名古屋駅から車で約40分。ジブリファン憧れの「ジブリパーク」から車で約15分の山奥に、ぽつんと佇む温泉旅館「しあわせ隠れ里 猿投(さなげ)温泉 癒しの宿 金泉閣」があります。ここは日本で7%しか出ない「三大希少泉質」の1つ「ラドン泉」が飲める、全国的にもめずらしい施設。療養効果も高いことから、飲用温泉ガイドブック『医者がすすめる続!“奇跡”の温泉』でも紹介されるほど。
そんな貴重な泉質はそのままに、2023年7月、モダンな温泉旅館へとリニューアル。温泉水を、飲んで、吸って、浸かれる、鬼に金棒級の湯治力を持つ宿へと生まれ変わりました。今回は、温泉ソムリエマスター兼温泉健康指導士の資格を持つ筆者が、その魅力と楽しみ方をたっぷりとご紹介します。
「癒しの宿 金泉閣」へのアクセス
「癒しの宿 金泉閣」があるのは、トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市。名古屋駅からだと車で約40分。猿投グリーンロード「加納IC」より約5分、2022年にオープンしたジブリパークから車で約15分の近さです。
車のない人なら、猿投温泉への無料送迎バスを使うと便利。リニューアルオープン後は、名古屋市営地下鉄・愛知高速交通「藤が丘駅」からの定期運行便に加えて、金山や岡崎、小牧などの予約便も運行をスタート。これまでより、ぐんと猿投温泉へ行きやすくなりました。
無料駐車場に車を停めて、館内へ。チェックインを済ませると、落ち着いた和モダンのロビーへ案内されます。
ウェルカムドリンクで出されるのは、愛知県西尾市の抹茶。冬はホットで、夏は冷茶で提供されます。このお茶が、コクがしっかりと出ており、おいしい!上品な甘さの落雁(らくがん)との相性も抜群です。
ラドン温泉とことん味わえる温泉ドリンクバー
何よりうれしいのが、1階にラドン泉を飲める「温泉ドリンクバー」があること。実は、「この温泉は飲んでも大丈夫」という飲泉許可を愛知県で正式に受けたのは、猿投温泉が初めて。
そもそも日本では飲泉許可が出にくく、飲泉自体がなかなかできません。だから、飲泉所が館内にあるのはすごいことなのです!日本での湧出量が少ないラドン泉を飲めるという点でも、「金泉閣」は貴重な温泉宿といえます。
こちらが、ピュアな源泉をそのまま飲めるコーナー。蛇口をひねれば、地下約1,200mからこんこんと湧き出す温泉を飲むことができます。
猿投温泉の温泉水は「金泉の水」というネーミングで販売されていますが、「金泉閣」の水は無料で飲み放題!かなり太っ腹です。気になるお味は、無味無臭。軟水のため、口当たりがやわらかく、まろやかな味わいです。
源泉のほかに、コーヒーや紅茶、ハーブティーなども無料で飲み放題。アイスコーヒーで使用する氷も、もちろん温泉水です。
ただし、一気に大量にがぶがぶ飲むことはせず、ゆっくりと噛みしめるように体の中へ取り込むようにしましょう。
1階には、無料で好きな柄を選べる色浴衣コーナーもあります。女男ともに用意されているので、カップルの方はぜひ立ち寄ってみてくださいね。
温泉好きの憧れが詰まった限定1室「スイート客室」
客室は、ぜんぶで10室。今回のリニューアルで新設されたお部屋を順番にご紹介していきましょう。
まずこちらは、半露天風呂がついた限定1室の「スイート客室」。広々とした開放感がある、和モダンなお部屋です。
旅の疲れを癒やすリビングスペースには、飛騨家具のソファや北海道旭川の家具メーカーカンディハウスのセンターテーブルが。木のぬくもりや佇まいに、ほっと癒やされます。
お部屋の浴槽は石造り。ここに二酸化炭素泉、含鉄泉と並ぶ「三大希少泉質」の1つ、ラドン泉(放射能泉)がそそがれています。
ラドン泉は「万能の湯」と言われるほど効能豊か。免疫力を高めてくれて、自然治癒力を上げてくれるパワフルな泉質です。温泉好きにとって、この名湯を独り占めできるお部屋は、夢のよう!
