農泊とは、農山漁村地域に宿泊して、その土地ならではの食や体験を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」のこと。最近では、古民家をリノベーションした一棟貸しの宿などで過ごしながら、四季折々の表情豊かな自然、伝統的な暮らしや文化、地元の方とのあたたかな交流など、地域に根ざした「本物の体験」をじっくりと味わう旅が注目されています。あわただしい毎日から離れて里の風景に抱かれれば、身も心もゆったりと深呼吸をはじめるはず。
今回は、そんな農泊のなかから、「心を満たす宿泊」をテーマに編集部おすすめのとっておきの場所をご提案。絶景を独り占めするようなプライベートな宿や、歴史ある建物に泊まって土地の暮らしに触れる宿など、非日常を体験できるさまざまな旅をご用意しました。
鹿児島県奄美市:“アマミブルー”と島の暮らしに触れる、島時間に身をゆだねる贅沢
鹿児島本土と沖縄本島のほぼ中間に位置する奄美大島は、東京から直行便で約2時間30分。“アマミブルー”と称される青く澄んだ海、マングローブの原生林などの個性的な自然と素朴な暮らしが訪れる人々を魅了します。
眼前にアマミブルーが広がる、海沿いのヴィラ
部屋と外を隔てるのは大きなガラス窓だけ。「伝泊 The Beachfront MIJORA」は、アマミブルーを独り占めするようなヴィラタイプのホテルです。刻一刻と変化する海と空の色、波の音、満天の星に、身も心も解放されていくのがわかります。
古民家の宿で、暮らすように過ごす
島暮らしのような滞在をしたいなら、伝統建築を再生した古民家の宿「伝泊 古民家」へ。異なる集落に点在する8つの古民家はそれぞれが個性的で、奄美の風土と生活に根ざしたたたずまいです。窓を開け放して好きなだけゴロゴロして、ひたすらのんびり過ごしてみては?
島人に欠かせない伝統行事を体験
島の伝統行事「八月踊り」を体験(事前予約)して、集落の方々と特別な島時間を過ごしてみませんか?旧暦の8月に各集落で行われる欠かせない行事で、夜になると踊りの唄声やかけ声、太鼓やハト(指笛)の音が響き渡ります。
生き物の楽園をカヌーで巡る、冒険みたいなアクティビティ
奄美市住用エリアにあるマングローブの原生林は、日本で2番目の広さを誇ります。木々が作るトンネルをカヌーで抜けるアクティビティは奄美ならでは!潮の満ち引きでコースが変化し、満潮になるとジャングルの奥へ続く細い水路が現れます。
お腹も心も満たしてくれる、奄美の郷土料理「けいはん」
「けいはん」は学校の給食などにも出されている奄美地域を代表する郷土料理です。炊き立てご飯にほぐした鶏肉や錦糸卵をのせたら、鶏出汁のスープをかけていただきます。素朴な具材とスープの組み合わせは、心と体にそっと力をくれるよう。奄美に来たら一度は食べておきたい味わいです。
伝泊 The Beachfront MIJORA
- 住所
- 鹿児島県奄美市笠利町外金久亀崎986-1
- 交通
- 奄美空港から車で約15分
- チェックイン
- 15:00~19:00
- チェックアウト
- 11:00
- 宿泊料
- 1泊1名26,800円~(朝食付き/大人2名1室利用時)※小学生以下宿泊不可
伝泊 古民家
- 住所
- 鹿児島県奄美市笠利町里50-2(伝泊 奄美ホテルにてチェックイン)
- 交通
- 奄美空港から車で約10分
- チェックイン
- 15:00~19:00
- チェックアウト
- 10:00
- 宿泊料
- 1泊1名11,000円~(素泊まり/大人2名1室利用時)
熊本県甲佐町:水路が巡るレトロな町で、暮らすように過ごす
氾濫を繰り返す川を整備し、農業を発展させてきた熊本県甲佐町。町中に張り巡らされた水路に、水と暮らす人々の知恵が表れています。昭和の雰囲気が残る商店街のひと筋奥に住宅、もうひと筋奥には田園風景と、利便性と豊かな自然が調和する町です。
当時の面影を残す築130年の古民家で、歴史の温もりに触れる
築130年の民家をリノベーションした「NIPPONIA 甲佐 疏水の郷」は、ゆったりした2棟3室のメゾネットタイプの宿です。母屋には、質屋時代の扉や壁がそのまま残る「質」と、たばこ屋だった往時がしのばれる「煙」、また、離れには、新たに建てられ歴史を紡ぎはじめた「継」があります。いずれもどこか懐かしく、時の重なりを感じる空間です。
外の空気を吸いたくなったら、ぜひ縁側へ。疏水のせせらぎに小鳥のさえずり。心が解かれ、旅情を誘います。
爽やかな風を感じながら、水路や田園沿いをサイクリング
「NIPPONIA 甲佐 疏水の郷」でレンタルできる自転車で、サイクリングはいかがでしょう?爽やかな風を受けながら、水路や田園に沿ってペダルを漕げば、その心地よさに「来てよかった!」と気分が上がること請け合いです。
(※自転車で公道を走る際には交通安全ルールを守り、できる限りヘルメットを着用ください)
清流を渡る、初心者OKのSUP体験
