提供:ことりっぷ
東近江の五個荘は、数多くの近江商人を世に送り出した町です。商人たちは出世して全国に散った後もこの地に本宅を残したため、今も趣ある屋敷が残ります。「genzai」は、そんな古い商家を改装したギャラリー&カフェ。地元の作家さんによる器やファブリックを楽しんだり、ケーキやコーヒーでほっと一息ついたりしながら、ゆったりとした時を過ごしてみませんか?
カフェは築200年超えの近江商人屋敷
古い建物の入り口には、はっとするような赤と白の暖簾
「genzai」へは、JR能登川駅から近江鉄道バスで約10分のぷらざ三方よし前で下車し、南西へ徒歩で約3分。集落を道筋に進み、福応寺門前にある古民家です。道に面した駐車場に出ている小さな看板を目印にしましょう。お店には、土間を通り、靴を脱いで上がります。
古民家らしい雰囲気が漂うショップ
古い家具にディスプレイされた器や布小物
店名の「genzai」は、お客様に実際に足を運んでもらって、オンラインではできないような「今、まさにここにいる」という体験をして欲しいという想いからきたそう。
オーナーの中山 通正さんは、心に留まった滋賀や近隣の作家の作品を中心に揃えていると言います。そして、日々の暮らしの中で、使いたくなるようなものが並ぶのもポイントです。
淡いブルーの「リムプレート 7寸」4,620円、深い青が印象的な「カップ」2,970円、手になじみそうな「マグカップ」3,850円
たとえば、信楽を拠点に活動する夏草さんの器。琵琶湖を思わせるような微妙なブルーのグラデーション、そして空間によくなじみ、主張しすぎないシンプルなフォルムが特徴です。「夏草さんの器は、使いやすいので、カフェで使うことも多いですよ」と中山さん。
「ブロックプリントのファブリック(50*50)」8,800円
こちらの素朴な色合いの布は、向井詩織さんの作品。ブロックプリントというハンコを押して染める技術を生かしたファブリックです。1枚1枚手染するので、ひとつとして同じ柄はないそう。草木染を基本にしているナチュラルな色合いは、スカーフにするとどんな服にも合いそうですね。
湧き水で淹れたコーヒーや、産みたて卵のエッグトーストを
古材を譲ってもらって手作りしたテーブルもあるそう
カフェスペースは、ナチュラルテイストで統一。200年を超えた古民家ですが、重厚すぎない居心地のよい場にするため、壁やインテリアはオーナー夫妻も参加して設えたそうです。
商家時代の和建築の雰囲気がほどよく残った空間は、レトロ感がありながらもカジュアル。中央の大きなテーブルはグループに、庭に面したテーブル席や、奥には座布団席もあります。若い世代から高齢の方まで、思い思いの時間が楽しめそうですね。
「バナナケーキ」450円と「ホットコーヒー」550円
こだわりのコーヒーに使われている水は、地元の御澤(おさわ)神社の湧水。飛鳥時代から水田を潤してきたと伝えられる「神鏡水(しんきょうすい)」は、名水として名高く、病気が治り、縁結びなどの御利益もあるそう。サイフォン式で淹れられたコーヒーからは、豊かな香りが立ち上がってきます。
「うちの鶏のエッグトースト」500円
メニューはスイーツだけでなく、軽食になるエッグトーストも。驚くことに、この卵は庭で飼っているニワトリの卵が使われているのだとか。トーストのサイズが小さいのは、卵が小さいから。そのサイズに合わせて、地元のパン屋さんに国産小麦を使ったパンを焼いてもらっています。
家屋の周りをぐるりと囲む庭には、古いオブジェが置かれたり飛び石があったり、もちろん裏庭にはニワトリも
また、ギャラリーでは年に数回、作家さんの企画展が開催されており、ショップの品と同じように購入できるものもあります。素敵なアイテムを見つけたとき、「買う前にちょっと考えたい」と感じることは、ありませんか?
genzaiなら、カフェでほっと一息ついたり、お庭をさんぽして気分転換したりしながらそういう時間が持てるのも魅力です。何度か通って、お気入りの作家さんにめぐり会えるといいですね。
文:戸塚江里子 撮影:道海史佳