提供:ことりっぷ
かつて外国人居留地だった横浜の元町・山手エリアには、ノスタルジックな7つの洋館が点在。その中で、最大規模となるのが「ベーリック・ホール」です。スパニッシュスタイルを基調とした建物は、異国情緒たっぷり。一歩足を踏み入れると、まるで外国を旅している気分を味わえます。しかも嬉しいことに、入館料無料&観光目的なら写真撮影OK。カメラを持って、のんびりおさんぽしたくなります。
山手の丘に佇む、スパニッシュスタイルの大邸宅
建物は2階建て。所要時間は15~30分ほどを目安に
みなとみらい線「元町・中華街駅」から約8分。山手に続くゆるやかな坂をのぼっていくと、木々に囲まれた大きな邸宅にたどり着きます。
「ベーリック・ホール」は現存する戦前の山手外国人住宅の中で、最大規模となる西洋館。日本を愛した建築家J・H・モーガンの手により、1930年に設計され、貿易商として活躍したB.R.ベリック氏の邸宅として建てられました。
アイアンワークの装飾扉が目を引く玄関
館の顔である「玄関」は、アイアンの落ち着きを感じられる、上品な佇まい。訪れた人を非日常へ誘います。
優雅さと気品を兼ね備えたパブリッシュな空間
思わずクルクルまわりたくなるかも♪
玄関ホールを進んだ右手は、この建物で最も広い、48畳の「居間」になっています。天井高はなんと約4m。開放感あふれる空間に身をおくと、まるで海外のお家に招かれたような気持ちになります。
ベリック氏は、貿易会社を経営した後、カナダへ移住。「ベーリック・ホール」は、2000年まで「セント・ジョセフ・インターナショナルスクール」の寄宿舎として利用され、改修・復原工事を経て、2002年に一般公開されました。
ここは観光客のみならず、地元の人にも愛される、憩いの場。BGM演奏やコンサートが行われたり、公開ウエディングの会場として利用されています。
「居間」の中央には、クラシカルな暖炉が。「昔は煙突から煙が上がり、ほんわか温もりに包まれたのかな?」そんな風に、歴史を刻んできた建物に思いをはせるのも楽しいひととき。
壁泉を備えた明るい「パームルーム」
庭園にいるようなくつろぎを感じられる
そして「居間」の北側には、アーチ窓から明るい光が差し込む「パームルーム」があります。ここは、白と黒のタイルがアクセントになった、クールでおしゃれなスペース。
外を眺めれば、庭木や空の青さを感じられて心地良い♪ 日頃の疲れから解放されるようで、心がほっと安らぎます。
「パームルーム」には、壁泉と呼ばれる水場もあります。ひときわ目を引くライオンの装飾やノスタルジックなタイルがすてき。
和のテイストを取り入れたモダンな食堂
玄関ホールの左手には、和洋折衷の要素が溶け込んだ「食堂」が。モダンな空間に和の格式高い「化粧梁の組天井」が溶け込み、重厚感あふれる雰囲気が漂います。
食堂のテーブル装飾もじっくり眺めてみて
「ベーリック・ホール」に来たら、建物の雰囲気に合わせて、ひとつひとつ丁寧に作られた家具も見どころ。食堂のテーブルや暖炉は、古き良き横浜の伝統工芸が活きる「横浜家具」によるもの。よく見ると、装飾の一部が同じデザインになっていて、空間に統一感があります。
お姫様気分を味わえるエレガントな階段
渦巻状のアイアンワークから流れるように造られた、特注の手すりが特徴的
赤い絨毯が敷かれた階段は、とっておきの撮影スポット。 ワンピースを着て写真を撮れば、お城で暮らす、お姫様になったような1枚になるはず。
思わず足が止まってしまう♪ キュートな子ども部屋
山手の西洋館で唯一、子ども用の部屋として作られた
階段で写真をたくさん撮ったら、2Fのフロアへ。パブリックな用途が多い2Fに比べ、2Fは寝室やバスルームなどで構成されたプライベート空間になっています。
2Fで特に人気なのは、子ども用の部屋として設計された「令息寝室」。一歩足を踏み入れただけで、誰もが「かわいい!」と声を上げてしまうキュートなお部屋です。
ターコイズブルーの壁は、莫大な手間と時間をかけ、フレスコ画の技法で再現
ユニークな形の小窓は、まるで四つ葉のクローバーのよう!あまりのかわいらしさに乙女心がくすぐられ、心が高鳴ります。
お気に入りを見つけたくなる浴室
「令息寝室」隣りの浴室は、白✕黒のタイルのコントラストがおしゃれ
2Fには3つの浴室があり、それぞれ個性豊か。バスルームごとに趣の異なるタイル装飾が施され、見応えたっぷりです。建築好き&レトロなものが好きな人にはたまらない、クラシカルな魅力が凝縮されています。
ガラスのように透き通ったブルーのタイルが美しい
こちらは、「客用寝室」の浴室。四葉型の小窓とブルーのタイルの組み合わせが、ハイカラな横浜の雰囲気にマッチしています。
そのままインテリア雑誌に出てきそうなおしゃれな雰囲気
また、スモーキーグリーンのバスタブを用いた浴室は、ベリック氏と奥様が利用するために作られたもの。窓からたくさんの光が入って心地良い。明るくさわやかな空間は、心までほぐしてくれそうです。
重厚なデスクが置かれた「主人寝室」
「主人寝室」と呼ばれる部屋は、寝室と言いながらも、ベッドは置かれていません。この部屋は、貿易商としてだけでなく、フィンランド名誉領事としても活躍した、ベリック氏の書斎をイメージしてしつらえています。
飾り棚には、貿易会社や学校だったころの貴重なアイテムが展示されています。時間のある人は、こちらもぜひのぞいてみて。
女性の憧れを形にした「婦人寝室」
「婦人寝室」は温かみのある女性らしいお部屋
そして、サンポーチと一体化した「婦人寝室」は、2Fで最も大きなお部屋。寝室には、大きなウォークインクローゼットやシューズクローゼットまであり、女性なら誰もが「うらやましい!」と思える、使い勝手の良さそうな空間になっています。
ガラス張りのサンポーチは、眺望バツグン。窓から元町公園が見え、周囲の木々に心が和みます。このサンポーチは、慣れない異国の地で暮らす奥様を和ませるために、ベリック氏が作ったのでしょうか。そんな風に、奥様を大切にしてきたことがうかがえる、心温まる空間です。
季節に合わせた装いも楽しみのひとつ
ハロウィンの飾り付けが行われた「食堂」
6月は花と器のハーモニー、10月はハロウィン、12月は世界のクリスマス……。といった感じで、「ベーリック・ホール」では、毎年、季節に合わせた館内装飾やテーブルコーディネートを楽しめます。
「今年は、どんなコーディネートになるのかな?」と想像するだけでワクワク。1度ならず、2度3度と足を運んで、雰囲気の異なる「ベーリック・ホール」を楽しんでみてくださいね。
文:安藤美紀