小豆島「海音真里」でふれる、オリーブの奥深さとくつろぎの島時間

山海音真里

穏やかな瀬戸内海に浮かぶ、香川県・小豆島。瀬戸内で2番目の大きさを誇る小豆島は、穏やかな島の風景のなかに、アートやオリーブ、醤油造りなどの文化が溶け込んでいます。

2019年、そんな小豆島にオープンした「海音真里」(うみおとまり)は、小豆島で栽培が盛んなオリーブをテーマにした、全室オーシャンビューの宿。空と海の風景に抱かれて過ごした、1泊2日の島時間をご紹介します。

 

 

アクセス、チェックイン

瀬戸内の離島・小豆島へは、各港から船でアクセス

山海音真里

香川県の小豆島は、四国の北東に位置する島。神戸港新港、姫路港、高松港、新岡山港、宇野港などから出航するフェリーや高速船の便数が充実しているためアクセスしやすく、フェリーなら車での乗船もできて便利です。

小豆島の南部に位置する「海音真里」は、島内の各港から車で30分以内でアクセス可能。池田港からは送迎サービスも行っています(要事前予約)。

 

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今回利用したのは、高松港〜池田港を運航している国際両備フェリー。車で乗り込み、2階の客室や3階の展望ラウンジから瀬戸内海と多島美(たとうび)を眺めながら、船旅を楽しみました。1時間ほどで小豆島が見えてくると、これから始まる島体験に胸が高鳴ります。

 

山海音真里

池田港から車で移動すること約20分、「海音真里」に到着です。目の前は瀬戸内海という場所に立地し、黒を基調としたシックな外観は落ち着いた佇まい。

チェックインは、本館脇の土産処「三風舎」内のフロントにて。お土産の物色は次の日の楽しみにとっておいて、まずは客室へ向かいます。

 

客室

2階「の」の音

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「海音真里」は離れと本館に全6室の客室があり、そのすべてがオーシャンビュー。

宿泊する客室「『の』の音」は、和とモダンが溶け合った空間。ごろんと寝転がることのできる大きなソファは、空と海が広がる大きな窓に向かって配置されています。

 

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64平米の広々とした客室にダブルベッドが2台あり、ソファと同じく、ベッドからも海を眺めることができます。室内は木の温もりを感じるインテリアが多く、やさしい雰囲気。

 

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奥行きのあるバルコニーには、深々とくつろげる木製のリクライニングチェア。空、海、そしてその境目にある島々などパノラマが広がり、島にいることを思い出させてくれます。

 

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ウェルカムスイーツ「島の恵みのトライフル」は、なんとマネージャーの中野菜見さんによる手づくり。この日はエンドウ豆のアイス、みかんパウンド、甘夏の蜜漬、ライムクリーム、もろみクッキー。香川キウイのオイルソースをかけていただきます。

エンドウ豆の風味がしっかり香るアイスや、ふんわりもろみの味がするクッキー、オリーブの葉のお茶など、味わいのあるスイーツに心がほどけていきます。

 

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もちろん、浴室もオーシャンビュー。窓の向こうに広がる海を眺めながら、優雅なバスタイムを楽しむことができます。「『の』の音」だけでなく、「海音真里」は全室がオーシャンビュー&展望風呂付きです。

 

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小豆島でオリーブの苗木が植栽されたのは1908年のこと。温暖で豊富な日照量を好むオリーブは小豆島の気候に馴染み、以来、盛んに栽培されています。「海音真里」のシャンプー、コンディショナー、ボディシャンプーはそんな小豆島らしく、オリーブ由来のものが用意されています。

 

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スキンケアアメニティも、小豆島で80年以上続くオリーブ農園・井上誠耕園によるオリーブを使ったラインアップ。収穫したオリーブは食用(実の新漬け、エキストラバージンオリーブオイルなど)のほか、コスメやスキンケア用品にも広く活用されています。

 

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浴衣と館内着(作務衣)はおそろいのデザイン。香川県高松市生まれのアーティスト・川島猛さんの原画をファブリックに仕立てたものです。

 

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冷蔵庫には、丸いガラス瓶に入った水と香草茶が用意されていました。

 

