明治時代に初代の大阪駅が建てられた現在の大阪駅西エリア。この地に、大阪駅の名を冠した駅直結のラグジュアリーホテル「THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection」(以下、「大阪ステーションホテル」)が2024年7月31日に開業しました。
150年に及ぶ関西の鉄道の歴史を感じる空間、地上約140mから望む絶景、日本各地から集まる旬の食材を使った美食と、ぜいたくな体験が満載のホテルステイをレポートします。
「駅の記憶」や大阪の文化を随所に刻むロビー
JR大阪駅西口に直結する複合施設「JPタワー大阪」の中にある「大阪ステーションホテル」。1874(明治7)年に誕生した初代大阪駅の跡地に立つことから、この土地の歴史を未来へと継承すべく、駅や鉄道にまつわる意匠を館内のいたるところで目にします。
29階のロビーに到着すると、多くの人でにぎわう大阪駅の喧騒が嘘のように、静かで落ち着いた空間が広がっています。初代大阪駅が赤レンガで造られた西洋式の駅舎だったことにちなみ、壁にはレンガのウォールアートが。
フロントは、古き良き駅の改札をイメージしたアイランド型。「ここから旅が始まる」という高揚感を覚えるデザインです。
幾何学模様に見える壁のアートは、列車の運行ダイヤを書き表した図表「ダイヤグラム」をイメージしているそう。「これはなんだろう?」と推理しながらじっくり観察してみるのも、大阪ステーションホテルならではの楽しみ方です。
ロビーの中央に位置する「STATION SQUARE(駅前広場)」も駅をイメージしています。ホテルには珍しく、駅にあるような大きな時計やベンチもあり、待ち合わせ場所としても便利。
その奥の「WATER STATION」は、江戸時代に旅人ののどを潤した「ふるまい水」を現代風に進化させたもの。マイボトルに冷たい水をくめるほか、かつて新幹線や特急の車内デッキに備わっていた封筒型紙コップも用意。当時を知る人には懐かしく、知らない人には新鮮な体験が待っています。
WATER STATIONの奥にあるカプセルトイ(1回500円)も見逃せません。
豪華寝台特急「トワイライト・エクスプレス」やスキー客向けの臨時列車「シュプール」号など、かつて運行していた列車のヘッドマークをモチーフにしたピンズが5種類そろいます。ちなみに1種はシークレットで、たった1日だけ運行された特別列車だそうです。
最上階の絶景客室「スペシャリティ」
大阪ステーションホテルの客室は30~38階に全18タイプ418室あり、どの客室からも大阪の大パノラマが広がります。今回は、ラウンジ「SPECIALTY SALON」とバスエリア「OFURO」を無料で利用できる、最上階38階の「スペシャリティ」客室に宿泊しました。
「スペシャリティ」と「スイート」に宿泊のゲストは、スペシャリティサロンでチェックインできるので、スタッフに声をかけて直接38階へ。
廊下には大阪の新世界や広島の宮島など、車窓から見る西日本エリアの観光地をモチーフにしたアートが飾られています。
スペシャリティツイン
この日宿泊した「スペシャリティツイン」は、ドアを開けた瞬間、アイランド型の洗面台が目に飛び込んでくる大胆なレイアウト。
洗面台、バスルームの奥に進むと、大きなベッドが2台並んでいます。ベッドはシモンズ製で、心地良い眠りへと誘ってくれます。
テーブルの上に置かれた箱の中には、大阪で100年以上愛されている飴「黄金糖」、職人が鉄板で1枚ずつ手焼きする「クマオカキ」、大阪の老舗「神宗(かんそう)」の「飲むだし」のおもてなしが。
長年愛される大阪の老舗の味や、大阪の飴ちゃん文化やだし文化に触れられる、こだわりのラインナップです。
さらに、客室内のドリンクを自由にいただけるのもうれしいところ。大阪府交野(かたの)市にある「大門酒造」とコラボレーションしたオリジナルの日本酒をはじめ、大阪最北端の能勢町のミネラルソーダ、和歌山の温州みかんジュースなどが用意されています。
