白浜の海沿いを走っていると、突如現れるお城のような建物。実はこれ、お城ではなく、「ホテル川久(かわきゅう)」なんです。その建築美から、優れた建築作品と設計者に贈られる「村野藤吾賞」を受賞しています。
外観のインパクトもさることながら、日本をはじめ、ヨーロッパ、アフリカ、アジアから超一流の技術を持つ職人やアーティストが集結して手がけた美術館のような館内にも圧倒されます。全室スイートというラグジュアリーな白浜温泉の「ホテル川久」で過ごす1泊2日滞在記をご紹介します。
到着前から圧倒されるヨーロッパの古城のような外観
「ホテル川久」へのアクセスはJR白浜駅から車で約10分(駐車場無料)。白浜駅からは無料の送迎バスも運行しています。南紀白浜空港や「アドベンチャーワールド」へも車で約10分。南紀白浜空港には羽田空港から1日3往復直行便があり、1時間ちょっとの距離なので、東京からもアクセスしやすい立地にあります。
駅や空港から車を走らせていると、突如ひときわ目立つヨーロッパの古城のような「ホテル川久」の建物が現れます。門をくぐり、近づくと、その大きさにも圧倒されます。
館内に入る前に、まず外観をじっくり鑑賞しましょう。屋根には、明・清時代の皇帝が暮らした中国・北京にある紫禁城(しきんじょう、現・故宮博物院)と同じ、瑠璃瓦が使われています。この瓦の色は老中黄(ろうちゅうき)といい、皇帝以外使用することを許されなかったのだとか。長い歴史上、唯一ホテル川久に使うことが許された貴重な瓦が、なんと約47万枚も使われています。
さらに屋根の上では、2羽のうさぎのブロンズ像が出迎えてくれます。イギリス人彫刻家のバリー・フラナガン氏によるもので、幅約6m、高さ約5mと巨大な特注品です。
車寄せから見上げる屋根の大ひさしは、「カリスマ左官」と呼ばれる左官職人・久住章(くすみあきら)氏の作品。高知城にも使用されている土佐漆喰の装飾です。
ギネス世界記録™に認定された金箔天井がお出迎え
館内に足を踏み入れると、また圧巻の光景が! 黄金に輝くエントランスホールのドーム天井は、ヴェルサイユ宮殿の修復も手がけたフランスの金箔職人の作品で、5cm四方の金箔を約19万枚、1枚1枚手作業で貼り付けたものなのだそう。金箔の表面積が「最大の連続して金箔押しされた天井」として、ギネス世界記録™に認定されているんです。
この金箔は、陽の光が差し込んだときに最も美しくロビーを照らす純度の22.5金にこだわっています。ロビー正面の円窓からの陽を受けて輝きを増し、チェックイン時間の15:00~16:00頃が一番見頃だそうです。
天井を支える24本の青い柱は、屋根の大ひさしと同じ、久住章氏によるもの。ウィーンのオペラハウスでも使われている「シュトゥックマルモ」(漆喰大理石)という特殊技法を用い、天然の大理石では出せない美しい青色を実現しています。
なんとこの柱、当時の価格で1本およそ1億円もかかっているのだそう! 24本あるので、柱だけで24億円!! 金箔の天井と合わせて、エントランスホールだけで一体いくらかかっているのか……つい計算したくなります。
シャガールやダリの作品も! ミュージアムのようなロビー
さらに、ロビーにはオーナーのコレクションの一部を展示していて、自由に鑑賞可能。中国の清時代(17~20世紀初頭)の貴重な骨董品も、こんなに近くで見ることができます。
エレベーター付近とロビーラウンジ「ミュゼ」の壁には計4点の壁画が。これは、メトロポリタン美術館の鑑定で2世紀に制作されたものと判明したビザンチンモザイク画。さり気なく壁に埋め込まれていますが、美術的にとても価値が高いものです。
