研究学園都市として知られる、茨城県・つくば。一般見学可能な研究所や博物館などの施設が多数揃い、子どもの「なぜ?」「どうして?」を刺激してくれる街です。さらに、ロープウェイorケーブルカーで山頂近くまで行ける「筑波山」もあり、気軽な家族旅が楽しめます。
東京都内からなら、秋葉原からつくばまでを最速約45分で結ぶ「つくばエクスプレス」が便利。筑波山のふもとには、ファミリー歓迎の温泉旅館が点在しているので、1泊するのもおすすめ。宇宙・科学と美しい自然をいっぺんに楽しめる、モデルコースを紹介します。
土・日・祝や夏休み期間中なら、つくば駅前から運行している1日乗り放題の「つくばサイエンスツアーバス(大人500円・小学生250円)」を利用すると、見どころを効率よく回れるのでおすすめです。
ロボットやLEDなど、最先端の産業技術を紹介する「サイエンス・スクエア つくば」、 世界でも珍しい地球科学専門の博物館「地質標本館」、 約14ヘクタールもの広大な敷地に国内外の貴重な植物を収集する「つくば植物園」、 球体模型や体験型マップなどで学べる「地図と測量の科学館」などを回ることが可能です。
今回は、サイエンスツアーバスのルートでも人気の2施設、「筑波宇宙センター」と、「つくばエキスポセンター」をピックアップして訪れてみます。
本物のロケットや実物大の人工衛星を無料で見学! 「筑波宇宙センター」
まずは、つくば駅からのバス(土・日・祝はサイエンスツアーバスも運行)を利用し、「筑波宇宙センター」へ向かいましょう。人工衛星やロケットの開発、宇宙飛行士の養成などが行われている立派な施設ですが、一部は一般客に無料で開放されています。
展示館「スペースドーム」に入ると、視界に飛び込んでくるのは100万分の1で表現された美しい地球の姿。館内に、宇宙ステーションや人工衛星の実物大模型や本物のロケットエンジン、宇宙服のレプリカなどが並び、圧巻の風景です。
ずらりと並んでいるのは、人工衛星「きく」「ゆり」などの試験モデル。大きさや作りは実物とほぼ同じで、迫力が伝わってきます。「家で衛星放送が見られるのはどうして?」「天気を予想できるのはどうして?」など、親子で会話をしながら見学すると、学びが広がりますよ。
顔をのぞかせると宇宙飛行士になりきれる撮影スポットも! 宇宙服はレプリカですが、冷却装置や酸素タンク、手もとの鏡など忠実に再現されたリアルなものです。実物は重さ約120kgで、生命維持装置を含めて1着約10億円とかなり高額なのだそう。
館内でひときわ目を引くのが、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の実物大モデル。中に入ると、意外な広さに驚かされます。若田光一さんや大西卓哉さんなどJAXAの宇宙飛行士たちは、こんな実験棟の中で実験・研究を行いながら生活していたんですね。歴代の日本人宇宙飛行士のサインもあり、宇宙への興味がどんどん膨らんでいきます。
衛星を打上げた歴代の日本の液体ロケットを20分の1スケールで再現。一番左に見えるのは日本の宇宙開発のさきがけとなった「ペンシルロケット」で、展示されているものは全長わずか230mmです。その後ロケットが大きくなっていく様子が、ひと目で分かる展示です。
入り口近くにある「マモルホシ」。画面に映り込んだ自分の影で人工衛星にタッチすると、さまざまなクイズが出題されます。クイズの内容は人工衛星や科学に関すること。少し難しいため、親子で協力してチャレンジしましょう。
館内はさっと回るだけなら30分程度でOK。もっと詳しく知りたいなら、1日5回行われている説明員による展示館ガイド(無料)に参加するのもおすすめです。ガイドの所要時間は30分程度。事前予約・登録は不要で途中参加・退出も可能です。
「スペースドーム」の奥にある「プラネットキューブ」にもぜひ足を運びましょう。ここでは企画展が行われているほか、ミュージアムショップも併設。JAXAのオリジナルグッズや宇宙食などを購入できます。上の写真のプルバック式スペースシャトルは、子どもに大人気!
ひととおり見学したら、屋外の「ロケット広場」へ。目玉はなんと言っても、純国産ロケット「H-Ⅱロケット」の実機展示です。初めて見る本物のロケットに、子どもも大人も感動間違いなし!