洗面台の引き出しを開けると、アメニティがボックスに美しく収められています。エッセンスマスクやアロマバスソルトが入っている点も見逃せません。
ブラウンのボックスに施されたゴールドの模様は、よく見ると、改札ばさみの形をしています。自動改札機が導入される前は、改札で駅員がきっぷに1枚1枚切り込みを入れていて、切り込みの形は各駅で違ったそう。こんなところにも鉄道の歴史を感じます。
さらに、「スペシャリティ」と「スイート」の客室には、ポーラの最高峰ブランド「POLA B.A」のスキンケアアメニティを用意。
シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ハンドソープ、ボディローションは、大阪のサロン専売メーカー「ハホニコ」のもので統一されています。
38階「スペシャリティ」の客室は、この「スペシャリティ ツイン」(約40平米)のほか、キングベッド1台を配した「スペシャリティ キング」(約40平米)、角部屋にあたる「スペシャリティ コーナー ツイン」「スペシャリティ コーナー キング」(いずれも約57平米)などがあります。
スペシャリティ コーナー ツイン
より絶景を楽しむなら、角部屋の「スペシャリティ コーナー ツイン」「スペシャリティ コーナー キング」がおすすめ。美しい夕日、きらびやかな夜景、さわやかな朝日と、時間帯ごとのダイナミックな景色が2面の窓に広がります。
バスルームからの眺めも素晴らしく、最高にぜいたくなバスタイムを満喫できます。
スペシャリティ スイート キング
そして、最上位カテゴリー「スイート」には、「スペシャリティ スイート キング」「スペシャリティ スイート ツイン」(いずれも約79平米)といった客室タイプが。
リビングとベッドルームは左官アートのボードで仕切られ、大きなウォークインクローゼットもあるので連泊にも最適です。
リビングからもベッドルームからも、大阪駅周辺の高層ビル群をはじめ、客室の向きによって、淀川や大阪湾、生駒(いこま)山、淡路島まで見渡せます。
ベッドルームのとなりには大きなバスタブ付きのバスルームが。カーテンを開けて、夜景を眺めながらバスタイムを楽しむこともできます。
限られた宿泊客のみが利用できる特別なラウンジ「SPECIALTY SALON」
「SPECIALTY SALON(スペシャリティサロン)」は、「スペシャリティ」と「スイート」の宿泊者だけが利用できるエクスクルーシブな空間。ドリンクのサービスや、朝食、軽食、アフタヌーンティー、イブニングカクテル、ナイトキャップと1日5回のフードプレゼンテーションを無料で楽しめるほか、こちらでチェックインとチェックアウトもできます。
大阪ステーションホテルは、総支配人がフレンチのシェフで系列ホテルの総料理長を歴任した経歴を持つことから、並々ならぬ食へのこだわりが。そのため、このサロンでも館内のレストランでも、美食と絶景を存分に堪能できます。
チェックイン後、さっそくアフタヌーンティーを
15:00~17:00のアフタヌーンティータイムは、ガトーオペラやロールケーキ、フィナンシェやマドレーヌなどの焼き菓子、自家製のクロワッサン、自由にトッピングできる季節のフルーツパフェなどが並びます。
ドリンクは「マリアージュフレール」の紅茶やコーヒーのほか、シャンパンやビールなど、アルコールも充実。ドリンクは終日用意されているので、1日中シャンパンを楽しむぜいたくも叶います。
イブニングカクテルはこだわりのメニューがずらり
続いて、17:00~19:00のイブニングカクテルタイムには、帆立貝のグリルや鮑のコンフィ、オマールブルーのグラタン、文政6(1823)年創業の大阪の老舗「大源味噌」のみそを使った牛タンシチュー、サラダなど、こだわり抜いたオードブルがブッフェ台を彩ります。
加えて、ホットメニュー4種類も好きなだけオーダー可能。特に、大阪名物の肉吸いをぜいたくにアレンジしたローストビーフの肉吸いは見逃せません。
からすみ蕎麦は、からすみの絶妙な塩味と深い旨味が、のど越しの良い蕎麦とベストマッチ。日本酒との相性も良さそうです。
