「大切な時間を、大切な方と。」というコンセプトを持つ「奥武雄温泉 風の森」は、2名客限定の大人の宿。「風の森」という名の通り喧騒を離れた森の中に佇み、約5,500坪の広大な敷地に11室のみという贅沢な造りです。全室離れのお部屋はそれぞれに趣が異なり、露天風呂も備えたプライベート感たっぷりの空間。美しい自然とこだわりのインテリアが非日常を感じさせる「風の森」で、ゆったりとした時間を過ごした1泊2日の滞在記をご紹介します。
目次
- ・アクセス、チェックイン
- ・客室
- ・バーラウンジ
- ・夕食
- ・夜の過ごし方
- ・朝食
- ・お土産購入、チェックアウト
アクセス、チェックイン
北欧と和が融合したモダンなロビー
「風の森」は嬉野温泉と武雄温泉という全国的に有名な2つの温泉地の間に位置する、知る人ぞ知るおこもり宿。アクセスはJR博多駅から特急リレーかもめに乗って約1時間、武雄温泉駅で西九州新幹線に乗り換えて約5分で嬉野温泉駅へ。そこからタクシーを利用して約10分で到着します。
電車を乗り換えずに武雄温泉駅からタクシーを利用するなら、所要時間は20分ほど。車の場合は長崎自動車道の嬉野ICから約3分、西九州自動車道の武雄南ICからは約5分です。
まずは母屋に入り、レセプションカウンターでチェックイン。「北欧と和」をテーマにしたインテリアは、モダンでありながらほっと落ち着くような温もりに包まれています。カウンターの後ろでは、デンマークのオーディオ・ビジュアルブランド「Bang & Olufsen(バング&オルフセン)」のヴィンテージCDプレーヤーが存在感を放ち、そこから静かに流れるジャズがリラックスした気分にさせてくれました。
こちらのカウンターや隣接するロビーをはじめ、館内にはたくさんのデザイナーズチェアが置かれていますが、どれもオーナーが収集した貴重な物。空間づくりへのこだわりが伝わってきます。
ウェルカムドリンクでいただいたのは、びわ紅茶。お隣の長崎県産びわの皮を使ったもので、ふんわりと甘くフルーティーな香りが口の中に広がります。
客室
約5,500坪の広大な敷地に客室は11室のみ。すべてプライベート感を大切にした離れのお部屋で、母屋から数百メートル離れた山の上に位置しています。そのため、移動はスタッフの運転するカートで。アトラクションに乗っているかのようなワクワクした気持ちで竹林の中を進み、お部屋へと向かいました。
おこもり感満載の「天 -ten-」
11の客室のうち4部屋は2017年に新設されたもの。今回は、その中でも特に人気の「天 -ten-」に宿泊しました。ウェンジという美しい暗褐色の木材を使った、シックで隠れ家感のあるお部屋です。
扉を開けて中へ入ると、お部屋の真ん中に置かれたワイドキングサイズのベッドに目を奪われました。シモンズ社の特注品で、通常のキングサイズより大きな200cm×200cmの正方形のベッドです。ポケットコイルマットレスを採用しており、揺れが伝わりにくいので2人一緒でも快適に眠ることができます。シーツも密度の高いパーケール(平織り)で、心地いい感触です。
お部屋の広さは45平米あり、光はあえて間接照明のみ。雰囲気たっぷりの空間は、2人きりの時間を過ごすのにぴったりです。
全開放型の大きな窓を開けると、約100平米ものウッドデッキテラスが広がっています。そこに鎮座するのは、カシの木などの緑に囲まれたヒノキの露天風呂。さっそくお風呂に入り、森の中での湯浴みを楽しみましょう。「天 -ten-」という名前は、天を見上げて広い空と木々の美しさを感じてほしいという思いから付けられたそう。露天風呂に浸かりながら天を仰ぎ、大自然と一体になったような開放感を満喫しました。
温泉の泉質は「絹肌の湯」といわれる純重曹泉。無色透明でトロトロとしていて、肌が絹のようにすべすべに。「まるで化粧水に浸かっているみたい」と評されるのも納得の肌触りです。湧出量が1分間に20リットルと少ないためかけ流しではありませんが、毎日お湯の入れ替えを行い、常に適温に保たれています。
メインルームのほかに茶室をイメージした隠れ和室も。2畳というこぢんまりとした広さで、おこもり感満載です。ここでクッションにもたれかかりながら、ボーっと過ごすのもいいですね。
お部屋のあちこちに、ぬいぐるみやおもちゃなど遊び心のある小物が置かれていることに気付きました。こちらはオーナーが海外を訪れた際などに買い集めたもので、宿泊客にくすっと和んでもらいたいと飾っているそう。表情がユーモラスなぬいぐるみは、ロンドン在住のデザイナーユニット「BOBBY DAZZLER」による古着をリメイクした一点ものです。
機能的で使いやすいパウダールームには、森に面した大きな窓から自然光が差し込みます。アメニティはAesopのハンドソープ、ドクターシーラボのスキンケアセット、DHCのボディ&ハンドミルクとヘアミルク、シャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュを用意。歯ブラシやボディタオル、シャワーキャップといった備品も一通りそろっています。