小学校高学年以上のお子さんには、事前予約制の「見学ツアー」(一般500円 ※高校生を除く18歳以上、高校生以下または18歳未満無料)もおすすめです。「きぼう」運用管制室や宇宙飛行士養成エリアなどふだんは見られないレアな場所を、ガイドによる説明付きで見学できます。ツアーは個人向けが1日2回(11:30、15:00)、団体向けが1日4回(10:00、11:30、13:30、15:00)開催され、所要約70分。前日までウェブサイトで予約できますが、週末はすぐに満員になるほどの人気です。
筑波宇宙センター
- 住所
- 茨城県つくば市千現2-1-1
- 開館時間
- 9:30〜17:00(展示館「スペースドーム」)、10:00〜17:00(プラネットキューブ)
- 休館日
- 月曜日(不定期)、年末年始(12/29 ~ 1/3)、施設点検日等
- アクセス
- つくばエクスプレス「つくば」駅下車。関鉄バス「荒川沖駅」行きに乗り換え「物質材料研究機構」下車徒歩約1分、または「つくば」駅よりタクシーで約10分。
体を使って遊びながら学べる! 「つくばエキスポセンター」
再びバス(土・日・祝はサイエンスツアーバス)に乗り込み、「つくばエキスポセンター」へと移動しましょう。1985年の「科学万博―つくば’85」を記念してオープンした施設で、「見て、触って、楽しく」学べるのが特徴。サイエンスショーや科学教室など、子どもが喜ぶイベントも豊富です。
体験型の展示が多いのは1階の「おもしろサイエンスゾーン」。こちらは、空気を勢いよく発射する「エア・バズーカ」。発射口の形を星型、円形、四角などに変えていくと、空気の形はどう変わるのか。実際に目で見て、観察できます。
ガラスの表面に触れると、光が吸い寄せられてくる「プラズマボール」。手を動かすと光も動き、ちょっとしたマジシャン気分が味わえます。ボールの中は真空に近い状態でガスが注入されており、雷の稲光と同じ仕組みなのだそう。さわってもビリビリしないので、子どもも安心です。
子どもが中に入れる巨大なシャボン玉装置も! シャッターチャンスは一瞬ですが、子どもにとって夢の体験ができますよ。
ほかにも、電気を起こして形状記憶合金の花を咲かせる「花を咲かせよう」、強風の中でバランスを取る「風に負けるな」など、身体を使って体感できる展示が充実しています。どれも無料で体験できるのがうれしいですね。
たっぷり遊んだら2階へ。ここは「生命科学」や「ナノテクノロジー」などのテーマで5つのゾーンに分かれ、子どもには「科学の面白さ」を、大人には「科学がひらく明るい未来」を伝える展示が並んでいます。
有人潜水調査船「しんかい6500」の模型。隣には実物のアームも展示されています。
カメラの映像を見ながら操作できる、月面ローバー(月面探査機)の試作機。
地球温暖化に関するクイズに挑戦! 地球儀の色は、正解すると青く、間違えると赤く光ります。クイズの内容は小さな子どもには難しいので、大人が答えてあげてもいいでしょう。
疲れたら隣接の「ほしまる☆カフェ」でひと休み。地元つくばの食材を使った料理やスイーツが、宇宙をイメージしたかわいらしい盛り付けで提供されます。キッズコーナーもあり、子どもを遊ばせながらゆっくりと食事が楽しめますよ。
世界最大級のプラネタリウムも見逃せません。直径約25.6mのドーム全体に投影される映像は、臨場感抜群。最新鋭の宇宙シミュレーターで、正しい見え方を正確に再現しています。土・日・祝には人気キャラクターが登場する子ども向けのプログラムも上映されます。
広々とした屋外広場には、街のシンボルでもある高さ50mの「H-Ⅱロケット実物大模型」や、重さ50tもの石が人の力で動く 「ゆるぎ石」などの展示物が! 動物型の滑り台やベンチもあり、小さな子連れでのんびり休めるスペースです。
つくばエキスポセンター
- 住所
- 茨城県つくば市吾妻2-9
- 開館時間
- 9:50〜17:00(最終入館は16:30まで)
- 入館料
- 大人410円、※子ども210円(入場券のみ) 大人820円、子ども410円(プラネタリウム券[入館含む])
※子ども:4歳~高校生。3歳以下無料
- 休館日
- 月曜(祝の場合は翌日休)、年末年始、その他臨時休館あり
- アクセス
- つくばエクスプレス「つくば」駅より徒歩約5分
「つくばエキスポセンター」からつくば駅までは、歩いて約5分の距離。周辺にホテルも多数あります。駅の近くに宿をとってもOKですが、筑波山のふもとにある温泉旅館に泊まってみてはいかがでしょう。つくば駅前にあるバス停から「筑波山シャトル」バスに乗り、「筑波山神社」で降りると、「筑波山温泉」の各宿にアクセスできます。
標高877メートルの筑波山で、初めての登山に挑戦!
翌日のメインイベントは、筑波山登山! 日本百名山のひとつとして知られる筑波山は、男体山と女体山の2つからなり、それぞれケーブルカーとロープウェイで山頂近くまで行くことができます。また、2つの山頂間は「山頂連絡路」で結ばれており、約30分程度で行き来が可能。子連れでも楽しめるルートが充実しています。
筑波山ふもとの温泉旅館に宿泊した場合は、ケーブルカーを使って男体山に登るコースがおすすめ。まずは宿から歩いて、筑波山神社拝殿近くの宮脇駅へ。ここから筑波山頂駅までは、ケーブルカーでわずか8分ほどの距離です。急勾配のスリルと車窓からの景色を楽しんでいると、あっという間に到着! 駅近くにはおみやげショップ兼レストランの「コマ展望台」があり、関東平野の絶景を見下ろしながら食事やソフトクリームが楽しめます。
余裕があれば、ここからさらに男体山頂をめざしましょう。大人の足で15分程度の距離ですが、傾斜が急で岩場も多いため、子連れにはちょっぴりハード。その分、頂上にたどりついた時の達成感は格別です。
一方、女体山から先に登る場合は、筑波山シャトルバスでつつじヶ丘駅へ行き、ロープウェイを利用しましょう。関東平野を見下ろしながら、約6分の空中散歩が楽しめます。
女体山駅から山頂までは歩いて約5分。少々急な上り坂ですが、山頂からの眺めは絶景! 天気がよければ富士山まで見渡すことができます。
筑波山
- 住所
- 茨城県つくば市筑波
- アクセス
- つくばエクスプレス「つくば駅」から直行筑波山シャトルバスで約40分
宇宙と科学について学び、初めての登山に挑戦する1泊2日のモデルコースは、幼児から小学生まで幅広い年代の子連れにおすすめ。今度の週末に、出かけてみてはいかがでしょうか。
取材・写真・文/渡辺裕希子
写真提供/筑波宇宙センター、つくばエキスポセンター(一部)
※掲載内容は公開時点のものです。ご利用時と異なることがありますのでご利用の際は公式ホームページなどでご確認ください。