ロビーラウンジに吊り下がっているのは、繊細なヴェネチアンガラスのシャンデリア。このラウンジでは、高さ約6mの窓から田辺湾を眺めながら、ドリンクやスイーツをいただくことができます。
これはオートクチュールコレクションではなく、ホテル創業当時のスタッフのユニフォーム。ホテルのコンセプト「夢の城」を表してデザインされたもの。
2階の回廊にも、横山大観をはじめ、シャガール、ダリなど、美術に詳しくなくても一度は名前を聞いたことがあるような作家の作品がズラリ! 陶板の壁も陶芸家・加藤元男氏による作品です。
シャガールの絵画。お城のようなホテルで名画に囲まれて、貴族のような気分に浸れます。
2階からはぜひロビーの床も眺めてみてください。イタリアのモザイク職人集団が、約1cm角のモザイクタイルを手作業で埋め込んだという、模様が美しいローマンモザイクタイルです。
2階の奥の洋宴会場では、イタリアの画伯・ジョルジオ・チェリベルティによって描かれた巨大な天井画に目を奪われます。テーマは「愛と自由と平和」。このお部屋、かなり広いのですが、端から端までマイクがなくても声が届くように設計されていて、歩く足音も心地よく響き渡ります。
館内のアート鑑賞は、宿泊客は無料ですが、宿泊客でなくても、「川久ミュージアム」として有料で公開しています。白浜を訪れる際は、一流の職人・アーティストが集結して造り上げた唯一無二の作品を楽しみませんか?
川久ミュージアム
- 開館時間
- 10:30~18:00(最終入館17:30)
- 料金
- 一般1,000円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※宿泊者は無料
天然温泉の露天風呂付き客室「プレジデンシャル スパ・スイート」
名作に囲まれた夢のような空間を堪能したら、いよいよお部屋へ。客室はすべて60平米以上の広さを持つスイートルームですが、特におすすめなのが、オーシャンビューの天然温泉露天風呂が付いた「プレジデンシャル スパ・スイート」です。
客室内はゆったりくつろげるリビングスペースとベッドスペースを備え、180~247平米と広々。
ベッドはすべて、眠りにこだわったシモンズ製を導入しています。
部屋の奥のドアを開けると、目の前の海を独り占めできるインフィニティ風呂が! オープンテラスデッキにもソファやデイベットがあり、海からの心地よい風と香りを感じながらゆったりくつろぐことができます。
このオープンデッキは風向きを計算して造られているそうで、多少風が強い日でも影響ありません。天気のいい日は、朝日や白浜のブルーの海を眺めがらバスタイムを楽しめます。
そして、プレジデンシャル スパ・スイートには特別に「サルヴァトーレ フェラガモ」のアメニティを用意。ドライヤーは「髪の美容機器」と称される高級ドライヤー「レプロナイザー」と、さすがは最上級スイートのお部屋です。
ドリンクやスナックを自由に楽しめる専用ラウンジ「インペリアルラウンジ」
ラウンジには、ホテルオリジナルの焼酎から、地ビール、ソムリエセレクションのワイン、コーヒー、スナックまで用意。
ここで使用されているテーブルウェアは、ホテル川久のために作られたオリジナル。高級食器ブランド「NARUMI」やフランス「リモージュ」など、色鮮やかで細かな装飾が美しいものばかりです。
和洋2種類あるラウンジスペース。こんなところでコーヒーやお酒を楽しみながら、のんびり読書などはいかが?