佐賀の名産品・嬉野茶のエキスが入ったクレンジングフォームと、嬉野の温泉水が配合された化粧水が置かれているのもうれしいですね。
内風呂でも露天風呂と同じ純重曹泉の温泉に浸かることができます。湯船はしっかり足が伸ばせるサイズ。ここから露天風呂のあるデッキテラスに出入り可能です。
パジャマはワンピースタイプと作務衣(さむえ)の2種類。胸元のロゴが赤いものは女性用、青いものは男性用です。作務衣は館内着にもなり、防寒用の羽織とウインドブレーカーも用意されています。
ふとテーブルを見ると、就寝前にも飲めるノンカフェインのルイボスティーが置かれていました。スタッフからの直筆メッセージにおもてなしの心を感じます。
明るくスタイリッシュな「稜 -ryou-」
11の客室それぞれがまったく異なる印象であることも「風の森」の特徴です。「稜 -ryou-」も2017年に生まれた客室で、明るいオーク材を使い、とてもさわやかな雰囲気。縦長の45平米の空間に大きなデスクとワイドキングサイズベッド、ベンチソファが置かれ、その先のテラスにはヒノキの露天風呂。東向きなので、晴れた日には朝日を見ることもできます。
山々の稜線を望むことから名付けられた「稜 -ryou-」。露天風呂からの眺めもすばらしく、朝焼けや黄昏時など時間帯によって表情を変える山々を楽しむことができます。
こちらのお部屋でもかわいらしいアイテムを発見。藁(わら)でできた人形で、オーナーが東南アジアから持ち帰ったものだそうです。
バーラウンジ
名作椅子が並ぶ居心地のいい空間
敷地内の一角にはバーラウンジがあり、宿泊客は自由に利用可能です(オープン時間は15:00~25:00、6:00~11:00)。「分という単位さえ、静かにゆっくり流れる世界を創りたい」というオーナーの思いから「slow minutes」という名前が付けられています。
イタリア産の石材・トラバーチンを壁に用いた重厚感のあるエントランス。そこには「はばたき」をイメージして制作されたオブジェなど、アート作品が飾られています。
内扉を開けると、入口の厳かな雰囲気から一転、陽が差し込む開放感のある空間が広がっています。ここにも名作の椅子や照明などのコレクションが並び、ラグジュアリーでありながらゆったりと安らげる場所に。靴を脱いで利用するため、よりリラックスして過ごせます。外にはもみじや梅、山桜などの木々が茂り、広々としたウッドデッキテラスに出ることも可能です。
2人で自由に楽しんでほしいという思いからスタッフは常駐せず、ドリンクはセルフサービス。コーヒーや紅茶類はフリー、ジュースやアルコール類、スナックは有料での提供となります。
オーナーが設計士とともに造りあげた空間は、工夫や驚きがいっぱい。例えば、壁に掛けられた大きな鏡はわずかに傾斜がついていて、ほかの利用客と鏡越しに目が合わないよう設計されています。そんな細かい仕掛けによって、より一層、居心地のいい場所になっていることを実感します。
夕食
個室で堪能する、地元のごちそうをふんだんに使った創作会席
夕食は母屋に隣接する、全席個室のお食事処でいただきます。席は落ち着いて食事ができる掘りごたつ式。大きな窓からはもみじが茂る庭園が見え、ライトアップも幻想的です。
お料理のテーマは「歓声の上がる料理」で、佐賀の厳選食材を使い、日本酒やワインといったお酒にも合う華やかな創作会席。有田焼や波佐見焼など、近隣で製造された美しい器で提供されます。
取材日の会席【2024年 睦月】
・先付けの盛り合わせ
有田鶏の塩麹漬けと干し柿の白和え
帆立と野菜寄せのテリーヌ 苺ソース
国産鴨ロースト サラダ仕立て
・前菜
黒胡麻熔岩胡麻豆腐 雲丹添え
・海と大地の盛り合わせ
勘八、鮃、縞鯵、本鮪、太刀魚
・安納芋と南瓜のポタージュスープ
・天然鯛 芽キャベツクリーム煮
・佐賀牛 溶岩焼き
・カシューナッツサラダ
・蛸飯
・味噌汁
・旬のフルーツ バニラアイス
九州近海で獲れた新鮮なお魚をお刺身で。カンパチ、ヒラメ、シマアジ、本マグロ、太刀魚の刺身5種。角が立ち、プリプリと弾力のある身は目を見張るおいしさです。大地を表す野菜は佐賀産のズッキーニ2種とロマネスコ。
お皿は有田焼窯元の「やま平窯」でつくられ、特殊な技法で泡のような柄を焼き付けたもの。同じ模様はふたつとない独創的な器が料理を引き立てます。
2種のマッシュルームと佐賀県産の玉ねぎ、ビーフコンソメがベースのポタージュスープ。加える野菜は季節により異なり、この日は安納芋とかぼちゃ。丁寧に裏ごし、なめらかに仕上げています。角切りのズッキーニとパプリカも入り、食感も楽しいスープです。
焼き物は福岡県産の天然鯛。上には長崎県産のカラスミがかかっていて、クリームソースのやさしい味わいとカラスミの塩気が絶妙なハーモニーを奏でます。トマトと芽キャベツが加わり、色合いも美しい!
