徳島の観光名所のひとつ、鳴門。その地に世界的にも珍しい展示を行っている美術館があることをご存知でしょうか? その美術館は「大塚国際美術館」といい、訪れた人の満足度が非常に高いことで有名な場所。
関西方面からは車で淡路島を経由してのアクセスが便利。大阪からだと2時間、神戸からだと1時間半ほどで到着します。また、1日1往復ですが大阪や神戸からは直通のバスも運行されています。飛行機を使う場合は、徳島空港から路線バスかタクシーに乗って30分ほどでアクセス可能。
今回はそんな美術館の魅力や楽しみ方を中心に、鳴門周辺の観光スポットやランチスポットを紹介します。
大塚国際美術館のここがすごい!
日本中に美術館はあるのに、大塚国際美術館は日本唯一のみならず世界的にも珍しい展示をしている、というのはどういうことでしょうか。その謎は陶板(とうばん)というキーワードから明らかになります。
陶板というのは板状の陶器のこと。大塚国際美術館にある全ての作品は陶板に焼き付けられた、美術陶板という原寸大の形で展示されているのです。そのため、「原画が一つもない美術館」と揶揄されることもありますが、陶板名画でしかできない大塚国際美術館ならではの魅力があります。
魅力その1.
写真撮影OK! どころか、触れることも可能!
館内の全作品は撮影が可能となっています。フラッシュの使用は禁止されていますが、どの作品でも自分のカメラで撮って画像として持ち帰ることができるのです。また間近で見ることができ、名画×自撮りの写真をSNSにあげることももちろんできます。原画の展示でそんなことができる場所はまずありませんよね。
さらに名画に触れることもできてしまいます。むやみに力を加えることは慎むべきですが、そっと触るくらいなら全く問題なし!小さな子どもを連れて行ってハラハラすることもありませんし、かえって子どもにとっては原画の展示より楽しみやすいかもしれません。
陶板名画はただ平面にコピーされた作品ではなく、厚みやヒビなど原画の全てが忠実に再現されているので、触ることで油絵の重ね塗りの質感なども感じることができます。
魅力その2.
空間まるごと再現した「環境展示」の数々
大塚国際美術館では絵画そのものだけではなく、教会や聖堂などの空間をまるごと再現した「環境展示」も数多く見られます。陶板名画は全て原寸大で作られているのですが、空間ごと再現されている「システィーナ・ホール」や「スクロヴェーニ礼拝堂」(写真のもの)などでは壁や天井まで現地そのままの空間を楽しむことができるのです。ちなみに「システィーナ・ホール」は、米津玄師さんのテレビ初歌唱の中継場として話題になりました。
魅力その3.
作者の本当の願いを叶える? 通常は有りえない展示も
陶板は耐久性が高いため、屋外での鑑賞という原画ではありえない展示方法が可能になります。
モネの『大睡蓮』が展示されているのはなんと屋外! 原画は紫外線に弱いため、直接太陽光にさらされる展示はおそらく不可能です。陶板名画だからこそ、自然光の下でも作品を堪能することができます。
こちらの展示は、単に屋外で展示しているということ以上の意味を持ちます。モネなどの印象派と呼ばれる画家たちは、アトリエを出て太陽の下で創作をしていました。移りゆく自然を直接目で見ながらその瞬間をキャンバスに描き出したとされています。
そんなモネはこの『大睡蓮』を自然光の中で見てもらいたいと願っていました。そのため『大睡蓮』を展示している世界の美術館では、自然光をできるだけ採り入れた鑑賞場所を造り上げています。しかしながら、さすがに原画を屋外に展示することはできません。大塚国際美術館ではそういった通常では不可能な展示が行われているのです。
他にも原画が世界中に点在しているゴッホの『ヒマワリ』7枚を一つの部屋に集めた展示などもあります。ゴッホはゴーギャンとの共同アトリエを飾るためにヒマワリの絵を描いていたといわれており、この展示こそゴッホが望んでいた空間ということもできるでしょう。
7枚のうち1枚はすでに焼失してしまっており、存在しない作品。ですから、このような展示を見られるのも大塚国際美術館だけなのです。
魅力その4.
美術に関して初心者でも問題なし
ここまでの魅力は原画についての知識があってこその魅力といえますが、「美術館にあまり行ったことない」という方や「好きな画家はいるけど数点の作品しか知らない」という方も多いと思います。そんな方におすすめの館内の歩き方を紹介します。
大塚国際美術館に展示されている作品は世界26ヶ国の美術館が所蔵する名画から選ばれており、展示数は1000点を超えます。全ての作品を見て回ると4kmもの距離を歩くことになるので、さすがに1日で回るのは大変という方もいるかもしれません。鑑賞の際はポイントを絞って鑑賞するようにしましょう。
とはいっても、何を元に回ればいいのかさっぱり…という方におすすめなのが定時ガイドツアーです。
定時ガイドツアーは毎日6回(火水木金は7回)行われています。館内の人気作品ベスト10を回る1時間のコースと地下3階〜地下2階を重点的に鑑賞する2時間のコースがあるので、時間と内容を確認して参加してみてください。(定時ガイドに関しては地下3階のインフォメーション近くのモニターに表示があります。もしくは美術館公式ウェブサイトをご確認ください)
ツアーを引率するのはボランティアガイドの方で参加は無料。予約も必要なく開始時間に集合場所へ行くだけで、他に必要な手続きなどはありません。またツアーの途中で抜けることも可能なので気軽に参加できます。
ボランティアガイドは、絵画に対する情熱を持っている方ばかり。原画を見るために海外へ行ったという話をしてくれる方も。説明はわかりやすく要点を上手く伝えてくれるので、一人で回るよりもはるかに作品のことを理解できるでしょう。ぜひ利用してみてくださいね。
館内の食事処や周辺のスポットは?