離れ「さ」の音

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離れにある「『さ』の音」は居室75平米、テラス14平米で、4名まで宿泊できる広々とした部屋。リビングスペースに備えられた大きな照明が印象的です。

 

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組子細工の格子でゆるく仕切られた寝室スペースには、「日本ベッド」のクイーンサイズのベッドが2台。大きなベッドがあっても圧迫感はまったくない広さで、ゆったりと眠りにつくことができそうです。

 

1階「え」の音

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本館1階にある「『え』の音」は、62平米の室内スペースに17平米のテラスが併設されています。浜辺が目の前なので、波の音を聞きながら何もしないぜいたくな時間を過ごせます。

 

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和モダンの落ち着いた雰囲気で、小上がりにはダブルベッドが2台。ベッドサイドで本を読みながら、ふと顔を上げたときに見える庭と海の景色が魅力的です。

 

館内&周辺散策

海の目の前にある宿を実感

山海音真里

部屋に荷物を置いてひと息ついたら、館内と周辺の散策へ繰り出しましょう。

「海音真里」は2019年にオープンしましたが、片面に模様のある昭和型板ガラスを使った建具なども大切に使われ、古いものと新しいものが絶妙なバランスで融合した空間に。また、本館のエントランスは香川県高松市で産出される庵治石(あじいし)、ダイニングの外壁は小豆島の玄武岩が使われています。

 

山海音真里

1899(明治32)年、小豆島に生まれた作家・壺井栄(つぼい さかえ)。ミニライブラリーもあるロビーでは、彼女の代表作のひとつでたびたび映像化されている小説『二十四の瞳』(1952年)の復刻原稿を手に取ることができます。

 

山海音真里
山海音真里

外に出て本館脇の道を導かれるように歩いていくと、すぐに視界が開け、空と海がパノラマで広がります。穏やかで波立つことの少ない瀬戸内海。「海音真里」はやさしい波音が聞こえるくらい、海のすぐそばに建っていることを実感します。

 

オリーブオイルテイスティング

味わいの違いにびっくり!

山海音真里

小豆島の魅力のひとつに、そうめんや醤油など豊かな食文化があります。その中で「海音真里」のテーマは、小豆島産のオリーブオイル。オリーブ農家から多数のオリーブオイルを直接仕入れ、専用のセラーで適温管理しています。そして、オリーブオイルのテイスティング(別途3,300円)を通じて、それぞれの味の違いや作り手のこだわりなど奥深い世界を体験できます。

「一口にオリーブオイルと言っても、作り手さんの個性や手摘みのやり方によって多彩な味わいがあるんです」。そう教えてくれたのは「オリーブコンシェルジュ」の肩書きも持つ、マネージャーの中野さん。

 

山海音真里

「海音真里」では、オリーブオイルを独自に「ハーモニー」「フルーティー」「スパイシー」「ストロング」の4種類に分類し、それぞれの味わいの特徴を言語化。実際にテイスティングしながら、オリーブオイルの楽しみ方を学ぶことができます。

順番にオイルを口にしてみると、喉元にピリッとした後味を残すスパイシーなタイプや、ふんわりと苦みの広がるストロングタイプなど、これまで知らなかったオリーブオイルの味わいの深みやバラエティの豊かさに驚きます。

貴重な体験を通してすっかりオリーブオイルの魅力に引き込まれ、夕食の「オリーブ会席」がますます楽しみになりました。

 

貸切風呂

内湯と露天風呂を備える2つのお風呂

山海音真里

「海音真里」には、それぞれ内湯と露天風呂を備えた「なぎの湯」「なみの湯」の2つの浴場があり、時間帯によって「予約貸切」と「自由貸切」で楽しむことができます(男湯・女湯の区別はなし)。

 

山海音真里
山海音真里

「なぎの湯」の内湯と露天風呂。一人の入浴でも家族風呂としてもちょうどいい大きさになっていて、周りを気にすることなくゆっくりくつろぐことができます。

 

山海音真里
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「なみの湯」にも開放的な露天風呂が。どちらの浴場も、同じ小豆島にある「島宿真里」の里枝温泉を引いています。無色無臭で美肌効果のある温泉につかって、癒やしのバスタイム。入浴中や湯上がりにいただけるドリンクが、脱衣所に用意されているのもうれしいですね。