佐賀牛のステーキは、熱々の溶岩プレートでお好みの焼き加減に仕上げることができます。佐賀産の柚子胡椒や、赤ワインと一緒に煮詰めた特製塩、お醤油のムースなどと一緒に。きれいにサシが入った佐賀牛はとろけるような柔らかさ。
食後のデザートと一緒にいただいたのは、佐賀・嬉野のお茶農家「副島園」の特上煎茶。減農薬で栽培され、甘みの強さが特徴です。こちらはなんと、氷が溶けた水で抽出されたもの。
食事をしている間に一滴ずつ、ぽたり、ぽたりと急須に水が落ちて完成します。時間をかけて抽出された煎茶は渋みがなく、すっきりとした味。低温で淹れるとカフェインの量も少なくなるそうで、夕食の最後にいただくのにぴったりの一杯でした。
夜の過ごし方
時間を気にせずに露天風呂やバーラウンジへ
夕食の後は、カートに乗って再び客室へ。夜の露天風呂は漆黒の闇に包まれ、昼間とはまた違った神秘的な雰囲気です。温度も40~42℃とちょうどよく、いつまでも入っていたい心地よさ。ゆったりと湯浴みを満喫しました。
寝る前には再びバーラウンジを訪れ、軽く一杯。ゆらゆらと揺らめく暖炉の火を眺めながら、穏やかな気持ちで一日を終えました。
朝食
つやつやの炊きたてごはんと美食がずらり
朝ごはんも夕食と同じく、プライベート感のある個室で。時間は9:00、9:30、10:00から選べ、時間になるとスタッフが客室までカートで迎えにきてくれます。朝食が遅めの時間に設定されているのは、「旅行に来たときくらい、ゆっくりと朝寝坊してほしい」という心遣いから。この時間なら、二度寝したり、ゆっくり温泉に浸かってからでも十分間に合いますね。
ごはんは、南部鉄器の羽釜に入った炊きたての「さがびより」。出汁醤油の卵かけごはんで食べる長崎産の太陽卵や長崎・佐世保のワイン仕込みサバ、有明海産の焼きたての海苔など、ごはんに合う特産品がずらりと並びます。
温泉でつくる湯豆腐も好評です。表面はとろけるように柔らかく、中は大豆の味がしっかりと感じられる密度の濃さ。朝から上質な食の数々を堪能しました。
お土産購入、チェックアウト
遅めのチェックアウト時間がうれしい!
チェックアウトの時間も、のんびりできる12:00。まだまだ余裕があるので、母屋にある売店でお土産探し。ウェルカムドリンクとして出されたびわ紅茶や夕食の特上煎茶、客室に備えられていた温泉水の化粧水など、滞在中に提供されたものが多く販売されています。実際に味わったり、試したりしてから購入できるのがうれしいですね。
客室や露天風呂、食事に至るまで、プライベート感を大切にしている「奥武雄温泉 風の森」。「2人の時間をやさしく包む場所でありたい」という思いは、スタッフの細やかな心遣いからも感じられ、大切な人と癒やしのときを過ごすのに最適な場所です。せっかくのお休みは忙しない日常を離れ、自然に囲まれた「風の森」で2人の思い出を積み重ねてみませんか?
奥武雄温泉 風の森
- 住所
- 佐賀県武雄市西川登町小田志17275
- アクセス
- 【車】長崎自動車道嬉野ICから約3分、JR嬉野温泉駅から約6分、JR武雄温泉駅から約18分
- チェックイン
- 15:00
- チェックアウト
- 12:00
- 客室数
- 11室
- 駐車場
- あり/11台(無料※予約不要)
撮影/島田香 取材・文/土田理奈