さらに、サービスも至れり尽くせり。ペットボトルの飲める温泉水、ミネラルウォーター、缶ビールが無料で付いてきます。お風呂上がりに、即キンキンに冷えたビールが飲みたい!も叶いますよ。
また、客室には美濃焼きの急須・湯呑みなどの茶器も用意。ティータイムも、おしゃれな器でリラックスできます。
パウダールームには、ポーラの雪肌精シリーズの基礎化粧品のほか、マーガレット・ジョセフィンのヘアトニックやシェーブローション、ヘアリキッドを完備。男女どちららも満足できる、豊富なアメニティと細やかな気配りが散りばめられています。
うれしいことに、宿泊者は3つある異なる趣の貸切風呂を、1回(50分間)無料で利用できます。その予約を、テレビモニターから簡単にできるにも便利なポイント。
物語の主人公になれる3タイプの客室
そして、3種類あるラグジュアリールームは、かなりエッジがきいた空間になっています。
ラグジュアリーC「楽」は、アンティークな雰囲気たっぷり。角部屋に位置し、お部屋が明るいのも魅力です。この部屋に置かれている雑貨類も、猫だったり、自転車だったり。ジブリっぽい世界観に浸ってみるのもいいでしょう。
続いて、ラグジュアリーB「城」は、西洋のお城がモチーフのお部屋。YouTubeで暖炉の映像を映せば、とある物語の世界へ没入できます。まるで、そのまま部屋が動き出しそうな雰囲気がありませんか?
さらに、ラグジュアリーA「千」は、豪華絢爛な湯屋がテーマ。ゴロンと寝転ぶと、天井に見えるかわいい格子の花柄が気分を上げてくれます。
今回ご紹介したラグジュアリールームの「千」と「城」は、4名まで宿泊可能。「楽」は3名まで泊まれます。ジブリ好きのファミリーや女子会に最適ですよ!
温泉水でセルフロウリュができる大浴場
さて、お部屋でひと息ついたら、大浴場へ向かいます。道すがら、足元を照らしているのは、豊田市足助特産の行灯「たんころりん」。キュートなネーミングの「たんころりん」とは、竹かごと和紙でできた円筒形の行灯。ふわっとやわらかな光が情緒を醸し出し、歩いているだけでワクワクしてきます。
大浴場は2つあり、朝・夜で男女が入れ替わります。宿泊すると両方楽しめるので、じっくり温泉を入り比べてみてくださいね。
効率よくラドンを摂取するなら、半身浴はNG。というのも、ラドンは空気より重く、浴槽にはられた温泉の少し上にたまりやすい性質があります。肩までしっかり浸かりながら、顔を温泉の方へ向けて呼吸しながら入るのがベスト。
個人的な差はありますが、筆者はラドン泉を取り入れると、細胞が刺激されて血の巡りがよくなり、顔色がワントーン明るくなります。さらに、リフレッシュ効果が高いので、夜はぐっすり熟睡できる……と良いこと尽くし。
これだけでも十分すばらしいのですが、実は一番のおすすめはサウナ。温泉水に含まれるラドンは、時間の経過とともに、空気中に拡散してしまいます。そのため、最大限効果を発揮させいたいなら「吸引」するのが一番。
大浴場には、コンパクトながらも、サウナ室を完備しています。中にはサウナストーンが置かれていて、セルフでロウリュができます。
やり方はとっても簡単。まずはサウナ室の横にある蛇口をひねり、源泉を桶の中へ入れます。もちろん、この温泉水も飲むことができます!
そんな贅沢な温泉水入りの桶と柄杓を持ったら、サウナ室の中へ。あとは、好きなタイミングでサウナストーンにゆっくりと、味わうように温泉水をかけます。
やがて、ジュゥ……という音とともに、ラドン泉の熱気が体中を包み込む至福の時間が訪れます。人によっては2度3度と、温泉水をかけますが、それはお好みで。サウナ室では、深呼吸しながら、思い切りラドンを吸い込むのがポイントです。
汗をたっぷりかいたら、水風呂の代わりに、ぜひ約22℃の源泉を頭からかけてみてください。ヒヤッとして、気持ちよくて、これがたまらない!
