カメラマンが教える絶景&撮影テクニック~世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」~

熊野古道

世界遺産・紀伊山地に行ったら撮りたい絶景とテクニックを聞きました!

全国各地の絶景とその撮影テクニックをプロカメラマンに聞くシリーズ。3回目は、風景写真家の高橋智裕さんが、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の絶景スポットと撮影法を紹介します。熊野古道に行ってみたい、歩いてみたいと考えている人や、絶景を撮影するのが大好きという人は、ぜひ参考にしてください!

 

写真家
高橋 智裕(たかはし ともひろ)さん

1973年4月生まれ、福島県いわき市出身。現在、長野県上田市在住。JPU 協同組合日本写真家ユニオン理事/JSPA 日本風景写真家協会会員。内閣官房・内閣府主催 伊勢志摩サミットフォトコンテストで優秀賞を受賞し、首相官邸にて表彰を受ける。「写真」は「写心」の気持ちを忘れることなく、自然との共存、自然からの声をテーマに、情景的な風景を求めて全国をまわり、作品作りに尽力している。防災啓発活動をする「防災ジャーナリスト」としての顔も持つ。

高橋 智裕さん

 

おすすめの絶景スポット【1】熊野古道・大雲取越「亡者の出会い」

熊野古道

三重県、奈良県、和歌山県の3県にまたがる紀伊山地は、古くから神々が鎮まる特別な地域と考えられ、山岳修行の場となってきました。その結果、「熊野三山(くまのさんざん)」「高野山(こうやさん)」「吉野・大峯(おおみね)」の三つの霊場と、そこへつながる「参詣道」が生まれ、全国から多くの 人々が来訪。2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録され、現在も多くの観光客が訪れています。

参詣道の一つ「熊野古道(熊野参詣道)」最大の難所と言われる大雲取越(おおぐもとりごえ)には、「亡者の出会い」と呼ばれる急な坂道があります。「亡くなった親しい人と出会う」という言い伝えのある山深い場所で、霧がかかると不思議な感じが漂います。現在では直前まで車で行くことも可能です。

この場所を撮影するには、天気の良い日よりも早朝や夕暮れ時の曇天、小雨が降る天気の方が雰囲気が出ておもしろいと思います。

 

熊野古道

撮影するときはホワイトバランスは太陽光にして、全体を冷たい雰囲気に仕上げたいところ。雨上がりや小雨が降る時は霧が出やすく、特にこの場所の持つ情緒溢れる写真を撮ることができるでしょう。

絞りを絞って撮ったり、開いて撮ったりしてみると、同じ場所でも雰囲気の違った写真が撮れるので、絞り値を自分好みの設定にしてみてください。また、古い石畳や、この場所特有の、杉が林立する姿を収めることも忘れずに。

 

おすすめの絶景スポット【2】熊野古道・小雲取越「百間ぐら」

熊野古道

「大雲取越」より緩やかな道「小雲取越(こぐもとりごえ)」の途中には、絶景を楽しめる「百間(ひゃっけん)ぐら」があります。特にここから見る夕景は圧巻。夕焼けに染まる紀伊の山々は、時間が過ぎるのを忘れるくらいの美しさです。ただ、目の前は険しい断崖なので、まちがっても転げ落ちないよう注意。念のため、お地蔵様より先に行くのはやめておきましょう。

 

熊野古道

お地蔵様と山々とのコラボが写真を引き立てます。絞りをf13くらいまで絞ると、太陽から筋を出すことが出来ます。また、空と地上の明暗差が強いので、ハーフNDフィルターを使うと明るさのバランスが取れた写真に仕上がります。お地蔵様のところに立つ木を入れるか入れないかで写真の雰囲気も変わりますので、自分好みに工夫してみてください。

 

熊野古道

詳細
わかやま観光|世界遺産 熊野・熊野古道 - 和歌山県観光連盟

 

おすすめの絶景スポット【3】鬼ヶ城

鬼ヶ城

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部で、三重県熊野市の海岸に位置する「鬼ヶ城(おにがじょう)」も見逃せない絶景スポット。主要道からのアクセスも良く、駐車場も売店もあることから、多くの観光客がひっきりなしに訪れます。

早朝に撮影する場合は、鬼ヶ城の奇岩の中から、太平洋から昇る朝日と岩を入れた朝焼けの写真を狙いましょう。レンズは広い視野を撮りたいので広角レンズを使い、岩間から海と空を入れて撮ります。ホワイトバランスは、朝の凛とした空気感を出すため、太陽光で若干の青みをつけると良いでしょう。