黒毛和牛のステーキは、そのやわらかさや甘みを感じられる一品。岩塩とわさびでシンプルにいただきます。
そして、オマール海老とトリュフのラーメンは濃厚なだしが口いっぱいに広がり、トリュフの香りも豊かで、最高にぜいたくな気分に浸れます。
また、バーカウンターでは好みに応じてカクテルを作ってもらうことも。この日は、それぞれ朝日と夕日をイメージした鮮やかなカクテルを作ってもらいました。お酒が苦手な人には、ノンアルコールのモクテルも用意されています。
大都会の夜景とお酒を楽しむナイトキャップ
19:00~21:00のナイトキャップの時間には、オリーブやナッツなどのおつまみとドリンクを楽しめます。ドリンク片手にきらびやかな夜景を見下ろすのも、スペシャリティサロン利用者だけの特権です。
SPECIALTY SALON
- 朝食
- 7:00~10:30(L.O.10:00)
- 軽食
- 10:30~15:00
- アフタヌーンティー
- 15:00~17:00
- イブニングカクテル
- 17:00~19:00
- ナイトキャップ
- 19:00~21:00(L.O.20:30)
※17:00以降、12歳以下は利用不可
サウナ付きの大浴場「OFURO」でリフレッシュ
大阪ステーションホテルの30階には大浴場があります。その名も「OFURO(おふろ)」。こちらも「スペシャリティ」と「スイート」の宿泊客のみが利用できる施設です。
「深海」がテーマの静寂に包まれた空間には、広々とした湯船、ドライサウナと水風呂、クールダウン用のスペースが備わっています。
さらに、湯上がり処「YUAGARI ROOM」も併設。からだにうれしいユーグレナのドリンクやノンアルコールビール、ナッツやドライフルーツなどを自由にいただけます。
なかには、L.A.生まれのマインドフルネスドリンクや、コンゴ民主共和国に育つキナの木をはじめ、世界中から厳選した植物由来の成分で作ったトニックウォーターなど、なかなかお目にかかれないドリンクも。
ターンダウンサービスで客室の就寝準備を整えてくれている間、「OFURO」でのんびり過ごすのもおすすめです。
大浴場「OFURO」
- 営業時間
- 7:00~22:00(最終受付21:00)
※17:00以降、12歳以下は利用不可
翌朝、絶景を見渡すジムでからだを目覚めさせる
ぐっすり眠った翌日は、すべての宿泊客が24時間無料で利用できる30階のジムへ。ウェイトマシンやエクササイズバイクなど、最新鋭のマシンがそろいます。
大きな窓いっぱいに広がる朝の大阪の街を眺めながら、からだを動かすと、よりリフレッシュできそう。
「SPECIALTY SALON」でぜいたくな朝食を堪能
からだを動かしたあとは、スペシャリティサロンで朝食を。ブッフェ台にはクロワッサン、パン・オ・ショコラ、パンスイスなど、ペストリーシェフが焼く自家製のパンが並びます。
シャンパンをはじめとしたアルコール類も並ぶので、ぜいたくに“朝シャン”を楽しむことも。
平飼い卵とトリュフのスクランブルエッグや鰻の飯蒸しなど、ワンランク上のメニューがそろうのも、食にこだわる大阪ステーションホテルだからこそ。
加えて、オーダーを受けてから作るメニューも3種類用意されています。注目は、贅をつくした雲丹といくらの丼。
オーブンでじっくりと焼き上げた国産牛のロティ、ツルツルののど越しが朝にピッタリの茶そばも。これらを好きなだけオーダーできるなんてうれしいかぎり。
チェックアウトは12:00と遅めなので、朝食のあと、もう一度「OFURO」へ向かうもよし、朝食はパスして10:30から提供される軽食タイムでブランチをとるもよし、大阪駅直結なので出発ギリギリまで眠るもよし、大阪ステーションホテルなら思い思いの過ごし方が叶います。
豪華列車の食堂車をイメージしたダイニングの朝食ブッフェ
今回はスペシャリティサロンで朝食をいただきましたが、「スペシャリティ」と「スイート」以外に宿泊の場合は、ロビーフロア29階のオールデイダイニング「THE-MOMENT GRILL&DINING(ザ モーメント グリル&ダイニング)」へ。