穏やかな流れの緑川をSUPで渡るアクティビティも。インストラクターがしっかりレクチャーしてくれるので、初心者でも気軽に参加できます。漕ぎ疲れたらボードの上に寝転んで、空をのんびり眺めてみて。SUPでしか見ることのできない景色が目の前に広がります。
築140年以上の古民家で味わう、地元の厳選食材を使ったイタリアン
築140年以上の古民家をリノベーションした「trattoria San Vito」は、ランチタイムは連日満席になる人気店。地元の食材に「イタリアン」というフィルターをかけ、甲佐の四季を感じる新しい料理を作り続けています。
NIPPONIA 甲佐 疏水の郷
- 住所
- 熊本県上益城郡甲佐町大字岩下字東園82
- 交通
- 九州自動車道御船ICから車で約15分
- チェックイン
- 15:00~18:00
- チェックアウト
- 10:00
- 宿泊料
- 1泊1名 22,144円~(朝食付き/大人2名1室利用時)
香川県土庄町:「アートと食の島」で、自給自足の暮らしに触れる
瀬戸内海に浮かぶ「豊島(てしま)」は「瀬戸内国際芸術祭」の舞台でもあり、「アートと食の島」として人気を集めています。香川県または岡山県からそれぞれ約40分の船旅を経て降り立つその島では、自然の恵みのもとで古くから自給自足で暮らしてきました。
豊島の特等席にある宿で、島のテンポに身を任せる
家浦港から歩いて約10分。狭い路地を抜けた先にある宿「とくと」は、瀬戸内海を見下ろす高台にある宿です。築80年ほどの日本家屋をリノベーションして、本館(最大定員8名)と別館(最大定員6名・乳幼児含む)をそれぞれ1棟貸ししています。
宿の裏手には畑と里山が広がり、鶏やヤギが飼育されています。希望者にはヤギの餌やりや卵取り体験も。近くで見る動物たちにちょっとドキドキしますが、ぜひチャレンジしてください。
心地よい風を受けながら、棚田でお弁当を食べる贅沢
棚田を見下ろすベンチに座ってランチタイム。瀬戸内海を行き来する船を眺めながら、豊島の幸を味わいましょう。「豊島に来たら、豊島のものを食べて帰ってほしい」という心の籠った地産地消のお弁当に、お腹も胸もいっぱいになります。
観光MAPではわからない、迷路のような路地をお散歩
朝の気持ちのいい時間には、ガイドと一緒に「とくと」周辺のお散歩ツアーへ。島人ならではの土地の話に耳を傾けながら、迷子になってしまいそうな路地を歩きます。地元の人とあいさつを交わすのも楽しい時間です。お散歩のあとには、ツアーの途中で汲んだ湧き水で淹れた心づくしのコーヒーが待っています。
絶景ビーチで地引網体験 炭火焼の魚でお昼ごはんはいかが?
絶景ビーチで「地引網」に挑戦!一般的に地引網は30人以上で引きますが、豊島では2名から体験ができるミニ地引網を採用しています。
捕れた魚はその場で調理もOKです。炭火で香ばしく焼いた魚は、柔らかくてフワフワ。羽釜で炊いたご飯やお母さんお手製の惣菜と一緒に、島ならではの豪華なランチをいただきます。
とくと
- 住所
- 香川県小豆郡土庄町豊島家浦 1577-2
- 交通
- 家浦港から徒歩約10分
- チェックイン
- 15:00~18:00
- チェックアウト
- 10:00
- 宿泊料
- 本館1泊1棟35,000円+1名につき5,000円(朝食付き)、別館1泊1棟25,000円+1名につき5,000円(朝食付き)
青森県黒石市:日本の原風景に浸る、心に響く津軽の旅
津軽平野に位置する黒石市は、新幹線停車駅の新青森駅から奥羽本線で1時間20分ほど、車なら約30分と好アクセス。『つなぐ棚田遺産』に認定された「大川原棚田」や、藩政時代の面影を残す「中町こみせ通り」など、ノスタルジックな日本の景観が残る土地です。
約1,000坪の敷地を貸し切り!「100年前の津軽」にタイムスリップ
「青森蔵泊」は、約1,000坪の敷地をまるごと貸し切りできる宿泊施設。快適にリノベーションされたゲストハウスの蔵、江戸末期築の母屋(見学のみ)、収穫体験を楽しめる菜園があり、100年前の津軽を疑似体験できます。
扉を開けると正面に重厚な蔵の扉が目に飛び込んできて、その左には軽い食事も作れる使い勝手のよいキッチンがしつらえてあります。建築当時の白壁や、青森ヒバの柱や梁を生かした蔵は、最大10名まで宿泊可能です。
豪農の屋敷を移築した母屋。縁側で庭園を眺めれば、心が「100年前の津軽」にタイムスリップしたかのようです。
美しく広大な棚田で、爽やかな風に吹かれる
集落にほど近い大川原棚田は、まさに日本の原風景と呼ぶにふさわしい場所。なだらかな斜面には300枚近くの田んぼがあるといい、山を切り拓いた人々の強さに心打たれます。
夏になると、棚田のすぐそばを流れる中野川で「大川原の火流し」が行われます。葦(アシ)の茎を編み上げて作った舟に火をつけて、その燃え方からその年の豊凶を占います。
湯治場の風情残る温泉地 熱めの湯でスッキリ!
