古くから港町として栄え、美食の街で知られる九州最大の都市・福岡。2023年6月、福岡の中心地である天神に「ザ・リッツ・カールトン福岡」が開業しました。
ザ・リッツ・カールトンブランドホテルが九州に上陸したのは初めてのこと。博多の文化を堪能しながら、世界最高峰のホスピタリティで心地良い滞在ができます。特に九州の豊かな食材をザ・リッツ・カールトン流で仕上げる朝食、アフタヌーンティー、ディナーは忘れられないおいしさ。ラグジュアリーな最新ホテルで過ごす1泊2日の旅をレポートします。
テーマは「博多織」。ザ・リッツ・カールトン福岡とは
ザ・リッツ・カールトン福岡は国内6軒目となるザ・リッツ・カールトンブランドホテル。高さ111m、地上25階建ての「福岡大名ガーデンシティ」内の1階・3階・18階〜24階に位置し、美しい福岡の景色とともにレストランやプールといった多彩な魅力でゲストをもてなします。
ホテルのテーマは福岡のシンボル「博多織」。織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で紡がれることから、ゲストと福岡の人・街・文化を紡ぐ場所を目指しています。
天神駅から徒歩約5分。ロケーションも抜群のホテル
アクセスは地下鉄「天神駅」から徒歩約5分という抜群の立地。福岡空港、博多駅、博多港からもタクシーで15分前後のため、地方から訪れる際も便利です。
ザ・リッツ・カールトンのカーペットが敷かれたエントランスから中に入ると、空気感が一変。障子がモチーフとなったコリドー(回廊)を進み、天神のにぎわいから離れるようにラグジュアリーな世界へと誘われます。コリドーは日常から非日常へと切り替える狭間の空間です。
館内を彩るのは、ブラックオーキッドの洗練された香り。世界各国にあるザ・リッツ・カールトンはそれぞれに特徴的な香りが採用されており、ザ・リッツ・カールトン福岡は深みのある蘭の香りが上品に広がっています。
1階アライバルロビーの壁一面には、『日本書紀』に記されている日本最古の神社の一つ「宗像大社(むなかたたいしゃ)」がモチーフとなったアートワークが飾られています。特に神聖な「沖ノ島」「さつき松原」「高宮祭場」を、博多織の糸を使って表現。立体的な糸の重なりの先に見えるのは、遥か彼方に広がる日本の始まりの情景。想像力を掻き立てる作品が、ゲストを迎えます。
エレベーターに乗り、18階にあるフロントへ。1階と18階のエレベーターホールに展示された屏風は麻殖生素子(まいおもとこ)さんによるひと続きの作品です。月と玄界灘の情景を描いた連続性のある作品を展示することで「つながり」を演出。和の趣あふれる枯山水と合わせて、空間に華を添えていました。
18階に到着すると、目に飛び込んできたのは博多湾の絶景!能古島、海の中道、博多港、博多ポートタワーといった福岡の景色が一望できます。
館内は西洋的ながら、和の温かみを感じられるデザイン。博多織や、福岡で発掘された土器から着想を得た花器など、福岡にまつわるインテリアが心地良さをもたらしてくれます。
ザ・ロビーラウンジ&バーに展示されているのは、創業1861年の「西村織物」がザ・リッツ・カールトン福岡のために江戸時代のデザインをそのまま再現した特別な博多織。さりげなく、福岡の文化と歴史を感じられます。
チェックインを終えたら、ラウンジでウェルカムティーを飲みながら小休憩。バタフライピーの青いティーと福岡県の花でもある梅のシロップが用意されました。「魔法をおかけしますね」というスタッフの声とともにティーに梅シロップが注がれると、色が青から紫に変化!ホテルから見えるマジックアワーと変化し続ける福岡の街を表現しており、その美しさに吸い寄せられてしまいました。
随所に宿る、九州の伝統。「プレミアムキング ベイビュー」に宿泊
ウェルカムティーを堪能した後は客室へ。客室フロアの廊下にも博多織の紋紙(パンチカード)をモチーフにした照明や、久留米絣(くるめがすり)のインスタレーションなど福岡の文化を感じるアートが飾られています。
客室は19階〜23階に位置し、今回は「プレミアムキング ベイビュー」に宿泊。洗練されたミニマルな空間の中に、大分県の伝統工芸品である竹細工がモチーフとなった引き戸や、福岡県の上野焼(あがのやき)など、九州の文化が散りばめられています。広さは約50平米、定員3人。
窓際に飾られている絵は玄界灘とその向こうにある大陸の情景を抽象的に描いた作品。モダンながら和の趣を感じさせます。
プレミアムキングは3つのビューから選択でき、「ベイビュー」は博多湾や島々が見える眺望の良さが魅力。ザ・リッツ・カールトン福岡はすべて高層階に客室があり、周りに高い建物がないため、どの客室からも美しい福岡の風景を眺めることができます。