館内には3つのカフェ、レストランがあり、軽食やスイーツから本格的なランチまで揃っているので、食事にも事欠きません。前述の通りとても広い館内なので、途中で休憩を挟むことは必須です。
海鮮丼など、新鮮な海の幸を食材を使ったメニューも豊富ですが、この美術館ならではの特別なメニューも。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』をもとに考案されたランチメニューで、阿波黒毛和牛などの徳島産食材を使った、美術館オリジナルのメニューです。名画の鑑賞後に、まるでその世界の中に入れたかのようなセットをいただいてみてはいかがですか?
また美術館は当日の再入場が可能となっているので、周辺の飲食店でランチをとることもできます。近隣にあるおすすめのランチスポットはホテル「ルネッサンスリゾートナルト」内の「テラスカフェ オーゲ」。美術館からは車で3分ほど行ったところにあります。
鳴門海峡を眺めながらの食事は最高のひと時になるでしょう。メニューは本格的なものばかりで徳島の自然の幸を存分にいただくことができます。
1日10食限定の鯛カツバーガーは鳴門の名産品である鳴門鯛を使った贅沢な逸品。シェフ特製のタルタルソースとの相性も抜群で、好みでソース量を調節しながら挟むことができます。
他にも鳴門金時を贅沢に使ったスイーツメニューも見逃せません。タルトやモンブラン、パフェまで鳴門金時尽くしとなっています。どのメニューも甘すぎない上品な味に仕上がっているので、普段は甘いものを食べないという方にもぜひ試してほしいスイーツばかりです。
テラスカフェ オーゲ
- 住所
- 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字大毛16-45 ルネッサンスリゾートナルト1F
- 営業時間
- 8:00〜23:00(※時間により提供メニューが異なります)
- 定休日
- なし
周辺にあるのはランチスポットだけではありません。世界最大級の渦潮を見ることができる徳島県内随一の観光名所「大鳴門橋」は美術館から目と鼻の先にあります。
写真の中央に写っている建物が大塚国際美術館、画面上部に見えているのが大鳴門橋です。その近さが写真から分かります。
鳴門の渦潮は季節や日によって現れ方が変わりますが、時間帯によっても相当の変化があります。1日の内に渦が出やすい時間帯は、満潮時と干潮時の二回。美術館の休憩がてら渦を見に行くというプランなら、1日で徳島の名所を2つも楽しむことができますよ。(渦潮の見頃時間は、「渦の道」公式ウェブサイト https://www.uzunomichi.jp で知ることができます)
渦を見るには観潮船に乗って渦の近くまで行くという方法もありますが、「渦の道」からは高い位置から渦をじっくりと観察することができます。大鳴門橋の道路の下に作られたこの道には足元がガラス張りになっている場所がいくつもあり、直下に鳴門海峡が広がっています。
水面からの距離はなんと約45m! 高所恐怖症の方は怖いかもしれませんが、ぜひ上から渦潮の動きを楽しんでみてください。
渦の道
- 住所
- 徳島県鳴門市鳴門町 鳴門公園内
- 営業時間
- 3~9月 9:00〜18:00、10~2月 9:00~17:00、GW・夏休み期間 8:00~19:00(入場は閉館の30分前まで)
- 入場料
- 大人510円/中高生410円/小学生260円
- 定休日
- 3・6・9・12月の第2月曜日
最後はミュージアムショップでお土産を
美術館を堪能した最後に立ち寄るべき場所が、入り口そばにあるミュージアムショップ。美術館ならではのラインナップで、ここでしか買えないグッズも数多く見られます。
ピカソ、ゴッホ、ルノアールなど、誰もが知っている芸術家の名画をモチーフにした様々な商品が並んでいるので、見て回るだけでも楽しくなってくること間違いなし。商品の中でも、特に売れ筋のものを少し紹介します。
2018年に特に力を入れている展示作品であるゴッホの『ヒマワリ』のほか、ムンクの『叫び』の関連商品はかなり人気があるとのこと。
ムンクの『叫び』から生まれた阿波和三盆は特にユニークな一品。知り合いにお土産として渡したら注目されること請け合いです。
他にも大塚国際美術館以外では決して見ることができないような商品も多数。
大塚国際美術館の最大の特徴かつ魅力である陶板名画を買うことができるのです。原寸大ではないですが、最も好きな一枚を家に持ち帰ってみてはいかがでしょうか?
一度行けば魅力が分かる大塚国際美術館。訪問客の満足度がとても高いということも、実際に行けばすぐに分かるはず。一般的な美術館との違いは一目瞭然、様々な楽しみ方ができる美術館なのです。
ぜひ徳島の鳴門で世界中の名画ワールドに浸ってみてください。
大塚国際美術館
- 住所
- 徳島県鳴門市鳴門町 鳴門公園内
- 入館料
- 一般3,300円/大学生2,200円/小中高生550円
- 開館時間
- 9:30~17:00(入館券の販売は16:00まで)
- 休館日
- 月曜(祝日の場合は翌日)
1月に連続休館あり、その他特別休館あり、8月は無休 - アクセス
- 路線バス鳴門公園線「大塚国際美術館」バス停下車すぐ
神戸淡路鳴門自動車道「鳴門北インター」より車で約3分
取材・撮影・文/岡本大樹