温湯(ぬるゆ)温泉は、400年以上もの昔に怪我をした鶴が傷を癒したという伝説が残る、歴史ある温泉地です。「温もりが長く続く湯」から命名され、湯治場の雰囲気を今に伝えています。熱めのお湯で、肌はつるつる気分もスッキリ!寒さが厳しい津軽の冬でも、体を芯からポカポカと温めてくれます。
青森蔵泊
- 住所
- 青森県黒石市柵ノ木1-43
- 交通
- 黒石駅から車で約7分
- チェックイン
- 15:00~21:00
- チェックアウト
- 10:00
- 宿泊料
- 1泊1棟 17,078円~(素泊まり/2名利用時1名)、9,591円~(素泊まり/5名以上利用時 1名)
※季節・宿泊人数により異なります
京都府伊根町:舟屋が立ち並ぶ漁業の町で、海辺の暮らしを体験
丹後半島の北東部に位置する小さな漁業の町・伊根町。舟屋とは、もともと海から引き上げた漁師の船を、風雨や虫から守るために建てたもので、約230軒が海に浮かんでいるかのように連なる珍しい景観は、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されています。海上タクシーにお刺身作り体験、海鮮グルメと、海の恵みを満喫するアクティビティが盛りだくさんの旅へ。
伊根湾を望む露天風呂付き 1棟まるごと貸し切りの舟屋の宿
「風雅」は、伊根湾を一望する舟屋群に立つ舟屋の宿。他に「雅」「香雅」を含めた3つの宿からなる温泉付き宿泊施設「舟屋の宿 雅」のうちの1棟です。
舟屋の1階は、かつては漁師たちが船を収納する“船のガレージ”として使っていた場所。大きな窓から伊根湾を望む、開放的な空間です。
最大のポイントは、海に開かれた露天風呂!お湯は奥伊根温泉の天然温泉で、つるつる・すべすべの肌あたり。波の音と潮風を感じながら、日ごろの疲れをさっぱり流してしまいましょう。
伊根湾をぐるりと一周 カモメのエサやりにチャレンジ
地上とはまた違った舟屋の風景に出会える伊根湾巡りは、人気のアクティビティのひとつ。船頭さんがユーモアたっぷりに盛り上げてくれるので、クルージング中は笑いが絶えません。
船上デッキでのカモメのエサやり体験は、伊根湾巡りの醍醐味!エサを差し出すと、たくさんのカモメが寄ってきて上手にキャッチしていきます。
まるでリゾート!海が見えるテラスがあるカフェ
乙女心をくすぐるクリームソーダは、リゾートのようなカフェ「INE CAFE」で。テラスに出るとそこは一面の海! テイクアウト用のドリンクメニューなら、テラスでいただくこともできます。
板前さん直伝! 地魚を使った刺身作りに挑戦
旬の魚を使った刺身作り体験は、漁師町ならではのアクティビティ。伊根の魚を知り尽くした板前さんが、やさしく親切にさばき方を教えてくれます。開放的なロケーションで味わう自分でさばいたお刺身は格別です!
伊根の舟屋 風雅
- 住所
- 京都府与謝郡伊根町平田552
- 交通
- 京都縦貫自動車道与謝天橋立ICから車で約40分、または京都丹後鉄道天橋立駅より伊根線・蒲入線・経ヶ岬線バスで約1時間、伊根下車徒歩約6分
- チェックイン
- 15:00~18:00
- チェックアウト
- 10:00
- 宿泊料
- 1泊1名19,360円~(税・サ込み/素泊まり/4名利用時)
土地の暮らしに溶け込むような旅は、農泊ならではの魅力。里山の風景にたたずみ、歴史ある建物に泊まり、その地の恵みをいただけば、心も体も新しく生まれ変わっていくよう。せわしない毎日から少しだけ離れて、自分を見つめ直す旅へ出かけましょう。
この記事は、農林水産省の農山漁村振興交付金を活用して作成しています。
また、この記事は農林水産省の承認のもと、農泊商標について使用許諾を受けて制作しております。