。
会場に入りきらないほど大きな7階建て相当の五所川原立倭武多は影絵で表現。囃子方が練り歩く姿は、五所川原の沿道でねぶたが通るのを見ているような迫力です。
ショーの最後には観客も舞台に上がり、「ラッセラー」と掛け声をかけながら跳人になって会場は大盛り上がり。出演者のひとりにほたて釣りのスタッフだったお兄さんを発見! ホテルのスタッフも出演者として活躍しています。観客も出演者もみんなが一緒に楽しむ様子は、まるで地元のお祭りに参加しているような親近感を覚えます。
終了後は、目の前でねぶたを見学可能。ねぶた師が長い月日をかけて心をこめて制作したねぶたを、こんなに至近距離で見られるのはとても貴重な体験。観客席から見るのとはまた違う、圧倒的な迫力と威厳を感じることができました。
みちのく祭りや
- 開催時間
- 21:00~(所要時間約60分)
- 料金
- 大人1,500円~(席により異なる)
- 予約
- 開演30分前まで受付
豪華な朝食ビュッフェで朝から元気いっぱい!
朝食も「のれそれ食堂」でビュッフェを。昨晩お腹いっぱい食べたので、朝食はそんなに食べられない……と思っていたのに、このラインナップを見た途端に食欲がわいてくるから不思議です。
ホタテやサーモン、エビ、イカなどから好きな具材を好きなだけのせる「うめじゃ丼」(「うめじゃ」は「うまい」の意味)、ホタテの味噌焼き、細かく刻んだ山菜や野菜を煮込んだ「けの汁」、りんごカレー、ごんぼ(ごぼう)漬けや赤かつお漬けなど、青森名物が並び、どれを食べようか目移りしてしまいます。
馬車に乗ってゆったりと公園を一周「しがっこ風鈴馬車」
チェックアウトまでの時間も、まだまだあるアクティビティを満喫します。まずは馬車に乗って、青森屋敷地内の公園をゆったりと一周。
馬車は季節ごとに装いを変え、夏の間は津軽びいどろの風鈴を飾った「しがっこ風鈴馬車」に。風鈴の涼やかな音を響かせながら、公園内をおよそ20分かけてゆっくりと進みます。途中、スタッフの方の青森あるある話や公園案内に大笑い!
この日担当してくれたのは、20歳の雌馬・うるるちゃん。「馬事業部 部長」という役職付きのキャリアウーマンです。一日交替でうるるちゃんと、もう一頭のきららちゃんが出勤しているそう。
平成28年度の「青森県特産品コンクール」で最高賞である青森県知事賞を受賞したりんごサイダーもいただきました。微炭酸で飲みやすく、すっきりとした味わいでのどを潤してくれました。
今回は新緑が輝く季節に訪れましたが、この公園内では秋には紅葉、春には桜が楽しめるそうです。
しがっこ風鈴馬車
- 開催期間
- 2022年6月1日~8月31日
- 出発時刻
- 9:00、9:30、10:00、10:30、11:00(所要時間約20分)
- 料金
- 大人1,320円、小学生1,100円、幼児770円、3歳以下無料
- 予約
- 前日18:00までに要予約(当日空席があれば乗車可能)
シードルや青森の地酒が飲み放題! 究極のくつろぎ空間「八幡馬ラウンジ」
公園内の池のほとりにある古民家のような佇まいの「八幡馬ラウンジ」。もともと茶室だった建物で、景色を眺めながらぼーっとしたり、本を読んだり、思い思いの時間を過ごせます。2022年6月1日~8月31日限定で「あおもり藍涼み」を開催中。青森の伝統技法を用いた藍色のしつらえ、やさしく響く風鈴の音色が涼を感じさせます。
天気のよい日は、ぜひ池を一望できる開放的なテラスへ! 座って池を眺めていると、さまざまな野鳥がやってきて、よく響く自慢のさえずりを聞かせてくれました。
津軽びいどろの器で、地酒を使用した日本酒ゼリーのサービスも。地酒ゼリーを泳ぐ金魚型ゼリーがとてもかわいいスイーツで、地酒の芳醇な香りが口の中に広がります。
りんごジュースや青森の地酒、シードル、コーヒー、紅茶などのドリンクが飲み放題なのもうれしいポイント。チケットを購入すれば翌日12:00まで何度でも利用可能で、もうひとつのリビングとしてくつろぐリピーターも多いそうです。
ラウンジの名前にもなっている「八幡馬」は、青森県南部地方の伝統工芸品のこと。花嫁を乗せるときに馬が着ける盛装を表していて、青森では結婚や引っ越しのお祝いとして贈る習わしがあるそう。
あおもり藍涼み
- 開催期間
- 2022年6月1日~8月31日
- 時間
- 10:00~12:00、15:00~21:00
- 料金
- 2,200円/1人
- 予約
- 当日、内線で予約
青森をのれそれ満喫した「星野リゾート 青森屋」での2日間。後ろ髪をひかれる想いでホテルを後にすると、後ろから「へばな~」と大きな声が! 大漁旗を振りながらスタッフの方が見送ってくれました。「へばな~」とは青森の方言で「またね」という意味。最後まで青森の愛に包まれて暖かい気持ちで旅を終えました。
帰りに離れの浴場「元湯」で最後の湯浴みを
ホテルの敷地内、本館から徒歩約10分の場所に、地元の人にも愛されている浴場「元湯」があります。大きな石風呂と津軽びいどろの窓は、古き良きレトロな温泉の雰囲気。帰りがけに、とろみのある美肌の湯につかるのも贅沢な旅の〆になります。
元湯
- 営業時間
- 5:00~22:00
- 料金
- [宿泊者]無料
[宿泊者以外]大人450円、小学生150円、幼児60円、3歳以下無料
(別料金でタオルの貸出あり)
温泉、青森の郷土料理、ねぶた祭りのショーや縁日――。夏休みの楽しみをぜんぶ詰め込んだような、濃密であっという間の「星野リゾート 青森屋」での1泊2日。初めて知る青森の文化や方言に触れて、帰る頃には青森が第二の故郷に思えてきたほど。季節ごとのアクティビティやイベントが開催され、春夏秋冬、いつ訪れても異なる楽しみがあります。青森の文化や人の温かさを味わいに訪れてみませんか?
星野リゾート 青森屋
- 住所
- 青森県三沢市古間木山56
- アクセス
- 青い森鉄道「三沢駅」より徒歩約15分
「三沢空港」より車で約20分
JR「八戸駅」より車で約40分
(三沢駅、三沢空港より無料送迎バスあり・要予約) - 駐車場
- 無料
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 12:00
※撮影時のみマスクをはずしています
撮影:岡村智明 取材・文:山本美和