宮城県の鳴子温泉に、不思議な温泉が湧いているのをご存知ですか?季節や天候によって湯の色が変化するのです。創業140余年、3つの源泉をかかえる「名湯の宿 鳴子ホテル」で、足湯付きのすてきな客室と温泉を堪能してきました。
東北屈指の湯治場「鳴子温泉郷」とは
鳴子温泉は宮城県大崎市にあり、東鳴子温泉・川渡(かわたび)温泉・中山平(なかやまだいら)温泉・鬼首(おにこうべ)温泉と合わせた、鳴子温泉郷の中心地です。千年を超える歴史があり、東北屈指の湯治場として愛されてきました。2007年には、「旅の手帖」による温泉番付で「東の横綱」に認定されています。
「名湯の宿 鳴子ホテル」までのアクセス
東京からは、東北新幹線で約2時間15分、仙台駅の次の古川駅で下車。そこから陸羽根東線快速に乗り、約40分で最寄りの鳴子温泉駅へ到着。駅前から通りに出て、歩いて鳴子ホテルへ向かいます。
エントランス・ロビー
今回訪れた「名湯の宿 鳴子ホテル」は、最寄りの鳴子温泉駅から徒歩約3分と好アクセス。徒歩の方は、駅側入り口からエレベーターで5階のロビーに上がります。
豪華なロビーの奥にはラウンジやおみやげ売り場があります。広い館内のあちこちに鳴子こけしが飾られているので、こけしファンならぜひ探してみたいところ。
フロントで見つけたラゲッジタグもこけしです!
3つの源泉、お湯の色が変化する源泉かけ流し温泉
鳴子ホテルには、今も「湯守」と呼ばれる温泉の守り人がいます。ベテランの湯守さんにお話を聞いたところ「白いときもあれば、湖のように深いエメラルドグリーンの日もあり、日によってご機嫌が変わるんです」と教えてくれました。色が変化することについては自然現象であるため科学的根拠は不明だそうです。
温泉の湯は、硫黄塩泉、硫酸塩泉、ナトリウム塩化物泉が組み合わさった、源泉かけ流し。特徴的なのが、緑色透明、乳白色、うぐいす色などに変化するお湯の色。温泉の入り口には、今何色かが表示されています。
大浴場檜風呂「玉の湯」と2つの露天風呂
男女入れ替え制なので、一泊で全ての温泉に入ることができます。洗い場が広く開放的。シャンプーなども備え付けられています。透明な湯ですが、入っているうちに肌がつるつるしてきます。「今日だけで3回入った」というお客さんに会いました。
大浴場檜風呂「玉の湯」から露天の浴槽へ。こちらは「青畳石露天風呂」、お湯の色は無色透明でした。硫黄の匂いがするのですがとても上品な香りです。これも3種の源泉の妙でしょうか。
こちらは「高野槇(こうやまき)桶露天風呂」。かすかに青みがかった乳白色でした。なるほど色が違います、おもしろい!
大浴場「芭蕉の湯」と露天風呂
もうひとつの大浴場「芭蕉の湯」は、玉の湯よりさらに広大です。入り口に表示された湯の色は白緑(びゃくろく)色でした。大きな浴槽の一部に、背中をもたれて浸かれるすわり湯があります。
芭蕉の湯の露天風呂。内湯と微妙に色が違うように見えました。浸かると細かな湯の花が見えます。さすが本格温泉です。湯から上がると肩や腰のコリが楽になった気がします。
貸切風呂「木華子(こけし)の湯」
貸切風呂「木華子(こけし)の湯」は、事前予約はもちろん宿泊当日の予約も可能です。家族やグループで借りられ、1組50分。広くて驚きます、最大15名で利用可能で、2〜4名の利用は2,200円、5〜15名での利用は4,400円です。
眺めの良い足湯付き客室でくつろぐ
鳴子ホテルは青葉館と紅葉館の2つの棟から成り、さまざまなお部屋タイプがありますが、今回は紅葉館の「露天足湯付客室」をご紹介します。お部屋のバルコニーに足湯があるんです!