窓際に置いてあったのはウェルカムスイーツのザ・リッツ・カールトン福岡オリジナル最中。いちごミルクと抹茶小豆の2種類を、朝鮮唐津焼の湯呑みに淹れた八女煎茶と一緒にいただきました。
ホテルからウェルカムカードも。直筆のメッセージに心が温まりました。
そのほか飲み物はTWGの紅茶、エスプレッソマシンで淹れるコーヒーが無料。福岡発・茅乃舎の「和風だしスープ」と「洋風だしスープ」も用意され、福岡ならではのおもてなしです。
ミニバーを開けると、糸島の芥屋の大門(けやのおおと)をモチーフにしたアートがお目見え。サステイナブルに配慮し、お水はスウェーデン「ノルダック」プレミアムウォーターが繰り返し使用可能なグラスボトルで用意されています。
モンテ・カルメロという石材がアクセントになった、ラグジュアリーなバスルーム。ダブルシンクで使い勝手の良い空間となっています。
ザ・リッツ・カールトン福岡は全室バスタブ付き。足を伸ばしても届かないほど広いバスタブで、心の底からリラックスできます。
シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、ハンド&ボディローションはパリ発・高級フレグランスブランド「ディプティック」の「フィロシコス」シリーズ。いちじくのフルーティーな香りが優雅なバスタイムを演出してくれます。
高品質なシャンプーに加えて、ドライヤーも艶やかな髪へ導く「レプロナイザー 27D Plus」。潤いを保ちながら乾かしてくれる、高級ドライヤーです。
ルームウェアはザ・リッツ・カールトンロゴ入りバスローブと、ロンドン発「DEREK ROSE」のナイトウェア。トップス、パンツに分かれたナイトウェアはまるでシルクのような滑らかな素材で、肌を優しく包み込んでくれます。
特別な記念日旅行におすすめの「プレミアムスイート」
ザ・リッツ・カールトン福岡は全167室あり、特別な旅行におすすめの客室が「プレミアムスイート」。2方向の景色を望む角部屋で、約87平米もの開放的な空間となっています。定員3人。
レイアウトはリビング+ベッドルーム+バスルーム。佐賀・備前焼の狛犬や博多織の引き戸など、スイートルーム限定のインテリアも特徴です。
クラブルーム、スイートルームの宿泊者は24階「ザ・リッツカールトン クラブ」が利用可能。1日5回のフードプレゼンテーションやシャンパンを自由に楽しむことができます。
ザ・リッツ・カールトン福岡限定トリートメントも。癒やしのスパ
洗練された客室に感動した後は、ホテル最上階にあるプールを満喫。福岡タワーをはじめ福岡の美しい景色を横目に、広大な屋内プールや疲れを癒やすヴァイタリティプールで最高にリラックスできる空間です。同じスパエリアにあるドライサウナとスチームサウナを利用するのも良い過ごし方。宿泊者は6:30〜22:30にいつでも利用できます(別途料金要)。水着は840円でレンタルも可能。
ザ・リッツ・カールトン福岡が誇る極上のリラクゼーションを体験するなら「ザ・リッツ・カールトン スパ」でトリートメントを。ボディとフェイシャルの多彩なメニューで、心と身体を癒やしへと導いてくれます。1室限定でカップルルームもあり、2人同時にトリートメントを受けるのもおすすめです。
注目はザ・リッツ・カールトン福岡でしか受けることができない限定トリートメント。「イタヅケ・リストア」(120分 58,000円)は福岡ならではの「米ぬか」を用いた特別なボディ&フェイシャルメニューです。福岡は日本で最古の稲作集落といわれる遺跡があり、米の持つ力に着目。玄米・米ぬか・よもぎを入れたカイロで身体を温めながら、身体をほぐしていくアロマボディ・トリートメントとなっています。
生産者が育てた「食材」が主役。九州の食を味わい尽くすディナー
夕食は「Farm to Sky(農場から空へ)」をコンセプトにモダンウェスタン料理を提供する「ヴィリディス」へ。福岡をはじめ九州全域から厳選し、生産者から直接届く旬の食材を中心としたコース料理(5皿コース 13,000円~)を夜景と一緒に堪能できます。
総料理長はフレンチの巨匠・三國清三シェフの元で経験を積み、名だたるラグジュアリーホテルの料理長も務めてきた早坂心吾さんです。開業の1年以上前から福岡に着任し、ゼロから食材を開拓した早坂さんが驚いたのは九州の食材の「豊かさ」と「ポテンシャル」。