また、海を穏やかに見せたいので、NDフィルターを使ってシャッター速度を落とします。そのために三脚を持参すると便利ですよ。

 

鬼ヶ城

太陽が完全に水平線から昇ったら、今度は海側へ移動して、鬼ヶ城を代表する奇岩に注目してみてください。黄金色に染まった鬼ヶ城を撮影することができますよ。

 

鬼ヶ城

そして、帰りがけにも「映えスポット」があります。途中で振り返ると、また違った鬼ヶ城を撮ることができます。太陽が昇った方向なので、逆光になりますが、その逆光を利用して、岩全体をシルエットにしてみましょう。

中途半端に暗くすると写真がドラマチックにならないので、カメラは思いっきりアンダーにしてみましょう。すると、太陽の光を反射した海や空の青さが際立ちます。

実はこの時、私はスマートフォンで撮影しているのですが、撮った後に「VSCO」という無料の写真加工アプリを使ってフイルム調に仕上げています。スマートフォンで撮った写真はあまり時間をかけて現像したくないので、このアプリはとても便利です。

 

鬼ヶ城

住所
三重県熊野市木本町1835
アクセス
【電車】JR「大泊」駅より徒歩約23分
【車】紀勢自動車道「尾鷲北」ICより約30分
詳細
世界遺産・鬼ヶ城

 

おすすめの絶景スポット【4】熊野本宮大社

熊野本宮大社

熊野三山の一つ、「熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)」は、熊野古道を回る上で中心的な役割を果たしています。主祭神は「家津美御子大神(スサノオノミコト)」。平安時代から皇族や貴族、上皇までもが何度も参拝に訪れた神社です。

何度も熊野川の氾濫に遭い、明治時代に現在の場所に移築されました。「八咫烏(やたがらす)」は、熊野三山の「導きの神鳥」として信仰されていて、日本サッカー協会のシンボルにもなっています。

 

熊野本宮大社

この神社の本殿は残念ながら撮影禁止となっているため、本殿以外の撮影スポットを見つけてください。本殿へ登っていく階段などがおすすめです。

 

熊野本宮大社

熊野本宮大社はかつて、熊野川・音無川・岩田川が合流する「大斎原(おおゆのはら)」と呼ばれる中洲にありました。現在、熊野本宮大社がある場所からは500mほど離れていますが、高さ約34m、幅約42mの大鳥居があり、人気のスポットです。背景に山々を入れて撮影するのがおすすめです。

 

熊野本宮大社

住所
和歌山県田辺市本宮町本宮1110
アクセス
【車】紀勢自動車道「上富田」ICより約75分
詳細
熊野本宮大社

 

地元のブランド牛を使ったグルメを堪能!

杜の郷 みるりいな
杜の郷 みるりいな

旅にはおいしい食事が欠かせません。熊野本宮大社から南へ車で数分走った熊野川沿いにあるのが、山小屋風の造りの「杜の郷 みるりいな」。こちらは、熊野牛を使った料理をリーズナブルに楽しめるお店です。

 

杜の郷 みるりいな

店内は、ここがアンティーク雑貨店と見間違うほど、かわいらしくおしゃれな雑貨で彩られています。

 

杜の郷 みるりいな

人気の「熊野牛すじのオムハヤシライス」はとても濃厚で、トロトロに煮込まれた熊野牛のすじ肉がたっぷり。味もさることながら、写真映えする盛り付けです。

店内は熊野川側の席が大きなガラス窓になっていて、川を眺めながら食事を楽しめますが、スマホで料理を撮りたいと思っている人にも、その席がおすすめです。窓から差し込んでくる自然光がやわらかく、料理を優しい光で包むことができます。料理に近づき過ぎると光を遮ってしまい、影になってしまうので、スマートフォンの望遠機能を使い、少し離れて窓の方に向かって撮影すると良いでしょう。

その際、逆光になるので、露出をプラス側にすることを忘れずに。料理は暗い写真よりも明るい写真の方がおいしそうに見えますし、映えますよ。

 

杜の郷 みるりいな

住所
和歌山県田辺市本宮町大津荷5-3
アクセス
【車】紀勢自動車道「上富田」ICより約60分

 

撮影・文/高橋 智裕

 

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