窓が大きく、町と山々を見渡せる開放感あふれる眺望。こちらは畳とフローリングの両方でくつろげるので、親子3世代で訪れるのもおすすめです。
二間続きで奥にもう一部屋。茶室の畳部屋があります。
お茶請けの「栗さらさ」は、みやげ処でも購入できる人気のお菓子。横に置かれたかわいらしい折り鶴は、歓迎の気持ちを込めてスタッフさんが一羽一羽折っているそうです。
選べるようにサイズ違いの浴衣が置かれています。大浴場への行き来に便利な湯籠とタオル。また、お部屋の洗面台に歯ブラシやコットン、メイク落としや洗顔フォーム、化粧水も用意されています。
早速、浴衣に着替えて足湯を体験。大浴場と同じ泉質で、足もとがじんわりと温まってきます。そして、鳴子ホテルの浴衣はかわいらしいこけし柄。
こちらは別の足湯付き客室で、大きなベッドが並ぶ洋室タイプ。友だち同士はもちろん、夫婦の記念日などに訪れるのもいいですね。
宮城の旬食材を目の前で調理してくれる豪華バイキング
レストランは、広いのでゆったりと食事ができます。できたての料理がずらりと並び、料理人が目の前で調理してくれる活気あふれるライブキッチン。
人気の大海老の備長炭焼き。お肉やお寿司も目の前で調理してくれるので、眺めているのも楽しいです。
人気の鮎の姿焼きは、ばっけ味噌でいただきます。春を感じる山菜五目ちらしに、注文を受けてから揚げてくれる天ぷら。横綱・白鵬関の宮城野部屋直伝「なる子ちゃんこ鍋」は、認定店だけが提供を許された逸品。
鳴子の地酒もありますよ。冷と燗、両方選べます。お寿司や郷土料理までお酒に合うお料理と一緒にいかがですか。米どころ宮城のお酒でぜひ一献。
「ホタテのパイ包み」は女性人気No.1
こちらは、ホタテがごろっと入ったパイ包み。バターが香るサクサクのパイを割ると、中からクリーミーなソースとホタテがこんにちは!たくさんあるメニューのなかでも特に女性に人気です。
鯛のカルパッチョやサラダが新鮮で、ヘルシー志向の方にもおすすめです。また、焼き立てのお肉やピザ、揚げ物など、子どもが食べられるメニューの種類が多くて印象的でした。
デザートも豊富で、一番人気は手づくりプリン。ひとつずつが小さめなので何個も食べられちゃいます!ケーキやマカロンなどの洋菓子のほかにお団子など和スイーツもありました。
「春なら山菜や菜の花、鯛や白魚など、季節をイメージした料理をご提供しています。新米の時期には食べ比べなどもやりますよ」
と、調理部長の山内さん。鳴子ホテルでは、県内各地から吟味した旬の食材を仕入れているため、夕食だけで宮城の味覚を一度に堪能できます。
こけ女必見、2,000体のこけし「松宮コレクション」
こけしの産地として知られる鳴子。紅葉館3階には、東北各地のこけし約2,000体を集めた松宮コレクションが展示され、無料で鑑賞できます。この「松宮」とは、こけしのコレクターである松宮さんより寄贈されたことに由来しています。
地元の鳴子系、鳴子の歴代名工人の作品をはじめ、福島県の土湯系、青森の津軽系などに分類されているので、各地の特徴の違いがよく分かります。
「おみやげ処」で人気のおみやげをチェック!
フロントのすぐ近くにおみやげ売り場があります。お店の方におすすめ商品を教えてもらいました。
人気ナンバーワンの「啼子(なきこ)そば」は、鳴子ホテルのオリジナル商品。茹でるとコシがあってつるつるの食感です(3人前/680円)。
「ゆきむすび」(2kg/1,540円)は、ここ鳴子産のお米。もっちりとした食感のこちらのお米は、夕食のご飯として登場することもあります。生産量が少ないので県外にはあまり出回らないとのこと。
工芸品のコーナーには大小さまざまな大きさの鳴子こけしと、鳴子こけしにちなんだ商品がずらり。
朝食もバイキングで和洋充実のメニュー
朝食も昨夜と同じレストランでいただきます。新鮮なサラダに卵、ヨーグルトやパンケーキ、香ばしいパンと種類が豊富。小さめにつくってあるので何種類も食べられるのがうれしいです! お料理が評判の鳴子ホテル、この細やかな気遣いはさすがです。
和食も充実しています。昨夜の豪華なディナーとはまた違った、里山の素朴さを感じるようなおかずで、どれも優しい味にほっとします。温泉卵ははずせないですね。お雑煮とあんこ餅はつきたてもっちもちです。
鳴子ホテル名物、大女将の手づくり餅
朝食の名物は、御歳92歳の大女将手づくりのお餅。大女将がみずから、あんこ餅を配膳しています。常連さんが足を止めてうれしそうに声を掛ける姿や、スタッフさんたちまで微笑んで見つめる姿が印象的でした。お餅もおいしいですが、本当の名物は大女将かもしれないな、とほっこりした朝食でした。
おもてなしに癒やされる不思議な温泉宿
おいしい料理と名湯を堪能できる鳴子ホテル。湯治宿の歴史とともに、おもてなしの心も受け継がれてきたのでしょう、優しさのにじみ出るような接客にも癒やされました。お客さんが喜ぶとスタッフも一緒に喜んでくれて、滞在をより楽しく豊かなものにしてくれます。
天候や季節で色が変わる不思議な湯も、今度は何色だろうかと気になって何度も入りたくなります。どんな色に出会えるか、皆さんもぜひその目で確かめに行ってみませんか。
取材・写真・文/Junko Saito