提供:ことりっぷ
東京・日本橋で江戸時代から370年以上にわたり営業を続ける和紙専門店「小津和紙(おづわし)」。浮世絵にも描かれる老舗は、店舗だけでなく体験工房や史料館を併設し、和紙の魅力を発信しています。
全国の手漉き和紙を取り扱う専門店
店舗には、温かな風合いの和紙グッズが並ぶ
店内に一歩入ると、広いフロアが色とりどりの紙製品でうめ尽くされています。日本全国の手漉き和紙や書道道具のほかに、便せん、ハガキ、しおりも。和紙ならではの温かな風合いの商品に囲まれ、この場にいるだけでワクワクします。
和紙は、色や柄だけでなく厚さの種類も豊富
オリジナル商品も充実
縞模様が渋い松阪木綿柄
整然と並ぶ和紙の種類は600前後。厚みや紙質もさまざまで、ヴェールのように薄い和紙や、透かし模様が入った商品も。
棚の一角には、松阪木綿柄の商品コーナーが。小津和紙のオリジナル商品として、折り紙や筆箱などを販売しています。江戸時代に大流行した深い青と紺のしま模様は、和紙になっても粋ですね。
華やかな和紙グッズや、紙糸で作られた靴下
人気の御朱印帖のコーナーには、表紙の柄が違う商品が並びます。ほかにもメモ帳や友禅紙のマスキングテープなど、和紙を現代的にアレンジしたアイテムが揃います。
紙製品以外に、和紙素材だけで作られた靴下の販売も。サラリとした肌触りで、快適な履き心地。もちろん水に強く、洗濯も可能。和紙は分解しやすく、短期間で土に還るサステナブルな商品なのもうれしいポイントです。
伝統の和紙作りを体験
体験前に、スタッフが本日の作業の流れを実演してくれる
次は体験工房で落水紙(らくすいし)の紙漉き体験。落水紙は、漉いた和紙表面に水を滴らせ模様を描きます。日本の伝統文様やレースのような模様など、高いデザイン性を表現できるのが特徴です。
落水紙は14パターンの模様から選べる
手漉きで和紙作り
(左上から時計回りに)簀桁(すけた)を縦横に揺らし、均等に広げると、美しい模様が現れてくる
いよいよ実際に紙漉きを体験します。和紙の原料コウゾが溶けた水を簀桁と呼ばれる道具ですくい、揺らす作業を進めると和紙が徐々に形作られます。
漉いた和紙と選んだ模様の型を一緒に置き、上からシャワーで水をかけます。水の落とし方や量によって、完成する和紙の表情が変わります。
(左上から時計回りに)型から和紙をそっとはずし、圧搾作業。次に熱プレートに和紙を張り付ける
落水の作業が終わったら、乾燥作業へ。ブラシで紙をていねいにのばしたあと、7分乾かせば完成。日本の伝統文様・青海波(せいがいは)が美しい、手漉き和紙が出来ました。体験は1枠45分で予約優先。作った和紙は、当日持ち帰りができます。
体験のあとは、3階の「小津史料館」へ
中央区民有形文化財を含む、1000点以上の史料を順次展示公開
体験が終わったあとは、3階にある小津和紙の歴史がわかる「小津史料館」(無料)を訪れてみましょう。長い歴史の中で発展してきた、紙と小津和紙の関わりがわかります。
史料館の入り口付近には、予約不要で楽しめる製作コーナーも
史料館には、当時の小津和紙が描かれている歌川広重の「東都大伝馬街繁栄之図(複製)」も展示。ほかにも、算盤や千両箱、帳簿類などが並びます。
ユネスコの無形文化遺産にも登録された日本の手漉き和紙技術。「小津和紙」では、体験や史料館の見学を通して和紙の魅力を再認識できます。伝統と歴史に触れ、和紙の美しさを体感してみませんか。
文:井上真智子(オフィス・ポストイット) 撮影:依田佳子