提供:ことりっぷ
長崎・五島列島の中心、五島市の福江島。日本有数の美しいビーチ沿いには離島らしい風景が残り、地元の美味しいものが食べられるカフェやレストランにも事欠きません。のどかさが漂う海辺の町をのんびり散策しながら、美味しいもの探しの旅に出ましょう。
椿の花とマリア像に癒される、ロマンチックな海辺の教会
内部には椿がモチーフの美しいステンドグラスがある
福江島には全部で13の教会があります。教会巡りも楽しいのですが、どこかひとつ選ぶなら「堂崎教会」へ。数十メートル手前に駐車場があり、そこから海沿いの道をのんびり歩いて行きます。満潮の時間帯は庭のすぐそばまで波が押し寄せることから、「長崎のモン・サン・ミッシェル」と呼ぶ人もいるのだとか。
入り江沿いを散策しながら教会の敷地へ
ここは江戸時代からのキリスト教禁止令廃止後、五島列島で最初に建てられた教会。当時、信者の人たちは小船に乗って礼拝に訪れたといいます。赤いレンガ造りの教会内部は木造で、赤い椿をモチーフにしたステンドグラスがとてもきれい。「キリシタン資料館」も併設されていて、島の歴史をたどることができます。
カフェの営業時間外でも人気のマドレーヌを買えると評判の販売機
ヤブツバキに囲まれた白いマリア像が立つお庭の散策も、ぜひ楽しんでみてください。駐車場から教会までの途中には、カフェや可愛らしいお菓子の自動販売機があるので、見逃さないようにしてくださいね。
五島の食材をふんだんに使ったイタリアン「島食Gino」
窓の外の田園風景が1枚の絵のよう
町の中心部から車で10分ほど。のどかな田園地帯にぽつりとある白い建物は、地元でも評判のイタリアン「島食Gino(ジーノ)」。店内に入ると、ガーリックとピッツァの香ばしい匂いに食欲をそそられます。オーナーシェフの柳野達治さんは五島出身。長崎市内のレストランを経て島に戻り、地元食材にこだわったイタリアンを提供する店をオープンしました。
ランチコース(1500円)の前菜にも五島の食材がたっぷり
野菜、肉、魚、それぞれの持ち味を生かしたシンプルな料理が中心で、ぜひとも食べてみたいのが石窯で焼くピッツァ。「五島つばき酵母」で発酵させた生地は引きが強く、モチモチの食感。五島産の野菜やお肉のトッピングも味が濃くて、食材そのものの美味しさを味わえます。
「五島産ほうれん草と五島豚のサルシッチャのピッツァビアンカ」(1300円)
お母さんの手作り料理にほっこりする「ソトノマ」
ひとり旅の女性や移住者、小さな子ども連れやお年寄りも訪れる、コミュニティカフェが「ソトノマ」。創業者の有川和子さんは、「自分の家の居間や茶の間のようにくつろいでもらえる場所を作りたい」と、この店をオープンしたのだそう。テーブル席、カウンター席のほか畳のスペースもあり、思い思いの場所で過ごせます。
「家の外にある居間」=「外の間(ソトノマ)」が店名の由来
スタッフから「お母さん」と呼ばれている有川さんが腕を振るうランチは、ハンバーグ、コロッケ、カツなどのメイン料理に、ひじきの煮物やきんぴら、みそ汁を添えた日替わりメニュー。お米や野菜、調味料もほとんどが五島産です。ボリュームがあるのに優しい味付けに、ほっこり。店内では、自家製のパン、地元農家の野菜や玉子、調味料も販売しています。
一番左が、「お母さん」こと創業者の有川和子さん
五島ならではの新鮮な魚介を味わうなら「居酒屋 盛」へ
新鮮な魚介には地元の焼酎が相性ぴったり。お刺身は時価
四方を海に囲まれた五島で、グルメといえば捕れたての魚介。鮮度の良さと美味しさはもちろんのこと、本州ではあまり見かけない魚が食べられるのも楽しみです。福江港近くにある「居酒屋 盛(もり)」は、目利きの大将が選んだ旬の魚が豊富にそろう店です。
お刺身は、脂がのったブリやアジを筆頭に、ハガツオ、キビナゴ、鯛のほか、ウチワエビという珍しい海老が食べられることも。旬の魚介をいろいろ味わってみたいなら、おまかせで盛り合せてもらうことをおすすめします。
地元の人の常連さんも多い店
一品料理では、自家製さつま揚げ、天ぷら、五島牛の握りのほか、〆には五島うどんのカルボナーラなどの創作メニューも。女性だけのお客さんも多く、食事だけを目的に訪れても大丈夫。注文する魚の種類にもよりますが、お腹いっぱい食べて飲んでも5000円程度とリーズナブルです。
かわいい郷土菓子が見つかる「御菓子司はたなか」
老舗菓子店で人気のラインナップ」。「美女菓」は8個入り1250円
旅先では、その土地でしか手に入らない郷土菓子を探すのも楽しみのひとつ。福江港近くの繁華街、中央町の商店街にある「御菓子司はたなか」は1912(大正元)年創業の老舗菓子店。五島らしい椿のパッケージが美しいお餅入りの最中や、五島の方言で「可愛らしい女性」を意味する「美女菓(みじょか)」というキンカンや蜜漬けの梅をカステラで包んだお菓子は、女性へのおみやげにぴったりです。
五島銘菓「治安孝行(ちゃんここ)」(9個入り900円)
五島の郷土菓子でまっ先に名前が挙がるのが、「治安孝行(ちゃんここ)」。長崎県内の人も五島へ来ると必ず買って帰るといわれる、定番のおみやげです。無形文化財の指定を受けている「チャンココ踊り」に由来するもので、粒あんをお餅で包み、きな粉をたっぷりまぶした風味のいいお菓子です。
地元養鶏家の卵を使ったプリンが人気「かつもと」
「大石さんちのたまごプリン」(180円)
「御菓子司はたなか」から歩いて3~4分の場所にある「お菓子の店かつもと」は、地元の人がひっきりなしに訪れる店。お目当ては、地元養鶏家のたまごを使った濃厚なプリン、自慢のカスタードクリームをぎっしり詰めたシュークリームやクリームクロワッサン。
「五島椿」(手前)130円、「クリームクロワッサン」250円
少し日持ちがするお菓子では、しっとりした生地に包まれた白あんから、ほんのり椿油が香る「五島椿」があります。五島ならではのスイーツは、上品な甘さがあとを引き、いくつも食べたくなる味です。
五島市へのアクセスには少し時間がかかりますが、ここで出合う景色も美味しいものも、何度でも訪ねたくなるものばかり。島の恵みがもたらす思い出と味は、きっと忘れられない体験になるはずです。
文:永田さち子