提供:ことりっぷ
大阪らしい人情あふれる繁華街として知られる京橋のはずれ、意外な立地に明治時代に活躍した実業家・藤田傳三郎の古美術コレクションを所蔵した「藤田美術館」があります。そのエントランスの一角にあるのが、日本茶と団子が味わえる「あみじま茶屋」。茶碗は若手陶芸家の作品、団子は各方面の老舗から受け継いだレシピで、気軽なティータイムを過ごしながら、茶文化への造詣を深められるスポットです。
藤田美術館に併設された茶屋
白で統一された、スケルトンで現代的な建物
茶文化にまつわる茶道具の美術品を数多く展示している「藤田美術館」。JR東西線大阪城北詰駅3号出入口すぐ、JR・大阪メトロ・京阪の3線が集まる京橋駅からは徒歩10分の場所にあります。
創始者である藤田傳三郎は明治時代、茶の湯に適した水が流れる大川のすぐそばである、ここ都島区網島町に茶室を備えた邸宅を構え、茶の湯を愉しんでいたそうです。
オーダーはキャッシュオン
そんな「藤田美術館」のエントランスフロアにあるのが「あみじま茶屋」。気軽に茶文化や芸術に触れられる入口として、抹茶・煎茶・番茶いずれかと団子のセットをいただけます。
漆喰の壁とカウンターは左官職人が仕上げている
「あみじま茶屋」と「藤田美術館」の間に壁や間仕切りはありません。注文カウンターそばにある階段、エントランスに広がるテーブル席、好きな場所でティータイムを過ごせます。
淹れたてのお茶と焼きたての団子を
お茶と団子500円
「あみじま茶屋」でいただけるメニューは、お茶と団子のセットのみ。
お茶は抹茶、煎茶、番茶から選べます。抹茶は宇治のもので大阪にある「三丘園」から、煎茶と番茶は枚方にある「多田製茶」から仕入れています。季節によって産地や茶種が異なるものが用意されているので、どんな出会いがあるか楽しみです。
オーダー後、目の前で抹茶を点ててもらえるのも魅力。茶釜から現代作家の抹茶碗に湯を注ぎ、茶筅で手早く点てている様子を間近で眺められます。
夏季限定で冷茶も用意(~9月末予定)
夏季は、一晩かけてゆっくり甘味と旨味を抽出した、水出しの煎茶・番茶もおすすめ。キリッと冷えていると、あたたかいお茶とは香りも口当たりも異なるので、水出しが未経験の方はぜひ。
老舗が監修したレシピが集結
団子は醤油味とあんこの1本ずつ。地元にある和菓子店「冨久屋」の協力で作り上げた団子は、保存料などを一切使用せず、米粉のみでつきあげ、毎朝蒸しています。オーダー後に焼き上げるので、香ばしいおこげも楽しめます。
自家製のあんこは、大阪の北浜にある老舗「菊壽堂義信」からレシピを授かったそう。粒が大きい丹波産の大納言小豆に砂糖のみを加えて焚き上げた、上品な甘さです。
醤油は「醤油醸造発祥の地」として日本遺産登録されている和歌山県湯浅町にある「湯浅醤油」の濃口醤油をセレクト。昔ながらの樽仕込みで熟成させたコクと旨味のある醤油は、だんごと相性が抜群です。
写真の抹茶椀は、備前で作陶する陶芸家・大森礼二さんの作品
「美術館併設のお茶屋として、美術品に親しんでほしい」という想いがあるため、お茶は現代作家の茶碗で提供。お茶をいただきながら、手触り、口当たりなども確かめてみてくださいね。
お盆は、家具から小物まで幅広く制作し、森林資源の活用にも携わる木工作家の作品。端正なフォルムは見るほどにその美しさにうっとりします。
茶文化にまつわる東洋古美術を展示
明治時代、コレクションを収めていた蔵の扉を再利用
「あみじま茶屋」のすぐそばにあるこの扉が「藤田美術館」への入口。国宝9件、重要文化財53件を含む東洋古美術の中からセレクトした作品を定期的に入れ替えながら展示しています。
受付などはないため、扉の傍らに立つスタッフに入場料(1,000円・電子決済のみ)を支払ってから入館を。自身のスマートフォンやイヤホンで無料の音声ガイドが利用できます。学芸員による端的でわかりやすい解説を聞きながらゆっくり過ごしても所要時間は45分程度。ぜひお茶を飲みに立ち寄った際は、美術館も利用してくださいね。
広大な日本庭園の散策も楽しみ
「藤田美術館」に隣接した庭園は、「藤田邸跡公園」として開放されていて自由に散策が可能。アートを鑑賞した余韻を反芻しながらお散歩を楽しんでみては。
かつての藤田家にあった茶室の図面をもとに復元
伝統文化の知識を深められる場所
畳を裏返せば板の間になる広間「時雨亭」
「土間 Doma」と名付けられたエントランスでは、文化やアートを体験できるイベントやワークショップも開催。土間の一角にある広間「時雨亭」では、不定期で落語や能のイベントなども行われます。
日本茶や団子を目当てに訪れても、自然と茶文化に興味がわいてくる「あみじま茶屋」。時間があるときに立ち寄って、日本茶、そして伝統文化の奥深さを体感してください。
文:西 倫世 撮影:西木義和