ただし、大浴場には露天風呂がありません。屋上に設けられた貸切露天風呂で、とっておきの開放感を味わいましょう。
宿泊者は、3種類の貸切露天風呂「アルタイル」「シリウス」「ジェミニ」の中から、好きなものを1つ選び、50分間無料で利用できます。それぞれ星座の名前がつけられた、こちらの貸切風呂。その名前どおり、夜は幻想的な月やキラキラとまたたく無数の星を眺めながら、ゆったりと入浴できます。
どの貸切風呂にしようか迷ったら、「ジェミニ」がおすすめ。このお風呂だけ、唯一、細かいシュワシュワの気泡が楽しめる人工炭酸泉仕様になっています。温泉と気泡の相乗効果で、気分爽快&血行促進!体の芯までぽかぽかと温まり、癒やされますよ。
温泉水たっぷりの会席料理を味わう
さて、お楽しみの夕食の時間。お食事場所は客室タイプによって2つに分けられており、「スイート」「ラグジュアリー」「デラックス」に宿泊の方は、リニューアルされた和モダンの半個室でいただきます。
この宿のすごいところは、すべて温泉水で調理していること。煮たり、蒸したり、といった調理はもちろんのこと、野菜を洗う下ごしらえさえも温泉水で行っています。
まずは、立体的な箱をパカッと開き、目と舌で楽しむ前菜からスタート。小鉢の中には、地元の川でとれた鮎の二色焼きや手づくりのお豆腐などが入っています。
近海でとれた新鮮な魚介類をお刺身の盛り合わせに。厳選された旬の「今、最高においしい!」を味わえます。
こちらは、自家製の玉子豆腐の上に、枝豆饅頭をのせ、じゅんさいを散らした椀物。温泉水を使うことで、素材それぞれのうま味が引き出されています。
この日のメインは「豊田産 三州豚の温泉蒸し」。麦を中心としたこだわりの餌で育った三州豚は、噛むほどにうま味を増すジューシーなおいしさ!さらに、温泉水の蒸し効果で、余分な脂が落とされてさっぱりとした仕上がりに。しっとりやわらかなお肉と、シャキシャキ食感の野菜とのバランスが絶妙でした!
お腹がいっぱいになったら、ぜひ夜のお散歩を楽しんでみてください。夜は提灯や和傘の灯りが、温泉街をあたたかく包み込みます。ぐるっと一周しても、約15分程度。さくっと非日常トリップできて、ワクワクが止まりません。
温泉水を使った朝食で、朝から元気に
一夜明けて、朝食タイム。里の恵み、山の恵みが中心の朝食は、しみじみとおいしいものばかり。朝ごはんにも、夕食と同じく温泉水がたっぷりと使われています。
お宿自慢の「温泉湯豆腐」で、ゆっくりと内臓を目覚めさせて。ふぅふぅと冷ましながら、温泉水仕込みの湯豆腐をいただくのが、この宿ならではの幸せです。
最後に、「しあわせ隠れ里 猿投温泉 癒しの宿 金泉閣」の広報・野中さんに、ツウな過ごし方を教えていただきました。
「今回のリニューアルを受けて、チェックアウトの時間が10時から11時に延長されました。ぜひゆっくりと、温泉と食事と館内の雰囲気を楽しんでもらえたらうれしいです。平日は9時半、土日祝は8時から、猿投温泉内にある日帰り入浴施設『金泉の湯』が営業を開始します。そちらは温泉水を使ったグルメが充実しています。夏は温泉水100%のかき氷がおすすめですよ」とのこと。
確かに、日帰り入浴施設と合わせて訪れれば、温泉好き以外の人も満足できる、リフレッシュ旅ができそうですね!
「金泉閣」から歩いて数分の場所には、落差約10mの鈴ヶ滝があり、川のせせらぎが真夏の暑さを忘れさせてくれます。秋になると紅葉が真っ赤に色づき、この辺りは本当にきれい!
また滝のすぐ近くには、不動明王の中で最も力を持っており、参拝者を強力なパワーで守ってくれる「鈴ヶ滝不動明王」も鎮座しています。ラドン泉で体の内側からきれいになり、パワースポットを巡って開運のご利益をいただく。そんな旅もおすすめですよ。
しあわせ隠れ里 猿投温泉 癒しの宿 金泉閣
- 住所
- 愛知県豊田市加納町馬道通21
- チェックイン
- 15:00 (最終チェックイン:21:00)
- チェックアウト
- 11:00
- 総部屋数
- 10室
- 駐車場
- あり(無料)
取材・写真・文/安藤美紀