インペリアルラウンジ
- 利用時間
- 15:00~18:00、19:00~22:00
- 対象
- 「プレジデンシャル スパ・スイート」、「プレジデンシャル メゾネット・ジャグジー」宿泊者のみ(無料)
靴を脱いでくつろげる畳敷きの客室「モダンジャパニーズスイート」
畳派におすすめの客室が「モダンジャパニーズスイート」。靴を脱いで上がる畳敷きのお部屋で、ソファやベッドなどを備えた和モダンスタイルです。
21畳の広さを誇るリビングからは、田辺湾と紀伊山脈を一望できます。絶景を眺めながらゴロゴロできるデイベッドも。
メインのベッドはリビングの奥に、別にあります。リビングにもお布団を敷いて、最大6名まで泊まれるので、ファミリーやグループ旅行にもおすすめです。
趣の異なる2つの贅沢な温泉「温泉サロン」
お部屋を堪能したら、続いては温泉。白浜温泉は有馬、道後とともに、日本三古湯に数えられます。約1400年の歴史があり、日本書紀や風土記に天皇も訪れたと記されている名湯です。
泉質は、ナトリウム・塩化物・炭酸水素塩泉で、無色透明。火傷、慢性湿疹、婦人病、更年期障害、神経痛などに効能があるとされています。
リビング風スパという新ジャンル! 2階「温泉サロン ロイヤルスパ」
温泉は館内に2ヵ所あり、2階の「温泉サロン ロイヤルスパ」は、オーシャンビューの露天風呂、内湯のほか、寝湯やシルクバス、レインシャワー、サウナ、暖炉を囲むリビングまであり、多彩な楽しみ方ができます。
露天風呂の目の前には海が広がり、切り取られた空間はまるで絵画のよう。朝日や夕暮れ時も美しい、絶景の露天風呂です。
ミクロの気泡によるリラックス効果や美肌効果を感じられるシルキーバス、水流が心地よい寝湯、高温ドライサウナも。サウナには、「フィンランド式」とも称される「セルフロウリュ」があり、ハーブ水をサウナ石にかければ、水蒸気が体を包んですっきりとリフレッシュできます。
温泉やサウナで温まったら、暖炉の炎を眺めながらリラックス。ドリンク、ガウンやタオルを備え、ベンチも床暖房になっているので、体が冷えることはありません。
脱衣所にも広々としたリビングが。湯上がりにうれしいお水とアイスクリームのサービスもあります。
テラスで潮風を感じながら、お風呂上がりのアイスクリームを。至福の時間です。
パウダーコーナーは仕切りがあり、周りに気兼ねせず使えます。女性用は「マーガレット・ジョセフィン」、男性用は「バルクオム」の化粧水、乳液などのアメニティがしっかりとそろっています。
また、脱衣所にバスタオル・フェイスタオルが用意されているので、お部屋から持っていかなくていいのもうれしいポイント。ロッカーはカギ付きで、セキュリティ面も安心です。
開放的な露天風呂付き 1階「温泉サロン ロイヤルスパ 悠久の森」
1階にある「温泉サロン ロイヤルスパ 悠久の森」と、2階の「温泉サロン ロイヤルスパ」は、午後と翌朝とで男女入れ替え制になっています。
1階「温泉サロン ロイヤルスパ 悠久の森」の内風呂の壁には、陶芸家・青山禮三氏による仙人画と、不老長寿の願いを表現した漢詩が書かれた陶板が。広々とした浴槽の座面には、高野山の霊木とされる高野槙(こうやまき)を使用しています。間接照明に浮かび上がる湯気、幻想的な空間に癒やされます。
外には大きな露天風呂。潮風と緑、自然の力を感じながら、ゆったりと白浜の湯を堪能できます。
- 利用時間
- 13:00~23:30、5:00~10:30(午後と翌朝で男女入れ替え制)
王様気分が味わえる豪華なディナービュッフェ
ホテル川久の目玉のひとつが、夕食と朝食の豪華なビュッフェ。豪快、繊細、美しい晩餐会がテーマの「王様のビュッフェ」は、地元・和歌山と食材の宝庫・北海道の食材をふんだんに使用し、その名の通り、とても贅沢な気分にさせてくれます。
ビュッフェ台には、1人分ずつ繊細に盛り付けられたお料理が並び、ジュエリーショップのショーケースのような美しさ。クエや伊勢エビ、鮑といった高級な海の幸や旬の食材を使用した和洋約80ものお料理がそろいます。
お料理を取るときはビニール手袋とマスク着用、トングも1回使うごとに取り換えるスタイルで、新型コロナウイルス感染拡大防止策をしっかり講じています。また、テーブル間は広くとられ、パーテーションも設置されているので安心して利用できます。
そして、ライブキッチンが充実しているのも、このビュッフェの魅力のひとつ。シェフが目の前で焼き上げるジューシーな十勝牛のステーキは、焼いている香りもごちそうです。太刀魚やエビはアツアツの天ぷらで。揚げたてサクサクの衣がたまりません!