「豪華列車の食堂車」をコンセプトにした空間で、圧倒的な品数の朝食ブッフェを楽しめます。
ペストリーシェフによる焼きたてのパン類やフレンチトースト、彩り鮮やかなサラダ、種類豊富なドレッシングなど、ずらりと並ぶ見目麗しいメニューに心が躍ります。
なかでも高い人気を誇るのが、職人が握るお寿司。朝から最高にぜいたくな気分に浸れます。
目の前で切り分けてくれるローストビーフも見逃せません。
オーダーを受けてから作るオムレツは、平飼い卵とフランス・ブルターニュ地方の「ボルディエバター」を使うこだわりよう。
大阪の「まるしん豆腐」の冷奴や納豆、京野菜「万願寺とうがらし」の煮もの、兵庫・京都で無薬飼料で育った「但馬の味どり」の炭火焼き、京つけものなど、関西の食も存分に味わえます。
旬のフルーツやタルト、自由にトッピングできるパフェ、しぼりたてモンブランなど、デザートまで大満足のラインナップ。種類の豊富さはもちろん、丁寧に作られたことが伝わる料理の数々は、口に運ぶたびに笑みがこぼれます。
また、ザ モーメント グリル&ダイニングは、朝食だけでなく、ランチやディナーもブッフェスタイルで提供しています。
THE-MOMENT GRILL&DINING
- 朝食ブッフェ
- 6:30~10:00
- ランチブッフェ
- 11:30~14:30
- ディナーブッフェ
- 17:30~20:30
「THE LOBBY LOUNGE」は新たなデートスポットとしても注目
「ザ モーメント グリル&ダイニング」のとなりには「THE LOBBY LOUNGE(ザ ロビーラウンジ)」も。初代大阪駅の切妻屋根をモチーフにした「光の屋根」と、線路に見立てたリングアートが印象的なラウンジで、ゆったりとした時間を過ごせます。
特に話題を集めているのがアフタヌーンティー。そのとき一番おいしいフルーツを主役に、愛らしいスイーツや美しく盛り付けられたパフェと、フランス王室に認められた名門ティーブランド「ダマンフレール」の紅茶をフリーフローで楽しめます。
アフタヌーンティーは昼だけでなく夜の部も人気。バーテンダーが目の前で作るカクテルやモクテル、ワインやビールなどの飲み放題も含まれ、感動的なサンセットやうっとりする夜景とともに楽しめます。
そして、アフタヌーンティーだけでなく、ドリンク1杯から気軽に使えるのもうれしいところ。友人と季節のパフェを味わうもよし、サードプレイスとしてちょっと1杯立ち寄るもよし、ロマンチックな雰囲気のなかデートに訪れるのもよし。さまざまなシーンで活躍してくれそうです。
THE LOBBY LOUNGE
- 営業時間
- 11:00~22:00(L.O.21:30)
- アフタヌーンティー
- 【昼】12:00~14:30、15:00~17:30、10,000円
【夜】19:00~21:30、12,000円
※L.O.は各回終了30分前
※3日前正午までに要予約
今から150年前、新時代到来のランドマークとして明治の人々を魅了した初代の大阪駅。その開業の地で新たな歴史を刻み始めた令和のラグジュアリーホテル「大阪ステーションホテル」。大阪の中心にありながら、静かで上質な時間が流れています。鉄道の歴史や都会の大パノラマ、こだわりの美食に浸る極上のホテルステイを体験してみませんか。
THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection
- 住所
- 大阪府大阪市北区梅田3-2-2
- 総部屋数
- 418室
- アクセス
- JR「大阪」駅 西口直結
- 駐車場
- あり(4,000円/泊・JPタワー大阪駐車場)
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 12:00
※メニューは時期により異なります。また、予告なく変更される場合があります。
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撮影:松井ヒロシ 取材・文:石川知京