 

夕食

海が見えるダイニングでいただく「オリーブ会席」

山海音真里

夕食は本館1階のダイニングで。目の前で調理の様子を見られるカウンター席のほか、海が見えるテーブル席もあります。

 

山海音真里
食前に出されたのは、オリーブオイルをのせたセロリと文旦のジュース

夕食は楽しみにしていた「オリーブ会席」。小豆島や近隣でとれる旬の食材を生かした料理のほとんどに、その味わいを引き立たせるため一皿ごとにセレクトしたオリーブオイルが使われています。

 

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1年を通して楽しめる小豆島天領真牡蠣
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小豆島・高尾農園のアスパラガス(さぬきのめざめ)は、
生でも柔らかくて甘い!

料理の説明が丁寧に記されたメニューカードをめくりながら、運ばれてくる料理を味わいます。ちなみにこのメニューカードは、旅の思い出として最後にまとめてとじてもらえます。

 

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オイルだけでなく、中にはオリーブの実を使ったメニューも。「自家製オリーブ新漬」は、渋抜きした若い実を塩漬けしたもので、クセのないみずみずしい食感が楽しめます。

「オリーブサーモンの味噌漬け」は、オリーブの実をエサに養殖されたサーモンを炭火でじっくり焼き上げたもの。さっぱりした味わいと適度な脂で、味噌との相性が抜群でした。

 

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オリーブオイルのポテンシャルに驚きを隠せず、興奮しながらも箸が止まりません。

続いて登場したのが、「新玉葱すり流し」。新玉葱、アスパラガスのピューレがベースとなった温かい汁にオリーブオイルを数滴かけていただく、ほっとする椀物です。

 

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「春の造り 島野菜 青竹盛り」はその名の通り、お造りと野菜の盛り合わせ。この日の魚はヒラメ、サワラのたたき、イシダイ、ニシガイ。もろみ、生あげ(火入れ前の生醤油)、塩、オリーブオイルの4種にかわるがわるつけることで、さまざまな味わいを楽しめます。

 

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小豆島名物の生そうめん。大きな蒸し鮑とともに胡麻豆乳つゆで
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オリーブを食べて育ったオリーブ牛の炭火焼
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「オリーブオイルとハーブのソルベ」は、口の中で溶け出すオリーブオイルが主役。口当たりがよくすっきりなめらかで、ローズマリーの香りが爽やかさをプラスしてくれます。このデザートは箸休めで、まだ料理が続くと知ってびっくり。

「讃岐でんぶく 揚げだし」は、香川や岡山海域など限られた場所でしか漁獲が許されていないことから、「幻の隠れフグ」と呼ばれる「ナシフグ」をオリーブオイルで揚げ、れんこんの餡を絡めたもの。

 

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ご飯ものは、醤油とオリーブオイルでいただく「海音寿司」。海の幸を含め、小豆島の豊かな素材をたっぷりと堪能できる一皿です。一口サイズの蒸し寿司、佃煮の海苔巻き、オイルを塗った地魚の握り2貫というラインアップで、魚はハリイカ、イシダイ、サワラ、イカ。シャリは、小豆島の肥土山(ひとやま)産コシヒカリを使っています。

 

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最後の島苺のレアチーズにも、もちろんオリーブオイルを数滴

食前のジュースから最後のデザートまで、食材の個性を引き出してくれるオリーブオイルに驚き、ひたすら舌鼓を打ち続けたひととき。これまであまり知らなかったオリーブオイルが、一気に身近になったデイナータイムでした。

 

山海音真里

夕食後、部屋に戻ったら、夜の海を眺めながら展望風呂でゆっくりするのも乙なもの。入浴剤として小豆島の原料から造った川鶴酒蔵の地酒が用意されています。湯船に注いで日本酒風呂につかると、身体の芯からポカポカに。

 

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さらに、客室に夜食を届けてもらえるうれしい心遣いも。この日は、焼きおむすび茶漬け。会席でお腹いっぱいになったはずなのに夜食もペロリ。明日は絶対にオリーブオイルを購入して帰ろうと心に決め、眠りにつきました。