「生産地に赴き、九州全域にある数十軒の生産者さんと顔を合わせてお話を伺い、直接仕入れを行っています。自分たちの野菜・肉・魚に誇りを持っている方々ばかりで、どうやって食べたらおいしいか、農家さんの意見を参考にすることもあります。料理人が主役ではなく、主役はあくまでも『食材』。九州の魅力的な食材を、世界に発信していきたいです」と話してくれました。
メニューは3カ月ごとに変わり、この日はアミューズ「熊本県産ホドイモの素揚げ、茸のコンソメ」からスタート。マメ科のホドイモは珍しい食材ですが、「食材の宝庫である九州なら見つかるのでは」と早坂さんが探し、生産者さんとつながった食材です。器は金善製陶所、陶悦窯、安楽窯などすべて有田焼。鮮やかなブルーが美しい大皿は入手困難な「やま平窯」です。
続いては福岡県の農家「里山サポリ」から直接届いたフィレンツェ茄子とヘルシエオクラから着想を得た料理です。茄子をキャビアに見立てたキャビア・ド・オーベルジーヌ、ヘルシエオクラ、天然の車海老、佐賀県産の白石蓮根を、オマールコンソメのヴェールで包んだ前菜となっています。里山サポリの野菜は生命力が強く、早坂さんは「いかにこの魅力を引き立てるか」という点を意識しながら料理を考えたそう。九州の食材がヴェールの中に美しく閉じ込められ、その見た目にも胸が躍りました。
滑らかな味わいに感動した「糸島産つまんでご卵(らん)のフラン」。指でつまめるほど新鮮な平飼い卵の洋風茶碗蒸しに九州産バターナッツかぼちゃのスープや北海道産ホタテ貝をあしらい、最後にたっぷりのイタリア産秋トリュフをトッピングしています。トリュフに負けないほどの味の濃い卵がとても印象的でした。
「長崎県産金目鯛のヴァプール(蒸し料理)」は福岡県産の白ネギとジャガイモを添え、博多万能ネギのオイルで香り付けした魚料理。博多万能ネギのオイルも自家製で、クリームソースや生姜とともに淡白な金目鯛を引き立てていました。
肉料理は2種類からの選択制で、「九州産黒毛和牛サーロインのグリル」は福岡県産の王リンギ、和栗を添えて。この日の和牛は鹿児島県産の「薩摩牛」でした。ほかにも宮崎、大分、佐賀など質の良い和牛がそろっているのも九州の食材の大きな魅力です。
もう一つの肉料理の選択肢は「福岡県産博多極味鴨のロースト」。生産量の少ない博多極味鴨は早坂さんが「肉汁、香り、旨味、フランスの鴨に負けないおいしさ」と惚れ込んだ食材です。福岡県の希少ないちじく「とよみつひめ」のキャラメリゼ、コンフィチュール、サラダと合わせて食べると絶品でした。
デザートは「福岡県糸島産のシナモンとりんごのキャラメリゼ」。スパイスの香りをまとわせたメレンゲのサクサクとした食感や福岡県産の梅を使った梅酒のソルベとともに味わいました。りんごは「秋映」という品種で、九州でりんごはなかなか見かけません。こちらも早坂さんが九州中を探して見つけた厳選食材です。
記念日のゲストにはホテルからチョコレートケーキのプレゼントも!事前に伝えておくと用意してくれるので、ぜひ伝えてくださいね。
24階「ベイ」。明太マティーニやブランド牡蠣に注目
1日の最後は、DJの音楽に身を任せながら、24階の「ベイ」でカクテルを堪能。博多湾を行き交う船をイメージしたインテリアが印象的で、天井は船の看板に夜景が反射する様子が表現されています。
ユニークなシグネチャーカクテルが豊富にそろい、最も早く売り切れてしまう人気の逸品が「明太マティーニ」(2,400円)です。明太子を濾すところから始まり、仕込みに3日間要するウォッカベースのカクテルで、見た目は透明なのに味は明太子そのもの。そのほか福岡銘菓の味を彷彿とさせる「どんたくミルクパンチ」(2,600円)や福岡を代表するいちごを用いた「あまおうマルガリータ」(2,800円)など、気になるカクテルばかりです。
カクテルと一緒に、福岡の屋台文化を感じる炭火焼き料理を味わうのもおすすめです。また、年間を通して食べられる福岡市の新品種のブランド牡蠣「唐泊恵比須かき」は貝柱の旨味が特に強く、濃厚な味わい。福岡の夜を、おいしく彩ってくれます。
ナイトチョコレートがうれしい、ターンダウンサービス
部屋に戻ると、ターンダウンサービスが行われていました。ベッドの横にそっと置かれていたのはザ・リッツ・カールトンのチョコレート。ナイトチョコレートで心を落ち着かせ、眠りに着きました。
明太子バゲットに、茅乃舎だしのオムレツ。福岡らしい朝食ビュッフェ
翌朝は「ヴィリディス」で味わう朝食ビュッフェからスタート。ホテルで焼き上げたパン、九州産全粒粉のパンケーキ、あまおうのコンポートをのせた自家製ヨーグルト、九州野菜のスチーム、阿蘇自然豚生ハムなど、ホテルメイドや九州産の食材を使った料理がたっぷりと並んでいます。特にザ・リッツ・カールトン福岡特製の「明太子バゲット」はぜひ食べたい一品!
