静岡県・伊豆熱川温泉から離れた奥熱川にひっそりとたたずむ温泉宿「奈良偲の里 玉翠(ならしののさと ぎょくすい)」が、2024年に創業110年を迎えました。これを記念して数回の改装が行われる予定で、第1弾では客室のリニューアルと水鏡(みかがみ)テラスの新設、温泉櫓(やぐら)と湯冷まし回廊の設置を実施。特に客室は「自然を眺めるだけでなく、その身を中に」というコンセプトを体現した空間になり、今まで以上に多様な楽しみ方ができる宿になりました。
自然の中で過ごせるデッキテラスと幻想的な水鏡テラス
リニューアルされた、1階和洋特別室「春日」。デザイナー・青山尚史氏監修のもと、デッキテラスを約25平米まで延長し、紅葉の木を取り込むスタイルにデザインされました。「樹(いつき)テラス」と名付けられたこのテラスでは、源泉かけ流し足湯やスウィングチェアが配され、アウトドアリビングのようにくつろげる空間に。風を感じながら和風庭園を鑑賞したり、足湯に浸かりながら読書をしたり、木陰で森林浴を満喫したり、屋内と屋外の両方で楽しめる客室です。
また、新しく「水鏡テラス」が誕生。ラウンジテラスに水盤を設けて、和風庭園「葉ごろも」の庭園を楽しめるようにデザインされました。4~6月は新緑や紫陽花、8月は風鈴、11月は紅葉と四季折々の風景を堪能できるテラスです。
昼間はもちろん、ライトアップされる夜も必見。緑が少なくなる冬や春先には、竹細工の竹玉や竹あかりが配されて幻想的な世界を体験できます。水盤の中心にあるのは、近隣のお寺から譲り受けた樹齢200~300年のヒノキの根。黒塗りのテラス空間に重厚感とアクセントを加えています。
無形文化遺産に登録された「湯守」の技を体験できる温泉宿
さらに、新しく客室風呂に設置されたのが温泉櫓と湯冷まし回廊です。同宿は、源泉かけ流しの温泉が自慢の温泉宿。大正2年の創業時より、「湯守り」の伝統とおもてなしのこころを受け継いできました。
「湯守り」とは温泉を管理する職人のこと。同宿では湯守が手首で温泉の温度を測り、その日の天候や湯の状態に合わせて約100度の源泉を適温に調節しています。2023年、この湯守り文化がユネスコ世界ジオパークの無形文化遺産に登録されました。今回はその記念も兼ねてのリニューアルです。
なお、温泉櫓とは高温で湯の花が付きやすい熱川温泉を管理する建造物。本来は高さ約20メートル、地下約400メートルに配管を設置する大がかりなものですが、同宿では湯守りが試行錯誤して約50~100センチメートルのコンパクトな設備にアレンジしました。今まで以上に質の良い源泉かけ流しで、心地の良い湯浴みの時間を満喫できます。
同宿は、伊豆・熱川温泉の里山にある全13室の湯宿です。和風庭園と竹林庭園があり、その中に身を置けるのが魅力。自家源泉から豊富な湯量が湧出しており、全客室、大浴場、貸切露天風呂をすべて源泉かけ流しで堪能できます。
そよ風が吹き抜け川のせせらぎが届く秘湯のような露天風呂での入浴は、まるで自然と一つになったような心地よさ。特急踊り子で東京駅から約2時間半、都会の喧騒を離れた高級宿でぜいたくな時間を過ごしてはいかがでしょうか。
奈良偲の里 玉翠
- 住所
- 静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本39-1
- 総客室
- 13室
- アクセス
- 伊豆急行「伊豆熱川」駅からタクシーで約5分
※無料送迎あり(14:25~16:55の30分間隔・完全予約制)