 

朝食

オリーブオイルと合わせてもおいしい朝ごはん

山海音真里

翌朝、目を覚ますと空は透き通るような快晴で、思わずテラスに出て日光浴。鳥のさえずりが心地よく、「ここでコーヒーを飲んだら最高かも」と思い、客室に用意されているドリップコーヒーを淹れて、またテラスへ。今日も良い1日になりそうな予感がします。

 

山海音真里

朝食も、夕食と同じダイニングにて。釜炊きごはんを中心に、10種以上のおかずに彩られた島の朝ごはんです。

テーブルにオリーブオイルも用意されているので、お好みで。昨晩の「オリーブ会席」でオリーブオイルへの興味が高まっていることもあり、豆腐やだし巻き卵、味噌汁、サワラの塩焼きにも数滴合わせてみるなど、朝食でもさまざまなペアリングを楽しみました。

 

サイクリング

レンタサイクルで近隣をのんびりと

山海音真里

「海音真里」のチェックアウトは12:00。朝食後もまだ時間があるので、宿のレンタサイクルを利用して周辺をポタリング。電動アシスト付き自転車なので、ちょっとした坂道でもスイスイ進めます。

あてもなく走っていると、絶景ポイントを発見。目の前に広がる、海、島、空。爽やかな風がなんとも気持ちよく、思わず深呼吸をしたくなります。宿から見える景色とはまた違った、島の魅力を発見しました。

 

チェックアウト

お土産はやっぱりオリーブオイルを

山海音真里

チェックアウトの前に、本館脇の「三風舎」でお土産を物色。この2日間ですっかりとりこになってしまったオリーブオイルは、やっぱり欠かせません。

 

山海音真里

自宅用と、友人へのお土産用と……スタッフの方にあらためて農園や品種、味の違いなどについて教えてもらいながら、数本をチョイス。帰ってから料理に使うのが楽しみです。

 

小豆島の観光スポットを紹介

小豆島には魅力的なスポットがたくさんあります。帰りのフェリーまでの時間など、滞在中にぜひ立ち寄ってみてください。

二十四の瞳映画村

二十四の瞳映画村

「海音真里」から車で7分ほどの場所にあるのが、映画『二十四の瞳』のロケセットを改築した「二十四の瞳映画村」。昭和初期のどこか懐かしい空気が流れ、タイムスリップしたような不思議な感覚に。敷地内には「壺井栄 文学館」や「ギャラリー松竹座映画館」のほか、瀬戸内国際芸術祭常設作品などもあり、フォトスポットとしても人気です。

 

道の駅・海の駅「小豆島ふるさと村」

道の駅・海の駅「小豆島ふるさと村」

池田港から車で約5分の場所にある、道の駅・海の駅「小豆島ふるさと村」。特徴的な円錐の建物は1階が多目的スペース、2階が美術館になっています。隣の建物には物産館や喫茶コーナーが入っていて、お土産を購入するなど、ひと息つく場所としても便利です。

そのほか、「道の駅 小豆島オリーブ公園」や「寒霞渓(かんかけい)」など、小豆島の自然やグルメ、アクティビティを楽しめるスポットが満載です。

 

「海音真里」が教えてくれた小豆島の魅力

山海音真里

空と海、青のグラデーションを眺めながら、穏やかな島時間を過ごした1泊2日。これまでふれる機会があまりなかった小豆島の文化を身近に感じられる、忘れられない旅となりました。

小豆島内には姉妹宿「島宿真里」もあり、「海音真里」とは車で6分ほどの距離。日程に余裕のある方は、醤の郷(ひしおのさと)と呼ばれる醤油蔵が建ち並ぶエリアの「島宿真里」と合わせて、ぜひ連泊で楽しむことをおすすめします。

 

海音真里

住所
香川県小豆郡小豆島町堀越字東脇478
アクセス
高松港から池田港までフェリーで約60分、池田港から車で約20分
※池田港へは送迎サービスもあり
チェックイン
15:00
チェックアウト
12:00
客室数
6室
駐車場
あり/6台(予約不要)

 

撮影/大林博之 取材・文/安藤未来

▼「島宿真里」の宿泊体験記はこちら

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