糸島の豆乳を使った自家製豆腐、さつま揚げ、長崎県産あじフライなど、会席チームが手がける和食も絶品です。九州産ケージフリーエッグを使った卵料理はオーダー制で注文ができ、シグネチャーは「茅乃舎だしのだし巻きオムレツ」。明太子クリームソースや博多ねぎがあしらわれた、だし香るオムレツで、またこれを食べるために泊まりたくなるほどのおいしさです。
オーダー制の「クロワッサンエッグベネディクト」も人気の高い一品。ホテルメイドのクロワッサンに、半熟卵・ほうれん草・ベーコンが挟まっています。とろーり黄身が流れるベストな火入れ加減で、上品なオランデーズソースとともに堪能しました。
24時間利用可能。「フィットネスセンター」で食後の運動
食後は24階「フィットネスセンター」で軽い運動。テクノジム社製のランニングマシンや筋力トレーニング用マシンなどが豊富にそろい、好きなマシンで身体を動かせます。宿泊者は24時間いつでも利用可能。
幸福感に満ちあふれる「ディーバ」のアフタヌーンティー
12:00にチェックアウトした後は、予約していた18階「ディーバ」のアフタヌーンティーで最後のひととき。九州産の旬のフルーツと食材を使ったおいしいスイーツ&セイボリーを味わうことができます。
内容は3カ月ごとに変わり、この日は秋のメニュー。「福岡県産イチジクとバラのエクレア」、「宮城県都農ワイナリーのロゼワインジュレ ラズベリー」などスイーツ6品、「熊本県産小蕪のブランマンジェ 柿酢のジュレ 鮑 キャビア」、「宮崎県奥日向サーモンのサンドイッチ 九州サワークリーム」などセイボリー4品がかわいい3段のティースタンドで登場しました。
タルト生地、モンブランクリーム、チョコレート、メレンゲなどが層になった「熊本県球磨産和栗のモンブラン カシスジャム」をはじめ、一品ずつの質の高さに驚きます。
竹細工のかごに入った温かいスコーンはプレーンと九州和紅茶&オレンジの2種類で、クロテッドクリーム・レモンカード・あまおうジャムと一緒に味わいました。
有田焼のオリジナルティーセットでいただく飲み物はコーヒー、紅茶、ハーブティー、日本茶から好きなものをおかわり自由で90分間楽しめます。「八女和紅茶 べにふうき」や「レモングラス煎茶」など、飲み物も九州産の茶葉が選べるのが魅力。九州の秋の味覚とお茶で、幸福感に満ちあふれました。
世界的ラグジュアリーホテルブランドならではの洗練された空間、そして伝統的な福岡の文化を体験できる「ザ・リッツ・カールトン福岡」。特に1年に1度の記念日に宿泊したいホテルです。九州の食材とザ・リッツ・カールトンが織りなす、極上の「食」を堪能するのもお忘れなく。大切な日を輝かしく彩る最新ホテルに泊まってみませんか。
ザ・リッツ・カールトン福岡
- 住所
- 福岡県福岡市中央区大名2-6-50 福岡大名ガーデンシティ
- アクセス
- 地下鉄空港線「天神駅」から徒歩約5分 または「福岡空港」から車で約15分
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 12:00
- 総部屋数
- 167室
撮影/福羅広幸 取材・文/小浜みゆ
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