お寿司も目の前で握ってくれます。和歌山名産、高級魚のクエが1年中食べられるのも自慢だそう。クエのお寿司は必食です!
さらに、デザートも豪華なんです! 見た目もかわいいケーキにグラススイーツ、カラフルなマカロンにフルーツまで、ここはスイーツビュッフェ!?と見紛うほどのラインナップ。それもそのはず、このデザートは専属のパティシエが手がけているそう。
和歌山産みかんのソースがかかったプリンや、和歌山県北山村が発祥の柑橘「じゃばら」を使ったタルト、和歌山産梅ゼリーなど、和歌山ならではのデザートも並びます。
ディナービュッフェのお楽しみはまだあります。19:00前後に行われるフランベのショーも必見! 迫力あるフランベの炎と、職人技がなし得る繊細な演出。そして、できあがったデザートはすぐにふるまわれます。
取材時はチェリーを使った「チェリージュビレ」。英国・ビクトリア女王の即位50周年の祝宴の際に献上されたデザートです。夏はパイナップルやマンゴーといった旬のフルーツを使ったフランベ、秋はクレープシュゼットなど、季節ごとのデザートが味わえるそうですよ。
お酒好きの方には、90分間ワイン飲み放題付きのプランも。じつは、館内におよそ100年もの歴史を持つ立派なワインセラーがあるんです。赤、白、スパークリングと、ソムリエが厳選したワインを堪能できます。
焼きたて、できたて、約50種類が並ぶ朝食ビュッフェ
朝食も夕食と同じ会場で、約50種類のお料理が美しく並ぶ豪華なビュッフェをいただけます。
パンのコーナーには、クロワッサンやデニッシュのほか、ドーナツやシュークリームまでスタンバイ。パンは毎朝ホテル内で焼きあげていて、そのままでも十分おいしいですが、お願いすると温めてもらえます。
朝食ビュッフェもライブキッチンが充実していて、できたてを味わえるのが特徴。目の前で焼いてくれるフレンチトーストは、耳の部分はカリッと、中はフワ&ジュワっとした食感がたまりません。
チーズやベーコン、トマトなどから好きな具で作ってもらえるオムレツも。シェフの手にかかれば、あっという間にフワフワオムレツのできあがりです。
ごはん派の方には、その場で握ってもらえるおにぎりを。具は梅、昆布、サケ、明太子の4種類。複数の具を入れて贅沢なおにぎりにするのも、「王様のビュッフェ」だからできる楽しみ方です。
そのほか、ライブキッチンには、紀州備長炭で焼く魚の干物、すき焼きまで。できたての豪華な料理に、朝から王様気分に浸れます。
そして、自分で作る海鮮丼も。好きなだけイクラやマグロをのせて、至福の贅沢丼を楽しんでください!
フルーツやデザート、ケーキ、ドリンクも充実のラインナップ。一番人気は、たっぷりのメロンをしぼったフレッシュメロンジュース。和歌山県産のフルーツを使ったフルーツポンチなども見逃せません。
ホテルオリジナルのお土産も要チェック!
チェックアウト前に、ラウンジ横のショップでお土産選びも忘れずに。地元の名産品や、川久オリジナルのグッズやお菓子、梅酒、ワインなどがそろいます。金箔天井をデザインしたトートバッグ(2,700円)など、ここにしかないものもあります。
お城のような空間で特別な体験ができる「ホテル川久」。日本三古湯のひとつ、白浜の温泉と青い海に癒やされ、朝食・夕食は豪華なビュッフェに舌鼓。唯一無二のゴージャスな空間で味わう非日常は、記念日など特別な日のステイにもおすすめです。
- 住所
- 和歌山県西牟婁郡白浜町3745
- アクセス
- JR白浜駅から車で約10分 ※無料送迎バスあり
南紀白浜空港から車で約10分 - 駐車場
- 無料(80台)
- チェックイン
- 15:00(最終チェックイン19:00)
- チェックアウト
- 10:30
- 宿泊予約
- 楽天トラベル「白浜温泉 ホテル川久」
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取材・撮影・文/二木繁美