文筆家・甲斐みのりさんが東京でめざして訪れたいおやつの店をピックアップ。武蔵小金井駅の「パリジェンヌ洋菓子店」で生まれた、ホールケーキの「ポチ」をご紹介します。
困った顔がご愛情、犬の形のホールケーキ
以前にこの連載で取り上げた、「パリジェンヌ洋菓子店」の、犬型のショートケーキ「ポチ」。嬉しいことにその後、「初めて降りる武蔵小金井駅から10分歩いて買いに行きました」という声が多く届いた。お取り寄せが当たり前なこの時代。わざわざ時間をかけて、昔ながらの洋菓子店に足を運ぶその行程もまた、おいしさのエッセンス。やっと辿りついたその先で、困り顔の犬と目が合えば、その愛らしさにきっと笑みがこぼれるはず。近所の小金井公園までもうひと歩きして、ピクニック気分でおやつの時間を過ごすのも一興だ。
友人が新たな門出を迎える日。通常のポチ5~6個分ほどの大きさのホールケーキ版を求めて、ともにおやつを味わった。その日の私は最初、彼女が少し遠くへ越してしまうのがさびしくて、ポチと同じような表情をしていたはず。けれどもサプライズでケーキを出した瞬間、彼女は「なんてかわいいの!」と大笑い。ふわふわのクリームとスポンジに、イチゴを合わせたケーキを2人でほおばり、これからも変わらず一緒におやつを食べようと約束を交わした。
取材・文/甲斐みのり